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リスクマネジメントへのナレッジマネジメントの適⽤

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 32-35)

第 2 章 先⾏研究の検討

2.3. ナレッジマネジメントと知識創造

2.3.1. リスクマネジメントへのナレッジマネジメントの適⽤

プロジェクトリスクを組織で蓄積・活⽤すべき知識の⼀種とみなすことにより、リ スクマネジメントへのナレッジマネジメントの適⽤が可能となる。Massingham(2010)

は、リスクマネジメントとナレッジマネジメントという2つの独⽴した分野をまたが っ た 新 し い 研 究 分 野 と し て “ 知 識 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト ” (KRM: Knowledge risk management)の重要性を強調している。リスク評価の主観性に着⽬して、従来の発⽣

度、影響度に加えて、知的資本(intellectual capital)に関する“個⼈”の特性、知識移転 の障害(knowledge transfer barriers)に関する“知識”の特性、吸収能⼒(absorptive capacity)

に関する“組織”の特性という3種類に認知的制約を考慮したリスク評価の枠組みを提 案している。

Alhawari et al.(2012)は、知識獲得や知識共有などに起因するリスクマネジメント・

プロセスの課題を改善するために、ナレッジマネジメントの技術要素を取り込んだ新 たな枠組みを提案した。Knowledge-Based Risk Management framework(RiskManIT)は、

ナ レ ッ ジ マ ネ ジ メ ン ト に 関 連 す る 新 た な プ ロ セ ス と し て 、KE( 基 本 知 識 要 素; knowledge essentials)、KBRC(知識に基づくリスク獲得; knowledge-based risk capture)、

KBRD(知識に基づくリスク発⾒; knowledge-based risk discovery)、KBREx(知識に基 づくリスク説明; knowledge-based risk examination)、KBRS(知識に基づくリスク共有;

knowledge-based risk sharing)、KBRE(知識に基づくリスク評価; knowledge-based risk evaluation)、KBRR(知識に基づくリスク貯蔵; knowledge-based risk repository)、KBREdu

(知識に基づくリスク教育; knowledge-based risk education)を含む。

畑村(2000)は、失敗を「⼈間が関わって⾏う1つの⾏為が、はじめに定めた⽬標 を達成できないこと」と定義した。その上で、失敗の特性を理解して知識化すること で不必要な失敗を繰り返さないようにすること、さらに、その知識を活⽤して新たな 創造へとつなげることを⽬標として“失敗学”を提唱した。失敗情報は、事象、経過、

原因、対処、総括、知識化の6項⽬で整理され、再利⽤しやすい形でデータベースに 蓄積される。濱⼝(2009)は、失敗学のエッセンスをリスクマネジメントへ展開する

⽅法について論じている。特に、過度のマニュアル化による管理の形骸化の問題に着

⽬し、上位概念への抽象化と下位概念への具体化を繰り返し⾏うことによってリスク 情報を⽔平展開していく創造的アプローチの重要性を強調している。

内⽥(2016)は、プロジェクトリスクに関する知識を「認知バイアスにより間違っ

た意味解釈を⾏う可能性のある知識」と捉えた上で、その知識移転について論じてい る。ここで、認知バイアスとは、「ある対象を評価する際に、⾃分の利害や希望に沿っ た⽅向に考えが歪められたり対象の⽬⽴ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴につ いての評価が歪められる現象」(友野 2006)を指す。プロジェクト失敗に関する知識 抽出において、分析者の視点を意図的にコントロールすることによっての先⼊観の混

⼊を抑⽌する原因分析⼿法を提案している。

リスクマネジメントにナレッジマネジメントを適⽤したこれらの先⾏研究では、リ スク評価の主観性の問題に対して、概念的枠組みやプロセスなどの形式的な側⾯から の対処を試みているが、リスクの本質である不確実性の定量的・確率的側⾯には⼗分 に踏み込めていない。

2.4⼈⼯知能(AI)と機械学習 33

2.4. ⼈⼯知能(AI)と機械学習

⼈⼯知能(AI)は、認識、推論、判断など、⼈間と同じ知的な処理能⼒をもつコン ピュータシステムであり、その要素技術として、画像認識、⾳声認識、⾃然⾔語処理 などのインタフェース技術、探索、知識表現、推論、学習などの汎⽤問題解決技術、

対象分野ごとのオントロジー(語彙体系や基本ルール)構築技術などを含む(Russell

and Norvig 2003=2008; ⼈⼯知能学会編 2017)。これらはすべて知的エージェントの構

成要素となる。図 2.4 は、モデルと効⽤に基づくエージェントの構成を⽰している。

機械学習は、⼈⼯知能(AI)を実現するための主要な要素技術の1つであり、計算 機アルゴリズムを通じてデータの中の規則性を⾃動的に⾒つけ出し、さらにその規則 性を使って予測や推定などを⾏う(Bishop 2006=2012)。機械学習の⼿法は、⼊⼒と出

⼒の関係を学習する“教師あり学習”、データに内在する本質的な構造を抽出する“教師 なし学習”、試⾏錯誤を通じて報酬を最⼤化する⾏動パターンを学習する“強化学習”の 3種類に分類される。この内、現在、最も実⽤化が進んでいるのは教師あり学習であ り、本博⼠論⽂においても教師あり学習を中⼼に議論する。

図 2.4:モデルと効⽤に基づくエージェント

(出典:Russell and Norvig 2003=2008, p.52 に加筆)

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