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機械学習とナレッジマネジメントの統合

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 37-40)

第 2 章 先⾏研究の検討

2.5. 機械学習とナレッジマネジメントの統合

⼈⼯知能(AI)・機械学習の技術は、近年、⾦融(Bahrammirzaee 2010)、マーケティ ング(Ngai et al. 2009)、製造(Li et al. 2017)、医⽤(Jiang et al. 2017)、農業(Kamilaris and Prenafeta-Boldu 2018)、法律(Surden 2014; 新⽥・佐藤 2019)、特許(Aristodemou and Tietze 2018)など、⾮常に幅広い分野で応⽤されている。⼈⼯知能(AI)・機械学 習とナレッジマネジメントは相補的な関係にあり、広い意味においては、⼈間が関わ るあらゆる応⽤分野でその統合が必要になると考えられる。ただし、それでは対象範 囲が広すぎて全体を網羅することが難しいため、本博⼠論⽂では⼈間の意思決定⽀援 に限定して関連論⽂を調査する。

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意思決定⽀援システム(DSS: decision support system)の歴史は古く、その誕⽣は 1960 年代にさかのぼる。DSSは「半構造化された、あるいは、構造化されていない意思決 定問 題に お ける マネ ジ ャー の判 断 を⽀ 援す る シス テム 」 と定 義さ れ 、personal DSS

(PDSS)、group support system(GSS)、negotiation support system(NSS)、knowledge management-based DSS(KMDSS)、intelligent DSS(iDSS)に分類される3(Arnott and Pervan 2005; 2014)。このうち、⼈⼯知能(AI)・機械学習とナレッジマネジメントの統 合にもっとも関係するのは、intelligent DSS(iDSS)とknowledge management-based DSS

(KMDSS)である。

Intelligent DSS(iDSS)は、⼈⼯知能(AI)・機械学習技術を応⽤した意思決定⽀援 システムである。Merkert et al.(2015)は、1994年から 2013年までに発⾏されたiDSS に関連する 52 件の論⽂(311 件から選択)を調査し、⼈⼯知能(AI)・機械学習の適

⽤状況や意思決定⽀援への貢献について調べた。その結果、従来の研究はDSSおよび 機械学習の技術的な側⾯に焦点を当てたものが⼤部分であり、意思決定の組織的な側

⾯やヒューマン・ファクターを含めた検討は今後の課題であると述べている。

Bohanec et al.(2017)は、マーケティングの意思決定者が DSSの提案にしばしば懐

疑的で、⾃⾝のメンタルモデルに従うことが多いため、組織効率を本質的に改善する ためにはメンタルモデル⾃体を変える必要があると主張する。メンタルモデルは組織 に深く根差した価値観を反映し、個⼈の⾏動を無意識的に制限すると考えられる。そ こで、ある企業のB2B(business-to-business)事業の売上予測で試⾏して、解釈可能な 機械学習モデルによる意思決定⽀援がメンタルモデルの変化を伴うような組織レベル の学習(図 2.6のダブルループ学習)を促進することを確認した。

Knowledge management-based DSS(KMDSS)は、ナレッジマネジメントの実践、す なわち、個⼈や組織がもつ知識の蓄積、検索、移転、活⽤を通じて意思決定を⽀援す る枠組みである。Shaw et al.(2001)は、⼤量の顧客データに基づくマーケティングの 意思決定を⽀援するために、データマイニングの技術とナレッジマネジメントを組み 合わせた統合フレームワークを⽰した。データマイニングによって発⾒された新たな 知識は、ナレッジマネジメントによって系統的に管理され、最終的にマーケティング

3 Arnott and Pervan(2005; 2014)の分類にはexecutive information sysytem(EIS)、business

intelligence(BI)、data warehouseなども含まれているが、本博⼠論⽂においてはDSSの分類から

除外した.

図 2.6:機械学習モデルによる意思決定⽀援と組織学習

(出典:Bohanec et al. 2017 に加筆)

戦略に結び付けられる。効果的な顧客関係管理(CRM: customer relationship management)

を実現するには、ナレッジマネジメントとデータマイニングの両⽅の技術が必要であ ると述べている。

Herschel and Jones(2005)は、ナレッジマネジメントとビジネスインテリジェンス の関係について論じている。ビジネスインテリジェンスが形式知のみを取り扱ってい るのに対して、ナレッジマネジメントは暗黙知と形式知の両⽅を対象としていること から、ビジネスインテリジェンスはナレッジマネジメントの⼀部として統合されるべ きであり、その定常的・構造的な情報処理プロセスを受けもつ⼀⽅、組織の知識創造 には⾮定常的・⾮構造的な意味形成のプロセスも必要であり、両者のバランスをとる には組織⽂化やリーダーシップなどにも踏み込む必要があると述べている。

Wang and Wang(2008)は、データマイニングで得られた知識を⾏動に結びつけるた め に 対 象 領 域 の ビ ジ ネ ス に 固 有 の 知 識 が 不 可 ⽋ と の 認 識 か ら 、 ビ ジ ネ ス 従 事 者

(business insider)中⼼の知識創造サイクルとデータ分析担当者(data miner)中⼼の データマイニング・サイクルをもつ2サイクルモデル(図 2.7)を提案している。

⻄原(廣瀬)(2019)は、⼈⼯知能(AI)がさらに発展した時代における組織的知識 創造理論(Nonaka and Takeuchi 1995=1996)の役割について考察し、「意味を付与する」、

「価値を創る」、「コンセプトを物語る」など、⼈間の創造性や社会的知性を必要とす る作業については単純に⼈⼯知能(AI)に置き換えることは難しいと結論付けている。

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