軸角Σが 90 度、ねじれ角= 45 度のねじ歯車の歯に 働く力を図 12.7 に示します。
2. 歯面間にておこる、ころがり摩擦及びすべり摩 擦損失による温度上昇をおさえること。
つまり、歯車を冷却することです。
この2つを満足できるように、歯車の潤滑法と、潤 滑油の種類を選定し、歯車の潤滑故障を防がなければ なりません。
13.1 歯車の潤滑法
歯車の潤滑法を大別すると次の3つに分類できます。
(1) グリース潤滑法 (2) はねかけ潤滑法(油浴式)
(3) 強制潤滑法(循環給油方式)
これらは、歯車の使用条件によって適当に選定する 必要があります。選定の基準となるのは、主に歯車の 周速度(m/s)及び回転数(rpm) です。
上の潤滑法をこの周速度の高低で分類すると、低速 ではグリース潤滑法、中速でははねかけ潤滑法、高速 では強制潤滑法を使用するのが一般的です。しかし、
これはあくまでも目安であって、たとえばかなりの周 速度の範囲まで、メンテナンスなどの理由により、グ リース潤滑法を使用することもあります。
表 13.1 には、この3つの潤滑法による周速度範囲の 目安を示します。
低速、軽荷重の歯車では、グリース潤滑でも可能で すが、特に開放型での使用においては定期的なグリー ス補給が大切です。
潤滑油は、長期間使用すると劣化したり、油量が減 少しますから、定期的にチェックして交換又は補充が 必要です。油切れ及び不適切な潤滑油の使用は、歯面 の焼付き、かじりなどの歯面損傷の原因になります。
高速、重荷重にて使用する歯車、及び摩耗しやすい ウォームギヤ、ねじ歯車においては、潤滑油の種類、量、
及び潤滑方法の選定には、十分注意してください。特 に潤滑油の選定は、重要です。
次にこの3つの潤滑法について、簡単に説明します。
(1)グリース潤滑法
このグリース潤滑法は、開放歯車及び密閉歯車箱に おいて、その周速度が比較的に低速である場合に使わ れます。
グリース潤滑法において注意しなければならない問 題点はいろいろありますが、ここには3つ示します。
◎適切なちょう度のグリースを選定する。
特に、密閉歯車箱においては、グリースが有 効に働くように、流動性のよいものが適してい ます。
◎高負荷、連続運転には不向きです。
グリースには油ほどの冷却効果はありません から、高負荷、連続運転に使用した場合、温度 上昇が問題になることがあります。
◎適量のグリースを使う。
グリースは少なすぎれば、潤滑効果は期待で きません。反対に、密閉歯車箱において、封入 するグリースが多すぎると、かくはん損失が大 きくなります。
13 歯車の潤滑
表 13.1 -① 平歯車及びかさ歯車の周速度範囲(m/s
) No.1 2 3
潤 滑 法 グリース潤滑法 はねかけ潤滑法 強 制 潤 滑 法
周 速 度 v(m/s)
←───────→
←───────────
0 5 10 15 20 25
表 13.1 -② ウォームギヤのすべり速度範囲 No.
1 2 3
潤 滑 法 グリース潤滑法 はねかけ潤滑法 強 制 潤 滑 法
周 速 度 vs(m/s)
0 5 10 15 20 25
│ │ │ │ │ │
←─→
←───→
←─────────────
(2)はねかけ潤滑法(油浴式)
このはねかけ潤滑法は、歯車箱にためた潤滑油を、
歯車の回転によりはね飛ばして、その油によって歯車 とか軸受を潤滑する方法です。低速でこのはねかけ潤 滑法を使う場合は、周速度 3m/s 以上であることが望ま しいです。
はねかけ潤滑法(油浴式)において、注意しなけれ ばならない問題点はいろいろありますが、ここでは油 面の高さと歯車箱の限界温度について説明します。
① 油面の高さ
使用する油の量は、多すぎればかくはん損失 が大きくなります。少なすぎれば、潤滑効果や 冷却効果は期待できません。表 13.2 には、適切 な油面高さの目安を示します。
油面の高さは、運転を始めると、静止していた時よ りも下がります。この差が大きいときは、静止時の油 面を高めにしておくか、オイルパンなどを付けるなど の対策が必要です。
② 歯車箱の限界温度
歯車箱の温度は、歯車や軸受の摩擦損失や潤 滑油のかくはん損失によって、上昇します。これ によって種々の悪影響が出てきます。たとえば、
◦ 潤滑油の粘度低下
◦ 潤滑油の劣化
◦ 歯車箱、歯車、軸などの変形
◦ バックラッシの減少
最近は技術の進歩によって、高性能な潤滑油が多く出 てきましたから、かなり高温まで使用可能となっていま すが、目安として 80℃~ 90℃くらいが限界温度です。
この限界温度を超えるようであれば、歯車箱の放熱性 をよくするためにフィンを付けたり、軸にファンを付け て送風、冷却することが必要です。
表 13.2 適切な油面高さ
歯車の種類 平歯車及びはすば歯車 かさ歯車 ウォームギヤ
歯車の配置
油面高さ
レベル0
水 平 軸 垂 直 軸 (水平軸) ウォーム 上 ウォーム 下
ここに h = 歯たけ、b = 歯幅、d
2= ウォームホイールの基準円直径、d
1= ウォームの基準円直径
(3)強制潤滑法
この強制潤滑法は、ポンプによりかみ合い部へ潤滑 油を給油する方法で、給油の方法により滴下式、噴射式、
噴霧式の3つに分類します。
○滴下式
これは、パイプにより潤滑油をかみ合い部へそ そぐ方式です。
○噴射式
これは、ノズルにより潤滑油をかみ合い部へ噴 射する方法です。
○噴霧式
これは、圧縮空気により霧状にした潤滑油をか み合い部へ噴霧する方式です。この方法は特に 高速の場合に用います。
この強制潤滑法は、油タンク、ポンプ、フィルタ、配管、
その他一連のいろいろな装置が必要ですから、特殊な 高速、大型歯車装置に使われます。
この方法によれば、フィルタでろ過し、クーラで冷 やした、適正粘度の潤滑油をかみ合い部へ適量だけ送 ることができますから、これは歯車の潤滑方法として は最良の方法です。
0 3h↑↓
1h
1h↑↓
h
1b↑↓
b
↑↓
d1
31
31 31 d2 21
41 d1
13.2 歯車の潤滑油
歯車が動力を効率よく伝達し続けるには、かみ合い歯 面に安定した潤滑油膜が形成されて、金属接触をおこさ せないことが必要です。このような目的のために使用さ れる潤滑油に要求される特性を、表 13.3 に示します。
表 13.3 潤滑油に要求される特性
(1)潤滑油の粘度
潤滑油の選定において最も重要なことは、適正粘度 の潤滑油を選ぶことです。この粘度については、JIS K 2001 工業用潤滑油粘度分類に規定されている、工業用 潤滑油 ISO 粘度グレードを表 13.4 に示します。
(2)潤滑油の選定
ギヤー油の種類は、用途によって工業用は 2 種類、
自動車用は 3 種類に分け、更に粘度グレードによって 細分されています。 (表 13.5 は JIS K 2219 - 1993 ギヤー 油の規格より抜粋)
表 13.4 工業用潤滑油 ISO 粘度グレード( JIS K 2001 )
表 13.5 ギヤー油の種類と用途
ISO 粘度グレード
ISO VG 1502 ISO VG 1503 ISO VG 1505 ISO VG 1507 ISO VG 1510 ISO VG 1515 ISO VG 1522 ISO VG 1532 ISO VG 1546 ISO VG 1568 ISO VG 1100 ISO VG 1150 ISO VG 1220 ISO VG 1320 ISO VG 1460 ISO VG 1680 ISO VG 1000
中心値の動粘度 10-6m2/s(cSt)
(40℃)
1502.2
1503.2 1504.6 1506.8 1510.0 1515.0 1522.2 1532.2 1546.2 1568.2 1100.2 1150.2 1220.2 1320.2 1460.2 1680.2 1000.2動粘度範囲 10-6m2/s(cSt)
(40℃)
1351.98 以上 1652.42 以下
1352.88 以上 1653.52 以下 1354.14 以上 1655.06 以下 1356.12 以上 1657.48 以下 1359.00 以上 1611.00 以下 1313.50 以上 1616.50 以下 1319.80 以上 1624.20 以下 1328.80 以上 1635.20 以下 1341.40 以上 1650.60 以下 1361.20 以上 1674.80 以下 1390.00 以上 1110.00 以下 1135.00 以上 1165.00 以下 1198.00 以上 1242.00 以下 0288.00 以上 1352.00 以下 1414.00 以上 1506.00 以下 1612.00 以上 1748.00 以下 1900.00 以上 1100.00 以下種類 用途
工業用
1 種
ISO VG 032 ISO VG 046 ISO VG 068 ISO VG 100 ISO VG 150 ISO VG 220 ISO VG 320 ISO VG 460
主として一般機械の比較的軽 荷重の密閉ギヤーに用いる。
2 種
ISO VG 068 ISO VG 100 ISO VG 150 ISO VG 220 ISO VG 320 ISO VG 460 ISO VG 680
主として一般機械・圧延機な どの中・重荷重の密閉ギヤー に用いる。
番
号 特性 内 容 説 明
1 適正な
粘度 潤滑油は、歯車が運転される速度及び温度において
適正な粘度を保ち、油膜を形成することが必要です。
2 極圧性
(抗溶着性)
潤滑油は、高い荷重を受けてすべる歯面において、
焼付融着、スコーリングなど損傷を防ぐ性質が必要 です。
3 酸化 熱安定性
潤滑油は、長期間使用していると、高温とか湿気な どにより酸化しますから、これに対しては高い安定 性が必要です。
4 水分離性 潤滑油には、運転・休止などによる温度変化によっ
て水蒸気が凝結して水が混入しますから、これを沈 澱分離する性質が必要です。
5 消泡性 潤滑油は、歯車の回転によりかくはんされて泡立つ
と油膜の形成が悪くなりますから、優れた消泡性が 必要です。
6 防食 防錆性
潤滑油の中に、錆などが混入すると、これにより歯 面が摩耗したり、潤滑油の酸化を早めますから、こ の性質が必要です。
歯車装置に使用する適正粘度の潤滑油(適油)の選定 については JIS, JGMA, AGMA などの規格や潤滑油メー カーの資料及び Web サイトの情報が参考になります。
表 13.6 には、潤滑油メーカーが推奨する密閉式歯車 の適正粘度を示します。
表 13.6 密閉式歯車の適正粘度推奨値 ピニオン
回転数
(rpm)
馬力
(PS)
減速比 10 以下 減速比 10 を超え cSt
(40℃ ) ISO 粘度 グレード cSt
(40℃ ) ISO 粘度 グレード 300以下
30以下 5~234 150, 220 180~279 220 30~100 180~279 220 216~360 220,320 100以上 279~378 320 360~522 460 300~
1,000
20以下 81~153 100,150 117~198 150 20~75 117~198 150 180~279 220 75以上 180~279 220 279~378 320 1,000~
2,000
10以下 54~117 68,100 59~153 68,100,150 10~50 59~153 68,100,150 135~198 150 50以上 135~198 150 189~342 220,320 2,000~
5,000
5以下 27~36 32 41~63 46
5~20 41~63 46 59~144 68,100 20以上 59~144 68,100 95~153 100,150 5000以上
1以下 9~31 10,15,22 18~32 22,32 1~10 18~32 22,32 29~63 32,46 10以上 29~63 32,46 41~63 46 注 1.歯車の種類は平歯車、はすば歯車、かさ歯車、及びまがり
潤滑油の用途(平歯車、ウォーム用等)と使用条件(装置の大きさ、周囲温度等)から適正粘度を選定してから、
各潤滑油メーカーの資料から潤滑油を決めます。表 13.7 は代表的な潤滑油メーカーの工業用ギヤー油の一例を示 します。
表 13.7 工業用ギヤー油の一例
JIS ギヤー油 出光 コスモ ジャパンエナジー 昭和シェル 新日本石油 モービル
工業用
1種 ISO VG
32 ダフニースーパー
マルチオイル32 NEWマイティスーパー32
コスモオルパス32 JOMO
レータス32 シェル
テラスオイルC 32 スーパー
マルパスDX32 Mobil DTE Oil Light ISO VG
68 ダフニースーパー
マルチオイル68 NEWマイティスーパー68
コスモオルパス68 JOMO
レータス68 シェル
テラスオイルC 68 スーパー
マルパスDX68 Mobil DTE Oil Heavy Medium ISO VG
100 ダフニースーパー
マルチオイル100 NEWマイティスーパー100
コスモオルパス100 JOMO
レータス100 シェル
テラスオイルC 100 スーパー
マルパスDX100 Mobil DTE Oil Heavy ISO VG
150 ダフニースーパー
マルチオイル150 NEWマイティスーパー150 JOMO
レータス150 シェル
テラスオイルC 150 スーパー
マルパスDX150 Mobil Vacuoline 528
2種 ISO VG
100 ダフニースーパー
マルチオイル100 コスモギヤーSE100
コスモECOギヤーEPS100 JOMO
レダクタス100 シェル
オマラオイル100 ボンノックM100
ボンノックAX100 Mobil gear 600 XP 100 ISO VG
150 ダフニースーパー
マルチオイル150 コスモギヤーSE150
コスモECOギヤーEPS150 JOMO
レダクタス150 シェル
オマラオイル150 ボンノックM150
ボンノックAX150 Mobil gear 600 XP 150 ISO VG
220 ダフニースーパー
マルチオイル220 コスモギヤーSE220
コスモECOギヤーEPS220 JOMO
レダクタス220 シェル
オマラオイル220 ボンノックM220
ボンノックAX220 Mobil gear 600 XP 220 ISO VG
320 ダフニースーパー
ギヤオイル320 コスモギヤーSE320
コスモECOギヤーEPS320 JOMO
レダクタス320 シェル
オマラオイル320 ボンノックM320
ボンノックAX320 Mobil gear 600 XP 320 ISO VG
460 ダフニースーパー
ギヤオイル460 コスモギヤーSE460
コスモECOギヤーEPS460 JOMO
レダクタス460 シェル
オマラオイル460 ボンノックM460
ボンノックAX460 Mobil gear 600 XP 460 ISO VG
680 ダフニースーパー
ギヤオイル680 コスモギヤーSE680 JOMO
レダクタス680 シェル
オマラオイル680 ボンノックM680
ボンノックAX680 Mobil gear 600 XP 680
表 13.8 ウォームギヤ潤滑油の適正粘度参考値 単位:cSt(37.8℃)
(3)ウォームギヤ油の選定
潤滑油の用途(平歯車、ウォーム用等)と使用条件(装 置の大きさ、周囲温度等)から適正な粘度が選定でき ましたら各潤滑油メーカーの資料等で銘柄を確定して ください。
表 13.8 には、JGMA405-01(1978) 円筒ウォームギヤの 強さ計算式にて推奨するウォームギヤの適正粘度の参 考値を示します。
表 13.9 は代表的な潤滑油メーカーのウォームギヤ用 ギヤー油の一例を示します。
運 転 油 温 滑 り 速 度 m/s 運転最高油温 始動時油温 2.5 未満 2.5 以上 5 未満 5 以上
0℃以上 10℃未満
-10℃以上
0℃未満 110~130 110~130 110~130 0℃以上 110~150 110~150 110~150 10℃以上
30℃未満 0℃以上 200~245 150~200 150~200 30℃以上
55℃未満 0℃以上 350~510 245~350 200~245 55℃以上
80℃未満 0℃以上 510~780 350~510 245~350 80℃以上
100℃未満 0℃以上 900~1100 510~780 350~510 表 13.9 ウォームギヤー油の一例
粘度区分 出光 コスモ ジャパンエナジー 昭和シェル 新日本石油 モービル
ISO VG 150 ダフニースーパー
マルチオイル150
—
レダクタスJOMO150 オマラオイルシェル 150 ボンノックM150 モービルギア629 ISO VG 220 ダフニースーパーマルチオイル220 コスモギヤーW220 JOMO
レダクタス220 シェル
オマラオイル220 ボンノックM220 モービルギア630 ISO VG 320 ダフニースーパー
ギヤオイル320 コスモギヤーW320 JOMO
レダクタス320 シェル
オマラオイル320 ボンノックM320 モービルギア632 ISO VG 460 ダフニースーパー
ギヤオイル460 コスモギヤーW460 JOMO
レダクタス460 シェル
オマラオイル460 ボンノックM460 モービルギア634 ISO VG 680 ダフニースーパー
ギヤオイル680