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母語話者、上級話者に対する話しやすさの違い

ドキュメント内 修士学位論文 (ページ 75-78)

5. 本調査について

5.4 意識調査

5.4.6 母語話者、上級話者に対する話しやすさの違い

最後に、Mに対する質問である、「5. 母語話者と非母語話者とを比較して大きな違 いはあったか、あるとすればどのような違いがあったか。」「6. 母語話者と非母語話者 とで話す際に緊張の度合いは違ったか。」の結果を、それぞれ「a. NS相手の方が話し やすい。」「b. 話しやすさはどちらも変わらない。」「c. H相手の方が話しやすい」に分 類し、その理由をまとめると以下のようになった(表37, 38, 39)。

表 37 母語話者相手の方が話しやすいと感じた話者とその理由

話者 理由

MA 母語話者の方が流暢だから話しやすかった。

大学の先生が日本人だったから母語話者の方が緊張しなかった。

MB 知らない部分があったら教えてもらえる。知らなかったら説明してくれ るから話しやすい。

MC 非母語話者相手だとお互い説明しにくい。

母語話者相手の方が教えてくれるから話しやすい MD 発音が母語話者の方が聞き取りやすい。

表 38 話しやすさに違いはなかったと感じた話者とその理由

話者 理由

MF 特に変わらない。どちらも母語話者だと思ったくらいうまかったから関 係ない。

表 39 上級話者相手の方が話しやすいと感じた話者とその理由

話者 理由

ME 非母語話者は文法や語彙の間違いが似ていて理解しやすい。母語話者は その勘がないから単語も難しく、話す速度も速い。

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以上の結果から、緊張の度合いに関しては1名のみがNS相手の方が緊張しないと 答えているが、他の5名はどちらも変わらなかったとしている。そのため相手が母語 話者か非母語話者かによって緊張の度合いに違いがあるわけではないことが分かった。

また、母語話者と非母語話者とでどちらが話しやすいか、という点に関しては、4名 が母語話者の方が話しやすかったと答えた。その理由に着目してみると、「流暢さ」「母 語話者が教えてくれる」が母語話者相手の方が話しやすいと考えられる理由であった。

上記の3つの項目は、いずれも母語話者の方が日本語の能力の面で優れており、それ が話しやすさにつながっていることが推測される。一方で「話しやすさに違いはない」

「H相手の方が話しやすい」ことに関しては、ME、MFそれぞれ1名ずつが回答し ていた。その理由を見てみると「NSとHで話しやすさに違いはない」という意見に に関しては、「どちらも上手だから変わりはない」という回答が得られた。また、「H 相手の方が話しやすい」という意見に関しては、「話す速度が速い」「学習者としての 感覚がないから単語が難しい」という回答が得られた。

この結果を見ると、ファン(1999)、新井(2012)、赤羽(2014)の結果とは異なり、

母語話者相手の方が話しやすい、という意見が多く見られたことがわかる。実際の使 用については、NSとHどちらもコミュニケーション方略を用いて、タスクを遂行し、

その使用が認識されている。また、HはMから「理解しているかどうかわからなかっ た」、という印象を持たれているものの、それは直接的な話しにくさの理由としては挙 げられていなかった。

ここで、一つ言えることは、Mの中にも、「母語話者相手だから話しやすい」といっ た前提が存在している可能性が考えられることである。NSとの意味交渉、Hとの意 味交渉がどちらとも行われている場合であっても、NS 相手の場合、それは問題とは されず、話しにくいとは感じていない可能性がある。以下は情報とり場面における、

NSCとMC、HCとMCのやりとりである。

<NSC―MC>

22 MC //カフェ//に行ったんです、で、うんクラサンとかパンとか食べて、

食べながらはなししてます、たぶん 23 NSC パンと何食べてるんですか?パンと 24 MC クラッサン?

25 NSC クラッサン?

26 MC し、知ってますか?あの、ちょっとなんかこう、ぐるぐる回ってる パン

27 NSC あー、

28 MC くろー、クロワッサン?

29 NSC クロワッサン 30 MC はいはい

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<HC―MC>

9 MC で、後ろのあの、じじい、じじ?

10 HC うん

11 MC じじい

12 HC じ/じい/

13 MC //っていう?//としう、年が多いひと

14 HC まあ年寄り?

15 MC とし、年高い人、めっちゃ年上の人が、ほぼじじいです、

16 HC はい

17 MC じじ、じじが来て、えっと代わりに払います

18 HC あー

19 MC あの、男の代わりに払います、、、であのー、はい、としー、、、

20 HC /おじいちゃん?/

21 MC //ねん、年齢高い//

22 HC おじいちゃん?

23 MC はい、おじいちゃん

1つ目のNSCとMCのやりとりでは、22でMCがクロワッサンの発音が分から ず、23ではNSCが、それを理解できてないことを示し、質問している。その後、MC

は24、26でクロワッサンをもう一度発話する、クロワッサンの説明をするなど、ク

ロワッサンを理解してもらおうと意味交渉を行っている。

同様に、2つ目のやりとりにおいても、MCは、11で「じじい」と発話し、それが 本当に「じじい」であるのかを12でHCが聞き返している。その後、13では「お年 寄り」のことを「じじい」と言うのかをMCがHCに聞いており、それに対し、14で HCは「年寄り?」と確認を行っている。その後、HCが19「年寄り」と発話しよう としたところ、20でHCが「おじいちゃん?」と聞き返し、それに納得し23で意味 交渉が終了している。

ここで見られるのは、MCはNSCとHCどちらに対しても、意味交渉を行い、お 互いに意味が明らかではない単語を理解しようとやりとりを行っている。しかしなが ら、MCは、HCに対しては「説明しにくい」、と答えており、NSCに対しては「話 しやすい」と答えていた。それに関して、MCのなかには前提として「母語話者は何 でも知っている」、「母語話者だから話しやすい」といった前提が存在していたのでは ないかと考える。このことに関して、中級話者の中に、母語話者だから話しやすい、

といった「母語話者信仰」がある場合、そのことが支援者としての非母語話者が地域 に参画していく障害になる可能性がある。これについては次章にて考察することにす る。

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