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情報とり場面

ドキュメント内 修士学位論文 (ページ 60-65)

5. 本調査について

5.3 調査の結果

5.3.2 情報とり場面

これまでは、NS・H が情報を提供する情報やり場面について見てきた。続いて、

NS・H が情報を受け取る場面である、情報とり場面について見ていくことにする。

NS・Hはそれぞれどのような方略を使用して情報を受け取るのだろうか。また、使用 される方略に違いはあるのだろうか。

情報とり場面のコミュニケーション方略の発話カテゴリーおよびその発話機能を以 下に示す(表28)。

表 28 情報とり場面における発話カテゴリーおよび機能

場面 発話カテゴリー 発話機能

情報とり 情報要求 情報要求

共有表明 あいづち

理解表明 意味交渉 母語話者・上級話者自身

の理解促進

自分の理解確認 明確化要求 非母語話者に対する援助 共同発話

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5.3.2.1情報とり場面におけるコミュニケーション方略の使用

以下、情報やり場面と同様に、情報とり場面におけるコミュニケーション方略の使 用数を示す(表29, 30)。

表 29 NSによる情報とり場面におけるコミュニケーション方略の使用数

NSA NSB NSC NSD NSE NSF 合計

情報要求 4 0 0 0 0 0 4 あいづち 6 37 8 36 7 12 106 理解表明 11 11 1 8 0 1 32 自分の理解確認 16 3 7 13 5 5 49 明確化要求 9 0 2 6 2 0 19 共同発話 3 0 0 9 1 0 13 総使用数 49 51 18 72 15 18 221 総発話数 50 52 21 73 19 19 234

表 30 Hによる情報とり場面におけるコミュニケーション方略の使用数

HA HB HC HD HE HF 合計

情報要求 0 0 1 0 0 0 1 あいづち 1 25 11 36 14 13 100 理解表明 1 5 2 3 2 6 19 自分の理解確認 5 7 4 18 2 7 43 明確化要求 1 3 4 5 1 2 16 共同発話 0 1 3 1 1 3 9 総使用数 8 43 25 63 20 31 190 総発話数 8 41 28 66 21 32 196

以上の結果からみると、情報とり場面においては、総使用数にNSとHとで差はあ まり見られないものの、予備調査で顕著な差が見られた共同発話においては、NS は 3名のみ使用しているのに対し、HはHA以外の5名が使用していた(表31)。

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表 31 共同発話の使用数/総発話数

NS 割合 H 割合

A 3/50 6.1% 0/8 0.0%

B 0/52 0.0% 1/41 2.4%

C 0/21 0.0% 3/28 10.7%

D 9/73 12.5% 1/66 1.5%

E 1/19 6.7% 1/21 4.8%

F 0/19 0.0% 3/32 9.4%

合計 13/234 5.8% 9/196 4.6%

ここで共同発話の使用数について見てみると、総使用数はNSの方が多いものの、

全13回のうちNSDが9回と、NSDの使用が他の話者と比較してかなり多く、NS による共同発話の使用には個人差があると考えられる。

次に、実際の発話に現れた共同発話を見てみると、NSとHで共同発話の性質が異 なることが確認された。そこで、共同発話がいつ使用されるのかを分類し、再度集計 を行う。

< 援助要求の度合い別共同発話の使用数 >

栁田(2011)では、共同発話に関して、対話者の援助要求の度合い別に分類してい る。以下が援助要求の度合いの分類である。

援助要求の度合いの分類

(1)援助要求度高:「何と言うんですか」など、中級話者から発話困難が明確に提示 される。

(2)援助要求度中:「なんか」や確認を求める上昇イントネーション、言い淀み、沈 黙などによって非母語話者から発話困難と思われる状態が提示される。

(3)援助要求なし:援助要求発話がない状態で、母語話者・上級話者が非母語話者の 発話を引き取って完成させようとする。

(栁田2011, p.62)

この分類に従い、援助要求の度合いごとに使用される共同発話を集計したのが以下の 表である(表32, 33)。

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表 32 NSによる援助要求度の度合い別共同発話の使用数

援助要求度の度合い NSA NSB NSC NSD NSE NSF 計 高 0 0 0 2 0 0 2 中 0 0 0 3 0 0 3 なし 3 0 0 4 1 0 8 合計 3 0 0 9 1 0 13

表 33 Hによる援助要求度の度合い別共同発話の使用数

援助要求度の度合い HA HB HC HD HE HF 計 高 0 0 0 0 0 2 2 中 0 1 3 0 0 1 5 なし 0 0 0 1 1 0 2 合計 0 1 3 1 1 3 9

そこで、援助要求あり、援助要求なしとに分類し、全体の使用数を再度集計したと ころ、以下のようになった(表34)。

表 34 全体での援助要求の度合い別共同発話の使用数 援助要求度の度合い NS H

使用数 使用数

あり 5 7

なし 8 2

合計 13 9

この結果から考えられることは、NS は、相手の援助要求がない場合であっても相 手の発話を引き取って発話を行う傾向があるのに対し、Hは、相手の援助要求があっ た際にのみ、つまり、相手が言い淀んだり言葉を探している場合においてのみ共同発 話を行う傾向があることである。

<NSによる共同発話>

24 MD あー、安心すると

25 NSD うん

26 MD 違った姿です

61 27 NSD お?違った姿?

28 MD あ、安心す、安心する

29 NSD うーん、安心して、ちょっと、あえ表情が、/なんか/

この場面では26のMDの説明をNSDが理解できず、27でNSDが聞き返してい る、その後28ではMDが説明しようとしているが、すぐに、NSDが発話を完成させ ようとする。このような、相手の言い淀みなどの発話困難を待たずに相手の発話を引 き取り完成させる発話がNSには多く見られた。

一方で、Hの発話は、相手の言い淀みや発話困難があると察知した時に共同で発話 を行う様子が見られた。

< Hによる共同発話の例 >

27 MF なんか、その彼女は

28 HF うん

29 MF なんか、どういうの、アイ?は 30 HF あい?

31 MF あなんか 32 HF うれしい?

ここでは、HF が絵に出てくる女性の様子を伝えようとしているが、目の日本語が 分からず、「アイ」と言い、31では、何かを言おうとして言い淀んでいる。その後32 で、うれしい?と HF が聞き、発話を完成させようとしている。このように、「なん か」や沈黙の後に単語や文を発話して、発話を完成させる傾向がHには見られた。

以上の結果は、栁田(2011)においても指摘されているが、NSが相手の発話を引 き取る発話である、「引き取り発話」(堀口1997)を用いることによって、学習者の発 言する機会を減らしてしまう可能性があることを示唆している。一方で、Hによる相 手の発話困難を察知して行う共同発話の使用は、学習者の発言する機会を損なうこと なく、円滑にやりとりを遂行していけることを示唆しているといえる。

この結果は、地域日本語教育においても、学習者の自律(青木2008)を促し、日本 語の産出の機会を減らすことなく学習を行える点で日本語非母語話者が日本語支援す るメリットを示すものであるといえる。また、この日本語非母語話者が自らが学習者 であった経験を生かし、相手が言いたいこと、相手の発話困難を察知して支援を行っ ていける可能性を示唆しているといえる。

5.3.2.2情報とり場面のまとめ

これまで、情報とり場面における、日本語母語話者と上級話者のコミュニケーショ ン方略の差異についてみてきた。そこでは、使用される方略の使用数自体に大きな差

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異は見られないものの、共同発話が使用される場面に違いが見られた。

日本語母語話者は、共同発話を相手の援助要求がなくても使用し、相手の発話を引 き取るのに対し、上級話者は、相手の発話困難を察知した時にのみ共同発話を使用す る傾向が見られた。このことは、上級話者が、自らが日本語学習者であった経験を生 かし、相手の発話困難を察知し、相手の発話機会を損ねることなく支援を行っていけ ることを示唆しているといえる。

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