名古屋大学 大学院工学研究科 教授
河本 邦仁 Kunihito Koumoto
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研究代表者
図 1 Nb-、 La- ドープ STO 系エピタキシャル膜の ZT 河本邦仁チーム
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するが、〜 700 K より高温では粒界の影響が弱まっ て、1,000 K で ZT=0.34 とほぼ良質薄膜の性能を 発現できることを明確に示した。この成果の意義 は大変大きい。何故なら、p型酸化物材料の代表 である層状 Co 酸化物系では、単結晶では ZT=1 を超える性能を実現しているものの、多結晶セラ ミックスにすると ZT 〜 0.3 程度まで低下してしま うからである。今後、STO 系と Co 酸化物系にお ける粒界の役割を解明することが、セラミックス 材料の実用化に重要であることを示すことができ た。
(2) 界面2DEGによる巨大熱電変換性能の発現 (名大グループ)
誘電体界面に高濃度の電子ガスを 2 次元的に生 成させると、量子閉じ込め効果によって巨大なゼー ベック係数が発現することを予測した。SrTiO3単 結晶基板上に TiO2( アナターゼ ) エピタキシャル 膜を PLD 法で形成することにより、界面に高密度 の 2 次元電子ガス(1021cm-3オーダー)を生成さ せることに成功した(図2)。この薄膜素子は室温 で、導電率〜 3 × 105 Sm-1、ゼーベック係数〜 1.0 mVK-1という想像を絶する特性を示し、単結晶の 熱伝導率を使って見積もると ZT 〜5以上という 極めて高い熱電性能を示すことを発見した。
(3)熱電半導体の熱電性能の起源に関する理論研究
(東北大グループ)
固体中の熱起電力は熱勾配によって電子の運ぶ エントロピーを直接反映している.電子は電荷の 自由度だけでなく,スピンの自由度を持っている.
さらに,結晶中では原子軌道もまた電子の自由度 としての役割を担う.これらの自由度が熱電係数
にも直接反映する.コバルト酸化物が示す磁性と 伝導の「異常」は熱起電力に限らない.Na0.68CoO2 では異常なホール効果が観測されている.この系 のホール係数はおよそ 200K まで負で,余り温度 に依存しないが,200K 以上 500K までほぼ温度に 線形な依存性を示し,ホール係数が古典論の予想 の実に8倍もの巨大な値になる.これらのコバル ト酸化物では,コバルトイオンの形式価数は +3.3 価程度になっており,3 価のイオンと 4 価のイオ ンが混合している.これらのイオンの 3d 軌道の電 子数はそれぞれ 6 ないし 5 である.このような状 況で,電気伝導がコバルトイオンの 3d 軌道と酸素 の 2p 軌道をどのようにたどるかを考察し,高い熱 起電力の起源を推定した(図3)。
(4) ナノブロック・インテグレーションの物理的基 礎の確立(早大グループ)
現在までに 7 〜 8 種類の層状コバルト酸化物 が見つかっており,それらはいずれも CdI2型の 図2 TiO2/SrTiO3界面に生成する高密度 2 次元電子ガス
図3 Kagome 格子内のホッピング伝導を想定した理論 によるホール係数の温度依存性の説明
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0 0.5 1.0 1.5
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CoO2三角格子を持っている。これらを用いて,巨 大な熱電効果を示す CoO2面の機能を損なうこと なく他の物性の制御が可能である。図4に,様々 な層状コバルト酸化物の面内方向の熱伝導率を示 す。より複雑なブロックを持った物質が,より低 い熱伝導率を示している。これは,電気伝導層で ある CoO2層を いじらず に,格子熱伝導率が 制御できることを意味する。他の熱電材料,たと えば充填スクッテルダイトでは,充填されたラン タニドによるキャリアを補償するために,価電子 帯を構成する Co イオンの一部を Fe イオンで置き 換えるなどが必要である。このように,CoO2ブ ロックとそれ以外のブロックの自由な組み合わせ によって望みの材料を設計することがナノブロッ ク・インテグレーションの本質である。ナノブロッ クは単位胞と原子の間に存在する固体の新しい階 層であり,従来の機能性材料を超える設計原理を 秘めた新しい概念である。
(5) 新規熱電酸化物半導体,(Co.Cu)-221,の発見
(東北大グループ)
Co-121 系の熱電酸化物半導体の Co を Cu で部分 置換する実験をする途上で新規の熱電酸化物半導 体を単離することができた(図5).この結晶の化 学組成は [Ca2(Co1-yCuy)2O4]p[CoO2] 但し,p=0.62 で ある.この酸化物のゼーベック係数は Co-121 より も 20%程高くかつ電気抵抗率は Co-121 に近いの で,Co-121 よりも熱電性能が優れている.この結 晶は室温において常磁性磁気異方性もあることか ら,結晶粒の大きい試料を磁場中で配向させ,さ
らに焼結処理をすることにより,より能力の高い 熱電素子を作ることが可能である.
(6) 梯子格子をもった複合酸化物熱電半導体の研究
(東北大グループ)
超伝導転移温度が低い超伝導銅酸化物の一つに 梯子格子を有する複合酸化物系がある.本研究で 取り上げた [(Sr1-xCax)2CuO3]γ[Cu1-yCoyO2] は2足梯 子格子をもった複合酸化物半導体である.この結 晶の伝導層は Cu2O3梯子格子であり,CuO2の1次 元チェーン層が複合している.この結晶は以前よ り比較的高いゼーベック係数を有することが知ら れていたので,銅イオンを一部 Co イオンで置換 したり,Sr イオンを一部 Ca イオンで置換するこ とにより熱電性能の向上を図った.研究の結果,
Sr は最高 80%まで Ca で置換が可能だったが,Co は 20% 程度までしか置換ができなかった.その結 果,熱電性能は Co 置換量と Ca 置換量が共に 20%
程度の時に最高になることが分かった.
(7) 非コバルト酸化物によるナノブロックの探索
(早大グループ)
層状ロジウム酸化物 ( B i , P b )2 - xB a2R h2O8は B i1 . 6P b0 . 4S r2C o2Oy単結晶の CoO2層を RhO2層に 置き換え,Sr を Ba に置き換えた構造を持った物 質であり,現在のところ唯一つのミスフット型の 非コバルト酸化物である。
図6にその焼結体試料における抵抗率および熱 起電力を示す。抵抗率は室温で約 20 m Ω cm,50 K 程度まで金属的伝導を示す。熱起電力は室温で 100 μ V/K に達し,酸化物としては大きな値を示 図4 さまざまな層状コバルト酸化物単結晶の面内熱伝導率 図5 (Co.Cu)-221 の構造
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す。温度依存性は前節で議論したような活性化型 ではなく,ポーラロンは形成されていない。実際,
図6のデータは,類似組成の層状コバルト酸化物 のデータと同程度であり,酸化物としては優れた 熱電特性を示す
(8) ナノボイド構造制御による選択的フォノン散乱と 熱伝導率低減 (九大グループ)
フォノン散乱のみを選択的に増強させるフォノ ン散乱ブロックの具体的な構造設計として、緻密 ZnO マトリックス中へのナノボイド構造の導入を 詳細に検討した結果(図7)、顕著なフォノン散乱 の選択的増強が得られるのは、ナノボイドを 1014
個 /cm3オーダーの高い数密度で分散させた場合 であることを見出した。この数密度の実現には 100nm オーダーのナノボイドの均一分散が必要で あり、引き続きナノボイド構造形成の条件最適化 を目指す。現在のところ、ZT=0.44 @ 1,000℃を達 成している。
(9) 格子欠陥の無秩序化による選択的フォノン散乱 ブロックの設計 (九大グループ)
フォノン散乱ブロックの新しい設計指針として、
格子欠陥、特に酸化物において不可避な酸素イオ ン欠損を利用した、アニオン副格子の無秩序化に よる選択的フォノン散乱の可能性を追求している。
酸素イオンサイトのランダム化によるフォノン散 乱の増強を、酸素分圧や温度の変化に伴う熱拡散 率の可逆的な増減として、明確に捉えることがで きた(図8)。
(10) コンビナトリアル探索技術の高度化 (産総研グループ)
これまで、溶液原料を用いた高速合成法での律 速は混合溶液をアルミナ基板上へ塗布する段階で あった。この課題を克服するため、調製装置の製 図6 Bi2-xBa2Rh2O8焼結体試料の熱電特性
図7 マトリックス中にナノボイドを分散した ZnO 系 セラミックスの熱伝導率
図8 SrCo0.7Fe0.3O3試料を Tq からクエンチし、 室温で 測定した熱拡散率
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造元であるバイオテック株式会社と共同で、96 種 類の試料を同時に基板上へ塗布する装置を開発し た(図9)。これにより 45 分を必要とした溶液の 塗布が 1 分以内で完了することが可能となった。
基板についてもアルミナ基板以外で、より良質の 厚膜試料が作製可能な素材の検討を行った。その 結果、ジルコニア基板上で良質の厚膜が作製でき、
ゼーベック係数評価の効率化も可能となった。n 型 Ni 系酸化物の特性向上のための最適組成探索 をコンビナトリアル技術により行った。その結果、
La0.9Bi0.1NiO3で最も高い出力因子を示した。
(11) Ca3Co4O9セラミックスの高性能化に成功 (産総研グループ)
a) 結晶粒経を制御した Co-349 焼結体の作製 C o -349 焼結体の作製にあたり、焼結前の前駆 粉末の粒径及び形状が焼結体の熱電特性に与える
影響について調べた。前駆粉末は単結晶合成法と して用いられる、フラックス法により作製した。
フラックスとして K2CO3と KC lの混合物を用い た。フラックスと C o -349 粉末の重量比により得 られる Co-349 結晶の粒経を 2 〜 20mm で制御する ことができた。平均粒径は Co-349 粉末に対するフ ラックスの混合割合が高いほど大きくなった。こ れらの前駆粉末をホットプレス法により焼結し、
ゼーベック係数と電気抵抗率を測定した。その結 果、ゼーベック係数は前駆粉末の結晶粒径によら ず全ての試料でほぼ同じ値となったが、電気抵抗 率は前駆粉末の平均粒径が 7mm の時に最も低く なった (図10 (a))。この原因は結晶粒の高配向化と 焼結密度の向上であった (図10 (b))。
b) 単結晶複合焼結体の作製
Co-349 粉末とその単結晶から構成される焼結体 をホットプレス法により作製し、熱電特性と結晶 粒の配向度を X 線回析及び中性子回析を用い定量 化した。また、その結果得られた配向度と電気抵 抗率との間には明確な関係が見いだされた。つま り、各結晶粒の ab 面がよく配向した試料ほど抵抗 率が低くなった。その結果 Co-349 単結晶複合焼結 体では、Co-349 大型単結晶の複合により、Co-349 微細結晶粒の配向度が改善されることが分かった。
この原因として、単結晶がホットプレス圧力の媒 体となり、微細結晶粒に方向の揃った均一な圧力 をかけているためであると考えられる。本研究結 果により、結晶粒の高配向化が熱電特性の改善に 図9 96 種の溶液原料を同時に基板上に塗布できる
コンビナトリアル試料調製装置
図 10 フラックス法により作製した Co-349 前駆粉末のホットプレス焼結体の電気抵抗率 (a) と微細組織 (b)
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