1 特 別 支 援 教 育 の 理 念 と 基 本 的 な 考え方
(1) 特別支援教育への転換
平成18年6月、学校教育法等の一部改正 が行われ、平成19年4月1日から施行され ました。これまでの「特殊教育」(障害の種類や程 度等に応じ特別の場で指導を行う)から「特別支援教 育」(一人一人のニーズに応じて、適切な教育的支援を 行う)への転換が、法的に位置付けられました。
また、平成18年12月には、教育基本法 が改正され、その第4条(教育の機会均等)
に、「国及び地方公共団体は、障害のある者 が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受 けられるよう、教育上必要な支援を講じなけ ればならない。」という条文が加えられま した。これにより、すべての学校が「特別支 援教育」の理念を十分に理解し、実践してい くことが求められます。
以下に、特別支援教育の概要と法改正の内 容等を説明します。
(2) 特別支援教育とは
これまで、障害のある児童生徒に対する教 育は、その障害の種別や程度等に応じて「特 別の場」(盲・ろう・養護学校、特殊学級、
通級指導教室)で指導を行う「特殊教育」と されていました。平成17年12月、中教審 から「特別支援教育を推進するための制度の 在り方について」という答申が出されました。
ここでは、平成15年3月「今後の特別支援教 育の在り方について(最終報告)」を踏まえ、
「特別支援教育」の理念を次のように定義し ています。
「特別支援教育とは、幼児児童生徒一人一 人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を 高め、生活や学習上の困難を改善又は克服す るため、適切な指導及び必要な支援を行うも のである。
また、これまで特殊教育の対象となってい た幼児児童生徒に加え、小・中学校において 通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機 能自閉症等の児童生徒に対しても適切な指導 及び支援を行うものである。」
(3) 学校教育法の一部改正
改正のポイントは以下のとおりです。
ア 特別支援学校・特別支援学級
従来の盲・ろう・養護学校が、複数の障害
種に対応した教育ができる「特別支援学校」
となりました。また、従来の「特殊学級」の 名称が「特別支援学級」に変更されました。
イ 特別支援学校の「センター的機能」
特別支援学校においては、在籍する児童生 徒に対する教育を行う他、要請に応じて小・
中学校等に在籍する障害のある児童生徒の教 育に関して必要な助言又は援助を行うことが 規定されました。特別支援学校には、その専 門性を生かしながら地域の幼稚園、小・中学 校、高等学校等を積極的に支援していくことが 法的に定められました。
ウ 幼稚園、小・中学校、高等学校等におけ る特別支援教育
学校教育法第81条第1項において「幼稚 園、小学校、中学校、高等学校・・・におい ては、・・・教育上特別の支援を必要とする 幼児、児童及び生徒に対し、・・・障害によ る学習上又は生活上の困難を克服するための 教育を行うものとする。」と規定されました。
これまでは、障害のある幼児児童生徒の教 育は、特別支援学校や特別支援学級などで行 うものとされていました。しかし、これから は、すべての学校が、障害のある幼児児童生 徒の教育に関わっていかなければならない、
ということが法的に位置付けられたのです。
(4) その他の関連法令の改正
学校教育法の改正に先立ち、学校教育法施 行規則の一部が改正され、平成18年4月から 施行されています。この改正により、通級に よる指導の対象として、新たに「学習障害者」
と「注意欠陥多動性障害者」が加わりました。
また、「自閉症者」は、「情緒障害者」から 独立して別に規定されました。
(5) すべての学校で特別支援教育の推進を 平成19年4月1日付「19文科初第 125号特別支援教育の推進について(通知)」
において、特別支援教育の理念、校長の責務、
特別支援教育を行うための体制の整備及び必 要な取組等が示されました。各学校において は、在籍する児童生徒の実態の把握に努め、
特別な支援を必要とする児童生徒の存在や状 態を確かめることが不可欠です。そして、学 習面、生活面などで何らかの困難さを抱えて いる児童生徒については、どのような支援や 配慮が必要なのかを担任だけで抱え込むので
基本編 Ⅴ 特別支援教育
- 67 - はなく、校内委員会などで、組織的に検討し、
「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」
を作成して、丁寧に対応していくことが重要 です。クラスの中で「困った子」「手のかかる 子」「指導のしにくい子」と捉えるのではな く、その児童生徒自身が「困っている」「何 らかの支援や配慮を必要としている」という 視点で児童生徒に臨むことが特別支援教育の スタートです。
2 児童生徒一人一人の教育的ニーズに 応じた指導
(1) 教育的ニーズの把握
教員は、児童生徒が示している行動の意図 や意味を探り、共感しながら支援をしていく 必要があります。その際に、運動、社会性、
言語、知識などの発達の側面から遅れのある ところだけに焦点を当てるのではなく、本人 が得意なことや好きなことにも着目します。
そこからも有効な支援の手立てが見つかりま す。いろいろな側面から児童生徒の実態を捉 え、支援していくことが大切なのです。
児童生徒一人一人に適切な教育的支援をし ていく上で大切なことは、まずは、児童生徒 の出しているサインやつまずきに気付くこと です。そして、「どのような場面で」「いつ」
「どこで」「どんな問題が」起こるのかを分析 し、学習や生活場面等で見られる児童生徒の つまずきや困難さなどの様子を正確に把握す ることです。サインやつまずきを見逃してし まったために、問題となる行動等につながる こともあります。
学級担任として、教科担任として、児童生 徒の困っている状況をいち早くキャッチし、
一人一人の教育的ニーズに応じた支援をして いくことが重要です。
(2) 学校全体で児童生徒を支援
通常学級に在籍する発達障害を含めた教育 的支援を必要とする児童生徒に適切な支援を 行うには、担任一人でかかわるのではなく、
学校全体で支援していく体制が必要です。そ のために、本県ではすべての公立の幼稚園、
小・中学校、高等学校において、校内委員会 が設置され、特別支援教育コーディネータ ーが指名されています。
「小・中学校におけるLD、ADHD、
高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の 整備のためのガイドライン(試案)」(平成1
6年:文部科学省)では、校内委員会の役割 について次のように示しています。
○ 学 習 面 や 行 動 面 で 特 別 な 教 育 的 支 援 が必要な児童生徒に早期に気付く。
○ 特別な教育的支援が必要な児童生徒の実態 把握を行い、学級担任への支援方策を具体化 する。
○ 保護者や関係機関と連携して、特別な教育的 支援を必要とする個別の教育支援計画を作 成する。
○ 校内の関係者と連携して、特別な教育的 支援を必要とする個別の指導計画を作成する。
○ 特別な教育的支援が必要な児童生徒への 指導とその保護者との連携について、全教 職員の共通理解を図る。また、そのための 校内研修を推進する。
○ 専 門 家 チ ー ム に 判 断 を 求 め る か ど う かを検討する。なおLD、ADHD、高機 能自閉症の判断を教員が行うものではない ことに十分注意すること。
また、特別支援教育コーディネーターの役 割については「学校内の関係者や外部の関係 機関との連絡調整役、保護者に対する相談窓 口、担任への支援、校内委員会の運営や推進 役」と示されています。
担任一人で悩まず、学校全体で児童生徒を 理解し、支援していくことが大切です。
(3) 個別の指導計画等の作成と活用 障害のある児童生徒一人一人の教育的ニー ズに応じた支援を行い、社会で自立できる自 信と力を育む教育を充実するためには、一人 一人の教育的ニーズに応じた計画の作成が大 切です。本人や保護者の願い、障害の状態等 を踏まえて作成することが求められます。
ア 個別の指導計画
一人一人の教育的ニーズを的確に把握し、
学校で適切な教育的支援を行っていくため に、個々の児童生徒について「個別の指導計 画」を作成します。
個別の指導計画の作成に当たっては、児童生 徒の実態を的確に把握し、それに基づき指導目 標を設定し、それらを達成するために必要な指 導内容を取り上げます。指導内容を具体的に設 定する際に、児童生徒の興味に基づき、意欲を 高め、発達の進んでいる側面を更に伸ばせる指 導内容などを取り上げるようにします。また、
学習状況や結果を適切に評価し、個別の指導計 画や具体的な指導の改善に活かすことが大切 です。
基本編Ⅴ 特別支援教育