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1 目 的「家庭生活」領域は、家族と共に家庭で営まれる生活に関する内容を学習対象とする領域で ある。生活様式の多様化が進行している現在、学習者の生活経験は一様ではない。したがって、
授業中に同じ学習内容や活動を体験していても、生活経験の違いから、学習者の認知・情意内 容は異なるものと思われる。
個々の学習者に焦点を当てた個別化・個性化教育が求められるとき、授業の際に学習者一人 一人を理解することを重要視しなければならない。
再生刺激法は、家庭科の学習を理解する過程において、学習場面と生活体験を関連させてい る状態を把握できる授業の分析方法であり、個人の興味・関心の程度も把握できる1)ことが、
第3章に示した研究結果で明らかになった。
生活を支える「家庭の仕事」の中で食生活に関わる仕事は、自然界の恩恵と産業社会の変化 の影響が多い内容であり、生活と自然・社会環境の連鎖性を体験的に学習させやすい内容とい える。また、食生活に関する学習は男女共に関心を持っており、学習効果も期待できるのでは ないかと考えた。
一方、第1・2章の調査結果から、水資源の大切さや環境の悪化を懸念する意識の高まりは みられるが、生活が都市型に変わりつつある今日、日常生活の中で自然の恵みを感じる機会が 減少していることなどから、生活と環:境との連鎖性を考慮した行動が取られていないなどの状 況が分かった。そこで、食生活に関する仕事内容の学習の中で、簡便な暮らし方を安直に選択 するのではなく.、暮らし方と環境を関連性づけるなど広い視野に立つ主体的な生活を営むこと の重要性を理解させることを目的として授業を構成し、実践を通して分析・検討を行った。
授業分析には、再生刺激法を用いて次の3点を明らかにすることを目的とした(先行研究に ならい、情意は興味・関心を、認知は思考・理解2)をそれぞれ表すものとする)。
1)学習者が学習内容を理解した程度を認知レベルとして把握する。
2)採用した学習題材が学習者の認知・情意過程に与えた効果を評価する。
3)グループ演習の際に、学習者相互の態度が変容する過程を把握する。
一59一
5 2 方 法
1.研究対象
・授 業 内 容:①食事つくりに必要な仕事・…・・…(一斉授業の形態)
②朝食つくりの計画・・…・・(グループ学習と発表会)
・時 期:11月1日から11月17日の間の家庭科の授業時間90分 (授業:70分+VTR再生:20分)を2回
・対象生徒:兵庫教育大学附属中学校1年1、2、3組
(各組男子10名・女子10名四60)
・学習指導の概要:再生刺激場面と併記して、図2、図3に示す ・授
業
者:学習指導計画案の立案者・授業観察者:兵庫教育大学大学院・家庭科教育研究室在学のM1生(2名)
同上 学 部・4 回 生 (3名)
同上 附属申学校・教務主任教諭 同上 附属中学校・家庭科授業担当講師 2.実験方法
渡辺・吉崎らの先行研究をもとに、再生刺激法の家庭科における授業分析の方法としての有 効性が第3章で確かめられたので、VTR収録・再生方法などは、おおむね第3章の実験方法
に準じて行った。
なお、質問紙の様式の一部を次のように改良した。
3.質問紙の改良
第3章の、質問紙に記入された報告内容を集計・分析する過程で、改良の余地が示された。
それは、質問紙の質問項目2「考えていた」の内容を「直接学習していること」 「学習に関係 していること」「無関係なこと」に3区分したが、「無関係なこと」に記入された内容は、「考 えていない」の欄に記入されている内容と同じものであった。
そこで今回は、「無関係なこと」を「考えていた」内容から削除し、その他の質問項目は変 更しなかった。質問紙の記入は、「考えていた」の2選択肢と「考えていない」の合計3っの 中から1つを選ぶ方法で回答を求めた。
また、再生刺激法を実施した学習者の感想を確かめるために、最終の場面の調査用紙の後部 に、再生刺激法を体験した感想を問う5つの質問を加え、回答を「はい」「いいえ」に○を付 ける方法で求めた。図1に、最終の場面の質問紙を示す。
,
《おたずね
します》 1年 組 番 氏名1. あなたは、 このとき何をしていましたか。
ぼくは、 わたしは、
2. 1のことをしながら、 何か考えていましたか。
、
考えていた 考えていない
直援学習していること 学習に関係していること ・なぜ何.も考えていないのですか
①内容が難しい
・どんなことですか。 ・どんなことですか。 ②よく知っていておもしろくない
①自分の家庭生活の出来事 ③自分に関係ない
②家族のこと ④興味がない
③自分の体験してきたこと ⑤体調がよくない
④今まで聞いたり、見たり、 ⑥その他 層一曜一耳辱鱒層層.噛幽圏.冒,雪..
読んだりしたこと ;
⑤前に学校で学習したこと ;
⑥その他・………一一1 1,
1
…
1
!..■ロー..φ圏曹■伽一り冒層,■,,・,騨一一層一卿曜■ 7 ■ ■ ■ o ■ ■ 噛 冒 冒 辱 甲 曝 鱒 ■. 一 一 曹 卿 ■ 嘘 響 一 〇冒 一 曹 曹 一 一 ,
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・○をつけたことが具体的に書け
・なぜ.そのことを考えたのですか. る人は、書いてみよう.
3. この学習でわかったことは、何ですか。 また、わからなかったことは何ですか。
4. 自分たちの授業をVTRで再度見て、 その時の各自の状況を答えてもらいました。 この調査を受けた感想を 「はい」
「いいえ」に○をつけて答えてください。
・授業の再現画面は、おもしろい 噌rロ層..−・ 恚ソ・ロ。・・9..冒一99■・o.幽.尊.9一・噸 はい、 いいえ、 ぞ
・各場面の自分の考えが.思い出された 「 ■ 口 ■ ● 9 ■ ■ 9 9 ■ ■ . . ■ o ・ o ● o . 璽 , 層 ・ 噂 ・ ● 聯 . はい、 いいえ、
・面倒だから.こんな調査は受けたぐない ■ 層 ■ ■ ■ ■ ● 巳 ■ 9 . 璽 . 喝 ・ . o 曽 ● ■ 層 響 ■ ■ 口 ■ 一 ■ ● ● ■ 9 はい、 いいえ、
嚇
・自分は、なぜあの時、そのように考えていたかが分かる ■ ・ 曽 o 幽 ■ 雫 騨 騨 噂 層 用 甲 辱 辱 卿 , はい、 いいえ、
教科名
・他の教科でも、この調査をするとおもしろいかもしれない ■ , ■ o 曹 ■ ● 9 ロ o 曹 一 一 咀 はい、 いいえ
5. VTR画面を見ながら思ったことがあれば、具体的に書いてください。
図1 最終の場面の質問紙
4.学習の展開と再生刺激場面の設定
.再生刺激場面の選定は、指導者が研究目的に合わせて意図的に選定した学習教材が、学習者 の活動として明確に現れる場面を選定した。
一61一
(1)「食事つくりに必要な仕事」の学習展開と再生刺激場面
図2は、 「食事つくりに必要な仕事」の学習展開と再生刺激場面を示す。ここでは、一斉授 業の形態で、多様な生活方法から自分が選ぶ「食事の仕事」の学習を通して、時間・労力・必 要な技術の違いを認識させ、さらに、生活と水や生活廃棄物の関係を体験的に学習したり、生 活を思い起こさせたりすることに重点を置いた。
学 習 内 容 学 習 活 動 指 導 上 の 留 意 点 場面設定の理由
食事の準備 ・ご飯を食べるのに必要なご ・小学校で学習した米飯の調理
・佳事の内容 とを話し合う 手順を思い起こさせながら、流
導 ・仕事の順序 (材料・用具・熱源・技術) れ図を利用して、調理の仕事・
・熱源と用具 手順を理解させる [■ の場面】
多くの食事準備の方 食事の準備方法の選択 ・食事の準備方法を挙げ、日 ・現代の食事の準備は、多くの 法から、各自が状況
魑
入 ・時代の変化 頃、選択している方法と状況 方法の中から選択しているとい に併せて選択し、食
・現代の選択基準 を話し合う う認識を持たせる 生活が営まれている
(調理する、外食、惣菜) ことの認識
食品の選択 ・2種類の米を色・香り・手触 ・米の違いの予測が出た後に、
・洗い米と米 りなどを比較する 洗い米と米であることを知らせ
学 ・洗い米が商品として流通す ・洗い米が流通する背景に関心
る背景を考え意見を述べ合う を持たせる
・洗い米の価格が米より高いこ
とを認識させる [2.の場面】
洗い米と対比して、
習 生活と水資源 ・米を洗うために必要な水量 ・当然のように流している米の 米を洗い、とぎ汁の
・使用水量と生活排水 と米のとぎ汁の汚れの程度 とぎ汁に関心を持たせる 観察をさせた、指導
を確かめる 者の意図の受け止め
方
展 ・食生活に関わる生活排水の ・米のとぎ汁も河川の汚染源で
種類と汚れの度合を表した新 あることを認識し、生活と自然
[3の場面】
聞資料を読み取る 環境との関連に着目させる. 生活と水資源の関係
から、自然環境・生
・実験に用いた2種類の米を ・食品の選択の際には、味・栄 態系の関心の拡大 食べ比べるために、炊飯器を 養。価格・鮮度・安全の他に環境
開 用いてご飯を炊く への配慮も必要なことを気付か
せる
生活の習慣 ・水と生活に関わる慣用句に ・慣用句の理解の過程で、各自
[4の場面]
ついて意見を交換し合う の水に対する考え方を問い直さ 慣用句を用いた話合
せる いが、生活の水資源
・生活の習慣は、気候・風土条 の関係の理解や生活 件で異なることに気付かせる 習慣への関心の拡大
朝食つくりの計画 ・家庭の朝食の様子を思い浮 ・自分で作れる献立を考えなが かべながら、自分がっくれる ら、家庭の食事つくりの仕事と
学 献立を考える 仕事を担う家族を思いやるよう
[5の場面】
習 にする 食生活の営み方は様
々であり、選択の仕
の ・食事の準備の際に、知って ・多様な食事の準備方法から、 方で社会・環境や家
.発 いなければならない条件を考 主体的な選択の姿勢が重要であ 族のつながりにまで
展 え、話し合う ることを認識させる 影響が及ぶこのに対
する認識
図2 「食事つくりに必要な仕事」の学習展開と再生刺激場面