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本研究における「学習内容」の構成要素についての考察

第2章 本研究におけるいじめの態様

第3節 本研究における「学習内容」の構成要素についての考察

本章においては、第1節において文部科学省のいじめの態様をもとにしながら、本研究に おけるいじめ態様を考察した。第2節においては、その考察をもとにいじめを類型化し、そ の学習テーマに応じたいじめ裁判例を考察し選定した。

本節では、いじめの態様と類型化、選定したいじめ裁判の判決書を確認しながら、仮説的 な段階として、本研究における「学習内容」の構成要素について考察し設定する。

ここまでは、いじめの態様を中心にしていじめの分類を行ってきた。そのいじめ態様につ いては、学習テーマゆえに、生徒たちの「学習内容」の構成要素となることは容易に予想で きる。ここでは、その「学習内容」の構成要素について考察していきたい。その際、予想さ れる「学習内容」の構成要素については、これまでの論者による研究成果をもとにして考察 する。この「学習内容」の構成要素についてこの段階で考察する理由は、第3章以後の判決 書教材に内包される構成要素や感想文記述における構成要素を抽出する際の指標となるか らである。

1 予想した「学習内容」の構成要素の考察

論者は、中野区中学校いじめ自殺事件の判決書教材を活用した授業の感想文の記述か ら,生徒たちの理解や認識を,「不法行為」「責任」「義務」「法的措置」「理解」「決意」

「対応考察」「体験」の8つに分類し,その特色を考察した82。本研究では、中野区中学校 いじめ自殺事件の判決書以外に5つの判決書教材を開発し活用するが、上記の研究成果を もとに、生徒たちはどのような「学習内容」の構成要素が習得されるのか、予想は可能で あろう。言うまでもなく、この8つの分類はそのまま「学習内容」の構成要素となるであ ろう。

以上の考察から、次の15の分類については、本研究で注目する「学習内容」の構成要 素として位置づけられるのではないかと考えられる。次頁の表4の左列に示す。

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<表4 本研究における学習内容の構成要素>

予想した「学習内容」の構成要素 本研究によって抽出された学習内容の構成要素

①「悪口」 「a 悪口」

②「無視・仲間はずれ、村八分」 「b 無視・仲間はずれ・村八分」

③「暴行・恐喝」 「c 暴行・恐喝」

④「物理的いじめ」 「d 物理的いじめ」

⑤「いじめとふざけ」 「e いじめとふざけ」

⑥「性的嫌がらせ」 「f 性的嫌がらせ」

⑦「特別支援いじめ」 「g 特別支援いじめ」

⑧「不法行為」 「t いじめの犯罪性理解」

⑨「責任」 「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義務」

「j 被害者保護者の保護監督義務」「k 同級生の不作為と対応考 察」

「m 被害者自身の問題点」「o 加害者対応の批判」

「s 被害者対応の考察」「vいじめ責任についての考察」

⑩「義務」 「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義務」

「j 被害者保護者の保護監督義務」

⑪「法的措置」 「l 被害者救済の法的措置」

⑫「理解」 「n 被害者への共感・心情理解」「r いのちを奪ういじめの理解」

「t いじめの犯罪性理解」「w 被害者対応としての抵抗の理解」

「x 共同不法行為としてのいじめ」「y (精神的)後遺障がい」

「z1 裁判と損害賠償」「z2 いじめのきっかけ」「z3 個性といじ めの関係」

⑬「決意」 「p いじめ防止抑止の決意」

⑭「対応考察」 「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義務」

「j 被害者保護者の保護監督義務」「k 同級生の不作為と対応考 察」

「o 加害者対応の批判」「s 被害者対応の考察」

「w 被害者対応としての抵抗の理解」

⑮「体験」 「u いじめ体験」

予想外 「q いじめ授業への感謝」

上記の表の左列①~⑦については、本研究においていじめの態様として分類したもので あり、この態様に対応した判決書教材を準備するために、生徒たちの感想文記述において もその影響を受け、学習内容の構成要素となりうるのではないかと予想される。

「⑧不法行為」については、いじめが犯罪を含む行為であることを授業構成の開発におい て学習する場面を準備するために、構成要素になるのではないかと考えられる。

「⑨責任」については、民事裁判の判決書を開発する教材であるために、関係者の法的な

「責任」の言及を含む感想文が見られ、構成要素になると考えられる。

「⑩義務」については、いじめ裁判では,学校・教師の安全配慮義務に関する問題が一つ の争点となっている。また保護者のわが子に対する保護監督義務についても争点になって いる。したがって安全配慮義務や保護監督義務に関わる生徒の感想文記述も見られ、構成 要素になると考えられる。

「⑪法的措置」については、実際の授業において,「欠席措置」について行政文書などを 利用して,これが法的権利としての欠席であることを教えている。そのため、学習内容の 構成要素になると考えられる。

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「⑫理解」については、いじめについてのさまざまな諸要素についての理解と考えられ る。中野区中学校いじめ自殺事件の授業感想文では、「いじめの悲惨さなどの実態」や

「一般的ないじめの背景やいじめのひどさ」を書いているものが多く見られた。そのた め、この理解については、内容に応じてさらにその学習内容の構成要素は確認されると考 えられる。

「⑬決意」、「⑮体験」については、いじめ判決書教材の授業実践を重ねる度に、その感想 文記述が見られる。そのために、構成要素に位置づけられると考えられる。

「⑭対応考察」については、いじめについてどのような対応を図るべきなのかを考察した 記述が見られるが、関係者においては周囲の同級生や被害者、加害者など、感想文の内容 によって構成要素はさらに分類され、確認されると考えられる。

以上、本研究において注目するいじめ判決書教材に準備されている「学習内容」の構成 要素であるが、上記の15に関連する要素が抽出できると考えられる。その要素は、さら に複雑に多重化し、確認されると予想されよう。つまり、15の構成要素がそのまま抽出で きるのではなく、より一層複雑化すると考えられる。

以上、本研究における「学習内容」の構成要素について仮説的に考察した。

2 本研究によって抽出できた学習内容の構成要素

第3章から第8章については上記の①~⑮を指標にして構成要素を抽出した。その結果 は表4の右列に示した。表に見られるように、予想した15の構成要素は、「a 悪口」から

「z3 個性といじめの関係」まで28の構成要素となった。

表4は、予想できた「学習内容」の構成要素と本研究によって整理できた学習内容の構 成要素との関連を示している。

予想できた構成要素を指標にして、本研究における学習内容の構成要素の抽出は行われ た。第3章から第8章において、具体的にその抽出と分析を行い確認していくが、ここで は予想できた「学習内容」の構成要素と抽出できた構成要素の関連についてあらかじめ説 明しておきたい。

表4を見ると、いじめ態様に関わる①「悪口」、②「無視・仲間はずれ、村八分」、③

「暴行・恐喝」、④「物理的いじめ」、⑤「ふざけといじめ」、⑥「性的嫌がらせ」、⑦「特 別支援いじめ」については、本研究におけるいじめ態様の学習テーマであり、予想通り構 成要素として抽出できている。

⑧「不法行為」については、「t いじめの犯罪性理解」として抽出できた。

⑨「責任」については、「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義務」

「j 被害者保護者の保護監督義務」「k 同級生の不作為と対応考察」「m 被害者自身の問題

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点」「o 加害者対応の批判」「s 被害者対応の考察」「vいじめ責任についての考察」として 抽出できた。

⑩「義務」については、「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義務」

「j 被害者保護者の保護監督義務」として抽出できた。

⑪「法的措置」については、「l 被害者救済の法的措置」として抽出できた。

⑫「理解」については、「n 被害者への共感・心情理解」「r いのちを奪ういじめの理解」

「t いじめの犯罪性理解」「w 被害者対応としての抵抗の理解」「x 共同不法行為としての いじめ」「y (精神的)後遺障がい」「z1 裁判と損害賠償」「z2 いじめのきっかけ」「z3 個性といじめの関係」として抽出できた。

⑬「決意」については、「p いじめ防止抑止の決意」として抽出できた。

⑭「対応考察」については、「h 学校教師の安全配慮義務」「i 加害者保護者の保護監督義 務」「j 被害者保護者の保護監督義務」「k 同級生の不作為と対応考察」「o 加害者対応の批 判」「s 被害者対応の考察」「w 被害者対応としての抵抗の理解」として抽出できた。

⑮「体験」については、「u いじめ体験」として抽出できた。

「q いじめ授業への感謝」については、予想外のものとして抽出できた。

このように本研究によって抽出できた構成要素については、第3章から第8章におい て、各章第2節と第4節に掲載した表に示している。それらの表の右列に示されたキーワ ードが抽出できた構成要素である。

判決書教材と感想文記述にもとづいた具体的な構成要素の抽出および分析については、

第3章から第8章において取り上げて考察していきたい。

1 市川須美子『学校教育裁判と教育法』三省堂、2007、p.14

2 森田洋司・清水賢二『いじめ 教室の病い』金子書房、1986、p.58

3 森田洋司・清水賢二『いじめ 教室の病い』金子書房、1986、pp.49-60

4 国立教育政策研究所生徒指導研究センターは 2006(平成 18)年 2 月 21 日に「平成 17 年度教育改革国 際シンポジウム」として、「子供を問題行動に向かわせないために~いじめに関する追跡調査と国際比較 を踏まえて~」を開催した。森田洋司はそのシンポジウムに「対談」「パネリスト」として参加した。そ の際、同センターの滝充総括研究官は、森田の研究に影響を受けたことを認めている。なお、この調査で は、いじめ態様の調査項目は、「Bullying Scale 仲間はずれ、無視、陰口 * by excluding、ignoring you * からかう・悪口 * by teasing、 calling names * かるくぶつかる・たたく・蹴る ** by pushing、hitting (jokingly) ** ひどくぶつかる・たたく・蹴る by pushing、hitting (on purpose) 金銭強要・物品破壊 by taking and damaging your property パソコンや電話で by using computer、

email」となっており、2006 年度からの文部科学省による調査項目と似通っている。国立教育政策研究 所・文部科学省『平成 17 年度教育改革国際シンポジウム 報告書 子どもを問題行動に向かわせないため に-いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて-』2007 年 3 月

5 浪本勝年・箱田英子・岩崎政孝・吉岡睦子・船木正文『教育判例ガイド』有斐閣、2001 においては、

「第 6 章子どもの心身の尊厳(その2)いじめ」については、岩崎政孝が執筆している。/喜多明人・橋 本恭宏・船木正文・森浩寿編『解説学校安全基準』不磨書房、2008 において、「学校安全判例を読み解く

①最近の主要判例(平成以後)(9)いじめ」については、執筆者は明記されていないが、橋本恭宏である ことが文脈から読み取れる。また、船木は両文献の編集著作に関わっているために、対象とする研究者と して船木正文も取りあげる。

6 伊藤進・織田博子『実務判例解説学校事故』三省堂、1992、pp.341-343