第Ⅴ部 テクスチャーの触り心地の認知に色彩が及ぼす影響:“感性的質感認知”
10.2 方法
4種類の樹脂板を刺激とした。樹脂板のテクスチャーは、平滑面(シボ深さ0.0μm)と 粗シボ(シボ深さ76.54μm)の2種類で、それぞれ高明度色(白、N9.2)と低明度色(黒、
N2.3)の明度系列2色を用いた(Table10-1)。刺激である樹脂板のサイズは、30 mm×50
mmで、グレーの台紙(210 mm×296 mm)の中央に貼付して提示した(Picture 10-1)。
Table 10-1 刺激の一覧
平滑面
(0.0μm)
粗シボ
(76.54μm)
高明度色
(白) 1 2
低明度色
(黒) 3 4
テクスチャー
色彩
(明度系列)
注) 日本インダストリアルデザイナー協会製スタンダードサンプルを
使用した。高明度色のマンセル値は、6.0Y 9.2/0.3で、低明度色のマン セル値は、3.0PB 2.3/0.2であった(コニカミノルタ製色彩色差計CR-400による機械測色値)。
Picture 10-1. 刺激とした樹脂板。
10.2.2 尺度
評定尺度は、感情次元の検討において、Russell (1980)の用いた28 語、Mehrabian et al.
(1974)による対語、及び、濱他 (2001)が触覚刺激によって喚起される感情の評定に用いた 言語尺度を参考に以下のように設定した。
快-不快次元として、触り心地が良い/触り心地が良くない、快適な/不快な。覚醒度合 いとして、はっきりした/ぼんやりした、緊張した/ゆるんだ。粗滑感の触感次元として、
なめらかな/ざらざらした。価値をあらわす尺度として、好き/嫌い。以上の評定方法は 7段階評定とした(Table10-2)。
Table 10-2 評定項目の一覧 1
ひ じ ょ う に
2 か な り
3 や や
4 ど ち ら で も な い
5 や や
6 か な り
7 ひ
じ ょ う に
触り心地が良い 1 2 3 4 5 6 7 触り心地が良くない ぼんやりした 1 2 3 4 5 6 7 はっきりした
不快な 1 2 3 4 5 6 7 快適な
緊張した 1 2 3 4 5 6 7 ゆるんだ
なめらかな 1 2 3 4 5 6 7 ざらざらした
好き 1 2 3 4 5 6 7 嫌い
10.2.3 実験環境
演色性の高い照明をもつ室内で実験はおこなわれた。刺激を提示した机上面の照度は
700~800lxに保たれていた。触覚のみに刺激を提示する条件では、実験参加者が直接刺激
を見ることができないように、刺激を覆った。
10.2.4 実験参加者
18歳から21歳までの大学生37 名(男性6名・女性31名)が実験に参加した。平均年
齢は19.3歳(SD = 1.0)であった。
10.2.5 手続き
実験参加者には、事前に色覚が正常であること、手の指先にケガなどをしていないこと を確認した。刺激の触り方は、表面を指先で数回左右に触ることとし、その時間は任意と した。また、評定中に再度触ってもよいとした。
評定は、(1) 視覚のみ条件(刺激を見るだけで評定する)、(2) 視覚・触覚条件(刺激を 見ながら触り評定する)、(3) 触覚のみ条件(目を閉じて刺激を触るだけで評定する)の 3 条件でおこなった。それぞれの条件において、実験参加者ごとに刺激をランダムに提示し た。全ての回答が終了後に、内観をとった。
教示は以下の通りであった。
(1) 視覚のみ条件の場合 「これからAからDまでの4種類のサンプルをお見せします ので、それぞれの印象を項目ごとに回答用紙に記入してください。たとえば、触り心地が 良い/触り心地が良くないの項目では、1 ひじょうに触り心地が良い、2 かなり触り心地 が良い、3 やや触り心地が良い、4 どちらともいえない、5 やや触り心地が良くない、6 か なり触り心地が良くない、7 ひじょうに触り心地が良くないのいずれかの番号に○をつけ てください。回答には、正解・不正解はありませんから、感じたままをお答え下さい。サ ンプルには触らずにお答えください。」
(2) 視覚・触覚条件の場合 「これからEからHまでの4種類のサンプルをお見せしま すので、サンプルの表面を利き手の人差し指で左右に数回なぞり、その印象を項目ごとに 回答用紙に記入してください。たとえば、触り心地が良い/触り心地が良くないの項目で は、1 ひじょうに触り心地が良い、2 かなり触り心地が良い、3 やや触り心地が良い、4 ど ちらともいえない、5 やや触り心地が良くない、6 かなり触り心地が良くない、7 ひじょ うに触り心地が良くないのいずれかの番号に○をつけてください。回答には、正解・不正 解はありませんから、感じたままをお答え下さい。回答中、サンプルを触りなおしても構 いません。」
(3) 触覚のみ条件の場合 「これからP、Qの2種類のサンプルを触っていただきます ので、その印象を項目ごとに回答用紙に記入してください。サンプルは、見ることができ ないようになっていますので、カバーの中に利き手をいれ、人差し指で左右に数回なぞっ
心地が良くないの項目では、1 ひじょうに触り心地が良い、2 かなり触り心地が良い、3 や や触り心地が良い、4 どちらともいえない、5 やや触り心地が良くない、6 かなり触り心 地が良くない、7 ひじょうに触り心地が良くないのいずれかの番号に○をつけてください。
回答には、正解・不正解はありませんから、感じたままをお答え下さい。回答中、サンプ ルを触りなおしても構いません。」
なお、評定結果の記入方法に関する説明は、最初の条件の時のみにおこなった。
10.2.6 実験計画
実験計画は、刺激提示条件(3:視覚のみ提示条件、視覚触覚提示条件、触覚のみ提示 条件)、明度(2;白、黒)、テクスチャー(2;平滑面、粗シボ)の3要因で、いずれも被 験者内要因であった。