3. エネルギー変換
3.1.1. 技術と設備の種類
長時間かつ長期間安定して稼働する商業利用可能な技術と設備を選定する
調達予定の木材資源の品質やエネルギーの供給形態と品質に適した設備の方式を把握する
バイオマスやエネルギーの品質に応じた必要な機能や性能などの各種条件を検討し、設備の 発注先の選定準備をする
木材資源を燃料とする場合は蒸気ボイラーによる直接燃焼の信頼性が高い
バイオマスの種類と技術や設備の組合せを誤ると、設備が安定して稼働しない、十分な エネルギーが得られない、などの問題が生じる。また、現状の技術レベルでは信頼性の低 い技術を用いることも、事業者にとっては非常にリスクが高い。一般的に、ガス化発電は 設備投資費やメンテナンス費の高さ、燃料性状の制約が厳しいことなどがボトルネックと して挙げられる。また、ORCユニットやスターリングエンジンは実績が少なく、設備投資 費やメンテナンス費が見積にくいことがボトルネックとなる。
現状では、木質系バイオマスを用いてエネルギー事業を行う場合、温水ボイラーあるい は蒸気ボイラーによる直接燃焼を行うのが最も信頼性が高い。温水ボイラーであれば熱供 給が基本となる。蒸気ボイラーであれば、熱供給のほか、スチームタービンおよび発電機 と組み合わせて発電やコジェネレーションを行うという選択肢もある。
温水供給であれば温水ボイラーを選択する
蒸気供給であれば蒸気ボイラーを選択する
電力供給であれば蒸気ボイラーとスチームタービン、発電機の組合せを選択する
熱風供給であれば熱風発生装置(熱風乾燥炉等)を選択する
図 Ⅱ.3-1 国内におけるエネルギー変換技術の組合せと導⼊状況
主要設備の方式によっては事業内容に制約が生じる
木材資源を用いたエネルギー事業を行う場合、変換設備としてボイラーが必ず必要であ り、ボイラーに木材資源を投入するための燃料供給装置も必須である。また、電力供給を
☞Ⅲ章2.5 燃料供給輸送設 信頼性の⾼い
技術と設備
58 3.1 技術および設備
行う場合はスチームタービンと発電機を併せて設置する。これら主要設備にはそれぞれ複 数の方式があり、それぞれに特徴がある(表 Ⅱ.3-2)。各設備の特徴を理解せずに導入し 運用を誤ると、メーカーが公表しているエネルギー効率を達成できなかったり、設備に不 具合が生じたりする可能性がある。
備(コンベヤ)
~2.10. 蒸気タ ービン発電設備
表 Ⅱ.3-2 各設備の主要⽅式とその特徴
設備 主要方式 特徴
燃料供給系設備
コンベヤ ベルトコンベヤ フレックスコンベヤ フライトコンベヤ
搬送速度速い、急傾斜不可 搬送速度速い、急傾斜可 搬送速度遅い、急傾斜可 サイロ※ 地上式
地下式
採用数多 ー ホッパー ― ー
ボイラー
バブリング流動層 循環流動層 ストーカ式
水分許容範囲広い、粒径50~100mm 高水分率燃料の投入不可、粒径25~40mm 水分50%まで対応可、粒径100mm~
スチームタービン
復水タービン 背圧タービン 抽気復水タービン
蒸気を最大限発電に利用可 排気蒸気を利用可
タービン途中で必要なプロセス蒸気を抽出可
発電機 同期発電機
誘導発電機
大型、系統連系せず単独運転も可 小型軽量、系統との常時並列要
※サイロは設置しない場合もある
(注)方式の分類はこの表に挙げた以外にもある。
設備選定には技術的知見とそれ以外の情報も必要
設備方式の選定には、バイオマスやエネルギーの品質に関する知見をはじめとして、各 種技術的な知見が不可欠である。一方で、技術面以外の情報も必要となってくる。例えば、
メーカーによって各設備の方式のうち一部しか取り扱っていない場合がある。また、運転 開始後の保守点検やトラブル対応まで見据えると、メーカーの事務所や出張所、メンテナ ンス外注先から事業実施地へのアクセスといったことも重要な情報となる。
技術的知見やメーカーの状況に関する様々な知見を持った人材(コンサルタント やコンストラクション・マネジャー)に相談する
☞Ⅲ章2.1 設備共通
木材資源以外も燃料に使う場合は設備不具合に要注意
直接燃焼の技術は、刈草竹、鶏糞、PKS(パーム椰子殻)等の様々なバイオマスに適用 可能である。これはガス化発電技術と大きく異なる点である。ただし、いずれも木材資源 とは大きく性状が異なるため、それが原因で設備の不具合が発生しかねない。
燃料の種類については、調査段階からコンサルタントやコンストラクション・マ ネジャーに相談したうえで、設計を工夫するか投入をやめるか判断する
3.1 技術および設備 59 図 Ⅱ.3-2 ⼩規模⽊質バイオマス発電の燃料要件の例
(出所)「平成27年度~平成28年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 アク アイグニス多気ORCユニットを活用した木質バイオマスコジェネレーションシステムの事業性評価(FS)」(NEDO)2016年
《こんなときどうする!?》
実は設備や発注先があらかじめ決まっている✍
設備仕様に合わせたバイオマス調達やエネルギー供給が可能かを、コンサルタントやコン ストラクション・マネジャーとともに十分に検討する本来、バイオマス調達やエネルギー供給に関する事業内容に応じて選定すべき
60 3.1 技術および設備
3.1.2. 事業規模
木材資源の調達可能量やエネルギー供給予定量に応じて、実施する事業の規模を概算する
設備の種類と事業規模に応じてエネルギー効率が異なる
木材資源の調達可能量とエネルギー供給予定量をふまえて事業の規模を概算する。この とき、ボイラーのみを設置して熱供給事業を行うか、ボイラーとタービン発電機を設置し て電力供給もしくは熱電併給を行うかによりエネルギー効率が異なる。また、特に電力供 給や熱電併給を行う場合は、事業規模に応じてエネルギー効率が異なる。ボイラーは 80~90%程度のエネルギー効率である場合が多いが、投入する木材資源やメーカー、蒸気発 生量等に応じて異なる。なお、ORCやガス化設備の導入の場合も、エネルギー効率が異な るため、これらの新しい技術を導入する場合には慎重な検討が必要である。
事業規模を概算する際には、適切なエネルギー効率を設定する
詳細な検討をする前にメーカー等に相談して、実際のエネルギー効率を確認する
☞Ⅲ章1.3.3
設備
図 Ⅱ.3-3 熱供給の場合(左)と発電の場合(右)のエネルギー効率
◆国内の木質系バイオマス直接燃焼発電事例の計画値 [発電端]
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000
発電効率
発電規模(kW)
⽇本の⽯炭⽕⼒の 標準的な発電効率
専焼 混焼
3.1 技術および設備 61 図 Ⅱ.3-4 FS 事業実施事業者による ORC 発電⽅式と BTG 発電⽅式のエネルギーフローの⽐較検討例
(出所)「平成27年度~平成28年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 竹の 新素材加工工場に併設したバイオマスの熱・電併給カスケード利用による地域再生自立システム”ゆめ竹バレー”の事業性評価(F S)」(NEDO)2016年
エネルギー需要は季節や時間帯により変動する可能性大
常に出力が一定の事業であれば、年間の木材資源調達可能量と年間のエネルギー供給量 を考慮すればよいが、特に熱供給をともなう事業の場合は、エネルギー需要が季節や時間 帯によって変動する可能性が高い。その場合、設備規模をベース需要に合わせるかピーク 需要に合わせるかで、事業規模の考え方は大きく異なる(図 Ⅱ.3-5、図 Ⅱ.3-6)。
一方、木材資源調達可能量も季節変動や日変動するものの、貯蔵設備を設けることであ る程度平準化が可能であるため、必ずしも事業規模の検討に直結しない。
図 Ⅱ.3-5 1 ⽇のうちのベース需要、ミドル需要、ピーク需要のイメージ
(注)縦軸:暖房の日需要量を100%とした場合の各時刻における需要量比率冷房と給湯についても同様。
化⽯燃料系の
ボイラーが適す
設備稼 働率を
⾼めるにはベー スロードやミドル ロードに合わせ た設備を設置
62 3.1 技術および設備
図 Ⅱ.3-6 FS 事業実施事業者による熱供給システムの検討例
(上)重油ボイラー併⽤ケース、(下)バイオマスボイラー複数台制御ケースの概念図
(出所)「平成28年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 中山間・内陸に適 した木質バイオマスエネルギー需給複合型システムの事業性評価(FS)」(NEDO)2016年
事業性を考慮して調達可能量と供給予定量のアンバランスを解消
エネルギー供給予定量に比べて木材資源調達可能量が不足する場合、化石燃料焚きボイ ラーや系統電力等と組み合わせることで供給予定量を減らす、あるいは調達可能量を拡大 する必要がある。また、エネルギー供給予定量に比べて木材資源調達可能量が過多の場合 は、大きめの貯蔵設備を設けて調達停止リスクに備える、あるいは新たな供給先を創出し て供給予定量を拡大する必要がある。
どちらの選択肢を選ぶと事業性が向上するか十分に検討する