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2.4. 時間関係算定プロセスによるテンス・アスペクト記述

2.4.6. 形態との対応

(127) 処理: 

   

(128) a. nの初期値は1である。 

b. 「tの総数-1」回処理を繰り返す。 

c. 処理が次の段階に入る時、nに1を加算する(n=n+1)。 

この式に、[te, ts]を代入すると、非状態相の時間関係((124))が得られ、[te, tr, ts]を代入 すると、状態相((125))、及び完了((126))の時間関係が得られることになる。(teがtrを含む 場合は「状態相」で、teがtrに先行する場合は「完了」) 

このように見ると、「状態/非状態」「完了/非完了」「過去/現在/未来」の組み合わせ の表す時間関係は、非常に単純な算定処理の繰り返しにより、得られることが分かる。な お、ここでは2階建て構造までの処理について見ているが、次章で見るように、3階建て 構造になる場合も存在する 。しかし、この場合であっても、この処理の繰り返しである24 ことには変わりがない。 

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(129)

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このような観点から見ると、非状態相・状態相・完了と時制のそれぞれの組み合わせ は、「テイ」と「タ」の有無から、次のように示すことができる。 

(130)

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このような形態の組み合わせが、上で見た時間関係図・及び時間関係算定図とどのよう な規則で対応しているのかが説明される必要がある。以下では、対応規則について見てい く。 

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2.4.6.2.

時間関係と形態との対応関係 

以下では、まず、「テイ」の有無と意味との対応規則について見、次いで、「タ」の有 無と意味との対応規則について見る。 

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2.4.6.2.1.

「テイ」の<時間関係-形態>対応規則 

まず、「テイ」という形態と、意味との対応規則について見る。 

ここで言う「意味」とは、時間関係のことを表す。では、「テイ」はどのような時間関 係の場合に付加されるのだろうか。 

「テイ」なし 「テイ」あり

「タ」なし スル シテイル

「タ」あり シタ シテイタ

「テイ」 「タ」 形態

非状態相 過去 ○ シタ

未来 スル

状態相

過去 ○ ○ シテイタ

未来 ○ シテイル

現在 ○ シテイル

完了

過去 ○ ○ シテイタ

未来 ○ シテイル

現在 ○ シテイル

「テイ」が使われるのは、状態相と完了の場合である。2.4.2.2.2〜2.4.2.2.3で見たよ うに、この二つの共通点として、「trをもつ」という点、即ち、「teとts以外のtをもつ」

という点がある。従って、このようなt(=tr)を持つのであれば、「テイ」が付加され、そ うでなければ、「テイ」が付加されない、という一般化が可能である。(ただし、名詞述 語文や形容詞述語文、状態動詞が述語となっている文などは、そのままの形で「テイ」が 付加された後の意味(=状態)と同様の意味をもっているため、「テイ」は付加されない。)  (131) 「テイ」の付加条件:「teとts以外のt」が設定されている場合、「テイ」が付

加される。(ただし、動作性の動詞の場合のみ) 

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2.4.6.2.2.

「タ」の<時間関係-形態>対応規則 

次に、「タ」という形態と、時間関係との対応規則について見る。 

「タ」が使われるのは、(i)非状態相の場合は、「teがtsに先行する」関係である場合、

(ii)状態相の場合は、「teがtrに先行する」関係である場合、(iii)完了の場合は、状態の場 合同様に、「teがtrに先行する」関係である場合、である。 

このように見ると、「タ」が付加されるのは、「tsのひとつ前のtがtsに先行する」関係 の場合であると一般化できる。例えば、非状態相の場合、「tsのひとつ前のt」は「te」で あるので、これが「ts」に先行する場合、「タ」が付加される。また、状態相と完了の場 合は、「tsのひとつ前のt」は「tr」であるので、これが「ts」に先行する場合、「タ」が 付加される。 

従って、「タ」の付加条件は次のように一般化できる。 

(132) 「タ」の付加条件:tsのひとつ前のtがtsに先行する場合、「タ」が付加され

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る。 

2.4.6.3.

時間関係と形態との対応規則、及び、「テイ」と「タ」の意味 

以上で見た、時間関係とテンス・アスペクト表現(「テイ」及び「タ」)との対応規則を まとめると、次のような2つの規則(形態規則A・形態規則B)にまとめられる。 

(133) 時間関係と形態の対応規則 

a. 形態規則A:「teとts以外のt」がある場合、「テイ」を付加せよ。 

b. 形態規則B:tsのひとつ前のtがtsに先行する場合、「タ」を付加せよ。 

このような一般化でもって、上で見た状態相・非状態相・完了と時制の組み合わせにお ける、形態と時間関係との対応関係を全て説明することができる。 

また、このような「意味-形態」の対応関係は、見方を変えると、それぞれの形態がどの ような意味を表しているのかを示すものともとれる。即ち、「テイ」と「タ」のもつ意味

(時間関係)は、次のように示せる。 

(134) a. 「テイ」の意味: 

teとts以外のtが存在する。 

b. 「タ」の意味 : 

tsの一つ前のtが、tsに先行する。 

これは、「意味-形態」の対応規則を異なる言い方で言い換えただけだが、「テイ」や

「タ」の意味を一般化できるという点で重要である。 

まず、「テイ」について見る。これまで、「状態」と「完了」という、全く異なるよう に見える二つの意味を持っているという点についての原理的な説明はなされてこなかっ た。しかし、ここで示されたように、「状態」と「完了」は出来事時(te)と発話時(ts)を直 接結びつけるのではなく、別の設定時(tr)を介して結びつける、という点において共通して いる。つまり、「テイ」は、出来事と発話時との間に、別の設定時が介されている、とい うことを意味するのだと言うことができる。 

一方、「タ」は発話時と、一つ前のtとの時間関係を表すものだということが言える。

既に述べたように、出来事時(te)と発話時(ts)の関係は必ずしも「タ」の有無に関わらな い。例えば、完了の場合、「te」は「tr」に先行するという関係をもつが、このことは、

「タ」が付加される理由とはならない。「タ」の有無は、あくまでも発話時(te)と一つ前 のtとの時間関係を表すのであり、完了の場合、「一つ前のt」というのは「tr」のことで ある。このように、「タ」は発話時と一つ前のtとの時間関係が先行関係であるか否かを 表すものである。 

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2.5.

まとめ 

以上、「テイ」「タ」の二組の二項対立が、「状態/非状態」と「時制(過去/現在/未 来)」の組み合わせで5種類の意味を、「完了」と時制の組み合わせを加えると8種類の意 味を生み出すプロセスについて見てきた。 

まず、「状態/非状態」と「過去/現在/未来」の組み合わせで5種類の意味が生み出され る((135))という点についてまとめる。「タ」の有無という形態上での「二項」対立が、

「過去/現在/未来」という意味上での「三項」対立に対応するという点については、次の ように説明できる。 

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(135)

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実は、時制は「過去/現在/未来」という三項の対立ではなく、「txがtyを含むか否か」と いう二項対立と、「txがtyに先行するか否か」という二項対立という、二種類の二項対立 から成り立っている。このうち、前者がfalseの場合にのみ後者の対立が成立するため、

計3種類の対立となるわけである。 

「txがtyを含むか否か」という二項対立については、一階層目でこれがtrueであった場 合には必ずtrが存在し、二階建ての構造となっているという点がポイントである。このこ とで、一階建ての場合(即ち非状態相の場合)は「txがtyに先行する」という関係か「txがty に後続する」という2つの時間関係しかあり得ないことが説明される((136))。 

(136) [te, ts

   

一方、内部視点(tr)をもつ状態相の場合は、一階層目で「txがtyを含む」関係になるの で、必ず二階層目に進むことになる。そして、ここで、「含む」「先行する」「後続す る」の三通りの組み合わせが可能なため、3つの時間関係があり得ることになる((137))。 

(137) [te, tr, ts

   

以上のことから、「状態/非状態」と「過去/現在/未来」の組み合わせで5種類の意味が 生み出されることになる。 

「完了」については、一階層目で「先行する」関係になっており、かつ、tが3つ存在す 過去時制 現在時制 未来時制

動詞・非状態 過去非状態 未来非状態

動詞・状態 過去状態 現在状態 未来状態

true(過去非状態) false(未来非状態) t1 が t2

に先行する true

false を含む

true(過去状態) false(未来状態) t2 が t3

に先行する true(現在状態) false

を含む

true

false t1 が t2

に先行する true

false を含む

るという点が重要である。tが2つしか存在しない場合、一階層目で「過去非状態(非完 了)」であることが確定するが、この場合はtが3つ存在するので、二階層目に進む。そし て、 ここで、「含む」「先行する」「後続する」の三通りの組み合わせが可能なため、3 つの時間関係があり得ることになる。((138)) 

(138) [te, tr, ts

   

以上のようにして、完了を含めると、計8種類の時間関係が得られる。 

以上の算定過程は、以下のように一般化することができ、このような意味(時間関係)の 算定プロセスと、形態との対応関係は、次のような対応規則で説明できることを見た。 

(139) a. nの初期値は1である。 

b. 「tの総数-1」回処理を繰り返す。 

c. 処理が次の段階に入る時、nに1を加算する(n=n+1)。 

(140) 処理: 

   

(141) a. 形態規則A:「teとts以外のt」がある場合、「テイ」を付加せよ。 

b. 形態規則B:tsのひとつ前のtがtsに先行する場合、「タ」を付加せよ。 

このような単純な処理過程及び対応規則で、二組の二項対立から、8種類の意味が生じ る過程について見てきた。また、次章で見るように、三階建て以上の構造をもつ(3.2.4.3 で見る)ような場合についても、この算定処理及び形態との対応規則で説明が可能であ る。 

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true(過去完了) false(未来完了) t2 が t3

に先行する true(現在完了) false

を含む

true false t1 が t2

に先行する true

false を含む

true false

t

n

 が  t

n+1

に先行する true

false

を含む