68 経営管理などの実
4.5 案件審査
中小企業融資では、企業評価を実施した後、企業にとって最適な融資を行うため、融 資案件の審査を行う。案件の審査にあたっては、融資の基本 5 原則、①安全性、②収益 性、③成長性、④流動性、⑤公共性の原則を踏まえて適否を判断することが必要である [24]。ここでは融資案件の審査方法等について整理する。
4.5.1 資金使途
案件審査に当たっては、まず資金を何に使うのかという資金使途を明確にしなければ ならない。資金使途は、運転資金と設備資金に大別される。運転資金は、仕入・在庫・
販売等の事業に関する資金の出入りや、人件費・外注費・物件費・経費等の資金の支払 いに関して、その資金の支払い・回収までの立替資金をいう。一方、設備資金は、工場・
事務所・店舗・機械・本社・厚生施設又その土地等の設備の購入資金をいう[25]。具体 的な資金使途は図表 4-11 の通りである。
図表 4-11 資金使途の種類
区 分 資金の種類
運 転 資 金 経常的な資金需要 経常運転資金、増加運転資金、長期運転資金
一時的な資金需要 決算資金、賞与資金、納税資金、つなぎ資金、季節資金、
在庫資金 等
特殊な需要 赤字補てん資金、不良債権資金、資本構成改善資金 設 備 資 金 各種設備需要
固定資産取得
土地購入、店舗・事務所・工場建築、車両購入、
機械購入 等
そ の 他 資 金 新たな資金増加を伴わない 肩代わり資金、借り換え資金 資料:高橋俊樹(1993)『よくわかる融資稟議書起案法』[25]
4.5.2 資金の必要量
融資に際しては、今回の資金需要の総額はいくらか、うち、自行が負担する金額はど の程度か、その負担割合はどのような考えで決められたのかという点を確認する必要が ある。中小企業は、外部環境に影響されやすく、将来の不確実性に対応するため、でき れば必要以上に借りておきたいという意識がある。また、貸し手である金融機関にして も、金融機関の競争が激化する中、中小企業の資金必要量を無視した融資もみられる。
相応の量であれば問題ないが、多額の借入れは返済額の増加につながり、借入過多、そ
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して財務体質を悪化させる要因になる。適正な借入れは、必要な時に必要な量だけ資金 調達を行うことである。
必要量の判断については、運転資金の場合は資金繰り表で確認する。融資金額が、月 商を大きく超える場合は、必要量について明確にすることが重要である。特に、手形貸 付の場合は、期日に返済ができなくなる懸念もあることから、返済財源を明確にしてお くことが必要である。
近年、トランザクション型融資の利用が増えているが、これらは要件審査である。月 商を大きく超えて取り扱った場合、要件に該当しなくなった時には、返済が困難になり、
かえってその後の資金繰りを悪化させる懸念もあるため、適当な必要量での支援が重要 になる。
設備資金は、設備にかかる総額、そのうち、自己資金で調達する額と借入金で調達す る額を確認し、企業規模に比較し過大ではないか、現在の CF または計画の CF で返済が 可能か等、設備計画の妥当性を審査する。償還が難しいような過大な投資の場合は、見 直しを要請して、適正な借入額をアドバイスすることが必要である。
4.5.3 返済財源と償還力
中小企業金融で重要なことは、融資金を確実に回収することである。そのためには融 資の際の返済財源や償還力の審査が重要になる。
手形貸付のように短期一括返済の場合は、返済財源を確認する。例えば建設業の場合 は引当工事等の確認が必要になる。一方、証書貸付のような長期分割返済の場合は、現 在または計画上の CF 等から償還が可能かを審査する。
設備資金の場合は、まず、将来、売上や利益の増加に貢献する設備か否かを確認し、
次に現在または計画上の CF で借入期間内に返済が可能かを審査する。また、本件にかか る償還力のみでなく、既に借りている借入金と本件を合わせた総借入について償還可能 かについても審査する。
4.5.4 貸付形式、返済期間、返済方法
貸付形式には、手形貸付、証書貸付、手形割引、当座貸越、社債等がある。手形貸付 は、企業からの融資の証拠書類及び支払確保の手段として、金融機関あての約束手形を 徴求して行う融資形態である。証書貸付に比べて取り扱いが簡便であり、短期融資の一 括返済を中心に広く利用されている。証書貸付は、企業から借用証書を金融機関に差し 入れさせる金銭消費貸借である。証書貸付は、手形貸付のように借換えの手間がかから ず、返済方法を前もって詳しく決めておくので、企業にとっては資金計画が立てやすい 利点がある。手形割引は、商取引上振り出された手形の受取人または所持人が、その満 期日前にそれを現金化して運転資金として使いたい場合に、満期日までの利息を差し引 いた額で、金融機関から融資を受ける形態である[25]。当座貸越は、カードローン根保
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証、当座貸越根保証等があり、一定の借入枠を設けて、その枠の中で自由に借り入れを 行うものである。
貸付形式については、業種によって適当な貸付形式が相違し、金融機関は申込企業の 業種にあった形式で支援することが必要になる。例えば、飲食業のような現金商売の場 合や不動産賃貸業のように借入は設備が多い業種の場合は、手形貸付はなじまず、証書 貸付が基本になる。
返済期間は、数日間の短期から、1 年間、そして 10 年、20 年と長期の期間がある。一 般的に、手形貸付や手形割引は 1 年以内、当座貸越や根保証等は 2 年以内が多い。金融 機関は資金使途を確認し、適正な貸付期間で支援することが必要になる。例えば、賞与 資金や納税資金は基本的に 1 年以内での支援が基本になる。
返済方法は、一括返済、分割返済等がある。一括返済は、期日一括返済や期日内に一 部内入れをする方式等がある。分割返済は、元金均等返済、不均等返済、元金に金利を 含めて返済するローン返済、金利が途中で変わるステップ返済等がある。分割返済は、
据置期間を置く返済方法が認められている制度も多い。当座貸越は、一定の額を返済す る定額返済や定めた返済時期に返済する定期返済等がある。返済方法は、一括返済の場 合は返済財源、分割返済の場合は償還力を評価して融資を行うことが必要である。返済 財源を確認せずに、一年一括返済で安易に融資した場合、期日に返済ができずに、コロ ガシの状況になり、融資金が固定化する懸念がある。
貸付の条件については、近年は、複数の金融機関の協調融資によるシンジケートロー ン、スコアリングモデルにより算出したスコアを基に融資判断を行うスコアリングロー ン、遵守条項を貸出契約に盛り込んだコベナンツローン等、選択肢が増加している。
日本の場合は、信用保証制度と、それを補完する地方公共団体の制度が充実している。
プロパー融資と信用保証制度付の融資を併用することで、借入枠の拡大が図れる。また、
地方公共団体も中小企業の資金調達の円滑化を図るため、低金利の各種制度を創設して おり、多様な商品や制度から自社に適したものを選択できる。
4.5.5 保全
保全は、人的保全と物的保全等がある。人的保全には連帯保証人があり、物的保全に は不動産担保、ABL、動産担保等がある。さらに、日本では信用保証制度が充実している。
金融機関が企業に対する融資を審査する場合、まず融資金の返済は問題ないかを評価 し、さらに連帯保証人や担保等から回収余力があるかを評価する。
中小企業の場合、代表者の人的保全はほとんどの貸付案件において徴求されており、
また、物的保全については、信用扱いで十分に支援している先、融資対象が不動産であ る場合、長期間での融資を行う場合等は、不動産担保等の保全を図って融資を行うのが 一般的である。