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具体的な先行授業実践の分析

第2章 「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察

第2節  具体的な先行授業実践の分析

第2章  「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察

第2章  「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察

(2)事例の分析

 部落史学習として10事例を抽出した。校種別では、小学校8事例、中学校2事例、

また、実践・研究別では実践9、研究1となる。抽出にあたっては、様々な教育団体

あるいは個人による実践を取り上げようとした。部落史の問題点を浮かび上がらせる ために、時代的な要素、内容的な要素、方法的な要素といったことも念頭に置きなが

ら事例を選んだ。

 部落史学習については「歴史学の研究成果に基づいた実践がなされているか」とい う認識の科学性を分析の観点としてあげた。この観点に立つとき、10の事例は2つの グループに分けられる。

 研究成果を取り入れている事例としては事例1,2,3,4,5,9の6例が、取り入れていな い事例として事例6,7,8,10の4例がこれに相当する。

 前者をさらに分類すると、同和教育として事例1,2,3、物語教材として事例4、社会

科学習として事例5及び中学校実践事例9となる。但し後者の実践例が「学問的に間

違った研究成果を教授している」実践ではないことは確認しておきたい。

 部落史においては事例1,9に見られるような「近世政治起源説」が広く実践されて きたが、この「近世政治起源説」への疑問や他の「起源説」も主張されてきたが、現 時点では部落の起源についての定説はないと言える。しかし教育現場においては「近 世政治起源説」が流布し、明治期においては、解放令という法令は発布されるが、真 の部落解放に向けた諸政策を政府は実施しなかったという「新政府無策説」も力強い。

 また事例4に見られるような物語教材も広く実践されているが、歴史認識は共感的 理解の域を出ず、物語として記述された事実の獲得がなされているに過ぎない。共感 的理解も大切であるが、部落差別解¥削こ向けた認識は、さらに高い質の知識の獲得が 必要ではないかというのが本稿の仮説である。

 そうした仮説をもつ時、事例6,7,8,10は部落史研究の成果を意識した実践になって いる。それぞれの実践にはフレームワークにも記載した課題もあるが、部落史の研究 の成果を授業で実践しようとした点に意義を認めることができる。

第2章  「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察

(3)代表的実践例

 部落史学習については、【表2・4】の「近世の社会と差別された人々」及び【資料編       とがわ

事例No. 7】の「明治維新と差別された人々」、いずれも京都府の外川正明氏の実践を取 り上げる。

 外川は部落史学習の今日的状況について、80年代以降の中世史研究、とりわけ網野 善彦氏や横井清氏の業績をあげ、「中世においても多様な被差別民が存在し、そういっ た人々がさまざまな形で日本の文化や社会に関わっていたという事実、それらの民へ の卑賎視が近世における部落差別の社会的根拠である。」という研究成果が少しずつ教 育現場で実践されていることを評価している。

 外川は部落史学習を「三つの部落差別の成立」として内容構成しており、事例No.・6 は江戸時代の「制度的な成立」、事例No.・7は明治時代の「社会問題としての成立」につ いての実践である。差別の成立を3つの時代に分けることで認識内容を明確になって いる。ただ、〈出合い・探求・見つめ直し〉のく探求〉という学習活動における認識 内容についてはさらに明確にする必要がある。

【表2・4 事例No. 6「近世の社会と差別された人々」の分析フレームワーク(一部)】

蕩㌧点1 獅な 何を、厚凝に向けでどう1i9導したのか。儲1識ノタ著9 主発問(型)

 What型 睡Why型 Which型 Who型

キ別が制度化されていったことを探ろう。

教授活動 説明する→問題を提起する→学んだことを振り返りながら問う 擁点2一.4!子どらな どのよう〆ごしで、β癖〆ご鍵したのか。r認識方法ノ

学習活動 人々と出会う→人々のくらしを探る→学びを振り返る

わかり方(型)

追体験型 共感型 魎唾四型 科学的認識型 科学的説明型

点点2一β 製のわか久方どしで、鞭贅料はどのよう〆ご〜開さカたのか。

教授資料 文章「ある裁判」「江戸中期の諸藩の政策」「江戸時代の役負担」

カ章と絵「差別された人々がたずさわっていた仕事」

活用方法(型)

匡麺 事象調査型 仮説検証型

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2 農民史学習の分析

(1)分析の観点

 本稿のテーマである「人権」に視点をおく社会科歴史学習は、被差別者、被支配者、

少数者といった「人」を対象とする学習としたい。そこで従来の歴史教育において、

農民がどう解釈され、理解されてきたかを分析していきたい。

 ところで「農民」という語句であるが、従来歴史教育で扱われている「農民」と歴 史学で使われている「農民」とはその意味に違いがあるようである。 文部省刊行の 98年版学習指導要領解説社会編によれば、第6学年の内容の項においては、ア〜クに 示された内容の文章記述において、農民という語句は一度も出てこない。同様に「人 権」という語句も、6年の内容において見つけることはできない。『要領』の内容にお いて、本稿の研究と多少とも関連する内容項目をあげると、

 ア、農耕が始まった頃の人々の生活や社会のようすがわかる。

 オ、身分制度が確立し、武士による政治が安定したことがわかる。

 カ、廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い、欧米の文化を取り入れつつ近代化を   進めたことが分かる。

 キ、明治政府が発足後20年程で憲法を制定し、立憲政治を確立したことが分かる。

 ク、戦後我が国が民主的な国家として出発したことが分かる。

となるが、この内容:は、本稿における社会科歴史の内容あるいは歴史的な見方考え方 とはかなりかけ離れているといえる。

 農民史学習において問題なのは、「農民は貧しい、苦しい、そして闘う」という貧農 史観に陥りがちなことではないか。確かに従来の農民像を全く否定するのは誤りであ

ろうが、多様な史資料により、農民に対して自由な解釈を保証していく必要があるの でないか。歴史学において百姓や農民の言葉の違いが指摘されて久しいが、歴史の授 業においては、まだまだ農民に対する固定的な見方考え方を伝達し、固定的な農民像

を形成していないかという点を分析を通して見ていきたい。

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(2)事例の分析

 部落史学習同様、小学校8事例に中学校2事例の合計10事:例を分析対象とした。

 農民史を扱った時代としては、平安期1、室町期5、江戸期4となり、奈良期まで

と明治期以後の事例はなかったのは反省点としてあげたい。

 10事例については、特に主発問に特徴が見られた。それは10事例のうち7事例が

Why(なぜ)型の発問をしていることである。これは:事実伝達的または価値注入的な 歴史学習にはならないように、教師は探求的な学習を試みようとしている表れではな いか。しかし分析の結果、教師が一定の意図する学習内容(理論)を想定して、子ど

もの探求を保証している事例は、6,8,10の3例に留まった。

 事例3は理論ははっきりしているものの、理論を子どもが探求するのではなく、資 料を用いて順次教授していく学習過程をとるに留まっている。

 事例4,5に見られるように、江戸後期の困窮期における一揆、あるいは室町期にお ける徳政一揆については、農民の心情に共感させる形で歴史事象の理解がなされてい

る。

 また事例1,2,7,9は、子どもの追求する活動は十分保証されているが、説明的な知 識の獲得を意図する学習展開とはなっておらず、事例1,2は常識的な知識の獲得に留

まっている。

 また事例9は、自分の掲げた諜題について、調べ学習を通して追求している実践例 として評価したいが、江戸の農民像をどう描いていくかについては、教師がその理論 を持ち合わせていない展開となっている。

第2章  「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察

(3)代表的実践例

 農民史学習については、各事例に特徴があり、多くの教示を得た。とりわけ【表2・5】

の吉崎朗氏の研究は、本研究における大きな転換点となった。なぜかというと、修士 論文のタイトルにも示されている「共感から分析へいたる」学習過程を本稿における 授業設計においても用いるきっかけとなったからである。

 吉崎の授業モデル「出雲平野の開拓と農民のくらし」の第3時は、第2時で願い実

現のために農民達と大梶七兵衛の思いを重ね合わせた後の学習であり、大梶七兵衛と 農民達は「なぜ大規模な開拓ができたのか」を追究する学習となっている。仮説を立 て、資料を探求的に読み取り、そこで獲得された知識をもとに、開拓を可能にした原 因を理解する学習展開は、農民たちの願いが実現された要因を、資料の探求的に読み 取ることにより認識される展開となっており、従来よく見られるような「貧しい」「苦 しい」「闘う」農民像とは異なる歴史認識を獲得する事例になっている。農民の主体的 な行動が、分析的な学習を通して子どもたちに理解されたことであろう。

【表2・5 事例No.20白雲平野の開拓と農民のくらし」のフレームワーク(一部)】

 授業名

ャ単元指導計画

「出雲平野の開拓と農民のくらし」(中単元:武士の世の中)

P 「出雲平野の開拓と大梶七兵衛」2 「農民のくらしと願い」3 「出雲平野の開 ができたわけ」(本時)4 「全国の新田開発」

蕩.点1ノ獅な勿を、β撰た:、句けでどク拷導したの汐≧。儲1誠,勾刎 主発問(型)

What型 How型 匝型Which型 Who型

教授活動 発問する→予想させる→検証を支援する→説明する 蕩.点2一A 子どちなどのよう〆ごしで、昂禦に撫したのか。ビ認説方法ノ

学習活動 墲ゥり方(型)

学習問題を把握する→予想し、仮説をもつ→検証する→説明を聞く

@追体験型 医璽型 問題追求型 科学的認識型 科学的説明型 裾、京2一β!製のカかク.方(を乙で、鞭贅料などラ膏燗さカたのか。

教授資料 文章:「田畑永代売買禁止令」「松江藩の新田開発」「藩の開拓に関する示達」「技 pの進歩」

活用方法(型)

事象理解型 事象調査型 医麺藝到

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