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本論(各補助動詞の考察)

ドキュメント内 キルギス語の〈持続〉を表わす補助動詞 (ページ 70-75)

第 7 章 本研究の言語資料

第Ⅱ部 本論(各補助動詞の考察)

以下、本論である「第Ⅱ部」にはいる。まず、jat-、tur-、otur-、jür-33の本動詞としての意 味について述べる。その後、本研究で収集した具体的な実例をあげながら、補助動詞として の意味について考察を行う。

8 章 本動詞としての jat-tur-otur-jür-

本章では、jat-、tur-、otur-、jür-の本動詞としての意味について、例文(筆者による作例)

をあげながら、述べる。

8.1. 本動詞の jat-

本動詞としてjat-は、次のように使われる。

(1) Al divan-ga jat-tï34. 彼 ソファー-DAT jat-PST1

「彼はソファーに横たわった。」

動詞jat-は、人主語の場合には、(1)「体を横にする」ことを表わし、日本語の「横たわる」

という動詞に対応する。そして、物主語の場合にも使われ、(2)「物が横になる」或いは「物 が横にして置いてある」ということを表わす。この場合の jat-を日本語に訳そうとすると、

「ある」にあたる。

(2) Kire beriš-te temir jat-a-t.

入口-LOC 鉄 jat-PRES-3

「玄関に鉄がある。」

また、jat-には、次のような使い方も存在する。

33 まず、人の姿勢を表わす動詞jat-tur-otur-、その次に、人の移動を表わす動詞jür-という順で考察を 進める。

34 第Ⅱ部では、用例番号を1から始める。

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(3) Men Narïn-da beš kün jat-tï-m.

私 PLN-LOC 五 日 jat-PST1-1SG

「私はナルンに5日いた。」

この文では、jat-が「居る」という〈存在〉の意味を表わしている。このような場合、 jat-は、位格場所名詞と共起して〔人 場所-LOC jat-〕という構文になる。そして、beš kün

「5日」、bir aydan beri「1か月前から」などのような状況語と共に現われることが多い。

8.2. 本動詞の tur-

本動詞としてtur-は、次のように使われる。

(4) Al ord-u-nan tur-du.

彼 席-3:POSS-ABL tur-PST1

「彼は席から立った。」

(5) Men erte tur-du-m.

私 早く tur-PST1-1SG

「私は早く起きた。」

上であげた例文から分かるとおり、動詞tur-は、(4)「ある席についていた人が足を伸ばし て自分の体を垂直の姿勢にすること」を表わし、日本語に訳すと「立つ」になる。また、(5) のように、「横になっている人が起き上がること」を表わし、日本語に訳すと「起きる」に あたる。つまり、tur-は、人の姿勢を表わす動詞である。

また、tur-には、次のような使い方も存在する。

(6) Al Biškek-te tur-a-t.

彼 PLN-LOC tur-PRES-3

「彼はビシケクに住んでいる。」

この文では、tur-が「立つ」「起きる」の意味を表わすというよりも、「住む、居る」とい う意味を表わしている。ここでは、〔人 場所-LOC tur-〕のような構文になっている。つ まり、人が主語にきて、そして、本動詞 tur-が位格場所名詞と共起する場合に、tur-が〈存 在〉の意味を表わす。例文(6)の場合のBiškek「ビシケク」をogorod「庭(畑)」などのよう な場所名詞に変えられる。その場合、「住む」というよりも、「いる」という意味を表わす。

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(7) Al ogorod-do tur-a-t.

彼 庭(畑)-LOC tur-PRES-3

「彼は庭にいる。」

また、次のように物主語の場合にも使われる。この場合、「車が止まっている、存在する」

という意味を表わす。

(8) Ešik-tin ald-ï-nda bir kara mašina tur-a-t.

ドア-GEN 前-3:POSS-LOC 一 黒い 車 tur-PRES-3

「ドアの前に一台の黒い車が止まっている(ある)。」

8.3. 本動詞の otur-

本動詞としてotur-は、次のように使われる。

(9) Al ord-u-na otur-du.

彼 席-3:POSS-DAT otur-PST1

「彼は席に座った。」

このように動詞 otur-は、(9)「膝をまげて、腰を下ろすこと」を表わし、日本語に訳すと

「座る」になる。つまり、otur-は、人の姿勢の変化を表わす動詞である。このような場合、

与格の場所名詞と共起して〔人 場所-DAT otur-〕という構文になることが多い。

また、次のような使い方も存在する。

(10) Al аzïr biz-diki-nde otur-a-t.

彼 今 我々-のもの-LOC otur-PRES-3

「彼は今、我が家にいる。」

この文では、otur-が「座る」という具体的な姿勢の変化を伴う動作の意味を表わすという よりも、「居る」という〈存在〉の意味を表わしている。このような場合、与格ではなく位 格の場所名詞と共起して〔人 場所-LOC otur-〕という構文になることが多い。

なお、otur-は、本動詞として使われる時、物主語の場合に使用されない。

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8.4. 本動詞の jür-

本動詞としてjür-は、次のように使われる。

(11) Avtobus jür-dü.

バス jür-PST1

「バスが動いた。」

この例文から分かるとおり、動詞 jür-は、(11)「ある物の位置が変わって、動くこと」を 表わし、日本語の「動く、移動する」に対応する。また、(12)のように、「人がある目的地 に向かう」ことを表わし、日本語の「行く」にあたる。この場合、〔人 場所-DAT jür-〕 の構文になる。このように、jür-は、物や人の移動を表わす動詞である。

(12) Men erteŋ šaar-ga jür-ö-m.

私 明日 都会-DAT jür-PRES-1SG

「私は明日、都会に行く。」

また、次のような使い方も存在する。

(13) Al Narïn-da jür-ö-t.

彼 PLN-LOC jür-PRES-3

「彼はナルンにいる。」

この文では、jür-が「動く」「行く」という物や人の移動を伴う動作の意味を表わすという よりも、「居る」という〈存在〉の意味を表わしている。このような場合、jür-は、位格の場 所名詞と共起して〔人 場所-LOC jür-〕という構文になることが多い。そして、ここで は、単なる「ある場所に居る」という意味だけではなく、「ある場所で動いて活躍している、

居る」という意味が含まれる。

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8.5. まとめ

以上、本動詞のjat-、tur-、otur-、jür-の意味について作例をあげながら、簡単に説明した。

その結果、jat-、tur-、otur-、jür-は、いずれも「主体の動作」、又は、「主体の存在(状態)」 を表わすことができるといえる。

「主体の動作」を表わす場合、〔人 与格名詞 jat-/tur-/otur-〕という構文をとり、そ れぞれ、日本語に訳すと、「横たわる」、「立つ」、「座る」にあたり、主体の姿勢変化を表わ す動詞である。但し、動詞jür-は、他の動詞と異なる性質をもっている。jür-は、「主体の移 動」を表わす動詞であり、「動く、行く」という意味を表わす。

「主体の「存在(状態)」を表わす場合、〔人/物 位格名詞 jat-/tur-/otur-/jür-〕と いう構文をとる。この場合、いずれの動詞も「人或いは物がある場所に居る、存在する」と いう主体の〈存在〉(或いは〈現在の状態〉)の意味を表わす。但し、各動詞によって、ニ ュアンスや使用の範囲などには相違点がある。

上のように、文の構文的な条件によって、それぞれの動詞の意味が変わる。

この章を踏まえた上で、次章から jat-、tur-、otur-、jür-の「補助動詞」としての文法的な 意味を考察する。

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ドキュメント内 キルギス語の〈持続〉を表わす補助動詞 (ページ 70-75)