4. システム
4.1. 事業計画 1. ⽴地
4.2.1. 事業性評価
(1) 初期費⽤
運転開始前に必要となる、事業実施に要する一連の設備に関する全ての費用の積算を行う
各設備の初期費用は事業内容に依存、かつ時価
事業で新たに導入が必要な設備は、基本的に市販の製品ではなく注文生産の製品である ため、価格情報は公表されていない。特に、設置費等は各事業の個別の状況に応じて決ま るため、一般解が存在しない。さらに、同じ条件や事業内容であっても、設計や部材調達 の内容がメーカーやEPC事業者ごとに異なるため、見積結果は各社で異なる。
実績のあるメーカーやEPC事業者のうち、事業実施地域で対応可能な会社を複数 選び、見積を取得する
表 Ⅱ.4-10 初期費⽤の主な項⽬と⾒積取得⽅法
項目 見積実施者 見積取得方法
設備一式
(受変電設備含む)
メーカー EPC事業者
[土木・建築工事と分離発注]メーカーから見積取得 [土木・建築工事と一括発注]EPC事業者から見積取得
※見積依頼時に計画諸条件や予備貴の有無を決める
※運転開始当初1年分の消耗品費を含める 土木・建築工事一式
一級建築設計事務所 建設会社
EPC事業者
[設備と分離発注]一級建築設計事務所又は建設会社 等から見積取得
[設備と一括発注]EPC事業者から見積取得 系統連系費用 電力会社
まずは事前相談の申込をし接続可能容量を把握
事業内容が概ね固まった段階で、アクセス検討の申込を し、費用概算を取得
土地購入費用 事業者 用地所有者に確認、交渉 重機・車両購入費
(所内用、輸送用)
重機・車両販売店 リース会社
[自ら購入]重機・車両販売店から見積取得 [リース利用]リース会社から見積取得
開業前経費 事業者 EPC事業者
事業者自ら、あるいはEPC事業者が概算
-調査地質調査費・測量費・燃料分析費・水質分析費 -建築設計費・開発申請費用等
-許認可申請費
-溶接安全管理審査費用(第三者機関)
--建設中事業者人件費 -建設中金利
-試運転中費用 -予備費
提出される見積の合計≠実際の初期費用
メーカーやEPC事業者から提出される見積は、初期費用として事業者が積算すべき範囲 全てをカバーしているものではないことに留意する必要がある。
開業前経費については事業者自ら概算する、あるいはあらかじめEPC事業者に対 し開業前経費も含めた抜けや洩れがないような全項目を含めた見積を依頼する
4.2 事業性の検討 81
見積対象設備は事業内容に応じて決定
事業で新たに導入が必要な設備は、調達する木材資源の形態と利用するエネルギーの形 態に応じて決まる。
表 Ⅱ.4-11 調達および供給形態に応じた⾒積対象設備
調達形態 供給形態
設備名 丸太等 チップ ペレット 温水 蒸気 電力 調達 乾燥・貯蔵設備 ○
チッパー ○
ペレット製造設備 ○
輸送用設備 △ △ △
変換 温水ボイラー ○
蒸気ボイラー ○ ○
タービン ○
発電機 ○
供給 温水配管 ○
蒸気配管 ○
送配電設備 ○
副生物貯蔵・利用
設備 ○ ○ ○
そのほか 所内用重機 ○ ○ ○ ○ ○ ○
バイオマスボイラーは化石燃料系ボイラーに比べて高く燃焼効率も低い
バイオマスボイラーは化石燃料系ボイラーに比べ事例の蓄積が少ないことから、設備費 が高くなる傾向にある。さらに、バイオマスは化石燃料に比べ水分が多いこともあり、燃 焼効率も低い。一般的に化石燃料系ボイラーは90%近いの燃焼効率を達成可能だが、バイ オマスボイラーの場合には高くても80%、状況によっては70%を切ることもありうる。
82 4.2 事業性の検討
(2) 運⽤費
運転開始後に必要となる全ての経費項目を挙げ、年間必要経費の積算を行う
少なくとも、年間の収入が運用費積算額を上回ることを確認する
運用費の積算には専門的知見も必要
運用費目は概ね、木材資源調達費、ユーティリティ費、メンテナンス費、重機燃料費、
人件費、灰処理費、一般管理費に分類される。各費目を概算する場合には、たとえばメン テナンス費であれば「設備費の 5%」などと想定することも可能だが、より実態に即した ものとするためには見積取得や詳細検討が必要となる(表 Ⅱ.4-12)。詳細に積算を行う 場合は特に専門的な知見が不可欠である。
コンストラクション・マネジャーやコンサルタント等の専門的知見を持つ人材に 相談しながら積算する
表 Ⅱ.4-12 運⽤費の費⽬とその概算⽅法
項目 見積実施者 概算方法 積算方法
木材資源調達費 事業者がコンスト ラクション・マネジ ャーやコンサルタ ント等の専門的知 見を持った人材と 協力して実施(一 部メーカー見積を 取得)
単価×年間調達量
※輸送費を事業者が持つ場合 は輸送費も含めて概算
調達量や密度の変動、輸送 距離の変動等を考慮して積算
ユーティリティ費 建設費の10%程度 メーカー見積から積算 メンテナンス費 設備費の3~5%程度 初期費用見積時に取得した
消耗品費や部品の交換頻度を ふまえて積算
重機燃料費
(所内重機)
燃料単価×時間当たり消費量
×年間稼働時間
重機別の消費量を精査下上で 積算
人件費 人件費単価×人数(班数×班
員数+管理部門人数)
※有資格者の有無等に注意
職務内容や勤務態勢に応じた 人件費単価を設定し積算
灰処理費 灰処理単価×変換設備への年
間投入量×灰分率
灰の引取先別単価や灰分率の 変動幅を考慮して積算
フレコンバッグの単価と消費量を 想定し、積算
一般管理費
(諸経費)
人件費の8~25%程度 事務所経費等の必要諸経費を
積算
(出所)「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第4版)」(NEDO)2015年
初期費用を見積もった全ての設備について運用費を積算
事業実施に必要な設備はエネルギー変換設備だけではない。熱供給事業であれば配管、
電力事業であれば送配電設備、チップやペレットを自ら製造する場合であればそれらの固 体燃料化設備を設置する。事業で導入する全ての設備や建屋にユーティリティ費とメンテ ナンス費が発生する。
運用費は事業後半期にかけて増加
上述の方法で積算した運用費は事業開始初年度の金額である。事業期間が 20 年以上で あることを考えると、期間中継続してその金額で運転できる可能性は低い。特にメンテナ ンス費は設備の老朽化が進むと増加する傾向にある。
各費目の長期変動を考慮して運用費の推移を検討する
4.2 事業性の検討 83
(3) 収⼊
<共通>
副生物は有価物として販売する場合のみ収入として計上する
木材資源を逆有償で調達する場合のみ、処理費を収入として計上する
<熱供給の場合>
外販による収入と自社での熱利用による燃料購入費削減価値を合算する
<電⼒供給の場合>
FITによる売電収入と外販による収入、自社利用による電力購入費削減価値を合算する
事業の収入源は4種類
事業者が得ることのできる収入は、主に電力と熱によるものであるが、事業内容によっ てはそのほかの収入も見込まれる。まず、副生物である燃焼灰を有価物として販売する事 例では、販売収入を得られる。また、木材資源を逆有償で調達する事例では、木材資源の 排出者から徴収する処理費が収入となる。これらの収入は、それぞれ単価と販売(受入)
量が明らかになれば概算可能である(表 Ⅱ.4-13)。
表 Ⅱ.4-13 収⼊の概算⽅法例
項目 概算方法例
売電収入 [売電] 売電単価×売電電力×稼働日数×稼働時間 [自家消費] 系統電力購入価格×年間自家消費電力量
熱販売収入 [売熱] 熱販売単価×熱販売量×販売先稼動日数×販売先稼働時間 [自家消費] 化石燃料価格(熱量あたり)×年間自家消費熱量
副生物販売収入 副生物販売単価×年間発販売量 処理収入 処理料金×年間処理量
(出所)「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第4版)」(NEDO)2015年
(4) 税⾦等
各種税金および利息の支払額を検討する
各種税率や金利は事業内容に応じて変化
事業を実施する際には必ず何らかの税金を支払う必要がある。また、事業資金を一部借 り入れる場合、必ず支払利息が発生する。これらの具体的な支払額を概算するには税率お よび金利が必要であるが、これらの数値は事業内容や収支の状況に応じて変化する。
専門家に相談をしたうえで毎年の税額および支払利息を検討する
表 Ⅱ.4-14 税⾦等の概算⽅法例
項目 概算方法例
支払金利 借入期間、据置期間、金利等を銀行と相談の上で、借入条件に応じて概算 固定資産税 (実質建設費-累積減価償却費)×固定資産税率(1.4%)
法人税 (年間収入-年間運用費)×法人税率(40.87%、事業規模に応じて変動) 法人事業税 (年間収入-年間運用費)×法人事業税率
(出所)「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第4版)」(NEDO)2015年
84 4.2 事業性の検討
(5) 事業性評価
(1)~(4)の検討内容をふまえ、その時点の事業計画で採算がとれるかどうかを評価する 評価方法は主に3種類
評価方法には、キャッシュフロー分析、単年度事業収支の検討、投資回収年数の検討な どがある。エネルギーを自家消費するようなケースでは、投資回収年数の検討を行う場合 が多い。
事業内容に応じて適切な評価方法を選択する
事業資金借入の際に事業性評価は必須
事業資金を一部借り入れる場合、必ず金融機関も交えた事業性評価が必要となる。これ は、実施する事業が成立するかどうかを判断するのに必要なだけではなく、事業に内在す るリスクを洗い出し、対策を講じることにも役立つ。
事業計画の変更は必ず発生
初期の事業計画がそのまま確定することは稀である。事業性について分析と評価とを行 った結果、採算がとれないことが明らかになる場合が少なくない。その場合、コスト低減 の工夫や収入増加の工夫を行う必要がある。一方、事業を進める中で、経済面以外の理由 で計画を変更せざるを得ない状況も往々にして発生する。
必要に応じて「事業計画の変更とその内容に沿った再分析と再評価」を繰り返す