第2章 「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察
第3節 分析結果の考察
30事例全体の分析については以下の観点を設けた。
① 教師は主発問において、どう問いかけたのか。
② 教師は歴史のわかり方として、どのような方法をとったのか。
③ 教師は解釈性のある資料を提示したのか。
④ 教師は「人」を明らかにした認識内容を目標に明示したのか。
【表2−7】
【表2・8】
【表2−9】
【表2・10、2・11】
以上の4観点について、フレームワークで類型化した主発問、わかり方、資料の活 用方法を数値化し、さらに人権理論としてあげた個別性、探求性、解釈性とも関連づ けながら考察した。
観点1の主発問については、【表2・71が示すように、How(どのような)型、続い てWhy(なぜ)型となり、「なぜ」型の実践が多い結果となった。
【表2・7 教師は主発問において、子どもにどう問いかけたのか。(探求性)】
What How Why Which Who
部落史学習 2 5 2 1 0
農民史学習 0 2 7 1 0
近代史学習 1 6 2 0 1
合計(%) 3(9) 13(44) 11(37) 2(7) 1(3)
観点2の認識方法については、次頁【表2・8】が示すように、共感型や問題追求型 が多く、歴史的:事象を因果的に、分析的に理解して知識の質を高めていく実践はほと んどなかった6
観点3の資料の活用方法については、丁丁【表2−9】が示すように、資料の記述内 容をそのまま伝達するための活用が半数以上を占め、事象について資料を使って調べ たり、仮説を検証したりする実践は少なかった。
第2章 「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察
【表2・8 教師は歴史のわかり方として、どのような方法をとったのか。(探求性)】
追体験 共感 問題追求 科学的認識 科学的説明
部落史学習 1 4 3 2 0
農民史学習 1 2 4 1 2
近代史学習 3 3 3 1 0
合計(%) 5 (16) 9(30) 10(33) 4 (13) 2(8)
【表2−9 教師は、解釈性のある資料を提示したのか。(解釈性)】
事象理解
釈性はない、弱い
事象調査
釈性は認められる
仮説検証 釈性は強い
部落史学習 8 1 1
農民史学習
4
24
近代史学習 6 3 1
合計(%) 18(60) 6(20) 6(20)
観点4の分析については次頁【表2・10】及び次々頁【表2・11】に示した。
【表2・10】の左に個別化された「人」として、農民や被差別民、あるいは秀吉など の「人」をあげ、その右にフレームワークの目標に記述された「認識内容」を抜き出 してみた。そして、個別化された「人」を主語とした「認識内容」がはっきり示され ている事例を○、「人」のみが明らかなものは△、「人」の明示がないものを×として 30事例を評価すると、「個別性」という人権理論から○の評価をえた実践は、250/。に 満たないことが明らかになった。
【表2・11】からもわかるように、教師が認識内容をどのような主発問から習得させ ようとしたかについては、「なぜ」疑問型の実践が多かったが、獲得された知識は記述 的で、共感的な認識に留まる実践が多く、個別性、探求性、解釈性という「人権」理 論から考察すると、認識内容が不明瞭な実践が多かった。
また認識方法については、共感型の実践が多く、子ども自らが探求するような資料 を活用した実践は少なかった。
第2章 「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察
【表2・10 個別化された「人」を主語とする認識内容の明示性の一覧表】
注 評価について:「人」「認識内容」ともに明示(○)どちらか一方(△)明示なし(×)
実践事例 個別化された「人」 目標に見る認識内容 評価
部落史1
秀吉 秀吉が・… 民衆を分断させ、権力を保った。 ○部落史2
被差別民 たくましく生き抜いた姿をとらえる。 △部落史3
農民、被差別民 「解放令反対一揆」は農民の苦しい生活からく 驍烽フであることを知る。△
部落史4
久兵衛さん(被差別民) 久兵衛さんの願いを知る。 △部落史5
政府 四民平等の実態は、新しい差別の構造を持って「た。
X
部落史6
差別された人々 たくましく生きてきたことに気づく。 △部落史7
差別された人々 生活を高め、差別をなくそうと努力したトとに気づュ。
△
部落史8
「人」へは焦点化されていな「
記載なし×
部落史9
「人」へは焦点化されていな「
部落差別は政治的につくられたものだと理解す
驕B
×
部落史10
村の人々 知恵を働かせて生きていく人々の姿に迫らせた「D
△
農民史1
農民 農民がどのような行動に出たかを知る。 △農民史2
灰民 農民の願いについて考える。 △農民史3
時代理解 室町時代は、人民大衆の連帯闘争の新たな発展 ェ起こった時代であることを把握する。×
農民史4
農民 農民は必要な食べ物を求めて、一揆を起こした。 ○農民史5
農民 支配層に不満を持つ農民が団結して立ち上がっス。
△
農民史6
寄り合い 寄り合いについて推測する。 ×農民史7
農民 農民は人糞を肥料にし、増産のために努力した。 ○農民史8
農民 農民は生産力を高め、自治的な惣をつくり、団結を強 ゚た。○
農民史9
農民 農民のくらしぶりについて調べ、問いを追求す驕B
△
農民史10
農民 農民と寸寸七兵衛は、藩の全面的な後押しによ チて、大規模な干拓事業を行った。○
近代史1
「人」へは焦点化されていな「
自由民権運動は日本最初の民主主義運動であっス。
×
近代史2
自由民権家 民権家の願いを表現しよう。 △近代史3
国民 国民は自由民権運動を進めたので、政府は、国会を開 ュ約束をした。○
近代史4
政府 政府は、自由民権運動におされ、憲法を ツくり、国会開設の約束をした。×
近代史5
自由民権運動を進めたl々
…の人びとが尊敬されるようになったわ ッを調べ、考えをまとめる。
△
近代史6
お客さんたち 〈記述されていない〉 △近代史7
代表的な人物 〈記述されていない〉 ×近代史8
朝鮮人 朝鮮人の虐殺には、一般市民が加わっていたことに気 テく。○
近代史9
労働者や被差別民 めざめあって、色々な社会運動が高まったことがわか驕B
△
近代史10
労働者、農民、被差別ッ
運動や考え方がさかんになり、普選運動を前進させス。
△
【表2・11 教師は「人」
第2章 「人権」に視点をおく歴史授業実践の分析と考察 を主語とする認識内容を、目標に示したのか。(個別性)】
「人」「内容」とも明示
@ ○
「人」のみ明示
@ △
「人」が明示されていない
@ ×
部落史学習 1 6 3
農民史学習 4 4 2
近代史学習 2 5 3
合計(%) 7(23) 15(50) 8(27)