第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計
第2節 授業モデルの設計:「差別された人々と解放令」の授業計画書
第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計
第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計 b2−2 明治新政府の近代化政策は、人々にどのような意識をもたらしたのか。
b2・3 明治新政府は、「解放令」後、どのような具体的な差別解消の政策を 実施したのか。
b3:「差別された人々」への差別はなぜ、「解放令」後もなくならなかったの か。
b3−1「解放令」後の社会から、「解放令」の歴史的な意味を考えよう。
b3・2「解放令」後もなぜ差別がなくならなかったのかを自分のことばで書 き表してみよう。
(3)わかった内容を表現する時間(1時間)
c1:「差別された人々」を中心に表現しよう。
c2:「差別された人々」を襲った農民を中心に表現しよう。
c3:「解放令」を出した明治新政府を中心に表現しよう。
c4:上記3つを複合して表現しよう。
四 小単元の目標
A:共感の前提をなす事実的知識
A1 「解放令」とは、1871年8月28日太政官布告によって出された文書である。
しかし、その法令は明治政府の政策の意図と法的拘束力を合わせ持っていた。
Al−1 「差別された人々」は、「解放令」の知らせに喜んだが、農民が起こし た解放令反対一揆によって襲われた。
A1・2 「差別された人々」以外の人々は、「解放令」の知らせに不安と憤りを おぼえた。
A2 「解放令」反対一揆とは、「解放令」反対や身分平等反対をスロV・一一Lガンとし て掲げ、部落を直接攻撃し、殺傷や焼き討ちなどの暴挙に及んだ一揆をいう。
1871年10月から1877年3月にかけて21件が記録されており、一揆は西目
本に集中している。
A2−1・1 農民は「解放令」反対一揆を、「解放令」反対だけでなく、徴兵令反 対、学制反対、雑税反対など明治新政府の近代化政策に反対して起こした。
A2−1−2 農民は「解放令」反対一揆を、新政府権力への反発と「解放令」後の 差別された人々の増長に対する激しい反発として起こした。
第3章 「人権」に視点をおぐ社会科歴史学習の授業設計 A2−1−3 山中の寒村の農民は、「解放令」によって「差別された人々」が自分 たちと同じ職業に従事するようになるなどの不安を持った。この事と新政 府の政策に強い不満を持っていたことが大きな原因となり、その欝憤のは け口を「差別された人々」に叩きつけた。
B:事象を分析させることによって習得させたい説明的知識
B1:明治初期、農民は政府の諸政策に反対して、大規模な運動を展開した。
B1−1 解放令反対一揆の原因には、新しい時代への農民の不安と大きな怒りが あった。農民の攻撃の矛先は富裕者ではなく、末端の官吏、役場、学校に も向けられ、その最たる例が「差別された人々」であり、最も陰惨で多く の死者を出す結果となった。
B1−2 「差別された人々」は「解放令」により平民となり、苗字を名乗ること や華士族との通婚も許され、職業や移転の自由も認められたが、新政府は 具体的な経済的、社会的政策をとらなかったため、民衆には新たな差別意 識が広がった。
B1−2−1 Bl−2−2
Bl−2−3
Bl−2−4
「差別された人々」は版籍奉還により、「平民」に編入された。
「差別された人々」は、編入された戸籍において「新平民」と記入 されるなど、社会的差別は残存した。
「解放令」発布後、「差別された人々」は、差別からの解放をめざ して、具体的な要求(神社への氏子加入や祭礼への参加、学校への 子どもの就学など)、行動を起こし始めた。
「差別された人々」は「解放令」発布により、独占的権利としての
へいぎゅうば
しょりけん
廃牛馬「処理権」や警察役も廃止され、生活は貧困化していった。
B1−3 「解放令」発布まで、身分も違い、結婚もしない、住む所も違うといっ たように、習慣の違いを意識させられ生活してきた農民は、「身分・職業 とも平民と同じ」と政府に言われても、とても実感として受け入れられな かった。
B1−3−1農民は、平等を求めて立ち上がった「差別された人々」の行動に対 し、「一般農民を軽蔑する思い上がりだ。」「もとの身分のごとくせよ。」と いう意識にいたった。このことが多くの部落に火がつけるという行為につ ながつた。
第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計
B2:明治新政府は近代化の必要上「解放令」を発したのであり、封建的な身分
差別は制度上なくなったが、身分制度そのものを撤廃する意図はなく、社会に は、新たな近代的な差別が生まれた。B2−1−1 新政府は、国家形成の前提となる権利と義務の平等化を進めるため、
「解放令」を発布した。
B2・1−2 新政府は、近代国民国家建設のため、身分制度のようなマイナスイメ ージを外国に対してなくす必要から、「解放令」を発布した。
B2−1−3 新政府は、地租改正政策の一環として財源の安定を図るために、「解 放令」を発布した。
B2−1・4 新政府は、それまで「差別された人々」の持っていた土地から年貢を 取り立てるため、「解放令」を発布した。
B3:明治新政府の近代化政策は民衆の生活レベルとはかけ離れたものだった。ま た「解放令」は国民の身分意識や職業観念などを考慮せず、一方的な理念の宣 言の法令だったため、農民など民衆へは理解されず、差別はなくならなかった。
B3−1 「解放令」は、明治新政府による政治的意図をもった法令であり、農民 などの民衆、国家双方とも「差別された人々」を解放する意図は見いだせ ず、差別は社会的なものとなった。しかし「差別された人々」は「解放令」
発布を契機として、解放に向けた取り組みを一歩一歩進めることとなる歴 史的意義をもつものであった。
B3・2 省略
第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計 五 授業の展開(◎主発問、○副発問)
〈1時問目〉 歴史的物語へ共感する学習(1時間)
発問・指示 資 料 教授=学習活動 予想される反応と獲得させたい知識など
○今日は、「解放令」と T:説明する ・「解放令」が「」表示されているのは、
いう明治新政府が出し S:聞く 発表当時はそのような名前で呼ばれて た法令に関する物語を おらず、後から名づけられた歴史用語で
読んでいきます。 あることを説明し、学習では「解放令」
という言い方で進めていくことを知ら
せる。
○まず、「解放令」がい S:発表する (1871年8月28日に出された。)
つだされたのか確認し
ます。
○「解放令」がどんな文 ① S:読む ・わずか1文であるが、新政府最高機関 書だったのか、見てみよ T:内容を簡単に の発令であり、政府の意図を示すととも
う。 説明する。 に、法的拘束力も併せ持っていた。
○最初の物語から読ん ② T=指名読みする ・教師からの説明は加えず、わからない
でいきましょう。 S:読む 語句を聞くぐらいにして進めていく。
○「解放令」を関いた T:問いかける (本当にうれしかったことだろう)
人々はどんな気持ちだ S:発表する (これで差別がなくなるだろう)
ろうか「自分」のことば (この法令が出たので、今まで一緒にで
で発表しよう。 きなかった行事へも参加できる)
(長い間、差別されてきたんだ。農民の 差別する気持ちはそう簡単になくなら ないんじゃないかな)
○政府の出した「解放 T:問いかける (新しい世の中にふさわしいすばらしい 令」について、どう思い S:発表する 法令だ)
ますか。発表しましょ (解放令によって、差別のない社会がで
第3章 「人権」に視点をおく社会科歴史学習の授業設計
う。
○ところで、「解放令」
の知らせを関いた農民 はどのような気持ちに なっただろうか想像し
よう。
○解放令が出される前 に身分についての法令 がでていたね。確認しよ
う。
○「解放令」発布後、か つて差別された人々は 差別されなくなったの だろうか。自分の考えを 発表しよう。
○教科書にはどう書か れているだろうか。
教科書
など
教科書
T:問いかける S:想像したこと を
発表する
T:指示する
S:調べ、発表す
る。
T:問いかける S:自分の考えを 発
表する。
T:問う
S:教科書の記述 を
読んで、発表す
きればよい)
(政府は、本当に差別のない社会にする ために、解放令を出したのだろうか。)
(新しい世の中になって、みんな平等に なるのだからうれしい)
(今までの習慣を変えないといけないの で困る)
(差別された人々と同じ生活様式で生活 したくない)
(新しい世の中になっても生活は楽にな らない。なのに、どうして今まで差別し てきた人々と同じ身分にならないとい
けないのか)
・教科書、教授資料などより、発表させ
る。
(新しい世の中になり、人々の意識も変 わり、差別は少なくなっていった。)
(平民になった人々は、なかよくなった が、身分の上の人は特権意識が強く差別 はなくならなかった。)
(差別された人々の運動によって、差別 意識は少なくなっていった。)
(差別された人々に対する偏見はいっそ う激しくなり、江戸時代とは違った差別 が生まれてしまった。)
・「しかし、政府の差別をなくす積極的な 政策がなかったこともあり、結婚や就職
など、日常生活での差別はなくなりませ んでした。」(大阪書籍編『小学社会6年