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有機エレクトロニス材料の新展開

ドキュメント内 表紙 (ページ 36-41)

電界効果型ナノ構造 光機能素子の集積化技術開発

4.  有機エレクトロニス材料の新展開

π共役有機半導体の秘めたるポテンシャルを追求す る −有機ナノ薄膜プロセスと電界効果デバイスの開 発−

(1) はじめに

 時代は21世紀に突入してはや5年が経ち、現 代文明を象徴するコンピューター・通信・マルチ メディアなどはめざましい発展を遂げており、こ の飛躍的な発展を支えているのが、シリコンを 中心とした半導体デバイスの進歩である。これま

では、デバイスの特性をいかに向上させるか・い かに集積化させて小さくするかという基本方針に 沿って開発されてきた。こうした機械・コンピュー ター中心の流れの中で、より人間との親和性を重 視する流れも出てきており、低環境負荷、フレキ シブル性、生体適合性、省エネルギーの観点から、

有機半導体を用いたデバイスの研究開発が近年盛 んに進められている。炭素・水素・酸素・窒素を 主体としているので、軽くて資源枯渇のおそれが なく、燃やしても問題が少ない。また柔らかくて 低温合成可能であるなどの特徴もある。

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 こうした数々のメリットをもった有機材料だが、

まだ電子・デバイス材料としての利用は始まった ばかりである。無機材料と異なる点として、有機 材料は数多くの誘導体があり、様々な工夫を分子 構造に取り入れることができる反面、余りにも種 類の多い材料をなかなか系統的な研究が進めにく いという問題もある。一番の問題点として、デバ イスは、有機薄膜・電極など様々な薄膜を組み合 わせてからしか、その特性を調べられない。この とき品質のよい薄膜が得られなければ、特性が悪 いどころか動作しない。有機材料の合成の歴史は かなり長いが、有機の薄膜作りはまだまだ始まっ たばかりである。高温超伝導体の発見に伴って酸 化物薄膜の品質が劇的に向上したのと同じように、

有機エレクトロルミネッセンス(EL)研究の活性 化に伴って有機薄膜の品質も向上しつつある。

 我々のグループでは、酸化物薄膜の合成方法を 手本にして、まず有機の高品質薄膜の作製技術を 確立し、有機半導体デバイスのポテンシャルを最 大限に引き出す研究を進めている。 

(2)  原子レベル平坦基板上でのペンタセン単分子層 のコンビナトリアル成長観察 (鯉沼 G)

 まず、有機材料を薄膜化するにあたって、基板 上にどのような成長をしているかを詳しく調べる 必要がある。我々は、可動マスクを用いて初期成 長観察を行う一般的な方法を開発した。この方法 は、PEEM や LEEM などのような高価な同時観察 装置に頼ることなく、安価でかつ現有の装置に導 入することができる(文献8)。この方法を用いる ことにより、ペンタセンは第一層目が2次元的な 成長をするのに対して、2層目以降は3次元的な 成長をすることがわかった(図6)。こうした知見 は、成長条件にフィードバックされ、より品質の 高い膜を作製が可能となる。

(3)In-situ デバイスチャンバーの作製 (鯉沼 G)

 有機半導体材料は、空気中の酸素・水などに弱く、

せっかくデバイスを作っても大気中にさらすとす ぐに劣化する。これは、人間でいえば、頭蓋骨な しで脳がむき出しになっているような状態である。

そのため、有機デバイスを真空中で作製してその 特性を評価したり、あるいは、酸素・水を遮断す る保護膜をつけて大気中に取り出して測定したり することが必要となる。我々は、有機材料MBE 装置とパルスレーザー堆積装置を連結するととも

に、マスク組み替え機構による自在なパターニン グが可能な機構を組み込み、in-situ(大気にさら すことがない)デバイス作製装置を開発した(図7文献9)。この装置で、これまで報告例のないトッ プコンタクト型のC60電界効果トランジスタを作 製することにより、1.5cm/Vsを超える移 動度を観察した。この値はn型有機半導体では最 高の移動度であり、有機材料は、p型n型ともに 既に液晶ディスプレイで実用化されているアモル ファスシリコン薄膜トランジスタの移動度を超え たことになる。

(4)  液晶ポリマーを用いた有機保護膜の開発 (鯉 沼 G)

  液 晶 ポ リ マ ー は 耐 熱 性 に す ぐ れ、 ポ リ イ ミ ドに変わる次世代エンジニアプラスティックと して注目されている。ポリイミドに比べて高い 耐湿性があることや、ポリイミドの強い茶褐色 とは異なってクリーム色をしていて比較的透明

図6.  原子レベル平坦性基板上のペンタセン単分子 層 の初期成長の様子

図7.In-situ デバイス作製装置の外観図

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性 が あ る こ と な ど の 利 点 が あ り、 薄 膜 化 の 方 法 が 探 ら れ て き た。 特 に 気 相 で 薄 膜 化 で き れ ば、有機半導体の保護層などの応用が開ける。

我々は、単に加熱するだけでは炭化してしまう液 晶ポリマーをパルスレーザーで瞬時に蒸発させる ことによって、液晶ポリマーの薄膜化に初めて成 功した(文献10)。この膜は残念ながらまだ透明で はないものの、ペンタセントランジスタの劣化に 対して保護効果があることが見いだされた。現在 特許を申請し、周辺材料の開発を行っている。

(5)  pn制御を目指したチオフェンベースのπ共役オ リゴマーの合成 (福元 G・鯉沼 G)

 半導体デバイスを制御する一つのキーポイント して、p型とn型をいかに制御できるかがある。

代表的な導電性高分子であるポリチオフェンは p 型特性を示し、オリゴチオフェンにペンタフルオ ロフェニル環を導入することにより、逆に n 型特 性を示すことも報告されている(T.  Marks et  al.,  Angew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 3900)。オリゴチ オフェンの両末端に電子欠乏環、例えばピリジン 環を導入することにより、同型の誘導体材料でF ETのpn特性を制御できる可能性がある。また、

チオフェン環とピリジン環の結合順序を並びかえ ることによってFET特性は大きく変化すること も考えられる。以上の設計思想に基づいて反応経 路は、①少ない種類の原料、②短い反応経路、③ 副生成物の抑制、④高収率、⑤様々な目的誘導体 などの観点で検討を行い、有機金属錯体を用いた C-C カップリング反応を主体に組み立てた(図8)。 現在のところ、4種類のチオフェンベースのπ共 役ピリジンオリゴマーを収率よく合成できている。

得られた分子の固体状態の構造解析を行ったとこ ろ、5a、5b(芳香環が5つ結合した分子)は結晶 性が高く、6量体である 6a、6b は結晶性が低いこ とを明らかにした。

(6) 単一ペンタセン結晶粒の電気特性計測に成功

(和田 G・鯉沼 G)

 半導体デバイスは結晶粒界が存在することに よって、その性能が低下することが知られている。

有機薄膜の高品質化は日夜進められているが、ま だまだ単結晶といえるにはほど遠い状態である。

そこで、多くの結晶粒からなる薄膜でも一つ一つ の結晶粒は単結晶であるので、単一結晶粒のデバ イスを評価することは有機半導体のポテンシャル を探る上でも重要である。しかし、実際に有機薄

図8、 有機金属錯体を用いたチオフェンベースπ共役オリゴマーの合成経路

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膜において単結晶の抵抗や結晶粒界の抵抗を定量 的に計測した例は少ない。そこで本研究ではこれ まで培ってきたペンタセン薄膜成長技術と 100nm 級微細加工技術を駆使し、単一結晶粒および単一 結晶粒界の抵抗測定を行った。

a)(微細探針パターンの作製)

 ペンタセン薄膜は電極材料である金属上では結 晶粒が小さくなってしまうが、我々は幅 100nm 程 度の細い金属パターン上ではシリコン酸化膜上と 同様のサイズの結晶粒が成長することを新たに見 出した。図9(a)のような幅 100nm、間隔 3 μm の微細電極を形成して、縦横斜合計8方向に電流 を流せるような構造を準備し、結晶粒径 5 μm の ペンタセン薄膜結晶が成長させた(図9(b)) 9(c)に示すような8つの電極上に二つの単一結 晶粒がのっている構造になっており、単一結晶粒 の特性や結晶粒界の特性を各々計測できる。

b)(単一結晶粒トランジスタの特性)

図10(a)は単一結晶粒のトランジスタ特性、(b)

一つの結晶粒界をもつトランジスタ特性で、前者 の方が約20倍電流が流れやすいことが分かった。

単一結晶粒および単一結晶粒界抵抗は約 10M Ω、

結晶粒界抵抗は約 100M Ωと算出され、薄膜の高 品質化によって結晶粒界を低減できれば、十倍以 上の特性向上を図れることが判明した(文献11)

図9  (a)微細探針先端構造(走査型電子顕微鏡像)

(b) 有機薄膜堆積後の原子間力顕微鏡像   (c) 微細電極上の有機結晶粒の様子

図 10 (a) 単一結晶粒特性、 抵抗10MΩ     (b) 単一結晶粒界特性、100MΩ

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