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(乗法の定義)まず,写像α˜:ωω →ωω をつぎ のよ うに 定義する:

∀f ∈ωω, ∀x∈ω, α(f˜ )(x) =α(f(x))(x) =x+f(x)

再帰定理を ωω, c0 ∈ωω (∀x∈ ω, c0(x) = 0)と 上の写像 ϕに 適用し て,つぎ の条件を 満 たす写像 µ:ω →ωω が 一意的に 存在する:30

µ(0) =c0; ∀y∈ω, µ(S(y)) = ˜α(µ(y)) このとき,· :ω×ω→ω x·y =

defµ(y)(x)と定義すれば,つぎ の条件が 満たされ る: (m-i) x·0 = µ(0)(x) =c0(x) = 0,

(m-ii) x·S(y) =µ(S(y))(x) = ˜α(µ(y))(x) =x+µ(y)(x) =x+x·y.

数列の 漸化式に よ る定義: 再帰定理 5.2 に おいて, ω, 0 を それぞれ N, 1 に 置き 換えれ , (N,1,S) に 対する再帰定理が 得られ る. この再帰定理に おいて, W =Rの場合は, f : N → R は 実数列 f(1), f(2),· · · に 他ならな い. すなわ ち, 初項の 値 a1 と 漸化式 an+1=ϕ(an)を 与えることにより,数列 (an)n∈

が 定義できるとい う意味である. 初項 a1 を与え,漸化式を 写像ψ:

n∈Rn→Rによって,an+1 =ψ(a1, . . . , an) と 与 え ることに より, 数列 (an)n∈ を 定義する場合の正当性も再帰定理に よる. 実際, 再帰定 理において,W =

n∈Rn,a1 ∈R⊂

n∈Rnとし,ϕ:

n∈Rn

n∈Rnをつぎ の よ うに 定義され た写像とする:

ϕ(x1, . . . , xn) = (x1, . . . , xn, ψ(x1, . . . , xn)) この場合に 得られ る写像f :N→

n∈Rnf(1) =a1 でつぎ の条件を 満たす: (a1, . . . , an+1) =f(n+ 1) =ϕ(f(n)) = (a1, . . . , an, ψ(a1, . . . , an))

写像 g:

n∈Rn→ R g|Rn= prnと定義する. これらの合成 gf :N→R,漸化式 an+1=ψ(a1, . . . , an) を満たす数列に 他ならない.

演習 5.8 上で 定義し た ∼が ω2 上の同値関係であることを示せ. ただし,ω で は 定義されていない減法は使用不可. 加法に 関する簡約律 (演習 5.2)を参照.

ここでは, (x1, x2)の ∼による同値類を x1, x2と表すが, 実際には,x1, x2が x1−x2 を意味することを念頭におけば, 理解し 易い. 各 x∈ω を x,0 ∈Zと同 一視することにより, ω⊂Zとみなす.33 特に, 0 =0,0, 1 =1,0=S(0),0と 同一視する.

演算: つぎ のように 定義され る Z 上の加法と乗法は, ω 上の演算の拡張であり, これらの演算に 関し て Zは 可換環になる:

x1, x2+y1, y2 =

defx1+y1, x2+y2 x1, x2 · y1, y2 =

defx1y1+x2y2, x1y2+x2y1

ここで,ω 上の演算の拡張であるとい うのは, x∈ωと x,0 ∈Zを同一視し た時, ω において 演算を行った後に 同一視し たものと, 同一視し てから Zにおいて演算 を行ったものが 同じ になるということである. すなわち,

x+y,0=x,0+y,0 ; xy,0=x,0 · y,0

これらは, 簡単な計算により確かめられ るが, これらの演算が well-defined である ことは 証明を要することである.

演習 5.9 Zにおけ る加法が well-defined であること,すなわち, 以下を示せ: (x1, x2)∼(x1, x2), (y1, y2)∼(y1, y2) ⇒ (x1 +y1, x2+y2)∼(x1+y1, x2+y2)

乗法が well-defined であること,すなわち, 以下を示すのは 多少面倒である:

(x1, x2)∼(x1, x2), (y1, y2)∼(y1, y2)

⇒ (x1y1+x2y2, x1y2+x2y1)∼(x1y1 +x2y2, x1y2 +x2y1) 同値関係 ∼ の定義により, 言い換えれば, 以下を示す必要が ある:

(1) x1+x2 =x2+x1, (2)y1+y2 =y2+y1

⇒ (3)x1y1+x2y2+x1y2 +x2y1 =x1y2+x2y1+x1y1 +x2y2

証明の方針 これを 示すのは 多少煩雑. (3)の左辺のそれぞれ の項が 出て来るよ うに, (1) (2)の式を 書き換え, 和を 取って両辺を 比較する.

33Z=N2/と 定義し た 場合には, xω S(x),1Zと 同一視することにより, NZ とみなす. この場合には, 0 =1,1と 定義する.

証明 (1)×y1, (1)×y2, (2)×x1, (2)×x2により,つぎ の4 式を 得る: x1y1+x2y1=x2y1+x1y1, x1y2+x2y2=x2y2+x1y2,

x1y1+x1y2=x1y2+x1y1, x2y1+x2y2=x2y2+x2y1

これら4 式の(右側の2 式は 左辺と右辺を 入れ 替えて)和を 取るとつぎ を 得る: x1y1+x2y1+x2y2+x1y2+x1y2+x1y1+x2y1+x2y2

=x1y1 +x1y2+x2y2 +x2y1+x2y1+x1y1+x1y2+x2y2

下線の部分は 両辺等し いので,簡約律により,両辺から 取り除けて(3)を 得る.

演習 5.10 Zにおけ る加法と乗法の結合律, 交換律および 分配律を証明せよ. 演習 5.11 Zにおけ る加法に 関し て, さらにつぎが 成立することを示せ:34

∀x∈Z, x+ 0 =x ; ∀x∈Z, ∃1−x∈Z such that x+ (−x) = 0

上の2つの演習により Zが 可換環になることが 分かったが, 1 =1,0が 乗法に 関する Zの単位元であることが 簡単な計算により確かめられ る. すなわち,

x, y · 1,0=x, y

演習 5.12 つぎ は Zが 可換環であることから 成立するが, 定義より直接示せ:

∀x, y ∈Z, (−x)y=x(−y) =−(xy) ; ∀x∈Z, x0 = 0x= 0

順序: つぎ のように定義され る Zにおけ る大小関係は, ω におけ る大小関係 の拡張であり,この に 関し て Zは 全順序集合となる:

x1, x2y1, y2

defx1+y2 x2+y1

ここで, ω におけ る大小関係の拡張であるとい うのは, x∈ω と x,0 ∈Z を同一 視し た時, 大小関係が 変わらないとい うことである. すなわち,

xy ⇔ x,0y,0

これは, 定義より明らかであるが,が well-defined であることは 証明を要する. 演習 5.13 上の が well-defined であることを示せ.

演習 5.14 上で 定義し た が Z 上の全順序となることを示せ.

34これから 加法に 関する簡約律が 導かれ る.

演習 5.15 x=x1, x2 ∈Zに 対し て, つぎ が 成立することを示せ: x >0⇔x1 > x2 (x <0⇔x1 < x2)

これ より, つぎ が 成立する:

x >0⇔ −x <0 (x <0⇔ −x >0)

演習 5.16 ω ⊂Z とみなすとき, ω ={x∈Z| x0}となることを示せ. これ より, N={x∈Z|x >0} となる.

演習 5.17 Zにおいて,つぎ が 成立することを示せ:

x < y, z ∈Z ⇒ x+z < y+z ; x < y, z >0 ⇒ xz < yz

ヒント 前半は定義とωにおけ る簡約律(演習5.2)および 演習5.6.

後半は z=z1, z2>0とおけば,uN=ω\ {0} such thatz1=z2+u. 後は, 義と ωにおけ る簡約律(演習5.2, 5.7)および 演習5.6を 適用.

演習 5.18 Zにおいて,つぎ の乗法に 関する簡約律を証明せよ: xz=yz, z = 0 ⇒ x=y

ヒント 対偶を示せ. (演習5.7を 参照)

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