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第 4 章 音楽大学進学理由と背景要因との関係について

4.2 積極的進学理由と適応感および背景要因との関係についての分析

4.2.2 方法

(1) 分析対象データ

分析対象データは,A 音楽大学において行った 1999 年および 2000 年調査の回答時点で 2 年生であった女子学生のデータのうち,分析に使用する項目の回答に不備のない 529 名 分であった。この中で,ピアノ専攻は 241 名(以下,ピアノ群),管楽器・打楽器専攻は 109 名(以下,管打群),声楽専攻は 111 名(以下,声楽群),音楽教育専攻は 68 名(以下,教 育群)であった。

(2) 分析使用項目

本節で分析の対象とする項目についてTable4.4に示す。

大学への進学理由

基本的には,3.1において音大への進学理由に関する項目への回答データに因子分析を行 った結果として見いだされた因子のうち,「積極的動機」を示すと思われる「能力活用」「音 楽的同一性(同一視)」「将来展望」の 3 因子を構成する質問項目を今回の分析に使用するこ とにした。ただし,4.1 において,追加データも含めて同様の分析を行ったところ,「将来 展望」因子の 1 項目に不安定な動きが確認されたため,今回はその項目を除いて使用した。

なお,進学理由に関する項目への回答は,「あてはまる」~「あてはまらない」までの 5 件 法であり,分析を行う際には,「あてはまる」を 5 点,「あてはまらない」を 1 点に換算した ものを用いた。

家族のサポート

第3章において,「他者のすすめ」を音楽大学への進学理由の一つとしてとりあげたが,

この因子を構成した項目のうち,両親のすすめをあらわす 2 項目に,両親の協力を示す 2 項

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目を加えた 4 項目を,家族のサポートを示す項目として使用した。なお,これらの項目の回 答形式は 5 件法であり,項目に自分が「あてはまる」と答えた時に 5 点,「あてはまらない」

に 1 点とした。

音楽経験

音楽経験に関する項目のうち,今回は以下の 3 種類を取り上げた。

レッスンを受けた期間については,回答者の記述(内容,時期,形式)から,レッスンを 開始した年齢,特別な音楽のレッスンを受けていない期間を考慮して,18 歳までにレッス ンを行っていた年数を計算した。

グループでの音楽活動期間については,回答者の記述(内容,時期,形式)から,そのよ Table4.4 分析対象項目および専攻ごとの基礎統計量

ピアノ 管打 声楽 教育

(N =241) (N =109) (N =111) (N =68)

分析対象項目 M SD M SD M SD M SD 範囲

進学理由 能力活用

x1「自分の音楽的な才能に気づくことができたから」 2.85 (1.22) 2.59 (1.12) 2.85 (1.15) 2.49 (1.17) 1-5 x2「他の教科より音楽が得意だったから」 4.24 (1.13) 4.09 (1.26) 4.32 (0.90) 3.99 (1.22) 1-5 x3「自分の能力を生かすことができると思ったから」 3.97 (1.09) 3.64 (1.19) 4.02 (0.97) 3.49 (1.07) 1-5

音楽的同一性

x4「音楽を自分から取り上げたら何も残らないと思ったから」 3.73 (1.41) 3.61 (1.41) 3.51 (1.38) 3.22 (1.50) 1-5 x5「音楽は自分の一部分であり,やめられないと思ったから」 3.99 (1.19) 3.94 (1.22) 4.02 (1.15) 3.84 (1.17) 1-5 x6「音楽活動を行うことが自分にとって自然であったから」 4.05 (1.06) 4.03 (1.10) 4.05 (1.08) 3.99 (1.09) 1-5 x7「音楽が,精神的に不安定な時の支えになったから」 3.13 (1.36) 3.01 (1.36) 3.35 (1.36) 3.15 (1.30) 1-5

将来展望

x8「専門的な知識や技術を身につけたかったから」 4.32 (1.09) 4.36 (1.08) 4.31 (1.04) 4.29 (1.04) 1-5 x9「希望の仕事につくために必要だと思ったから」 3.81 (1.28) 3.56 (1.40) 3.89 (1.30) 3.72 (1.38) 1-5 x10「自分の求めている生き方ができると思ったから」 3.67 (1.24) 3.75 (1.20) 4.01 (1.13) 3.31 (1.43) 1-5 家族のサポート

x11「父親のすすめがあったから」 1.62 (1.23) 1.56 (1.21) 1.47 (1.03) 1.66 (1.27) 1-5 x12「母親のすすめがあったから」 2.60 (1.64) 1.97 (1.46) 2.09 (1.40) 2.28 (1.61) 1-5 x13「父親の協力があったから」 3.05 (1.71) 3.12 (1.78) 3.00 (1.68) 3.16 (1.72) 1-5 x14「母親の協力があったから」 3.81 (1.46) 3.58 (1.59) 3.43 (1.67) 3.66 (1.60) 1-5 音楽経験

x15レッスンを受けた期間 14.41 (1.63) 12.05 (3.83) 12.73 (3.13) 12.60 (3.67) 1-17 x16グループでの音楽活動期間 3.88 (3.22) 6.44 (2.91) 4.40 (3.21) 4.91 (3.25) 0-17 x17音楽の好み 2.35 (0.81) 2.17 (0.74) 2.49 (0.74) 2.32 (0.85) 0-3 大学における適応感

x18「大学での生活は充実している」 3.81 (1.07) 3.85 (1.09) 3.89 (1.04) 3.93 (1.01) 1-5 x19「大学に入ることで,自分の音楽の幅が広がった」 4.03 (1.18) 4.38 (0.90) 4.04 (1.18) 4.38 (0.67) 1-5 x20「大学で必要な知識や技術が身につけられている」 3.95 (1.02) 3.94 (0.96) 4.03 (1.01) 3.97 (0.88) 1-5 x21「音楽がきらいになった」 1.67 (1.03) 1.63 (1.03) 1.48 (0.91) 1.54 (0.85) 1-5 x22「音楽に関して自信がなくなった」 2.65 (1.25) 2.91 (1.28) 2.68 (1.28) 2.53 (1.07) 1-5 x23「大学では,自分の好きな音楽ができないと思う」 2.29 (1.29) 2.14 (1.24) 2.23 (1.24) 2.41 (1.24) 1-5 x24「もう一度選びなおせるとしても音楽大学に進学する」 3.40 (1.38) 3.20 (1.51) 3.59 (1.47) 3.60 (1.39) 1-5 x25「もう一度選びなおせるとしても今の専門を選ぶ」 3.35 (1.37) 3.63 (1.49) 3.90 (1.35) 3.69 (1.40) 1-5 家庭の音楽環境

x26下記の項目への回答の合計得点 1.06 (0.89) 0.90 (0.88) 1.05 (0.99) 0.91 (0.94) 0-4

「父親が音楽に関わる仕事をしている(いた)」

「父親が音楽好きである」

「母親が音楽に関わる仕事をしている(いた)」

「母親が音楽好きである」

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うな活動を初めて行った年齢,活動を行っていない期間を考慮して,18 歳までに活動を行 っていた年数を計算した。

音楽の好みについては,西洋クラシック音楽と,それ以外の音楽を好むかについて,質問 項目の文章に「あてはまる」場合に○をつける形式の 2 件法で回答を求めた。なお,分析に おいては,今回の調査対象者の通う A 音楽大学で西洋クラシック音楽の指導が中心である ことを考慮し,クラシック音楽に○がつけられた場合を 2 点,それ以外の音楽に○がつけ られた場合を 1 点として加算し,0~3 点の範囲を示す 1 つの変数とした。

大学における適応感

3.2において作成したモデルと同じ 8 項目を使用した。5 件法の回答形式であり,項目に 自分が「あてはまる」と答えた時に 5 点,「あてはまらない」に 1 点とした。

家庭の音楽環境

家庭の音楽環境について尋ねた質問において,今回は特に両親の音楽への関与を示す 4 つ の選択肢を使用した。これらは,選択肢が示す内容に「あてはまる」場合に○をつける形式 の 2 件法で回答を求めた。なお分析においては,○がつけられた場合を 1 点,○がつけら れない場合を 0 点とし,4 項目のデータを加算して一つの変数にしたものを使用した。

(3) 分析方法

大学における適応感と,それを予測すると思われる大学への進学理由について,本人の音 楽経験,家族のサポート,家庭の音楽環境からの影響を検討し,さらに 4 つの専攻別の比較 を行うために,Amos4.0 を用いて平均・共分散構造モデルを作成した。

なお,今回取り上げる 3 つの積極的な進学理由は,互いに中程度の相関があることが3.1

(および4.1)において示されているが,本節では,各進学理由の特徴をその他の要因との 関係において検討することを目的とするため,進学理由ごとにモデルを作成した。また,進 学理由,適応感および家族のサポートについては因子を想定したが,本人の音楽経験と家庭 の音楽環境については,観測変数をそのまま用い,他の要因との関係を検討した。

モデルの作成にあたっては,まず,家庭の音楽環境が,家族のサポートや本人の音楽経験 に及ぼす影響とともに,進学理由に与える影響を示すパスを入れた。次に,家族のサポート と音楽経験が,進学理由に与える影響を示すパスを入れた。また,進学理由が大学における

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適応感を予測するパスとともに,家族のサポートや本人の音楽経験が適応感に直接与える 影響について示すパスも入れた。

このような基本モデルにおいて,4 専攻群の中に一つも有意な値が示されなかったパスを 削除して,最終モデルを決めた。なお,音楽経験については,各進学理由への影響を示すパ スが有意ではなかった場合,観測変数自体をモデルから外した4

多母集団比較を行うにあたって,豊田(1998)を参考に,以下の制約を入れた。まず,平 均・共分散構造モデルを用いて因子の比較を行う上で,ピアノ群の因子の切片を 0 と固定 し,他の群の因子については,ピアノ群との比較で推定を行うことにした。また,因子間の 比較を行うために必要な,各因子から影響を受けている観測変数の切片はすべての群で等 しいという制約を入れた。さらに,因子の性質が群間で等質であるとみなして,ある因子が 観測変数に与える影響は,すべての群で同じであるという制約を入れた。因子および,各因 子から影響を受けている観測変数の誤差分散がすべての群で等しいという仮定も導入した。

その他,モデルの識別のために,各因子に関して観測変数への影響を示す係数のうち任意に 1 つを選び,その変数への影響を示す係数の値を 1 に固定した。

なお,観測変数としてモデルに取り入れた,家庭の音楽環境および,音楽経験については,

その平均値または切片について群間で等値の制約はおかず,自由に推定を行った。