2. エネルギー供給
2.2.1. 処理および利⽤⽅法
発生する燃焼灰を産業廃棄物として処理するか肥料や原料として有効利用するかを検討する
産業廃棄物として処理するケースが最も多い
燃焼灰の処理形態として最も一般的なのは、産業廃棄物として産廃処理業者に引き渡す 方法である。処理費用を支払えば、大半の事例でこの方法を選択することができる。なお、
燃焼灰に重金属等が含まれる場合には、燃焼灰を利用することが難しくなるため、産業廃 棄物として処理しなくてはならない。
製品原料として利用することで事業性向上が可能
既存事例では、燃焼灰をセメントへの混合や建築用ブロックの原料、肥料の中間処理剤 などに利用している例がある。有価物として買い取ってもらう例もあるが、大半は、通常 より安い処理費での引き取りとなっている。いずれの場合も、全量産廃処理の場合に比べ て灰処理費が低減するため、事業性の向上につながる。なお、製品原料として利用する場 合、事業規模や灰の発生率によっては一事業者で全燃焼灰を引き取るのが困難になる。
状況に応じて複数の引き取り先を確保する、あるいは産廃処理業者とも契約する
肥料として農地や森林に還元するのはハードル高
燃焼灰を林地や農地に還元することで、肥料成分であるリンやカリを循環させることが できるが、燃焼灰はこれまで産業廃棄物とみなされる場合が多かった。こうした状況を鑑 み、平成 25年 6 月に環境省から各都道府県・政令市の廃棄物行政主管部局に対して、燃 焼灰の取扱に関する通知が出された5。それによると、ペレットまたはチップを専焼ボイラ ーで燃焼させて生じた燃焼灰のうち、有効活用が確実でかつ不要物とは判断されない燃焼 灰は、産業廃棄物に該当しない(ただし、塗料や薬剤を含むおそれのある廃木材由来のチ ップやペレットを混焼した場合は、これに当てはまらない)、とのことである。この通知 に当てはまる燃焼灰の場合は、肥料利用の可能性が出てきているものの、実施例が少ない ために肥料としてどのような効果があるかも十分に分析されておらず、有効利用は決して 容易ではない。
燃焼灰の肥料利用が可能となるための条件を満たしているか十分に検討したうえ で、肥料利用に関して、既存の知見や事業実施地域での受容性について情報収集 する
5 環廃産発第1306282号(http://www.env.go.jp/recycle/waste/reg_ref/no_1306282.pdf)
50 2.2 副⽣物処理と利⽤
2.2.2. 発⽣量
燃料として利用する木材資源量と灰分含有率から、燃焼灰の発生量の見込みを算出する
灰分含有率は木材資源の種類や部位、樹種によって変動
燃焼灰の発生量は、木材資源の種類(発生源)や樹種によって異なり、概ね0.5~5%程度 である(1.1.3参照)。ただし、樹皮(バーク)は灰分含有率が5~10%に達することもある
6。したがって、ボイラーに投入する木材資源量とその種類に応じて、燃焼灰の発生量は大 きく変動する。
調達する各木材資源の比率とそれぞれの灰分含有率を把握したうえで、できるだ け正確に燃焼灰の発生量を見積もる
不純物(土砂)の含有量が発生量に影響
土砂などが多く含まれる木材資源をボイラーに投入した場合、土砂と灰が混合した副生 物となるため、副生物総発生量は増加する傾向にある。
調達予定の木材資源が土砂の混じりやすいものであるかどうかを事前に確認する
正確な見積のために品質規格は重要
燃焼灰の発生量をできる限りブレなく見積もるためには、灰分含有率や調達する木材資 源の種類別の比率が一定であることが望ましい。したがって、ここでも調達先との事前の 摺り合わせや燃料の品質規格が重要となる。
☞Ⅱ章2.3 燃料製造設備
(チッパー)
6 新潟県森林研究所 平成21年度レポート「木質バイオマスの燃料特性」(http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/nenryoutokusei.pdf)
2.2 副⽣物処理と利⽤ 51
2.2.3. 需要量
燃焼灰の製品としての利用先や肥料としての利用先別に需要量を把握する
製品利用の場合、利用先の製品製造量が目安
製品利用の場合、引き取り先である燃焼灰利用事業者の「年間製品製造量」と「単位製 造量あたり必要な燃焼灰量」が需要量検討の目安となりうる。
肥料利用の場合、樹種や作物、地域によって需要量変動
肥料として利用する場合、林地に植栽されている樹種や作付けしている作物の種類によ って、適切な散布量と散布のタイミングが異なる。また、散布量や散布のタイミングには 地域性も影響する。まずは文献等を参考にする必要があるが、肥料利用の事例は決して多 くなく、情報が不十分である可能性が高い。
調達予定の木材資源から発生する燃焼灰を試験的に用いて、肥料需要量を詳細に 検討する
52 2.2 副⽣物処理と利⽤
2.2.4. 性状
調達予定の木材資源の燃焼灰における重金属類の含有量、および塗料や薬剤由来の有害物 質の含有量を調べる
重金属と有害物質の有無によって処理および利用方法に制約
燃焼灰の性状として注意すべき主な点は、重金属類および塗料や薬剤由来の有害物質が 含まれているかどうかである。含有量が多い場合には処理および利用方法に制約が出る。
肥料利用や製品利用をする場合は含有量に制限がある場合が多い。
処理および利用先候補に重金属や有害物質の基準値を確認する
建築発生木材の有無で性状が変動
燃焼灰の性状は木材資源の種類に応じて変動する。特に建築発生木材の量が増減するよ うな場合は、重金属類および塗料や薬剤由来の有害物質の含有量が変動する。
受容可能な性状の変動幅について処理および利用先候補とあらかじめ協議する
運用開始後も定期的に性状を検査し、受容可能な変動幅に収まっているかを確認 する
肥料利用を目指す場合に注目する成分はNPK
燃焼灰の肥料利用を目指すうえで注目する必要がある成分は窒素(N)、リン(P)、カ リ(K)である。このほかにも有機炭素分やカルシウム、マグネシウムなど様々な成分に ついて肥料としての効果があることが指摘されている。
肥料としての適性を検討する際には、NPKを中心とした各成分の含有量を調べ、
肥料需要先で必要とされる成分バランスとの比較を行う
《こんなときどうする!?》
需要先でどのような肥料成分が必要とされるかわからない✍
文献等から類似の作物の栽培実験結果を入手する、あるいは調達予定の木材資源由来 の燃焼灰を使って栽培実験を行う
需要先で必要とされる肥料成分に燃焼灰の性状が適さない✍
燃焼灰単体で肥料として用いず成分調整を行う、あるいは需要先を再検討する
2.2 副⽣物処理と利⽤ 53
2.2.5. 処理単価と販売価格
複数の処理および利用先候補から見積をとり比較する
地域によって処理単価は大きく異なる
燃焼灰の処理単価は地域によって、また処理および利用先によって様々である。既存事 例をみると、一般的な地域で1~3万円/t、高いところでは7万円/t近い金額となっている
(表 Ⅱ.2-6)。したがって事業性にもたらす影響は大きい。
表 Ⅱ.2-6 燃焼灰の処理単価の例
事例 処理単価
一般的な地域 1~3万円/t
(注)高額な地域では処理単価7万円/tという事例もある。
(出所)各種事例へのヒアリング等より
製品利用の場合も事業者により処理単価は異なる
燃焼灰を製品利用する場合も、基本的には、地域の産業廃棄物処理業者、中間処理業者 に処理を委託することになるため、事業者自身が単価を安くする工夫をするのは容易では ない。また、製品利用(セメント原料)をしている事業者に委託する場合も、必ずしも処 理単価が安くなるとは限らない。
複数の処理および利用先候補がある場合、処理単価のできるだけ安い先を優先的 に選ぶ
肥料利用の際の単価は未知数
肥料として直接散布する事例は非常に少ないため、単価の設定が難しい。
液肥利用の事例を参考にする、あるいは肥料としての効果を測定し、化学肥料の 単価と比べて設定する
《こんなときどうする!?》
発生する燃焼灰の全量を引き受けられないと言われてしまった✍
複数の処理および利用先と契約し、ポートフォリオを組む
【コラム】 灰処理費は無視できない
5MW規模の発電所で年間約6万tの木材資源を利用する場合、灰の発生率を3%とすると1,800t/年、す なわち1日あたり約5tもの燃焼灰が発生する。これだけの量が発生すると、産業廃棄物処理単価を仮に2.5 万円/t とした場合、その処理費用も 4,500 万円/年という無視できない値となる。このため、灰処理の方法 や費用の検討は非常に重要である。
<年間6万tの木質系バイオマスを利用するエネルギー設備の場合>
60,000t/年 × 3%(平均灰分) = 1,800t/年 (※毎日約5t発生)
1,800t/年× 2.5万円/t(灰処理費用) = 4,500万円/年