本節では、模型船レイノルズ数の船尾伴流場について議論する。Fig. 4.1とFig. 4.2 に船尾フレームライン形状の変化による、船体表面圧力分布および限界流線の変化 を 33CT と 82BC に分けてそれぞれ示す。計算された圧力分布と限界流線について、
水槽試験結果との直接の比較検証は実施できないが、CFDに関する国際ワークショッ プ等(例えば [76] [77] [79])では、同様の船型に対する計算流場と水槽試験結果と の検証が十分に行われているため、本計算結果をもって船尾伴流場を同様に議論す る。
船尾においては、圧力ポケットと呼ばれる負圧部が船尾ビルジ部に存在する。この 圧力ポケットは、船側の流線を圧力ポケットに引き込むとともに、船底からの流れに対 して逆圧力勾配を与え、船側からの流線と船底からの流線を集めることで、3次元剥離 を発生させる。一般に、U 型フレームライン形状は V 型フレームライン形状に対して船 尾ビルジ部の曲率が大きいため、より強い圧力ポケットを形成し、この強い圧力ポケット がU型フレームライン形状の伴流により大きく、強い縦渦を形成させている。しかし、興 味深いことに本研究の U 型フレームライン船型の圧力ポケットは、V 型フレームライン 船型の圧力ポケットに対して、弱くまた後方にあるという特徴を持つ。この特徴は、明ら かに近年の設計トレンドを反映している。これは、例えば近年 CFD を活用した船型開 発では、船尾ビルジ部の圧力ポケットが強く、または広くなりすぎて粘性圧力抵抗が悪 化しないように細心の注意を払い船尾 U型フレームライン形状を設計することである。
また、これの圧力ポケットの強さと広がりに加えて、剥離線の傾斜角に注目するとフ レームライン形状が V 型フレームライン形状から U 型フレームライン形状に変化する 間に、限界流線に見られる剥離線の傾斜角は、圧力コンターと比例して、急峻になる ことがわかる。
Fig. 4.3 とFig. 4.5 には、模型船レイノルズ数の限界流線と船長方向の渦度の分布
を 33CT と 82BC に分けて示している。渦度のコンターは縦渦の生成と剥離線の関係 を明示しており、剥離線の傾斜角が急峻なU型船型の船尾ほど強い船長方向の渦度 が観察される。一方、V 型船型では、明確な船尾縦渦を形成するのに必要な渦度が 供給されないため、プロペラ面において明確な縦渦が形成されていないこともわかる。
これらの結果を考察すると、実用設計において船尾フレームライン形状は、船尾船体 表面圧力の船尾圧力ポケットの最小値より、むしろ船尾剥離線の傾斜角に対して影響
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の強い圧力コンターラインの傾斜角に特徴付けられることがわかる。
次に、連続的な船型変化に対する流場変化の連続性について述べる。従来研究に おいては V 型フレームライン形状と U 型フレームライン形状との流場は単に対比的に 示されるのみであり、その中間船型において流場がどのように変化するかは不明確で あった。本研究では、船型ブレンディング法の特徴を利用して、連続的な船型変化に 対する流場変化の連続性について、特に立方体の角のような明らかに剥離線となる稜 線を持たない滑らかな実用船型を対象に述べる。
Fig. 4.4 と Fig. 4.6 に 33CT DB と 82BC DB それぞれの V 型フレームライン形状
(001)から U 型フレームライン形状(200)への船型変化に対応した流場変化の様子を 10船型ごとをサンプルとして示す。これらの図から連続的な船型変化に対して、それに 対応した流場変化もまた連続的であることが確認できる。この結果から、特徴線である 稜線を持たない滑らかな船型について、その船型変化が連続的であり、また実用船型 で大規模剥離が発生しない場合には、その連続的に変化する船型が誘起する伴流も また連続的に変化すると考えられる。このことから、さらに船型形状の形状差が小さい 範囲においては、伴流の類似性の高い船型同士の線形重ね合わせ(船型ブレンディ ング)によって、船型および伴流の線形補間が可能であると考えられる。
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Fig. 4.1 Pressure distributions and limiting streamlines at model-scale for 33CT (top: V-type, bottom: U-type (MS No.852)).
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Fig. 4.2 Pressure distributions and limiting streamlines at model-scale for 82BC (top: V-type, bottom: U-type (MS No.842)).
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Fig. 4.3 Limiting streamlines and axial vorticity distribution at model-scale for 33CT (top: V-type (001), bottom: U-type (200: MS No.852)).
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Fig. 4.4 Flow field examples at model-scale in 33CT DB in which hull form is deforming from V-type (001) to U-type (200: MS No.852).
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Fig. 4.5 Limiting streamlines and axial vorticity distribution at model-scale for 82BC (top: V-type (001), bottom: U-type (200: MS No.842)).
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Fig. 4.6 Flow field examples at model-scale in 82BC DB in which hull form is deforming from V-type (001) to U-type (200: MS No.842).
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最後に、船尾フレームライン形状と粘性圧力抵抗との関係について詳細に議論する。
Fig. 4.7とFig. 4.8には、模型船レイノルズ数における船体表面圧力による船長方向の
力の成分(𝐶𝑃𝑋)の分布を示す。ここで、負圧部分は粘性圧力が抵抗として寄与してい る船体表面を示す。V 型フレームライン船型と比較して、U 型フレームライン船型の負 圧領域は、船型の凹み部に対応して、水面方向に拡張されている。この負圧領域の 水面方向への拡大は、U 型フレームライン形状の粘性圧力抵抗の増加に関与してい る。CFD シミュレーションによる形状影響係数(1 + 𝑘)の増加率は、V 型フレームライン 形状から U 型フレームライン形状への船型変更で 33CT で 2.9%、82BC で 6.2%であ る。
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Fig. 4.7 Pressure distributions of ship-length directional component at model-scale for 33CT (top: V-type, bottom: U-type (MS No.852)).
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Fig. 4.8 Pressure distributions of ship-length directional component at model-scale for 82BC (top: V-type, bottom: U-type (MS No.842)).
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