2.4. 時間関係算定プロセスによるテンス・アスペクト記述
2.4.1. Reichenbach(1947)、工藤(1995)による時間関係図
2.4.5.2. 状態相
ある。以下では、これらの組み合わせで、各テンス・アスペクトが表す時間関係を記述し ていく。
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2.4.5.
時間関係算定プロセス
ここからは、以上見てきた時間関係算定の基本プロセスを組み合わせることで、「テ イ」と「タ」の有無の組み合わせから生じる時間関係を表記していく。
以下では、まず、「非状態相」の時間関係算定プロセスについて見、次いで、「状態 相」、「完了」の時間関係算定プロセスについて見る。そして、最後に、これらの時間関 係算定プロセスを一般化した規則を示す。
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ここには、動詞に「テイ」が付加されて状態相化されたもの以外にも、名詞述語文や形 容詞述語文、状態動詞が述語となっている文などのいわゆる状態性述語も含まれる。
2.4.3.2で見たように、状態相は、[te, tr, ts]の3つのtから成り、状態相と時制の組み合わ せは、この3つのtの以下のような関係を表している。
(111) 状態相:
teがtrを含む。
(112) 状態相の時制:
a. 過去:trがtsに先行する。
b. 未来:tsがtrに後続する。
c. 現在:trがtsを含む。
このように、状態相の場合、「te~tr」関係と「tr~ts」関係から成り立っている。まずは じめに、「te~tr」関係が算定される。この関係は、(111)にある通り、「含む」関係なの で、(113)のように示される。
(113)
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次に、「tr~ts」関係が算定される。この関係は、(112)のa〜cにある通り、3種類があり 得る((114))。
(114)
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以上の2つの算定の流れをまとめて表すと、(115)のようになる。以下の図は二つの算定 プロセスから成り立っているが、上で見た一つ目の算定プロセス((113))が、下段に示され たもので、二つ目の算定プロセス((114))が、上段に示されたものである。二つの算定プロ セスの間にある点線(矢印)は、下段の算定プロセスが終了した段階で、上段の算定プロセ スに進むことを示している。
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true
false te が tr
に先行する true
false を含む
true(過去状態) false(未来状態) tr が ts
に先行する true(現在状態) false
を含む
(115)
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以上のように、「状態相+時制」のように3つのt(te, tr, ts])の間の2つの関係(te~tr, tr~ts) を表すものの場合、算定処理は上下二段の2階建て構造になる。ただし、算定の流れ自体 は1階目も2階目は同じで、算定対象となるtが入れ替わっている (1回目はteとtrで、2回目 はtrとts) だけである。言い換えると、算定対象となるtだけが入れ替わり、同じ算定処理 が2度繰り返されていることになる。
以上が、状態相の時間関係算定プロセスである。
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2.4.5.3.
完了
ここでは、完了の時間関係算定処理について見る。
2.4.3.3で見たように、完了も状態相同様、[te, tr, ts]の3つのtから成り、完了と時制の組 み合わせは、この3つのtの以下のような関係を表している。
(116) 完了:
teがtrに先行する。
(117) 完了の時制:
a. 過去:trがtsに先行する。
b. 未来:trがtsに後続する。
c. 現在:trがtsを含む。
このように、完了の場合も「te~tr」関係と「tr~ts」関係から成り立っている。まずはじ めに、「te~tr」関係が算定される。この関係は、(116)にある通り、「先行する」関係な ので、以下の(118)ように示される。
(118)
!
true(過去状態) false(未来状態) tr が ts
に先行する true(現在状態) false
を含む
true
false te が tr
に先行する true
false を含む
true false te が tr
に先行する true
false を含む
次に、「tr~ts」関係が算定される。この関係は、(117)のa〜cにある通り、3種類があり 得る。((119))
(119)
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以上の2つの算定の流れをまとめて表すと、以下の(120)のようになる。状態相の図と同 様に、上で見た一つ目の算定プロセス((118))が、下段に示され、二つ目の算定プロセス ((119))が、上段に示されている。
(120)
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以上のように、「完了+時制」の場合も、状態相の場合同様に算定処理は2階建てにな る。ここでも、算定対象となるtだけが入れ替わり、同じ算定処理が2度繰り返されている ことがわかる。
以上が、完了の時間関係算定プロセスである。
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2.4.5.4.
時間算定処理の一般化
ここまで、非状態相・状態相・完了のそれぞれの時間関係を算出する時間関係の算定プ ロセスについて見てきた。上ではこれらの算定プロセスを個別に見てきたが、ここでは、
このこれらの算定プロセスを一般化した形で表すことで、テンス・アスペクトの組み合わ せで表される時間関係が非常にシンプルな算定プロセスの組み合わせによって成り立って いることを示したい。
まず、テンス・アスペクトの表す時間関係を、改めて、各tの連鎖として捉え直したい。
既に見たように、テンス・アスペクトの表す時間関係は二つのtの間の関係の組み合わせ である。状態相や完了のように3つのtの間の時間関係を表しているものであっても、実際 に表しているのは「teとtrの関係」と「trとtsの関係」という二種類の関係である。このよ
true(過去完了) false(未来完了) tr が ts
に先行する true(現在完了) false
を含む
true(過去完了) false(未来完了) tr が ts
に先行する true(現在完了) false
を含む
true false te が tr
に先行する true
false を含む
うな関係を「te~tr~ts」と記述し、これを算定対象時間の連鎖として捉える。そうすると、
非状態・状態・完了の各場合において、算定対象時間の連鎖は次の(121)のようになって いる。
(121) a. 非状態相: te ~ ts b. 状態相 : te ~ tr ~ ts c. 完了 : te ~ tr ~ ts
非状態は「te~ts」の関係を表すので、(121a)のように、状態相は「te~tr」の関係、「tr~ ts」の関係を表すので、(121b)のように表せる。完了については、状態相同様なので、
(121c)のように表せる。ここで、例えば、「te~tr」などと書いたとしても、teがtrよりも時 間的に先だということを表しているわけではないことに注意されたい。これは、あくまで も、「teとtrの関係」という意味を表しているに過ぎない。
これを、表にすると、次のようになる。
(122)
!
!
ここで、それぞれの場合において、左側のtから「t1、t2、t3...」のように、tと数字の組 み合わせで表すと、非状態相の場合、「te=t1」「ts=t2」となり、状態相と完了の場合は
「te=t1」「tr=t2」「ts=t3」となる。これは、次のような表で示せる。
(123)
!
!
そうすると、上で見た、非状態相・状態相・完了の各時間関係算定図は、次のように書 き直せる。
まず、非状態相の場合、(124)のようになる。(123)の表の通り、t1がteを表し、t2がtsを 表す。また、上で「teとts」の関係として表されていた部分((124b)の四角内)が、「t1と
算定対象のtの連 鎖
非状態相 te 状態相 te
完了 te
t t t 非状態相 t t
状態相 t t t
完了 t t t
t2」の関係に変わっている。
(124) a.
b.
!
状態相の場合は、(125)のようになる。(123)の表の通り、t1がteを表し、t2がtrを、t3がts を表す。また、上の図(115)では、下段は「teとtr」の関係として表されていたが、それが
「t1とt2」の関係に変わっており、上段は「trとts」の関係として表されていたが、それが
「t2とt3」の関係に変わっている。
(125) a.
! !
b.
完了の場合、(126)のようになる。状態相同様に、(123)の表の通り、t1がteを表し、t2が trを、t3がtsを表す。また、上の図(120)では、下段は「teとtr」の関係として表されていた が、それが「t1とt2」の関係に変わっており、上段は「trとts」の関係として表されていた が、それが「t2とt3」の関係に変わっている。
t t t t
true(過去非状態) false(未来非状態) t1 が t2
に先行する true
false を含む
t t t t t t
true(過去状態) false(未来状態) t2 が t3
に先行する true(現在状態) false
を含む
true
false t1 が t2
に先行する true
false を含む
(126) a.
b.
!
以上のように、「te, tr, ts」を「tn」(nは数字)の形で一般化することによって、テンス・
アスペクトの表す時間関係の算定プロセスは、次のように一般化できる。
まず、算定処理の回数について、非状態相のフローチャートが1階建てとなっており、
状態相と完了のフローチャートが2階建てとなっていることからも分かる通り、非状態相 は1回の算定処理、状態相と完了は2回の算定処理がなされていることが分かる。これ は、非状態相の場合にはtが2つしかなく、状態相と完了の場合にはtが3つあるということ と関係している。それぞれの階層は「tと次のt」との関係を表すものであるため、この関 係は「tの総数-1」となる。このため、処理の回数(=階層の数)は「tの総数-1」となる。
また、1階層目(下段)はt1とt2の関係を、2階層目(上段)(がある場合)はt2とt3の関係を算定 しているが、これは、言い換えると、階層が上がる度に「tn」の「n」の部分が、1ずつ加 算されているということである。
なお、1階層目が「t1」から始まることからわかるように、「n」の初期値は1である。
これをまとめると、次のようになる。
! !
! !
! !
t t t t t t
true(過去完了) false(未来完了) t2 が t3
に先行する true(現在完了) false
を含む
true false t1 が t2
に先行する true
false を含む
(127) 処理:
(128) a. nの初期値は1である。
b. 「tの総数-1」回処理を繰り返す。
c. 処理が次の段階に入る時、nに1を加算する(n=n+1)。
この式に、[te, ts]を代入すると、非状態相の時間関係((124))が得られ、[te, tr, ts]を代入 すると、状態相((125))、及び完了((126))の時間関係が得られることになる。(teがtrを含む 場合は「状態相」で、teがtrに先行する場合は「完了」)
このように見ると、「状態/非状態」「完了/非完了」「過去/現在/未来」の組み合わせ の表す時間関係は、非常に単純な算定処理の繰り返しにより、得られることが分かる。な お、ここでは2階建て構造までの処理について見ているが、次章で見るように、3階建て 構造になる場合も存在する 。しかし、この場合であっても、この処理の繰り返しである24 ことには変わりがない。