第2章 ツェムリンスキーの歌曲作品とその 分析・考察
第3節 楽曲分析・考察
第1曲昌 『Gute Nacht』 『おやすみ』
(脚韻)音節数 D塁eH6h獄u蹴d walder steige且 (a)
1搬mer tie鉛f ins Abendgo董d, (b)
Ein V6錘e童n倉agt in den Zweigen: (a)
Ob es Li¢bchen sch6n gr魏βe薮so韮f? (b)
7山の頂きや森がだんだんと 8黄金に輝く夕べに沈んでゆく。
8枝に止まっている小鳥がこう訊ねる。
8美しいあの子に挨拶してあげましょうか?
OV6glei鍛,du has乞dich betrogen, (a)
Sle wohnet㎡cht mehr im Ta韮, (c)
Sch、廠g窺uf dich zum磁mme監sbogen,(a)
働 s量edf(尭)e薙 z鱗m letzte1111ユal。 (c)
9 ああ、小鳥よ、お前は勘違いしているのだね、
7彼女はもうその谷には住んでいないというのに。
8天に向かって飛び立ち、
8彼女に天国で最後の挨拶をしておくれ。
『おやすみ羅 Gute Nacht はツェムリンスキーの修学時代の18894890年に作曲さ れた『7つの歌曲』 (本来は未完成の作品を含む12曲による版として構成されてい た。)の2曲目の作品で、彼の最も初期の作品であるといえる。この作品は彼の生前 には出版されておらず、没後遺稿集として1995年に出版された。
テキストは1837年にベルリンで出版されたアイヒェンドルフの詩集『死者に供える いけにえ』 Tote盤opfbr に基づくものである。アイヒェンドルフは旧ドイツ領シュレ ージエン(現ポーランド、シロンスク)に生まれた後期ロマン派に属する野瀬詩人・
作家で、郷土と森への親近感が色濃く、特にシューマンやヴォルフ、プフィッツナー によって愛された詩人である。アイヒェンドルフのテキストによるツェムリンスキー のその他の作品は、『町はずれ』 VOf der Stadt (op.2)、『古い庭』 Der a豆te
G麟eゴ 、『巨人』 Der R三ese蹴 のピアノ伴奏歌曲、シューマンのrリーダークライ
.ス毒op 39の第3曲欝でも同じく作曲されている『森の語らい』 Waldesgespr㏄h
(ツェムリンスキーはソプラノと弦楽合奏、ハープ、ホルンのためのバラードとして 作曲した)がある。アイヒェンドルフのテキストはツェムリンスキーの初期創作期に
好まれた題材であったようだ。
この詩は2節4行詩で各々の詩節は交叉韻(Kreuzre㎞)の脚韻を持っており、また第 1・3詩行と第5・7詩行は同一の脚韻で統一されている。全体的には8音節を中心 とし、女性終止(第1・3・5・7詩行)と男性終止(第2・4・6・8詩行)とを 繰り返す、まさに民謡詩節(Volksliedstrophe)であるといえる。第1・3・5・6・7 詩行はヤンブス(Ja鵬bus)で始まり、それぞれ3つの揚格(H:ebung)を持っている。また第
2・4・8詩行はトロヘーウス(Troch伽s)で始まり、それぞれ4つの旧格を持つ韻律:的 に同形の詩行である。
この詩の情景は少ない書葉ながらも見事に描写され、夕暮れの寂蓼感と間もなく やってくる冷ややかな夜の気配を写し出している。この状況の中で彼(詩の主人公)
に課されているのは、愛する人の死の受容である。その恐ろしい現実と向き合い、深 い悲しみの淵から立ち上がり、乗り越えようとする彼の溢れんばかりの思いが、小鳥
という自由で愛らしく、気まぐれな存在へのあてどもない懇願となったのであり、
おやすみ という彼の彼女への精一杯の哀悼の気持ちとなったのではないであろう
か。
音楽は全19小節でかなりコンパクトにまとめられており、詩の構造と内容からa(T1−
6)、8(T741)、 C(T12−15)、0(TI6−19)に分けられる。全体的にリズムはピアノ・パート によるシンコペーションで一貫されている。
R(T1−6)では音程的にも動きが少なく、T3はg 音が持続し、 T4のsteigenという歌詞 で初めてas 音に移り(*1)、 immerという半音階で導かれた2度目のas1音で山場を迎え
(*2)、T6のd音に向かって下降してゆく。T3の冒頭の1からT4の冒頭のWの和音(T)へ の緩やかな変化によって浮遊感を帯びたas 音は、さらに(*1)よりも勢いのある半音階 上行(*2)と、初めて(S》を用いたことによる1→席の変化によってエネルギーを増した 2度目のas 音へと向かう。この2度目のas 音(T5)には歌詞に 深い (tief¢r)という意 味の言葉が当てられ、歌詞内容的、和声的、旋律的にも意図的にこの音に重心が与え
られている。またこのフレーズでは、他にも 徐々に (immer)夕闇に 沈んでい く (steigen);様を、言葉の持つ意味と音形を一致させて描いていると思われる。
(譜例1参照)
32
(譜例1)
…
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(了)
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(P) (T)ゆ)① (3) (P)
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〔T)
B(T7−11)ではnと和声もほぼ同型(後半は異なる)の旋律が短3度上のb 音から始ま り、T8の後半でob esのアウフタクトによって一気にこの作品の前半最高音であるf壁 音(歌詞:Liebchen 愛する人 )へと跳躍する(*3)。
(譜例2)
E5二「瞬工 蒔工 ①)(τ)
V「 c;マπ
①)
一7 吼
Φ)
㌃紅→1へ
T7−8はピアノのバスがなく、調性も不安定(Es・dur→es−mo11→c−moll:エンハーモニック 転調による)であるのに対して、T9では調性の変化を決定づけるバスが加わり、同時
に旋律もクレッシェンドしながら一気に減5度跳躍することで急激に音域が広がり、
デュナーミク、音価、音高などあらゆる要素でf 音は強調され、安定感とともに緊張 感が高まっている。この緊張感はTlOで鋭いリズムで上行形の疑問を投げかける旋律
と、それを受けてピアノ・パートの内声で再び繰り返される旋律の断片によって表現
されている。この疑問形はTIM2の間の半終止によって、はっきりとした結論を得な いまま後半部分Cへと持ち越される。(譜例2参照)
T12(DでC(T12−15)の旋律は8(*3)よりさらに広く、アウフタクトで一:気にg音から es 音に短6度跳躍し(*4)、下行する旋律はさらにT14のb 音へと再び上行し、(彼女は)
もういない (nicht mehr)をピアノ・パートに旋律を重ねることによって強調し、
高まったエネルギーをここで解消させている。旋律線を見ると、T12は彼の悲しみはと うとう溢れだし、深淵へと沈んでいったかのように思われ、T14−15ではEs−durの完全終 止を作ることによってフレーズの完了を感じさせ、彼女がいないことを自分に必死に 言い聞かせようとしている彼の姿を思わせる。(二二3参照)
(高畠3)