第 3 章 石灰石骨材のすべり抵抗に関する検討
3.3 室内試験による検討
3.3.1 母岩による検討
30
31
に用いた試料は表3-3-1に示す通りである。LA~LCは産地とロサンゼルスすりへり減 量が異なる試料であり、LD1、LD2は産地が同じでドロマイト含有率の異なる試料であ る。また、比較のため硬質砂岩についても試験を行なった。ただし、LA~LCについて は、鉱山からのミルシート上ではロサンゼルスすりへり減量が24±4の範囲に分布して いたが、入手した骨材にて測定したところ、表3-3-1に示すように、24±1と殆ど差が認 められなかった。よって、試験結果からは産地の違いのみを考察し、ロサンゼルスす りへり減量は同じ試料として扱うこととした。
また、LD1のドロマイト含有率は約90%と多く、これは分類上石灰石の区分から外 れ高品位ドロマイトの区分になるが、LD1とLD2は同じ鉱脈から採取されており、LD1 が骨材として出荷させる可能性も考えられることから、そのまま試験に供することと した。
(3)試験方法
試験は、ノーマルタイヤを使用した回転ラベリング試験を行なった。回転ラベリン グ試験とは、供試体を載せた円盤を回転させ、そこに同じく回転したタイヤを載荷す ることにより、車両の通過を再現し舗装のすり減り量を測定する試験方法である。本 研究では、ノーマルタイヤの摩り磨き効果による供試体のすべり抵抗減少を評価する ために、ノーマルタイヤを用いて試験を行なった。なお回転ラベリング試験は、既往
試験条件 設定値
タイヤ種類 ノーマルタイヤ タイヤ荷重(KN) 1.2
タイヤ回転速度(km/h) 30 供試体回転速度(km/h) 25 散水量(L/min) 2 試験室温度(℃) 20
表3-3-2 回転ラベリング試験条件
写真3-3-1 回転ラベリング試験機
32
の研究においても、骨材やアスファルト合材、コンクリートのすべり抵抗を評価する 場合に多く用いられた試験方法である。
試験条件(表3-3-2)は既往の検討を参考に、タイヤと供試体の回転速度に差を付け、
常に供試体にタイヤによる摩り磨き作用を与えるような条件とした。ただし、本検討 では既往の検討と異なり、すり減りを促進するための粉ヤスリの散布を行なわない。
すり減り促進のために粉ヤスリを散布した場合、粉ヤスリの粒度や散布量によって試 験結果が異なることが既往の検討より示されている。既往の検討では、路肩の粉塵の 粒度と粉ヤスリの粒度をそろえて試験を行なっているが、実際の路面には粉ヤスリや 粉塵は存在しないため、ノーマルタイヤの影響のみを評価することが適当であると考 えられる。試験中は適宜供試体のBPN及び表面形状の測定を行なった。各測定は供試 体上のタイヤ通過回数0回、4500回、9000回、18000回、27000 回、45000回、63000 回、90000回、116000回、143000回、170000回時点で実施した。表面形状は水平方向
100µm、鉛直方向 100µm の分解能をもつ、レーザー式の表面形状計にて測定し、測定
結果よりMPDを算出し評価した。MPDの算出は、わだち部のみを対象とした。
供試体は写真 3-3-2 に示すように、100mm×150mm 程度に切断した母岩平板の周り をジェットモルタルで充填し、短辺214mm、長辺321mm、奥行き200mm、厚さ50mm の台形供試体に成形した。供試体は養生終了後にショットブラスト処理し、母岩表面 のBPNを60以上に調整した後に試験に供した。ショットブラストとは、写真3-3-3に 示すような鉄球を高速で供試体表面に投射し、表面を粗す処理である。舗装分野にお
いては、路面のすべり抵抗回復のために用いられる処理方法である。
(4)試験結果
表3-3-3にLA、LB、LC、硬質砂岩の試験結果を示し、図3-3-1に試験開始から終了 までのBPNの推移を、図3-3-2にMPDの推移を示す。試験は供試体のBPNが一定に なるまで実施する事としたため、供試体上タイヤ通過回数約17万回まで行なった。結 果として、石灰石3種の試験終了時のBPNは平均で15であり、平均値からのばらつき
写真3-3-2 ラベリング供試体 写真3-3-3 ショットブラスト鉄球
33
は±1程度と産地による差は認められなかった。硬質砂岩のBPNは25と石灰石と比較 して高い傾向が認められた。また、MPD の結果はすべり抵抗性(BPN)との関連性は 認められなかった。既往の研究では、BP Nは表面のミクロテクスチャと関係性が高い とされている。ミクロテクスチャはPIARCの指標では、500µm~1µmの範囲の凹凸で あり、分解能100µmの装置では評価が困難であったと考えられる。よって、今後の検 討においては表面形状の測定は行なわないこととした。
図3-3-1 回転ラベリング試験中のBPNの推移(産地及び岩種の検討)
図3-3-2 回転ラベリング試験中のMPDの推移
34
表3-3-3母岩による回転ラベリング試験結果(LA、LB、LC、硬質砂岩)
BP N M P D ( mm ) BP N M P D ( mm ) BP N M P D ( mm ) BP N M P D ( mm ) 0 68 0. 80 67 0. 99 72 0. 83 61 0. 43 4500 27 0. 57 29 0. 73 32 0. 51 38 0. 38 9000 26 0. 60 27 0. 82 28 0. 68 35 0. 39 18000 25 0. 70 27 0. 78 30 0. 71 35 0. 38 27000 24 0. 58 26 0. 77 27 0. 59 34 0. 35 45000 22 0. 51 24 0. 73 25 0. 55 32 0. 36 62000 20 0. 82 21 1. 05 22 0. 92 31 0. 48 90000 17 0. 64 19 0. 77 20 0. 68 28 0. 35 116000 15 0. 76 16 0. 88 16 0. 75 28 0. 40 143000 15 0. 75 16 0. 99 17 0. 78 25 0. 36 170000 14 0. 70 15 0. 94 16 0. 75 26 0. 43 LC 硬質砂岩 タイヤ通過回数 (回)
LA LB
35
表3-3-4及び図3-3-3にドロマイト含有率の異なるLD1、LD2の試験結果を示す。LD1、
LD2の試験は、LA~硬質砂岩の試験とバッチが異なり、試験タイヤは同じものを続けて使 用した。試験はLA~硬質砂岩の試験と同様に車輪通過回数17万回まで行なった。試験終 了後、試験タイヤを確認したところ、写真3-3-4に示すように試験タイヤが相当摩耗してい たため、トレッドパターンがまだ残っている別の中古タイヤに交換し25.8万回まで追加試 験を行った。
タイヤを交換した結果、BPN は急に低下したため、本試験方法ではタイヤのコンデ ィションが、試験結果に影響することが明らかとなった。LA~硬質砂岩の試験は新品 に近い中古タイヤを使用しているが、17 万回時点で交換したタイヤは、このタイヤと 比較して摩耗が進行したものを使用しているため、LD1、LD2の試験結果をLA~硬質 砂岩の試験結果と比較することは適切ではない。よって、LD1、LD2の結果のみを比較 することとした。なお、これ以降の回転ラベリング試験によるすべり抵抗の検討結果 は、同じ試験バッチにおける試験結果のみを比較し、試験タイヤは常に新品を使用す る事とした。
ドロマイト含有率が異なる母岩の試験終了時のBPN は、平均値±1 と含有率の多少 に関わらず、ほぼ同じ結果となった。よって、石灰石のすべり抵抗はドロマイト含有 率に影響されないことが示された。
写真3-3-4 試験タイヤ(左は新品、右が17万回時点のタイヤ)
36
表3-3-4 母岩による回転ラベリング試験結果(LD1、LD2)
LD1 LD2
0 62 66
4500 39 40
9000 37 39
18000 33 35
27000 34 37
45000 32 34
62000 33 35
90000 31 33
116000 31 32
143000 31 33
170000 28 30
179000 25 25
205000 23 22
232000 23 22
260000 24 23
タイヤ通過回数
(回)
BPN
0 10 20 30 40 50 60 70 80
0 10 20 30
BPN
タイヤ通過輪数 (10 ⁴回 )
LD1( ドロマイト多 ) LD2( ドロマイト少 )
タイヤ交換
図3-3-3 回転ラベリング試験中のBPNの推移(ドロマイト含有率の検討)
37 3.3.2 石灰石と砂岩のすべり抵抗差の原因