本節では、京都市小・中学校いじめ事件を活用した授業実践(2011年10月実践、公立 中学校1年2クラス、63名。欠席は7名。そのために感想文の総数は56名となってい る。授業者 新福悦郎)におけるまとめの感想文記述を分析分類し、構成要素を抽出す る。
第3節で本いじめ判決書教材を活用した授業実践についてその特色を説明したように、
この授業によって、生徒達は言葉環境の大切さを意識化し、いじめを予防するためには言 葉環境の改善を図る必要があることを学ぶことができたと考察できた。
その考察によって、本判決書教材を活用した授業では、構成要素として「a 悪口」「p いじめ防止抑止の決意」などが抽出できるのではないかと予想される。
本節では、生徒たちがどのような内容を学び考えたのかについて、その学習内容として の構成要素を明らかにする。そして、その学びが本研究におけるいじめ態様やいじめ責任 等の構成要素との関連で、どのような共通の構成要素があり、また本判決書を活用すると どのような特色ある構成要素が準備できるかを考察する。
なお、感想文の分類とキーワードの妥当性については、小学校教諭1名、中学校教諭1 名、博士後期課程院生1名、大学准教授1名、大学院教授1名と検討を加え(2012年5 月)、活用について妥当だと判断した。
1 感想文記述によるキーワードと抽出できる構成要素
次の表12は、一連の授業感想文記述を分析したものである。まず、感想文の記述をキ ーワードにした。感想文記述に沿ってキーワード生成したために、一つの感想文から数種 類のキーワード抽出も行った。そのキーワードから構成要素を抽出し、分析した。本章で 開発したいじめ判決書教材に準備された構成要素が、授業実践を通して生徒たちにどのよ うな構成要素が抽出できるのかを分析するためである。その内容は次の表12に示した。
左列が生徒の番号で、2番目の列が感想文記述の番号である。3番目の列が感想文記述で あり、4番目の列がその感想文記述から生成したキーワードである。右端の列が、そのキ ーワードから抽出した構成要素である。
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<表 12 「京都市小・中学校いじめ事件」の授業感想文とキーワードによる抽出した構成要素>
生 徒
番号 感想文記述 キーワード 構成要素
A1 ① この授業を学んで、考えたことは、教師が対応すればいじめ はあそこまで続かなかったんじゃないかと思いました。
教師の過失と責任 h 学校教師の 安全配慮義務
② 周りの人も、教師に言って、加害者のいじめをやめさせれば 良かったと思います。
他の生徒の対応考察 k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
③ 被害者にとっては、本当につらいことだと思います。こんだ けやられたら、学校にも行きたくなくなるし、毎日が最悪な 気分になるので、いじめはないほうがいいと思います。
被害者の心情理解と 共感、
n 被害者への 共感・心情理解
④ 加害者だって、被害者が傷つくことを考えて、あんなことを しなければ良かったと思います。
加害者の行動批判 o 加害者対応 の批判 A2 ① いじめということは、周囲の人が止めておけば、いじめとい
うのはなくなったんじゃないかと思いました。あと、周りの 人は、見て見ぬふりをするのと、とてもおかしいと思いまし た。周りの人は、止めるか、先生に早く言えば、こんなに悪 化しなかったと思います。
他の生徒の不作為と 対応考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
② あと、先生ももっと早く気づいていたら、いじめは悪化しな いと思います。
学校教師のいじめ認 知の対応不足と責任
h 学校教師の 安全配慮義務 A3 ① 3時間のいじめの授業を通して分かったことは、たくさん
あります。加害者は、被害者、被害者の親、自分の親の気持 ちを何一つ考えていないと思いました。加害者もその人た ちの身になって考えれば、いじめはなくなると思います。
加害者の行動や心情 の批判
o 加害者対応 の批判
② そしていじめを見かけたら、まず、頼れる人に言うのが、一 番いいと自分は思いました。この学校もいじめがなくなれ ばいいなと思いました。
他の生徒たちの対応 考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
A4 ① いじめはやっぱりやってはいけないと改めて感じた。加害 者がいじめをしていることを教師がもっと早く知っておけ ば、こんな大きないじめにはならなかったと思う。
学校教師のいじめ認 知の対応不足と責任
h 学校教師の 安全配慮義務
② 周囲の人は、注意することは難しいが、先生などに教えてい れば、もっとよかったと思う。
他の生徒の対応考察 と批判、
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
③ また、被害者も先生、保護者に相談して、どのような対応を すればいいかなどを聞いてみれば良かったと思う。
被害者対応考察と批 判、
s 被 害 者 対 応の考察
④ でもやっぱり悪いのは、加害者とその保護者だ。加害者はな ぜこのようないじめをしてしまったのか。その保護者も自 分の子どもに注意しなかったのか、注意していればこのよ うないじめはなかったと思う。
加害者保護者の日常 的な監督の義務違反
i 加害者保護 者 の 保 護 監 督 義務
⑤ これからは、自分の言葉遣いに気をつけて日々楽しい生活 を送りたい。
言葉遣いに対する今 後への決意
p い じ め 防 止・抑止の決意 A5 ① いじめの授業で学んだことは、だれかがいじめられていた
ら周囲の人は、いじめをしている人に注意をしたり、先生に 言うべき。
他 の 生 徒 の 対 応 考 察、
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
② 「キモイ」という言葉を言うだけで、だれかが傷つくことを 学んだ。
悪口のいじめ問題理 解
a 悪口
③ 3人の保護者もしっかりと注意して、いじめをやらせない ようにすれば良かったと思う。
加害者保護者の日常 的な安全配慮義務違 反
i 加害者保護 者 の 保 護 監 督 義務
④ 教師も被害者だけにつくのではなく、3人の加害者にもつ いたら暴力などはしなかったと思う。
学校教師のいじめ対 応の組織的問題点
h 学校教師の 安全配慮義務
⑤ ぼくもキモイという言葉を使うので、遣わないようにした い。
言葉遣いに対する今 後への決意
p い じ め 防 止・抑止の決意 A6 ① ぼくはこのいじめの授業で、一人の人にだけ、いじめをする
のは卑怯だと思いました。周囲の人々は何もせず、ただ見と くことしかできなかったのかなと思いました。
他の生徒の不作為と 対応考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
② 教師ももう少し対応を早くしたり、いじめにもっと早く気 づいて加害者の3人にもひどいいじめは防ぐことはできた と思います。
学校教師の組織的対 応と配慮義務の過失
h 学校教師の 安全配慮義務
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③ 他にも「キモイ」という言葉、人がいやがることなどはしな いように、一人一人が心がけていけばよかったと思います。
悪口によるいじめ問 題の理解
a 悪口 A7 ① 今日の授業で教師が2,3人ついていれば良かったと思い
ました。それは、教師が入れば、加害者の方も被害者の方も いじめに合わなくていいからです。教師も早く帰らないで、
加害者が見張りをしていた方が良かったと思いました。
学校教師の組織的対 応と配慮義務の過失
h 学校教師の 安全配慮義務
② 一方、周囲の人もみてるだけで注意をしたり、先生に言った りすればよかったと思います。なぜ、周囲の人は止めたり、
助けたり、先生に言いに行かなかったのかと思いました。授 業で周囲の人の役割が分かったように思いました。
他の生徒たちの不作 為と対応についての 考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
A8 ① いじめの授業を通して、ぼくは、いじめは言葉がきっかけと してあるのだと思いました。言葉は生きていると先生が言 っていたので、ぼくはびっくりしたけど、よく考えれば、言 葉は人を傷つけたり、あるいは、人をほめたりするから、人 にいやなことを言えば、傷つくということも分かりました。
言葉をきっかけとし たいじめ理解と言葉 の大切さ理解、
a 悪口
② これからは、自分の言動・行動に気をつけて、生活していき たい。
今後への言動、行動 への決意
p い じ め 防 止・抑止の決意 A9 ① ぼくはいじめというのは、だれも得をしなくて、むなしいだ
けだなあと思いました。なぜなら、加害者だって、その時は 楽しいのかもしれないけれど、罰金して、親にも迷惑やショ ックを負わしているし、被害者は学校に来たくてもないほ ど、苦しい思いをしているし、周囲の人、教師にとっても、
気まずく、してほしくないことだと思うからです。ぼくはい じめが起きるとみんなが楽しく学校生活を送れないので、
なくなればいいと思います。
いじめ関係者の心情 理解を含むいじめの 総合的理解
n 被害者への 共感・心情理解
A10 ① いじめの授業で、おもにいじめにつながるのは、「キモイ」
などの悪口から始まったということがわかった。
言葉をきっかけとし たいじめ理解、
a 悪口
② そして、周囲の人は、見て見ぬふりをせずに、それを見たな らば、先生に言うなどの行動をとった方が良かったんじゃ ないかなあと思った。
他の生徒の不作為批 判と対応考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
③ 先生は、周囲をよく見て、早くにいじめという行為がないこ とを確認した方が良かったんじゃないのかと感じた。
学校教師のいじめ認 知の対応不足と責任
h 学校教師の 安全配慮義務 A11 ① もし、自分がいじめを受けて、被害者になったら、初めの時
は我慢し続けるが、数週間後には不登校になっていると思 う。そうすれば、いやなことをされたり、言われたりするこ ともなく、心を落ち着かせることができるからだ。しかし、
なぜ、A はいやなことをやられたり、言われたりされつつも、
学校に通い続けたのかが疑問に思う。被害者の A も学校に 通うことを止めたら、加害者もいじめをやめていったのに。
けれど、学校に行くことをやめると、今度はそのことでいじ められ始めるのかと A は思っていたのかもしれない。
被害者の法的措置に ついての不登校につ いての考察
l 被害者救済 の法的措置
A12 ① いじめ授業を通して、いじめがこんなにも重い罪を受ける なんてことを初めて知りました。
いじめの犯罪性理解 t いじめの犯 罪性の理解
② ものをかくす、ものを捨てる、ものを壊す、暴行、無視する、
「キモイ」という言葉を言う、脅すということをするのは、
とても悪い犯罪だと思います。
モノを隠す,ものを 捨てる、ものを壊す ことのいじめ理解
d 物理的いじ め
③ ものをかくす、ものを捨てる、ものを壊す、暴行、無視する、
「キモイ」という言葉を言う、脅すということをするのは、
とても悪い犯罪だと思います。
暴行によるいじめ c 暴行・恐喝
④ ものをかくす、ものを捨てる、ものを壊す、暴行、無視する、
「キモイ」という言葉を言う、脅すということをするのは、
とても悪い犯罪だと思います。
無視によるいじめ b 無視・仲間 はずれ・村八分
⑤ ものをかくす、ものを捨てる、ものを壊す、暴行、無視する、
「キモイ」という言葉を言う、脅すということをするのは、
とても悪い犯罪だと思います。
悪口や脅しによるい じめ
a 悪口
⑥ これからは、もっと強い気持ちをもって、もしこんなことを されている人がいたら、思い切って止めに入ったり、注意し たり、先生に言ったりすればいいと思います。
他の生徒たちの対応 についての考察
k 同級生の不 作 為 と 対 応 考 察
A13 ① まず、最初で学んだことは、加害者が損害賠償というお金を 払わないといけないことがわかった。
いじめの法的問題に ついての理解、
z1 裁判と損害 賠償