第 7 章 総合考察
7.2 本研究の課題と今後の展望
本研究が扱った調査対象は,実技指導中心の特殊な教育環境であるために,このような詳 細な質問紙調査データを得ることが難しい面もあり,主に一大学中心のデータを使用する ことになったが,異なる性質を持つと思われる総合大学データも補完的に取ることはでき た。完全な一般化を行うことは難しいにせよ,約 20 年にわたり安定した結果を示したこと は本研究の意義と考えることができるが,今後可能であれば音楽領域の進学に関わる調査 研究を継続的に行っていくことも望まれる。
また,今回は進学理由に示される本人の進学への動機づけと進学後の適応感との関係を 中心にとりあげたが,今後このような研究を発展させる可能性として,例えば,大学におけ る成績との関係についても検討を行うことはできるだろう。音楽領域の研究として,
Harrison, Asmus & Serpe(1994)では,大学 1 年生の聴音と視唱の成績を予測するのは,
音楽適性検査の成績や,高校における学業成績,および音楽経験であり,音楽に対する動機 づけは何ら影響を与えていないとしているが,音楽に対する動機づけとの関係について検 討する上で,音楽成績の指標として彼らが取り上げた科目の成績が妥当であったかどうか についても議論の余地はある。より適切な成績の指標を用いた上で,本研究で取り上げた諸 変数との関係を調べていくことにも意味はあるだろう。しかし,それ以上に重要と思われる のは,本研究で主に扱った進学への動機づけと進学後の適応感が,大学卒業後の実際の進路 や社会的成功とどのように関係するかである。ただし,このようなデータを取ることは意義 深い反面,実際には難しい面も予想され,本研究では取り扱うことができなかった。今後の 課題としたい。
最後に,本研究は特に音楽という専門領域に焦点をあてているが,いわゆる一般的な受験 勉強とは別の準備を進学において必要とする領域は,美術系やスポーツ系など,他にも存在 する。本研究は,そのような領域特有のキャリア発達過程をとらえるものの一例として,一 定の意義があると考える。また,実際に進路指導を行う場面では,一人一人に対するアプロ ーチを考えていくことが重要であろう。その際にも,このような多様な領域すべてについて 研究することは困難であるとしても,可能な限り様々な発達過程を取り上げ,実証的なデー タの積み重ねを行っていくことは有意義であるだろう。
102 謝辞
本研究を遂行し学位論文としてまとめるにあたり,多くの方々にお世話になりました。こ こに記して感謝の意を表します。
はじめに,指導教員である倉元直樹先生(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 教授)
には,多大なるご指導・ご支援をいただきました。今回の大学院入学以降についてはもちろ んのこと,約20年前に参加させていただいた研究会において研究案の相談をさせていただ いたことが本研究の発端の調査につながったことも含めて大変お世話になりました。再び の大学院生活の中で先生から学ばせていただいたことを,今後の研究生活に活かしていき たいと考えております。ありがとうございました。
副指導教員である宮本友弘先生(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 准教授)には,
学位取得に関する手続き的なことから,データ分析の問題点まで,広い範囲でアドバイスを いただきました。東北大学大学院への入学および学位取得について,先生のお勧め無しには 現実的に可能であると考えることはできなかったと思います。大変感謝しております。
審査委員である小嶋秀樹先生(東北大学 大学院教育学研究科・教育学部 教授)には,
予備審査会,本審査会において有益なご示唆をいただきました。本論文の完成度が高まり,
今後の課題も明確になりました。こちらの不手際でご迷惑をおかけした点もあったかと思 いますが,先生の温かく的確なご指摘が本論文作成において励みとなりました。ありがとう ございました。
そもそも,音楽行動に関わる心理学的な研究を行うことを考えるに至ったのは,故冨田正 利先生(当時 早稲田大学 教授)のご指導がきっかけでした。今でも先生の美声は忘れら れません。冨田先生のご退職以降につきましては,西本武彦先生(早稲田大学 名誉教授)
から度々,励ましのお言葉をかけていただきました。もう少し早い時期に学位取得を目指し たかったのですが,思うように進まずに先生にはご心配をおかけしていたと思います。また,
越川房子先生(早稲田大学 教授)には,子育てをしながらの研究活動継続について様々な アドバイスをいただきました。豊田秀樹先生(早稲田大学 教授)には,本論文の初期の分 析で使用した共分散構造分析に関して,基本的な使用法からご指導いただきました。時間は かかってしまいましたが,先生方からご指導いただいたことが,今日このような形で研究を まとめることにつながったと考えております。
また,星野悦子先生(上野学園大学 特任教授)には,音楽心理学に関わる研究を続けて
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いく上で,たくさんのご指導・ご支援をいただきました。先生の研究者としての姿勢から多 くを学ばせていただきました。今回の学位取得についても励ましていただき,大変感謝して おります。
本論文の中で使用されたデータは,多くの学生の皆さんの質問紙調査へのご協力で得ら れたものです。調査データ収集にご尽力いただいた先生方にも大変お世話になりました。特 に,磯部二郎先生(東海大学 教授),沖野成紀先生(東海大学 教授)には,共同研究と してデータ収集したものを,本論文の一部として使用することを快く承諾していただきま した。大変感謝しております。
最後になりましたが,年代や国籍を超えた女子会のようで仙台通いを楽しませていただ いた倉元研究室の皆さん,陰ながらずっと支えてくれた家族にも感謝したいと思います。本 当にありがとうございました。
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