第Ⅴ部 テクスチャーの触り心地の認知に色彩が及ぼす影響:“感性的質感認知”
9.2 方法
色刺激は、実験Cで使用した色刺激と触刺激と同じ物を用いた。色刺激は、無彩色の明 度系列として、高明度色(白)、中明度色(灰色)、低明度色(黒)の3色と、赤系の彩度 系列として、低彩度色と高彩度色の2色であった(Table 9-1)。
x 本章の内容は、「触感における快評定に色彩が及ぼす影響」(稲葉, 2018b)として、日本感性工学 会論文誌 17 (2)に掲載された(pp. 321-328)。
また、日本感性工学会 第13回日本感性工学会春季大会(名古屋)において、2018年3月27
触刺激は、表面の粗さが異なる3種類の樹脂板(平滑面、細シボ、粗シボ)で、サイズ は、40mm×170mmであった(Table 9-2)。
色刺激と触刺激は、表裏に組み合わせて提示した(計15種類)。
9.2.2 尺度
提示された刺激から感じられた心地良さの程度を、1.かなり心地良くない、2.やや心地 良くない、3.どちらでもない、4.やや心地良い、5.かなり心地良い、の5段階の言語尺度 で評定した。
9.2.3 実験環境
実験装置は、実験Cと同じものであり、刺激を机上5cmの高さに提示するための提示 台と、刺激を実験参加者から隠すための仕切り(厚紙)で構成された。実験環境は、北向 きの窓をもつ室内で、演色性の高い蛍光灯が用いられた。刺激を提示した机上面の照度は
1000~1100lxであった(Picture 9-1)。
9.2.4 実験参加者
19歳から37歳までの20 名(男性13名・女性7名)が実験に参加した。平均年齢は、
26.2歳(SD =6.2)であった。実験前に、色覚が正常であること、指先に怪我などがない ことを口答で確認した。実験参加者のうち10名は色刺激先行提示群とし、別の10名は触 刺激先行提示群とした。
9.2.5 手続き
実験者と実験参加者が対面式で実験をおこなった。
実験者は、刺激提示台の前に仕切りをセットして、実験参加者に刺激が見えないように した。その上で、色刺激が上、触刺激が下になるように刺激を提示台にセットした。刺激 提示の方法は、次の4通りであった。①色刺激単独提示試行(色刺激のみを視覚に提示)、
②触刺激単独提示試行(触刺激のみを触覚に提示)、③色刺激先行提示試行(色刺激を先に 提示し、3秒後に触刺激を触覚に提示)、④触刺激先行提示試行(実験参加者が目を閉じた 状態で、触刺激を触覚に提示し、3秒後に色刺激を視覚に提示)。触刺激の触り方は、利き 手の指先を触刺激にあてて左右に数回動かすことにした。また、各試行系列において、実 験参加者ごとに刺激をランダムに提示した。
また、色刺激先行提示群、触刺激先行提示群ともに、半数の実験参加者が、①色刺激単 独提示試行、②触刺激単独提示試行の順で単独評定をおこない、残り半数は逆の順序でお こなった。次に、色刺激先行提示群は、③色刺激先行提示試行をおこない、触刺激先行提
9.2.6 実験計画
実験条件は、彩度系列の場合、刺激提示順(2;色刺激先行提示、触刺激先行提示)、色 彩属性(3;色刺激なし、高彩度色、低彩度色)、テクスチャー(3;平滑面、細シボ、粗 シボ)の3要因で、明度系列の場合、刺激提示順(2)、色彩属性(4;色刺激なし、白、
灰色、黒)、テクスチャー(3)の3要因であった。刺激提示順要因は、被験者間要因であ り、色彩属性要因とテクスチャー要因は被験者内要因であった。
Table 9-1 色刺激の一覧
色相 (HUE)
明度 (Value)
彩度 (Chroma)
(赤系) 低彩度色 6.5R 6.0 1.8 5R/Gr1 (赤系) 高彩度色 5.8R 5.3 11.6 5R/S1
白 6.7Y 9.4 0.3 N9.5
灰色 6.1B 5.0 0.2 N5.0
黒 10.0Y 1.8 0.1 N1.5
注)日本カラーデザイン研究所製 MMカラーチャートのカラーシートを使用 した。表中に、同カラーシートのHUE&TONE記号を記した。
色サンプル
マンセル値
Hue&Tone 記号
Table 9-2 触刺激の一覧
触刺激 シボ深さ
(㎛)
JIDA サンプル記号
粗シボ 76.54 JTX-010
細シボ 36.96 JTX-004
平滑面 0.00 Flat
注)日本インダストリアルデザイナー協会製スタンダードサンプル を使用した。
Picture 9-1 実験装置。