磁場安定化
4.4 環境磁場計測
4.4 環境磁場計測 55
PC DMM
Magnetic shield 30cm
USBRH
Thermometer & Hygrometer Fluxgate
magnetometer Z
Y X
図4.4 環境磁場測定装置の概略図。非磁性の除振台上に設置された磁器シールド内 部中心及び外部中心軸上に設置したFluxgate磁力計をデジタルマルチメータで読み、
PCに取り込む。さらに磁気シールドの外部に設置した温度·湿度計で温度と湿度のを 計測し、PCに取り込む。系はポリエチレンシートで覆われ、空調の風等による温度変 化の影響を受けにくくしてある。
磁力計
環境磁場計測にはFluxgate磁力計、Bartington Instruments Ltd.製Mag03-MSL-100
とMag03-MSL-70 の二つの磁力計を用いた。1 Hzでのノイズレベルはそれぞれ 5.0
pT/√
Hz、5.1 pT/√
Hzである。Mag03-MSL-70を磁気シールド内部中心に、
Mag03-MSL-100を磁気シールド上端より30 cm程度上の磁気シールド中央にそれぞれ非磁性の
治具で固定し、シールド内部および外部の磁場を計測した。磁力計の出力電圧はデジタル マルチメータ(Keithley Instruments inc., Model 2000 6-1/2-Digit Multimeter)で計測 される。100µTあたり、Mag03-MSL-100は10.0 Vが、14.3 Vがそれぞれ出力される。
温度湿度計
測定領域の温度計測には USB 温度 · 湿度計モジュール (Strawberry Linux 社製, USBRH,分解能: 0.01 ◦C, 精度 ±0.4◦C)を用いた。
磁気シールド
今回用いた磁気シールドは図4.5に示すように4層からなる円筒型であり、軸方向の開 口部の直径が両端で異なる。図4.5で示される+Z方向を上流、−Z方向を下流と定義す ると上流端と下流端には直径が異なる円型の穴が開いている。また、最内層を1層、最外 層を4層と呼ぶ。寸法を表4.2に示す。
一様な磁場中の単層磁気シールドの円筒方向の磁気遮断率STは円筒方向のシールド内
部の磁場BTinsideとシールド外部の磁場BToutsideの比であり、シールド材の比透磁率
µ、厚さd、半径Rを用いて
ST = BTinside
BToutside
= µd
2R (4.1)
表4.2 磁気シールドの寸法
層 1 2 3 4 長さ [mm] 900 950 1000 1050 円筒直径[mm] 300 350 400 450 上流端内径[mm] 70 100 130 160 下流端内径[mm] 260 310 360 410 厚さ[mm] 1.0 1.0 1.0 1.5
と表され、単層の磁気シールドの磁気遮断率の実験値とおおよそ一致する。
n層の磁気シールドの場合、シールドの存在が独立なシールド磁気遮断率の単純な積に はならず、
ST =STn
n∏−1 i=1
STi [
1− ( Ri
Ri+1
)2]
(4.2) のように層間の空間の体積に対応する要素が含まれる [43]。今回使用した磁気シールド はPCパーマロイ(鉄、ニッケル、モリブデン、銅の合金で高い比透磁率を持つ)製であ り、初期比透磁率が約45000、最大比透磁率が約160,000である。円筒方向の磁気遮断率 をµ= 60,000とした場合に式(4.2)を用いて計算すると、∼1.5×107となり、表4.3で 示される今回使用した磁気シールドの性能検査試験の結果とは一致しない。今回使用した 磁気シールドの性能検査試験の結果を表4.3に示す。シールド内外で磁場の符号が反転し ているのは、シールド内部の残留磁場の影響であると考えられる。
図4.5 今回の測定の際に使用した磁気シールドの写真。内部には磁力計及び3軸ヘル ムホルツコイルが入っている(今回の実験の際は、ヘルムホルツコイルは使用してい ない)。
4.4 環境磁場計測 57
表4.3 磁気シールドの性能
磁場の大きさ BX BY BZ
シールド外[µT] -16.11 30.99 23.23 シールド内[nT] 7.4 -2.8 22.8
磁気遮断率 -2177 -11067 1018
4.4.2 計測結果
2012年1月10日から2012年1月18日にかけて磁気シールド内部垂直方向磁場、磁 気シールド外部垂直方向、磁気シールド周辺の温度変化測定した結果を図4.6に示す。図 4.6中の点線で囲まれた領域が、我々がCYRICの第5ターゲット室(TR5)およびTOF 室においてFrの生成·輸送実験を行った期間に相当する。図4.6最上段の磁気シールド 外の磁場変動にスパイクが4本立っているのがみられるが、930AVFサイクロトロンのメ インコイルの電流を変化させた時刻と一致している。また、我々のFr-生成·輸送実験の 際はサイクロトロンのメインコイルに∼ 540 Aの電流を流し、18O5+を加速する。この 影響により、シールド外の垂直方向の磁場は約0.2 µT大きくなっていることがわかる。
この結果より以下のことがわかった。
サイクロトロンからの漏れ磁場の影響が見られ、Fr生成・輸送実験の際に測定位 置の垂直方向磁場は約 0.2µT上昇する
Fr生成・輸送実験の際とサイクロトロンが停止中の磁気シールド内部の磁場変動 幅は同程度である
磁気シールド内部の磁場と温度には相関がみられる。
BY inside of the shield BY outside of the shield
Magnetic field[nT]Magnetic field[μT]Temperature[℃]
Time [day]
Fr-machine time
1/10 1/11 1/12 1/13 1/14 1/15 1/16 1/17 1/18 1/19
図4.6 上段が磁気シールド外部の垂直方向磁場、中段が磁気シールド内部の垂直方向 磁場、下段が温度を表し、横軸は日付を表す。また、点線で囲まれた領域はTR5から TOF室へのFrの生成·輸送実験が行われた。
59
第 5 章
EDM 測定系の探索感度の評価と 議論
この章ではいくつかの仮定を基に、我々の現状のセットアップでのEDM測定精度・
系統誤差について見積もり、これらの改善について議論を行う。
現在、我々は18O + 197Au → 210Fr + 5n の核融合反応を用いて毎秒0.7 × 106個 の210Frを引き出すことに成功している。210Frの半減期は約3.2分と我々が想定してい る周波数測定時間10秒と比較して十分に長い。本章では、この210FrをEDM探索対象 とした場合の議論を行う。