• 検索結果がありません。

5.4 伴流設計システムによる実用船型設計

5.4.1 理想伴流の設計

本研究では次の 2 点を目的として、伴流設計システムへの入力伴流データとなる理 想伴流を設計する。

• ダクト型ESDの性能向上

• プロペラキャビテーションの低減

ダクト型 ESD の省エネ効果は、船型によって異なることが指摘されている [7]。Fig.

5.8は、省エネ付加物を搭載しない裸殻状態の有効伴流係数(1 − 𝑤𝑇)とダクト型 ESD の省エネ効果との関係を示した図で、裸殻状態の有効伴流係数(1 − 𝑤𝑇)が高い船で は、ダクト型ESDの省エネ効果が小さいことがわかる。

Fig. 5.8 Correlation between power saving of duct type ESD and self-propulsion factor of ships without ESD [7].

ダクト型 ESD の性能が十分に発揮されていないケースでは、特に推力減少係数が 改善しない、または悪化するケースが多い。従来研究([6]〜 [10])では、ダクトの発生 する推力による推力減少係数の改善効果と、ダクトおよびその周辺で起こる剥離等に 起因する有効伴流係数の改善効果の検討において、ダクトの周方向の翼素に着目し、

その周方向の翼素への流入角を分析している。ダクト型 ESD はその製造上の観点か らダクト開き角は周方向で一定であることが望ましい。したがって、ダクト翼素への流入

104

角の周方向分布が一様であるほど、ダクト型 ESD の省エネ効果は高い。また、従来研

究([6]〜 [10])によれば、省エネ性能の高いダクトはダクト上部の 0 度から 80 度の周

方向範囲で推力を得ているため、特にこの範囲の流入角を注意深く設計する必要が ある。一方、ダクト下方の周方向位置では、船底からの流れの吹き上がりによって流入 角がマイナスとなるため、この範囲はダクトの推力には寄与しない。このため、ダクト下 部では低抵抗となる範囲で有効伴流係数の改善を目的とした設計を行う。ダクト下部 の開き角の設計感度は、ダクト下方の流入角がマイナスとなり流れが剥離していること から、ダクト上部の設計感度と比較して鈍感である。このため、本研究ではダクト上部 の流入角と対応する開き角に着目し、ダクトの開き角が周方向で一様になるように裸 殻船型の誘起する理想伴流の設計を行う。

一方、プロペラキャビテーションの低減のためには、プロペラ軸方向速度(𝑢)の周方 向変動が小さくなることが重要である。実用設計では、通常プロペラが最も推力を発生 する 0.7R プロペラ半径位置の周方向分布の速度変動を低減することを目的とした設 計を行う。Van der Ploegら [3]は、キャビテーション低減のための伴流改善と裸殻船体 抵抗との多目的最適化を実施しており、伴流改善に資する目的関数としてプロペラ軸 方向速度(𝑢)の周方向速度変動微分値の L2 ノルムを採用している。本研究では、

キャビテーション低減のための伴流分布の目的関数として、0.7R プロペラ半径位置の プロペラ軸方向速度(𝑢)の周方向変動の最大値と最小値との差分を採用する。

この二つの伴流改善を同時に達成するため、ダクト型 ESD に適した伴流分布(Fig.

5.9)と、プロペラキャビテーションを低減する伴流分布(Fig. 5.10)の二つを749GT DB2

から選定し、選定した二つの伴流分布を平均化することで本研究における理想伴流を 設計する。ここで、ダクト型 ESD に適した伴流分布とは、749GT DB2 のそれぞれの船 型の伴流分布(𝑢, 𝑣, 𝑤)から算定されたプロペラ周方向 0 度から 80 度の範囲の 10 度 ごとのダクト流入角のデータ列(集合)の分散が、749GT DB2 の全ての船型で比較し て、最も小さい船型の伴流分布である。また、プロペラキャビテーションを低減する伴 流分布とは、プロペラ軸方向速度(𝑢)の周方向速度の最大値と最小値との差が最も小 さい船型の伴流分布である。

Fig. 5.11に設計した伴流分布を示す。設計した伴流は、749GT 原船型の伴流分布

(Fig. 2.7)と比較して、伴流分布の船尾縦渦の中心位置がプロペラ軸心と同等の高さ

まで下がることに特徴がある。このような伴流分布の特徴は、ダクト型 ESD の省エネ効 果の高いU型フレームライン船型の伴流で多く観察される(例えば [7]〜 [10])。設計

105

した伴流分布がダクト型 ESD の省エネ効果にどのような影響を与えるかは、この後の 節で詳細に議論する。

Fig. 5.9 Best wake distribuition for improvement of WAD performance (ID=30190).

Fig. 5.10 Best wake distribuition for propeller cavitation (ID=20403).

106

Fig. 5.11 Designed wake distribution.

Fig. 5.12 Calculated wake distribution of the system output hull form.

107