連続体仮説は 証明不可能: ゲ ーデ ル54 とコーエン55 により,通常の数学で 仮 定され る事実(公理)から 出発し た議論では,この連続体仮説は 肯定も否定も 出来ないことが 示され た.
[補足事項]
ペアノの体系の存在: 定理 6.6に よれば,無限集合はその 真部分集合と 対等な 集合である. このよ うな 無限集合が 存在することを用いて,ペアノの体系の存在が 示せる.
無限集合Xが 存在すれば,全射ではない単射f :X →X が 存在する a∈X\f(X)を 取り,X の部分集合族Aをつぎ のよ うに 定義する:
A={A⊂X|a∈A, f(A)⊂A}. X ∈AよりA=∅なので,N =
Aが 得られ,N ∈Aとなる f(N)⊂N よりf|N :N →N を 得る
このとき, (N, a, f|N)はペアノの公理(N3), (N4), (N5)を 満たす 実際, (N3)と (N4)は明らか
(N5): A⊂N で (i)a∈Aかつ(ii)x∈A⇒f(x)∈Aとすれば, A∈AよりN ⊂A ∴A=N
可算集合と高々可算な集合の和集合は 可算(演習 6.5(2))なので, 任意の n <ℵ0
に 対し て, n+ℵ0 =ℵ0 であり, ℵ0 +ℵ0 = ℵ0 であるが, 一般に つぎ の定理が 成り 立つ.
定理 6.9 濃度m, n に 対し て, mℵ0 かつ nm のとき, m+n =m
注意: ツォルンの補題と呼ばれ る定理が 必要なので,この定理6.9の証明は 後 で与える(7.4 節).
濃度の積: 濃度 m,n の積 mn を,集合 A, B で cardA=m, cardB =n となる ものを取り, つぎ のように 定義する:
mn= card(A×B) 演習 6.9 上の定義が well-definedであることを示せ.
ヒント 定義において,集合A,B の取り方によらずに 濃度mnが 決まることを示せ.
濃度の積に 関し て, 以下の基本的な性質が 成り立つ: (1) m·0 = 0, m·1 = m
(2) mn=nm (3) (mn)p=m(np) (4) (m+n)p=mp+np
(5) mm′, n n′ ⇒mnm′n′
上の (1), (4)は 定義から 自明; (2), (3) も簡単(各自で 確認せよ).
演習 6.10 上記の基本的性質 (5) の証明を与えよ.
定理 6.10 互いに交わらない集合の族 (Aλ)λ∈Λにおいて, card Λ =nかつ各λ∈Λ に 対し て, cardAλ =m のとき,
card
λ∈Λ
Aλ =mn
証明の方針 cardA=mとなる集合を1つ取り,A×Λからcard
λ∈ΛAλへの全単 射を 作る.
上の定理において, Λが 有限の場合を 考えれば, 濃度の和と 積に 関し て, つぎ の 関係が 得られ る:
m+· · ·+m
k個
=mk
可算集合と高々可算な集合の直積は可算(演習 6.5(1))なので,任意の n <ℵ0 に 対し て, nℵ0 =ℵ0 であり,ℵ0ℵ0 =ℵ0 であるが, 一般につぎ の定理が 成り立つ.
定理 6.11 濃度 m, n に 対し て, mℵ0 かつ 1nmのとき, mn =m
注意: 定理6.9と同様に ツォルンの補題が 必要なので,この定理 6.11 の証明 も後で与える(7.4 節).
濃度の巾: 濃度m, nに 対し て, 巾 nを, 集合A, B で cardA=m, cardB =n となるものを取り, つぎ のように 定義する:
n = cardBA
演習 6.11 上の定義が well-defined であることを示せ.
ヒント 定義において,集合A,B の取り方によらずに 濃度nmが 決まることを 示せ. 演習4.3を 参照.
濃度の巾に 関し て, 以下の基本的な性質が 成り立つ: (0) n0 = 1, 0 = 0 (m= 0)
(1) n1 =n, 1= 1 (2) pp =p+ (3) (mn) =mn (4) (p) =p
(5) mm′, n n′ ⇒n n′′
上の (0) は 3.1 節の最後にある「 定義域や終集合が 空集合の場合 」を参照. 上の (1) は 定義から 自明(各自で 確認せよ).
演習 6.12 上記の基本的性質 (2)–(5)の証明を与えよ.
ヒント (2)は A∩B =∅のと き CA×CB∼CA∪Bを 示すことに 帰着. 次の対応を 考えよ:
CA∪B∋f →(f|A, f|B)∈CA×CB
(3)は (A×B)C∼AC×BCを示すことに 帰着. 次の対応を 考えよ: (A×B)C ∋f →(prAf,prBf)∈AC×BC
(4)は(CA)B ∼CA×Bを示すことに帰着. 対応(CA)B∋f →f˜∈CA×Bを考えよ. ここで,写像f˜∈CA×B (f :A×B→C)は f˜(x, y) =f(y)(x)と 定義.
(5)は 全射f :X→Aと 単射g:B→Y が 与えられ たとき,BAからYX への単射 を 作れば よい. 演習4.3を 参照.
定理 6.12 集 合の 族 (Aλ)λ∈Λ に おい て, card Λ = n か つ各 λ ∈ Λ に 対し て, cardAλ =mであれば,
card
λ∈Λ
Aλ =m
証明の方針 cardA=mとなる集合を1つ取り,AΛ からcard
λ∈ΛAλへの全単射 を 作る.
上の定理において, Λが 有限の場合を 考えれば, 濃度の積と 巾に 関し て, つぎ の 関係が 得られ る:
m· · ·m
k個
=mk
定理 6.13 集合 X に 対し て,
cardP(X) = card2X = 2cardX (ここで, 2={0,1})
証明の方針 濃度の巾の定義から,定理3.1に 帰着.
定理 6.14 c= 2ℵ0.
証明の方針 写像ϕ, ψ:{0,1}N→[0,1]をつぎ のようにと定義する: ϕ(f) =
∞
i=1
2−if(i) ; ψ(f) = ∞
i=1
3−if(i).
ϕが全射でψが単射であることを示せば,ベルンシュタインの定理より, card{0,1}N= card[0,1] = cardRが 得られ る.
任意の 2n <ℵ0 に 対し て,
2ℵ0 nℵ0 ℵℵ00 (2ℵ0)ℵ0 = 2ℵ0ℵ0 = 2ℵ0
であるから, 2ℵ0 =nℵ0 =ℵℵ00 となるが, 一般につぎ の定理が 成り立つ: 定理 6.15 濃度 m, n に 対し て, mℵ0 かつ 2nmのとき,
n= 2
演習 6.13 濃度の巾に関する基本的な性質と定理6.8, 6.11, 6.13を用いて,上の 定理 6.15を証明せよ.
ヒント 上に 述べた 2ℵ0=nℵ0 =ℵℵ00 の証明を 参照.
一般連続体仮説: 定理 6.14に よれば, 連続体仮説は ℵ1 = 2ℵ0 とな り, ℵ0 <
m<2ℵ0 となる濃度 mが 存在し ないことを主張し ている. 任意の無限濃度 n に 対し てn<m<2 とな る濃度mが 存在し ないと う主張を一般連続体仮説 [generalized continuum hypothesis] とい う. ゲ ーデ ルとコ ーエンに より, 連 続体仮説と 同じ 意味で, 一般連続体仮説も 肯定も 否定も出来ないことが 示さ れた.
[発展事項]
定理6.10に 関連し て,次が 成立する:
定理 6.16 集合の族 (Aλ)λ∈Λにおいて,各λ∈Λに 対し て, cardAλ mのとき, card
λ∈Λ
Aλ mcard Λ
証明の方針 cardA=mとなる集合Aを 取り, A×Λからcard
λ∈ΛAλ への全射 を 作る.
命題 6.17 X が 無限集合のとき,
n∈Xn は Xに 対等である. 証明の方針 定理6.11と 定理6.10を組み合わせる.
カント ール の 定理 6.8 に よれば, 集合 X の部分集合全体であ る巾集合 P(X) の 濃度 は,X 自身の濃度より真に 大きくなるが,Xが 無限集合であれば, Xの有限部分集合全体 Fin(X)の濃度は X と同じ になる. すなわ ち,次が 成り立つ:
定理 6.18 X が 無限集合のとき, card Fin(X) = cardXである. 証明の方針 写像 ϕ:
n∈NXn →Fin(X)を ϕ(x1, . . . , xn) ={x1, . . . , xn}と 定義 すると,ϕは 全射となる. 一方,自然な単射X ∋x→ {x} ∈Fin(X)が ある.
単射f :X→Y が 存在するとき, cardX cardY であったが,Y が 無限集合の場合に は,つぎ が 成り立つ:
定理 6.19 Y が 無限集合のとき,写像 f :X →Y で,各y ∈Y に 対し て,f−1(y)が 高 々 可算となるものが 存在すならば, cardX cardY となる.
証明の方針 各y ∈Y に 対し て,単射gy :f−1(y)→Nを 取って,ϕ:X→Y ×Nを ϕ(x) = (f(x), gf(x)(x))と 定義すれば,ϕは 単射となる. さらに,定理6.11を 参照.
7 整列集合とツォルン の補題
この章では, 4.3 節で 定義を 与えた 順序集合を 扱 うが, 集合論に おけ る非 常に 重要な 整列集合の概念を 導入する. 自然数に 関する命題を 証明する場合, 帰納法は 非常に 有用であるが,この整列集合においては,帰納法を拡張し た超 限帰納法が 使える. また,数学の様々な分野において 広く用いられているツォ ルン の補題と 呼ばれ る定理を 証明し,これ を 応用し て, “ど んな 集合の上にも 順序を入れて整列集合に 出来る”という整列定理と, 6章で述べた濃度に 関す る定理 6.4, 6.9, 6.11の証明を与え る.