第Ⅱ章 導⼊要件
i
⽬ 次
II. 導入要件(木質系バイオマス編) ... 1 1. バイオマス調達 ... 1 1.1. バイオマス原料 ... 3 1.1.1. 調達可能量 ... 3 1.1.2. 調達先 ... 9 1.1.3. 性状 ... 10 1.1.4. 単価 ... 20 1.2. 輸送 ... 23 1.2.1. 輸送方法 ... 23 1.2.2. 輸送費 ... 25 1.3. 乾燥・貯蔵 ... 26 1.3.1. 乾燥・貯蔵方法 ... 26 1.3.2. 貯蔵・乾燥設備規模 ... 29 1.4. 固体燃料化 ... 30 1.4.1. 固体燃料化方法 ... 30 1.4.2. 固体燃料化設備規模 ... 31 1.5. その他 ... 32 1.5.1. 関連法規制・制度 ... 32 1.5.2. 長期変動リスク ... 34 2. エネルギー供給 ... 35 2.1. エネルギー ... 37 2.1.1. 供給形態 ... 37 2.1.2. 供給先 ... 39 2.1.3. 需要量 ... 41 2.1.4. 性状 ... 46 2.1.5. 単価と利用価値 ... 48 2.2. 副生物処理と利用 ... 49 2.2.1. 処理および利用方法 ... 49 2.2.2. 発生量 ... 50 2.2.3. 需要量 ... 51 2.2.4. 性状 ... 52 2.2.5. 処理単価と販売価格 ... 53 2.3. その他 ... 54 2.3.1. 長期変動リスク ... 54 3. エネルギー変換 ... 56 3.1. 技術および設備 ... 57ii 3.1.1. 技術と設備の種類 ... 57 3.1.2. 事業規模 ... 60 3.1.3. バックアップ設備 ... 64 3.2. 設備運用 ... 66 3.2.1. 設備の運転体制 ... 66 3.2.2. 設備のメンテナンス体制 ... 67 3.3. その他 ... 68 3.3.1. 長期変動リスク ... 68 4. システム ... 69 4.1. 事業計画 ... 70 4.1.1. 立地 ... 70 4.1.2. 事業実施スケジュール ... 72 4.1.3. 事業期間 ... 73 4.1.4. 資金調達 ... 74 4.1.5. 関連法規制と許認可制度 ... 76 4.2. 事業性の検討 ... 80 4.2.1. 事業性評価 ... 80 4.2.2. 長期変動リスク ... 85
1 バイオマス調達 1
II.
導⼊要件(⽊質系バイオマス編)
1.
バイオマス調達
持続可能なバイオマスエネルギー事業の実現に向けて、バイオマス調達について調査段 階で検討すべき項目は表 Ⅱ.1-1 のとおりである。 表 Ⅱ.1-1 バイオマス調達について検討すべき項⽬ 検討項目 該当項目 □ 調達可能量(総調達可能量、季節変動) 1.1.1 □ 調達先 1.1.2 □ 性状 1.1.3 □ 単価(有償/無償/逆有償、熱量単位/重量単位/容積単位) 1.1.4 □ 輸送方法 1.2.1 □ 輸送費 1.2.2 □ 貯蔵・乾燥方法 1.3.1 □ 貯蔵・乾燥設備規模 1.3.2 □ 固体燃料化方法 1.4.1 □ 固体燃料化設備(チッパー、ペレタイザー等)規模 1.4.2 □ 関連法規制 1.5.1 □ 長期変動リスク 1.5.21.1 バイオマス原料 3
1.1.
バイオマス原料
1.1.1. 調達可能量
(1) 総調達可能量 事業実施地域で木材資源を取り扱う各主体の生産量や調達量、残さ発生量等を把握し、燃料 利用可能な木材資源量を検討する 燃料利用可能な木材資源は7 種類 燃料利用可能な木材資源は発生場所に応じて 7 種類に分類でき、それぞれ発生量の概算 方法や FIT 制度利用時の電力買取価格が異なる(表 Ⅱ.1-2)。図 Ⅱ.1-1 のように調達地域 での実際の値を調査することで、概算にあたって活用する係数(表の右から 2 列目)をよ り正確に把握することができる。 表 Ⅱ.1-2 燃料向け⽊材資源の発⽣場所と発⽣量の概算⽅法 種類 発生場所 主な調達形態 発生量の概算方法 FIT 税抜価格 建設発生木材 建 築 ・ 解 体 ・ 土 木 工事現場 チップ 40~100kg/m2*1 17 円/kWh 支障木や剪定枝 等 道路脇や河川敷等 チップ 概算困難 ※実施地域でのヒアリング等が必要 工場残材 木材関連工場 端材 チップ (ペレット) 製材工場:製品量の 30%程度*2 合板工場:製品量の 30~50%程度*2 ラミナ工場:製品量の 50~70%程度*2 24 円/kWh 輸入材 輸入相手国内 チップ ペレット 交渉次第 末木枝条 林内または土場 枝葉や伐根 チップ ペレット 素材生産量の 15~35%程度*3 先端部(枝葉含む):立木の 12% 根元部:立木の 24% (家具材へ利用等もされている) 32 円/kWh*4 (切捨)間伐材 林内または土場 丸太 チップ ペレット 間伐実施前に林地に賦存する蓄積の 10~40%程度(30%程度が一般的と される) *3 短 伐 期 の エ ネ ル ギー用材 短伐期林 丸太 チップ ペレット 100%を燃料向けに利用可能 竹 竹林 チップ (ペレット) 概算困難 ※実施地域でのヒアリング等が必要 *1:一般社団法人日本建設業連合会ウェブサイト(http://www.nikkenren.com/kankyou/haiki_hijyu.html)参照 *2:林野庁統計資料に基づき試算 *3:NEDO バイオマス賦存量・有効利用可能量の推計(http://app1.infoc.nedo.go.jp/biomass/about/index.html)の推計方法参照 *4:証明書が必要。森林経営計画立案状況等に依存。 (出所)一般社団法人日本建設業連合会ウェブサイト、林野庁各種統計、NEDO バイオマス賦存量・有効利用可能量の推計、「平成 27 年度 ~平成28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 持続可能な林業 に資するバイオマスエネルギーの地域利活用の事業性評価(FS)」(NEDO)2017 年より4 1.1 バイオマス原料 図 Ⅱ.1-1 ⽴⽊材積あたりの未利⽤部位の発⽣割合の例(t/m3のパーセンテージ) (出所)「平成28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 中山間・内陸に適 した木質バイオマスエネルギー需給複合型システムの事業性評価の事業性評価(FS)」(NEDO)2017 年 木材資源の需給や流通は刻々と変化 木材資源の種類別に現状を把握するにあたっては、統計情報やそれに基づく試算結果を 活用することができる。ただし、事業実施地域は必ずしも統計情報が整備された行政界と は一致しない。また、FIT 制度開始後に木材資源の需給動向や流通が大きく変化しており、 周辺のバイオマスエネルギー事業の動向に応じて状況が頻繁に変化している可能性が高 い(図 Ⅱ.1-2)。 統計情報のみに頼らず、独自の文献調査や分析、ヒアリング調査によって、事業 実施地域の最新情報を得る 図 Ⅱ.1-2 FIT 制度開始後の需給バランス変化の予測(左:2014 年、中央:2015 年、右:2019 年) (出所)各種統計資料および運転開始計画に基づき作成 調達するバイオマスの形態と輸送距離の把握も必要 調達可能量に関する独自の分析や調査を進めた後、輸送費等の検討のために、調達予定 のバイオマスの形態や調達場所から変換設備までの輸送距離等の情報も必要になる。 木材資源の量だけでなく地域内での地理的分布も併せて把握する(図 Ⅱ.1-3) ☞Ⅱ章 1.2.1 輸送方法 0 600km (t/yr.) 80,000 40,000 0 -40,000 -80,000 過不足 (t/yr.) 80,000 60,000 40,000 20,000 未利用材需要量 (t/yr.) 100,000 80,000 60,000 40,000 未利用材製紙チップ需要量 0 600km (t/yr.) 80,000 40,000 0 -40,000 -80,000 過不足 (t/yr.) 100,000 75,000 50,000 25,000 未利用材需要量 (t/yr.) 100,000 75,000 50,000 25,000 未利用材製紙チップ需要量 0 600km (t/yr.) 80,000 40,000 0 -40,000 -80,000 過不足 (t/yr.) 100,000 75,000 50,000 25,000 未利用材需要量 (t/yr.) 100,000 75,000 50,000 25,000 未利用材製紙チップ需要量 FIT 対象設備 運開 16 件 FIT 対象設備 運開 95 件 FIT 対象設備 運開 38 件
1.1 バイオマス原料 5 図 Ⅱ.1-3 ⽊材資源の地理的分布把握イメージ (出所)Google マップを基にみずほ情報総研作成 FIT 制度開始によって需給は逼迫 木材資源の需給動向が大きく変化したことで、用材向けや既設エネルギー事業向けとい ったの既存の木材資源需要と、新規の木材資源需要との間で競合が生じつつある。このよ うな状況下では、調達量や調達価格等が好条件の需要先に木材資源が流れてしまいかねず (図 Ⅱ.1-5)、既存の需要先とこうした競争関係に陥ってしまうと、持続的かつ安定的な 調達は困難になる。 既存需要家と木材資源を奪い合うのではなく、協力関係を築くことを目指す 図 Ⅱ.1-4 発電規模別調達可能価格と⽤材価格の競合状況 《こんなときどうする!?》
調達量が不足しそう、近隣の既存需要と競合しそう✍
以下のような取組を検討する ・バーク等の地域で余っている木材資源の探索 発電所建設候補地6 1.1 バイオマス原料 ・事業者自らの森林施業 ・調達地域を広げる検討 ・森林組合や製材業者等への木材取扱量(伐採量や入荷量等)拡大への働きかけ ・造林事業 【事例】 燃料に適した樹種で造林事業を実施することで安定調達を⽬指す 中越パルプ向けに製紙チップと燃料チップを供給する三好産業は、国有林の 分収林制度を使って、2015 年春から早生樹であるコウヨウザンの造林試験に 着手している。同社は将来的にチップ生産用の木材全量を自社有林で賄うこと を目指している。今後、自社有林の一部に成長が早く管理が容易なコウヨウザ ンを植栽することで、燃料チップの原料の安く安定した調達が可能と考えてい る。現在コウヨウザンは、保安林ではない林地にしか植えることができないが、 保安林指定樹種に指定されることで保安林への植栽も可能となるため、同社か ら鹿児島県に対して働きかけている。 このように、燃料チップの安定した調達(供給)のためにスギ等の従来樹種 にとらわれない新たな視点での造林事業に取り組む事業者も出てきている。
1.1 バイオマス原料 7 (2) 季節変動 調達先候補が絞られてきた段階で、各候補の生産量や調達量、残さ発生量等を月別に把握 し、燃料として利用可能な木材資源量の季節変動を把握する 月別統計情報は参考にはなるものの不十分 季節変動の把握にあたっては、月別の統計情報やそれに基づく試算結果を活用できる が、必ずしも月別の統計情報がそろっているとは限らない。しかも、統計情報はその業界 の大まかな傾向をつかむためには有用であるものの、個別の調達先候補の状況を把握する には適さない(図 Ⅱ.1-5)。 調達先候補への独自のヒアリング調査や実施調査(図 Ⅱ.1-6)が必要である 図 Ⅱ.1-5 製材業における国産材⼊荷量の推移(2014 年) (出所)木材統計調査(林野庁)2015 年 図 Ⅱ.1-6 FS 事業実施事業者の季節変動による林地残材搬出量の試算例 (出所)「平成27 年度~平成 28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 持続 可能な林業に資するバイオマスエネルギーの地域利活用の事業性評価(FS)」(NEDO)2017 年 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1⽉ 2⽉ 3⽉ 4⽉ 5⽉ 6⽉ 7⽉ 8⽉ 9⽉ 10⽉ 11⽉ 12⽉ 国産材 の製 材⽤素材 ⼊荷量[ 針葉樹 ]( 千 m 3 ) 針葉樹 広葉樹 繁忙期から 2 割減 →端材発生量も 2 割減
8 1.1 バイオマス原料 《こんなときどうする!?》
予定していた調達先は、季節によって調達可能量が大きく落ち込むようだ✍
季節変動を吸収できるだけの貯蔵設備を設ける✍
季節変動のタイプの異なる複数の木材資源や、複数の調達先候補を組み合わせて、変 動を平準化する ☞Ⅲ章 2.6 燃料貯留設備 (サイロ)1.1 バイオマス原料 9
1.1.2. 調達先
事業実施地域の調達可能量やその拡大のための取組内容に応じて調達先を確保し、契約に 向けた調整を行う 調達先候補は林業、木材産業、木材需要・廃棄関連事業者 調達先候補は大きく分けて、林業関連事業者、木材産業関連事業者、木材需要・廃棄関 連事業者等があり、それぞれ取り扱う木材資源の種類や形態等が異なる(表 Ⅱ.1-3)。 表 Ⅱ.1-3 調達先候補と特徴 カテゴリ 個別事業者 保有する主な 木材資源の種類 保有する主な 木材資源の形態 主な利用・ 処理形態 林業関連 森林所有者*1 末 木 枝 条 、 ( 切 捨 ) 間 伐 材、短伐期のエネルギー 用材 丸太、たんころ、梢 端 等 林 内 や 林 道 端 に 放置 事業者 森林組合 素材生産業者 木材産業関連 事業者 チップ生産業者 全ての木材資源 切 削 チ ッ プ 、 破 砕 チップ 商品として外販 ペレット製造業者 全ての木材資源 全木ペレット、ホワ イトペレット 商品として外販 製材事業者 工場残材 木粉、のこ屑、プレ ー ナ ー 屑 、 背 板 ・ 心材、樹皮 等 所 内 利 用 、 産 廃 処理、有価物とし て売却 合 板 ・ 単 板 製 造 者 他 木材需要・廃棄 関連事業者 家具・その他木製 品製造者 工場残材 木粉、のこ屑、プレ ーナー屑 等 所 内 利 用 、 産 廃 処理、有価物とし て売却 製紙メーカー 全ての木材資源 切削チップ 商品として外販 木質ボード製造者 建設発生木材、支障木や 剪定枝等、工場残材 切削チップ 所内利用、商品と して外販 中間処理業者 建設発生木材、支障木や 剪定枝等、工場残材 破砕チップ 商品として外販 その他 木材商社 輸入材 PKS、チップ、ペレ ット 等 商品として外販 *1: 自伐林家(所有する森林を自ら保育・施業する森林所有者)のみ該当 長期契約の習慣のない調達先候補が多数 従来、林業関連事業者や木材産業関連事業者の間では短期での契約が中心であり、長期 的な取引に際しては契約ではなく「協定」を締結するのが慣例となっている。しかし、エ ネルギー事業としての燃料調達リスクを考慮すると、協定ではなく契約の方がリスクを低 減できる。 事業実施期間に応じた長期契約の締結を目指し、調達先と意向を摺り合わせる 《こんなときどうする!?》
長期契約締結への理解が進まない✍
事業実施地域のそのほかの調達先候補にも接触し可能性を探る
契約相手が小規模な事業者である✍
リスク分散のため、複数の調達先と契約をする10 1.1 バイオマス原料
1.1.3. 性状
(1) ⼀般的な特性 燃料利用の際に重要となる木材資源の品質(特性)を十分に理解する 調達予定の燃料向け木材資源の品質をできるだけ早めに把握し、課題がある場合は対策を 講じる 木材資源の種類別に燃料としての特性が異なる 燃料利用可能な木材資源は発生場所に応じて 7 種類に分類でき、それぞれ燃料利用の際 に重要となる特性が異なる(表 Ⅱ.1-4)。なお、輸入材は基本的に輸入元が取り扱う木材 の種類によって特性が異なるため、本表からは割愛した。 表 Ⅱ.1-4 燃料向け⽊材資源の種類別特性 種類 水分(率)*1 (%) 水分の 変動要因*1 密度 (t/m3)*2 低位発熱 量目安 (MJ/kg-we t)*1 灰分 不純物*1 有害物質*1 形状*1 主要 発生地 エネルギー 外の用途 建設発生 木材 25~40 季節 天候 収集条件 0.14-0.23 程度 水分に応じ 10~13 1~2% 程度 多 -金属 -土砂 -接着剤 -塗料 等 多 -塩素 -CCA (クロ ム 、 銅 、 ヒ 素) -接着剤 -塗料 破砕チップ 住宅地 土木・建築 現場 ボード原料 支障木や 剪定枝等 条件に応じ て 大 き く 変 動 樹種 収集条件 発生場所 樹種に応じ て変化 樹種や 水分に応じ て変化 1~2% 5~7% 多 -金属 -土砂 -小石 -草本 等 少 丸太状 梢端、枝葉 など 道路脇 河川敷 等 き の こ 栽 培 用のほだ木 ガ ー デ ニ ン グ用途 等 工場残材 合板: 30~40 製材: 45~55 樹種 0.5-0.6 程度 水分に応じ 8~12 ~2% 程度少 少 木粉 のこ屑 プ レ ー ナ ー 屑 背板・心材 樹皮 製材工場、 合板工場、 単板工場、 集 成 材 工 場 等 製紙チップ 敷料 木粉 等 末木枝条 50~60 季節 天候 収集条件 0.4-0.5 程度 樹種や 水分に応じ 6-10 ~5% 程度 多 -土砂 -小石 -草本 等 少 たんころ(伐 根)、梢端、 枝 葉 な ど (幹以外) 林内 林道 山土場 (施業方法 依存) 未利用 (切捨) 間伐材 50~60 季節 天候 収集条件 0.45 程度 樹種や 水分に応じ 6-10 ~1% 程度少 少 小径木(皮 付丸太材) 林 地 悪 条 件による未 搬出材 林内 未利用 短伐期の エネルギ ー用材 樹種に依存 幹利用: 少 全木利用: 多 少 皮 付 丸 太 材 全木 皆伐施業し やすい林地 日本: 取 組 黎 明 期 海外: 製紙向け *1:「バイオマスエネルギー導入ガイドブック」(第 4 版)(2015)より引用 *2:一般社団法人日本建設業連合会ウェブサイト 廃棄物の比重(ウェブサイト上では比重と記載されているが、説明内容から密度と同義で あると判断した。)(http://www.nikkenren.com/kankyou/haiki_hijyu.html)、バイオマス賦存量・有効利用可能量の推計バイオマス種と 推計方法(http://app1.infoc.nedo.go.jp/biomass/about/index.html)を参照 (出所)「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第4 版)」(NEDO)2015 年、一般社団法人日本建設業連合会ウェブサイトなど1.1 バイオマス原料 11 (2) ⽔分 交渉や契約の際に、湿量基準の水分(率)と乾量基準の含水率のどちらを用いるか明確にする 調達予定の木材資源の水分(率)を測定し、その値に応じて乾燥方法と設備を選択する 木材中の水分の重量比を示す指標は2 種類 木材に占める水分重量の割合を示す指標には、「湿量基準で示す『水分(率)』」と「乾 量基準で示す『含水率』」の 2 種がある(図 Ⅱ.1-7)。湿量基準の水分(率)は、水を含 む木材全量を 100%とした場合の水の比率を示しており、エネルギー事業で一般的に用い られる。一方、乾量基準の含水率は、水を除く木材重量を 100%とした場合の水の比率を 示しており、林業や木材産業で一般的に用いられる。ただし、水分(率)のことを含水率 と表現している場合もあり、注意が必要である。 資料閲覧や関係者との対話の際には、どちらを用いているかよく確認する 図 Ⅱ.1-7 ⽔分(率)と含⽔率の違い 水分の安定は重要だが難しい課題 木材中の水分重量比は、木材資源の発熱量を算出する際に必要な値であり、非常に重要 である。しかし、水分は、樹種や木材資源の発生場所だけでなく季節や天候、収集条件に よっても変動するため、事業開始後も都度変動する可能性が高い。 事業計画時点での水分を把握する(図 Ⅱ.1-8)とともに、事業開始後も水分の変 動状況を小まめに把握するための測定頻度や測定方法を検討する 水分をできる限り一定に保つための対策(例:契約内容に水分の規定や品質規格 への準拠を盛り込む)を検討する
⽔
⽔
絶乾
重量
(100)
全体
重量
(100)
湿量基準
⽔分(率)
乾量基準
含⽔率
エネルギー業界
で使われる⽤語
林業・⽊材産業
で使われる⽤語
左:水分(率)=水の量/全体重量×100 右:含水率 =水の量/絶乾重量×100 ※含水率は 100%を超えうる本書では「水分(率)」
(=左図)を用いる
12 1.1 バイオマス原料 図 Ⅱ.1-8 FS 事業実施事業者による⽔分測定結果の⼀例 (⽪付き針葉樹、広葉樹、バーク、⼀般剪定枝) (出所)「平成27 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事 業 飲料製造工場及び周辺施設へのバイオマス地域熱供給事業の事業性評価(FS)」(NEDO)2016 年 水分(率)の計測方法は主に3 種類 水分(率)の主な計測方法は次の 3 つがある。①事前に作成した重量と水分の換算表を 用いる方法、②計測器を用いる方法、③室内試験によって測定する方法、などである。③ の精度が最も高いものの、測定に 1~2 日程度を要する。 計測方法選択の際には、実際の運用で要求される迅速性や簡便性も考慮する
1.1 バイオマス原料 13 (3) 発熱量 調達予定の木材資源の水分(率)と木材資源の部位や種類に基づいて低位発熱量を把握し、 調達可能量から得られるエネルギー量を検討する エネルギーとして用いることができるのは低位発熱量 発熱量とは、一定の単位の燃料(単位質量(重量)あるいは単位体積の燃料)を完全燃 焼させた時に発生する熱量であり、高位発熱量と低位発熱量がある。高位発熱量は熱量計 で計測された値で、水蒸気の蒸発熱を含んだ発熱量であり、高位発熱量から水蒸気の蒸発 潜熱を減じた量が低位発熱量である。エネルギーとして実際に用いることができるのは低 位発熱量である。 日本では一般的に高位発熱量で熱量表記 日本では一般に熱量表記には高位発熱量を用いるが、欧州では低位発熱量を用いる。 海外の情報を閲覧する際には、想定される水分(率)を踏まえて適宜換算する 乾燥によって低位発熱量は大きく増加 木材の種類が同じであれば、重量あたりの高位発熱量および低位発熱量は、いずれも水 分(率)が低下するにつれ増加する傾向にある(図 Ⅱ.1-9)。水分(率)の低い状態で変 換設備に投入する方が、蒸発に奪われる熱量が減りエネルギー効率が高くなる。 できる限り水分(率)が低い木材資源の調達、あるいは事業者自ら木材資源を乾 燥するなどの対策をとる 図 Ⅱ.1-9 ⽊材⽔分(率)および含⽔率と⾼位および低位発熱量の関係(針葉樹 ⽊部の例) (出所)「木材工業便覧」(日本木材加工技術協会)1952 年、「木質バイオマスボイラー導入指針」(株式会社森のエネル ギー研究所)2012 年 ※樹種別発熱量 は「炭素循環と 環境保全を実現 する森林バイオ マス・畜産廃棄 物発電による地 域振興」(2002) 樹種や部位によって発熱量は変化 木材資源は、樹種や部位によって乾燥重量あたりの発熱量が異なる。例えば、樹皮と木 0 5 10 15 20 25 0 50 100 150 200 MJ /k g 高位発熱量 HHV MJ/kg 低位発熱量 LHV MJ/kg 0 33 50 60 66 含水率(%) 水分率(%) ドイツの燃料チップの 基準水分(率)(35%) での発熱量
14 1.1 バイオマス原料
部では木部の発熱量が高く、針葉樹と広葉樹では針葉樹の発熱量が高い。また、スギは、 乾燥重量あたりの発熱量がマツ類に比べて小さい。
1.1 バイオマス原料 15 (4) 密度 調達予定の木材資源の密度を測定し、交渉や契約の際に目安とする 調達予定の木材資源の密度を測定し、その値に応じて貯蔵設備や搬送設備を検討する 丸太は体積単位、チップやペレットは重量単位で取引 林業における木材資源の取引は「体積(m3)」を基準に行われるのに対し、木材資源を 加工したチップやペレットの取引は「重量(t)」を基準に行われる。業種によって取引単 位が異なるため、換算するのに「密度(t/m3)」が用いられる。 調達契約締結に向けた交渉の際に、事業者と林業従事者、チップやペレットの取扱者と の間で想定する密度がそれぞれ異なる可能性は高い。この場合、取引価格に関する認識の ずれが生じる。たとえば、調達先が密度を 0.5t/m3と想定し、事業者が 1.0t/m3と想定する 場合、重量単位の価格を体積単位の価格に換算したときの価格差は 2 倍にもなる。 調達先との交渉の際には、換算に用いる密度についてあらかじめ合意形成をはか る 密度は木材資源の種類と外部環境、樹種によって変化 実際の取引の際には、密度は一定であると仮定して固定の値で換算することが多い。し かし、密度は表 Ⅱ.1-4 のように木材資源の種別で異なるだけでなく、樹種ごとにも異なる (表 Ⅱ.1-5)。さらに、温度・湿度条件や水分(率)の条件によっても変化する。したが って、換算を正確に行うためには、納入の都度、木材資源の密度を測定する必要がある。 運転開始後の密度測定頻度や方法を定め、値が変動した場合の取引価格の考え方 について調達先と合意形成をはかる 表 Ⅱ.1-5 主要な樹種の気乾密度(t/m3)1 樹種 値 スギ 0.38 ヒノキ 0.41 アカマツ 0.53 ブナ 0.5~0.7 ナラ 0.67 ベイマツ 0.53 レッドウッド 0.45 (出所)木材工業ハンドブック(森林総合研究所)2004 年 密度は木材資源の形態によっても変化 密度の差は同じ車両で運べる量の差につながる。 1気乾密度:気乾状態(木材を乾燥させ、材の中に液体の水が存在しない状態)における重量と体積を用いて算出した密度(t/m3)
16 1.1 バイオマス原料 図 Ⅱ.1-10 ⽊材資源の形態別かさ密度の⽐較例 *1:「平成 22 年度芦別市木質バイオマス有効利用実証調査等業務報告書」(芦別市) *2:「木質バイオマスの収集・運搬技術及び地域利用システムの開発動向」(陣川雅樹) *3:「チッパー車カタログ」(富士車輛) (出所)「平成27 年度~平成 28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 持続 可能な林業に資するバイオマスエネルギーの地域利活用の事業性評価(FS)」(NEDO)2017 年 密度の変化は設備にも影響 密度は木材資源の供給に関わる設備の仕様にも影響を与える。ボイラーへの燃料投入は 重量単位で行われるため、一見関わりがないように思われるが、貯蔵設備や搬送設備の容 量や強度を検討する際には密度が必要となる。 ☞Ⅲ章 2.5 燃料供給輸送設 備(コンベヤ) 2.6. 燃料貯留設 備(サイロ)
1.1 バイオマス原料 17 (5) 形態 調達する木材資源の形態を決定する 調達予定の木材資源の粒度や径等を測定し、その値に応じて燃料化設備や変換設備等を 選定する 形態別に必要な設備と適する設備が異なる 木材資源の調達は、すぐに変換設備に投入できる燃料化済みのものを調達する場合と、 燃料化を自ら行う必要のある状態で調達する場合とに大別される。これによって、事業者 が導入すべき設備の種類や数が変わる。また、現在製品化されている変換設備の多くは、 投入する木材資源の形態に合わせた設計となっている。したがって、どのような形態の木 材資源を投入するかによって適する設備が異なる(表 Ⅱ.1-6)。 表 Ⅱ.1-6 燃料化済の各⽊材資源に適する変換設備 形態 種類 適する変換設備 薪 薪専用ストーブ 暖炉 チップ 破砕チップ チップ用ボイラー 切削チップ ペレット バークペレット ペレットストーブ ペレットボイラー ※ペレットの種類に応じて仕様が異なる、 投入可能な種類に制限がある可能性有 全木ペレット ホワイトペレット (注)本書の対象は主としてチップとペレット 粒度や径もリスクの一つ 形状や粒度に大きなばらつきがある場合、または設備仕様に合った大きさになっていな い場合、投入口でつまるリスクが高くなる。燃料化設備や変換設備の投入口でのトラブル は頻繁に起こるものである。 燃料化前の木材資源(丸太等)を調達する場合、径に応じて導入する燃料化設備 を選定する、かつ、製造する燃料の形状や粒度が均一になるよう設備の仕様をよ く理解する チップやペレット等の燃料化済の木材資源を調達する場合は、形状や粒度ができ る限り均一になるよう調達先と取り決めをする
18 1.1 バイオマス原料 (6) 不純物 調達予定の木材資源に含まれる不純物量を測定し、不純物の種類と量に応じた変換設備の 基本設計を行うようメーカーに依頼する 不純物によるトラブルは有害物質の発生と設備損傷が主 木材資源に不純物が混入することで生じる問題としては、大きく分けて有害物質の発生 と設備の損傷があげられる。 できる限り不純物の少ない木材資源を調達するよう努め、トラブルを避ける 表 Ⅱ.1-7 不純物の種類別の発⽣しうるトラブル トラブルの種類 不純物種類 発生しうるトラブル 有害物質の発生 接着剤や塗料 燃焼時の有害ガス発生 接着剤や塗料 燃焼灰への有害物質混入 設備損傷 接着剤や塗料 燃焼時の有害物質による炉の損傷 土石や砂利、釘や楔、 プラスチックや塩化 ビニルなどの異物 破砕機や燃料供給系の損傷 土石や砂利中の ガラス成分 炉内の損傷 (7) 灰分 調達予定の木材資源に含まれる灰分を測定し、年間の灰発生量を算出する 灰分に応じた変換設備の基本設計を行うようメーカーに依頼する 灰発生量は産業廃棄物処理費用として事業性に影響大 調達予定の木材資源の灰分の値を用いることで灰の発生量を概算することができる。灰 の発生量は、産業廃棄物処理費用として事業性に大きく影響する。 樹皮はほかの部位に比べて灰分が多い 樹皮(バーク)はほかの部位に比べ灰分が多い傾向にある。 木材資源中の樹皮の割合が大きく変動しないよう、調達先と取り決めをする
1.1 バイオマス原料 19 (8) 品質規格 調達にあたって既存の品質規格を活用するかどうか検討する 国内外で規格が異なる 品質規格は燃料の品質を担保するために定められるものである。欧米を中心にチップや ペレット等の規格が定められている。一方、日本では、現在 JIS 等の国の規格としての品 質規格は定められていない。ただし、自主規格2であればいくつか策定されており、これら は欧米の規格を参考に作成されている。 なお、ペレットについては 2014 年に国際規格である ISO 規格(ISO 17225:2014)が定 められた。このため、現在国際的に流通するペレットは、基本的に国際規格に則って製造 されている場合が多い。 ☞Ⅲ章 2.3 燃料製造設備 (チッパー) 規格は品質の安定化に寄与 規格に沿った燃料を調達することで、品質の安定化が期待される。あるいは、国際規格 や自主規格を参考に、地域独自の基準を定めることも可能である。 調達契約に規格の準拠を盛り込む、あるいは、規格を参考に地域独自の品質基準 を定める 2チップについては、平成 26 年 11 月に木質バイオマスエネルギー利用推進協議会が策定した「燃料用木質チップの品質規格」がある。ペレッ トについては、日本木質ペレット協会が策定した「木質ペレット品質規格」やペレットクラブが策定した「木質ペレット燃料に関する自主規 格」がある。ただしペレットクラブは、2014 年以降は ISO の規格を推奨するものとしている。
20 1.1 バイオマス原料
1.1.4. 単価
木材資源の取引単位と調達単価について、調達先と合意形成をはかる 燃料向け木材資源の価値は「発熱量」だが、取引単位は重量の事例多数 一般的に、用材は容積単位の価格で取引される。また製紙用チップは、係数を定めて絶 乾重量を推定し、絶乾重量単位の価格で取引される。一方、燃料向けの木材資源は「発熱 量」に価値があるため、本来であれば発熱量単位の価格で取引するのが最も合理的である。 実際に欧州では、変換時の発生熱量を取引単位とする例もある。しかし日本では、基本的 に重量単位の価格で取引されている。重量単位で取引する場合、水分(率)の多い丸太や チップが調達先から搬入されると収益が悪化するおそれがあるが、木材資源の量の確保を 優先すべく、水分(率)を問わずに調達しているのが実態である。 搬入の都度、木材資源の水分(率)を計測して低位発熱量を推計し、発熱量単位 の価格で取引する 契約時に受入可能な水分(率)の上限を設け、かつモニタリングを適切に行う 調達先とコミュニケ-ションを十分にとり、水分(率)が変換設備の仕様から大 幅に逸脱しないよう調整する これまでの燃料向け木材資源の価格はほかの用途に比べ最安 用材あるいは紙パルプ向けの木材資源の取引価格は、公表資料から得ることができる (表 Ⅱ.1-8)。燃料向けの木材資源の取引価格は、これらのマテリアル利用の取引価格に 比べ安いとされてきた。しかし、FIT 制度の開始により逆転する事例も出てきている。 事業実施地域におけるマテリアル用途の木材資源の相場を把握したうえで、それ らの市場に悪影響を与えないような価格設定を行う 表 Ⅱ.1-8 ⽊材資源の取引価格 品目 区分 近年の市況目安 原木(製材用) すぎ丸太 11,000~14,500 円/m3 原木(合単板用) すぎ丸太 11,000 円/m3 原木(チップ用) 針葉樹丸太 4,500~5,000 円/m3 広葉樹丸太 8,000~9,000 円/m3 製材品 正角(すぎ) 55,000~60,000 円/m3 正角(すぎ乾燥材) 65,000~70,000 円/m3 合板 針葉樹合板 (12×900×1800 (mm)) 1,000~1,500 円/枚 52,000~78,000 円/m3 集成材 ホワイトウッド集成管柱 (105×105×3000(mm)) 2,000~3,000 円/本 60,000~91,000 円/m3 木材チップ 針葉樹(パルプ向け) 12,000~13,000 円/t (5,000~6,000 円/m3) 広葉樹(パルプ向け) 16,000~18,000 円/t (8,500~9,500 円/m3) (出所)木材価格統計調査(林野庁)2015 年1.1 バイオマス原料 21 調達ポートフォリオに応じて平均単価は変動 調達する木材資源の種類に応じて単価が異なる場合、種別のシェアが変わると平均単価 も変化する。 調達ポートフォリオの変化が事業収支に与える影響を検討(図 Ⅱ.1-11) 図 Ⅱ.1-11 FS 事業実施事業者の重油価格および森林由来チップ⽐率の感度分析 (出所)「平成27 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事 業 飲料製造工場及び周辺施設へのバイオマス地域熱供給事業の事業性評価(FS)」(NEDO)2016 年 市況に応じて化石燃料と木材資源の熱量単位の価格差は変動 一般にチップやペレットは重量単位、化石燃料は容積単位で取引されるが、それぞれの 価格を比較する場合、熱量単位を基準とする。たとえば、未乾燥木質チップが 15 円/kg の ときに熱量等価となるのは、ペレット 30 円/kg、灯油 67 円/L、A 重油 72 円/L、石炭約 50 円/kg である(図 Ⅱ.1-12)。このグラフを用いると、事業実現時の化石燃料市況下におい て、チップやペレットの価格がいくらで熱量等価となるのかを確認することができる。 熱供給事業を実施する場合、化石燃料を導入した場合と比べてコスト競争力が出 るような価格を設定する ☞設備費を含め た事業性比較も 本来は重要
22 1.1 バイオマス原料 図 Ⅱ.1-12 熱量単位の価格が等しくなるチップやペレットと化⽯燃料価格 (注)木質チップ(未乾燥)の単位あたり低位発熱量を8.2MJ/kg(水分(率)50%)、ペレットの単位あた り低位発熱量を16.7MJ/kg(水分(率)10%))、灯油の単位あたり低位発熱量を 34.9MJ/L、重油の 単位あたり低位発熱量を37.1MJ/L、石炭の単位あたり低位発熱量を 25.7MJ/kg と想定して分析 (出所)日本木質ペレット協会ウェブサイト情報など 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 5 10 15 20 25 30 35 40 熱量単価 が等 価 な 価 格 木質チッ プ(未乾燥:水分50%)価格(円/kg) 木質ペレット (円/kg) 木質チップ(未乾燥) (円/kg) 灯油(円/L) 重油(円/L) 石炭(円/kg)
1.2 輸送 23
1.2.
輸送
1.2.1. 輸送⽅法
調達予定の木材資源の発生場所や形態(丸太、チップ、ペレット)、変換設備の立地に応じて、 最も効率のよい流通システムを検討する 燃料化設備を新規に建設する場合、調達予定の木材資源の発生場所と変換設備の立地に 応じて、燃料化設備の立地を検討する 流通システムと輸送距離や必要輸送量に基づき、具体的な輸送方法(車両の種類、積載量、 1 日あたり往復回数、必要台数)を検討する 燃料化の場所と種類に応じて流通システムは5 タイプ 林地残材を例として、調達先である山から変換設備までの流通システムは主に以下の 5 タイプである(図 Ⅱ.1-13)。事業規模や変換設備の立地、あるいは周辺の道路状況等に よって、どのシステムが最も効率的であるかは異なる。 流通システム例 ペ レ ッ ト 工 場 経 由 移動 式 ペ レ タ イ ザ ー チ ッ プ 工 場 経 由 移動 式チ ッ パ ー 利用 利用場 所 で の 燃料 化 図 Ⅱ.1-13 流通システム例 (出所)「国内におけるバイオマスエネルギー利用状況調査」(NEDO)2014 年に基づき作成 ペレット⼯場 ⼭ ⼭⼟場 ペレット化 利⽤場所 丸太として輸送 ペレットとして輸送 ⼭ ⼭⼟場 利⽤場所 ペレット化 ペレットとして輸送 チップ化⼯場 ⼭ ⼭⼟場 チップ化 利⽤場所 丸太として輸送 チップとして輸送 ⼭ ⼭⼟場 利⽤場所 チップ化 チップとして輸送 ⼭ ⼭⼟場 チップ化 利⽤場所 丸太として輸送24 1.2 輸送 同じ輸送方法の場合、ペレットの輸送費が最安 丸太よりチップ、チップよりペレットの方がエネルギー密度(MJ/m3)は高い。このた め、同じ距離を同じ積載量の車両で運ぶのであれば、輸送費が安い順にペレット、チップ、 丸太となる。 丸太よりもチップやペレットの輸送距離が長くなるよう工夫する 車両の積載量を決める際に道路幅が影響 輸送時に使用する道路の幅等によって、運搬車両の種類や大きさが制限される場合があ る。輸送に用いる主な車両は以下の 3 種類である(表 Ⅱ.1-9)。 車両の種類や積載量を決める前に、現地の道路状況の調査を行う ☞Ⅲ章 1.3.3 設備 表 Ⅱ.1-9 運搬⾞両の種類 運搬車輌の例 車輌イメージ 丸太 ローダークレーン付 チップ・ ペレット ファームダンプ 脱着式ダンプ (出所)岩手県林業技術センター 研究報 No.14(2006 年)
1.2 輸送 25
1.2.2. 輸送費
輸送費を事業者自身が負担する契約とするか、調達先から輸送費込の価格で購入する契約と するかを検討する 事業者自身が輸送費を負担する分について、車両を購入しての輸送、車両のリースやレンタル をしての輸送、輸送の外部委託、のうちのいずれかを選択する 車両必要台数や車両の種類と積載量に応じた燃費、1 日の総輸送距離などに基づき、輸送費 を概算する 調達形態や調達先との契約内容に応じて負担する輸送費が変化 事業者自身が負担する輸送費は、主として調達形態(丸太、チップ、ペレット)および 調達先との契約内容により異なる。 たとえば丸太での調達を予定する事業者は、調達先の素材生産事業者等との間で、輸送 費をどちらが持つかを契約であらかじめ定める。事業者自身が負担する場合は、山土場あ るいは中間土場からストックヤードあるいは固体燃料化設備までの輸送費、および固体燃 料化設備から変換設備までの輸送費が事業者負担となる。一方、素材生産事業者等が輸送 費を負担する場合は、事業者の負担する輸送費は固体燃料化設備から変換設備までの分と なるが、2 つの設備が同じ敷地内にある場合、そもそも輸送費はかからない。 積載量と燃費の関係例 輸送車両により積載可能量と燃費は異なる(表 Ⅱ.1-10)。ただし、車両のメーカーや 実際に走行する道路状況、積載する木材資源の種類等によって燃費は変動する。 実際に利用する予定のトラックであらかじめ測定する 表 Ⅱ.1-10 運搬⾞両別積載可能量と燃費 積載可能量(t) 積載可能量(m3) 燃費(km/L) 4 トントラック(丸太) 2.8 3.4 4.0 4 トントラック(チップ) 2.9 8.8 6.7 10 トントラック(丸太) 10.0 12.5 2.5 10 トントラック(チップ) 7.3 22.0 2.5 12 トントラック(チップ) 9.1 27.6 2.5 (出所)岩手県林業技術センター 「研究成果速報No/176 チップ材・土場残材・ 梢端材の運搬コスト」、岩手県林業技術センター 「研究成果速報No/189 チップ工場からの燃料用チップ運搬コスト」 総輸送距離が短いほど経済的かつ二酸化炭素排出量低 片道あたりの輸送距離が一定の場合、総輸送距離は車両の積載可能量によって変化す る。総輸送距離が長くなるほど、重量あたりあるいは熱量あたりの輸送費が高くなる。こ のとき、積載可能量の大きい車両の方が燃費も悪い傾向にあるものの、輸送時の二酸化炭 素排出量の総量で比べると、積載可能量の大きい車両で運ぶ方が排出量は少なくて済む。 積載量の多い車両を採用して往復回数を減らし総輸送距離を短くすることで、輸 送費を安く抑え、かつ二酸化炭素排出量も抑えられる26 1.3 乾燥・貯蔵
1.3.
乾燥・貯蔵
1.3.1. 乾燥・貯蔵⽅法
調達予定の木材資源の水分(率)を導入予定の変換設備で対応可能な範囲に納めるべく対策を 講じる 事業者自身が木材資源の乾燥をする場合は、調達予定の木材資源の形態や品質、確保できる 敷地面積、乾燥にかけられる時間、乾燥にかけられる初期投資額に応じて乾燥(および貯蔵)方 法を検討する 乾燥工程の有無とは別に、調達先からの木材資源の納入が滞った場合等に備えて、貯蔵方法を 検討する 各設備に適した水分範囲あり ボイラーの設計時には、仕様で水分(率)の幅を指定するため、それが設備運用の際に最 も適した水分(率)の範囲となる。 ボイラーの設計どおりのエネルギー効率を達成するためには、指定した範囲に収ま る水分(率)の木材資源を投入する ☞Ⅲ章 2.9 ボイラー燃焼 設備 日本の木材資源の水分率は50%を超えがち チップや丸太を調達する場合、欧州と異なり、水分(率)が 50%を越えることも少なくな い。丸太およびチップは段階に応じて水分(率)の目安が異なる(表 Ⅱ.1-11)。 調達契約において水分(率)の範囲を指定する ボイラー設計時に仕様で水分(率)を高めに設定する ボイラー投入前に木材資源を乾燥させ、ボイラーに投入可能な水分(率)まで下げ る 水分(率)の異なる木材資源を混合して、適切な水分(率)となるよう調整する 表 Ⅱ.1-11 段階別⽊材とチップの⽔分(率)の概略値 段階 水分(率)目安 集材直後(山土場) 50~60% 木材・チップ販売段階 40% チップ利用段階 30% (出所)光珠内季報No.167(2013) (注)天候や流通等様々な条件で水分(率)は変動する。 乾燥方法は天日乾燥と人工乾燥の2 種類 乾燥方法は天日乾燥と人工乾燥に大別され、乾燥対象は丸太とチップに分けられる。それ ぞれの方法にメリットとデメリットがある(表 Ⅱ.1-12)。なお、状況によっては、天日乾燥 と人工乾燥を組み合わせたり、丸太とチップの状態での乾燥を組み合わせたりするのが有効 な場合もある。 各方法のメリットとデメリットを理解したうえで、敷地面積や配置、調達予定の木 材資源に応じて乾燥方法を選択する(乾燥方法検討例:表 Ⅱ.1-13)1.3 乾燥・貯蔵 27 表 Ⅱ.1-12 乾燥⽅法や乾燥対象別のメリットとデメリット 乾燥方法 乾燥対象 メリット デメリット 天日乾燥 丸太 太陽エネルギーを利用するため エネルギー効率が良い 樹皮が自然にはがれる 初期投資低(屋外あるいは簡易 な屋根のみ) 貯木場が必要 乾燥に時間を要する チップ 太陽エネルギーを利用するため エネルギー効率が良い 初期投資低(チップヤードのみ) 積み上げると発火の危険がある 積み上げると乾燥しないが、平 積みでは丸太での乾燥以上に 場所を必要とする 乾燥に時間を要する 人工乾燥 丸太 天日乾燥に比べ時間がかから ない 省スペース エネルギー収支の悪化 初期投資高(乾燥設備) チップ 天日乾燥に比べ時間がかから ない 省スペース 乾燥系から直接ボイラー投入可 エネルギー収支の悪化 初期投資高(乾燥設備) ☞Ⅲ章 1.2.2. 許認可申請お よび地元との 調整 表 Ⅱ.1-13 FS 事業実施事業者の⼈⼯乾燥検討例 連続回転式乾燥機 流動層式 広葉樹 針葉樹 広葉樹 針葉樹 乾燥温度 (℃) 150 150 150 150 乾燥前質量 (kg/h) 60.0 36 36 19.8 入口水分 (%WB) 40.2 61.7 43.2 61.8 入口見掛密度 (kg/m3) 315 290 315 290 出口水分 (%WB) 5.6 9.4 6.1 6.1 出口見掛密度 (kg/m3) 290 130 250 130 無水分質量 (kg/h) 35.9 13.8 20.4 7.6 乾燥後質量 (kg/h) 38.0 15.2 21.8 8.1 蒸発水分 (kg/h) 22.0 20.8 14.2 11.7 乾燥速度 47.9kg/m3h 45.3kg/m3h 105.4kg/m2h 87 kg/m2h 保有率 (%) 11.8 11.8 (130mm) (130mm) 滞留時間 (min) 21 27 12 18 (注)流動層式の保有率のカッコ書きは静止層厚 (出所)「平成 28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 中山間・内陸に適した木質バイオマスエネルギー需給複合型システムの事業性評価(FS)」(NEDO)2017 年 貯蔵方法は建屋(設備)の有無で2 種類 貯蔵方法は、建屋ありの場所で貯蔵する場合と建屋なしの場所で貯蔵する場合の 2 種類が ある。天日乾燥を兼ねる場合には基本的に建屋なしの方が適している。しかし、降水量の多 い地域では、乾燥した木材が積雪や降雨によって再び水分を含んでしまうのを避けるため、 季節限定で建屋ありの場所に貯蔵する場合がある。 天日乾燥の有無、敷地面積や配置に応じて建屋の有無を検討する (検討例:図 Ⅱ.1-14、図 Ⅱ.1-15) ☞Ⅲ章 2.6 燃料貯留設備 (サイロ)
28 1.3 乾燥・貯蔵 図 Ⅱ.1-14 FS 事業実施事業者の原料別ストック⽅法別⽔分率の調査結果の例 (出所)「平成27 年度~平成 28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 竹の 新素材加工工場に併設したバイオマスの熱・電併給カスケード利用による地域再生自立システム”ゆめ竹バレー”の事業性評価(F S)」(NEDO)2016 年 図 Ⅱ.1-15 FS 事業実施事業者による林地残材の天⽇乾燥での含⽔率調整の例 (出所)「平成27 年度~平成 28 年度成果報告書 バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業/地域自立システム化実証事業 持続 可能な林業に資するバイオマスエネルギーの地域利活用の事業性評価(FS)」(NEDO)2016 年 【事例】⼯場の余剰熱を燃料タンク内のバークの乾燥に活⽤し事業性向上 珪藻土の製造を行う S 化学株式会社(昭和化学)では、工場内で使用する LNG 由来のエネルギーの約 20%をバークチップ由来のエネルギーに転換した。この取 組により、燃料の多角化と LNG 購入費の削減が可能となった。一方、その他の木 質資源に比べ水分の多いバークをそのまま変換設備(熱風乾燥炉)に投入すると、 燃焼効率が悪化するという問題が生じる。こうした問題に対応すべく、同社は、 集積場でのバークの天日乾燥と、工場内の設備の放散熱(余剰熱)で暖まった空 気を燃料タンクに吹き込むことによる乾燥促進を実施した。 このような取組により、燃焼効率の悪化を防ぎ、さらに燃料乾燥に要する費用 の削減を実現した。
1.3 乾燥・貯蔵 29
1.3.2. 貯蔵・乾燥設備規模
貯蔵方法と乾燥方法に応じて、必要な土地の面積、必要な人工貯蔵設備と乾燥設備の容量 を明らかにし、予定する用地に収まるかを検討する 貯蔵・乾燥形態別に必要な設備は異なる 主要な貯蔵および乾燥設備を示す(表 Ⅱ.1-13)。 表 Ⅱ.1-14 主な貯蔵および乾燥形態における必要設備 種類 設備 丸太貯蔵 土地 チップ貯蔵 土地・建屋 チップヤード チップサイロ チップ供給用重機 丸太乾燥 土地・建屋 (乾燥機) チップ乾燥 土地・建屋 (乾燥機) 注)貯蔵場所と利用場所を運ぶ場合の輸送費は1.2 で検討 (出所)各種事例へのヒアリング等より 丸太の貯蔵量は半年分以上とする事例多数 水分(率)を 50%超から 30%程度にまで下げるには、天日乾燥の場合、半年以上を要す ると考える事業者が多い。ただし、外気状況や気象条件による部分も大きく、一概にはい えない。また、FIT 制度を利用した昨今の事例では、調達停止リスクをふまえて、木材資 源を 1 年分貯蔵する例もみられる。 調達予定の木材資源の乾燥に要する期間を考慮し、調達先との関係性や確保可能 な土地の面積などもふまえて貯蔵量を検討する チップの貯蔵量は少なくとも1~3 日分とする事例多数 貯蔵設備の容量があまりに小さいとトラックの搬入頻度が増すため、近隣住民から苦情 が出る可能性がある。また、一時的にチップの受け入れが止まったときに、ある程度の期 間は運転が継続できる必要がある。 貯蔵に用いることのできる土地や建屋の確保状況、稼働停止リスクの捉え方等に 応じて、貯蔵量を検討する ☞Ⅲ章 2.6 燃料貯留設備 (サイロ) 《こんなときどうする!?》
エネルギー変換設備の設置場所と同じ場所に、十分な量を貯蔵できる貯蔵設備を設置できな い✍
変換設備の立地の近傍に貯蔵場所を複数ヶ所用意する30 1.4 固体燃料化
1.4.
固体燃料化
1.4.1. 固体燃料化⽅法
調達先の選定状況等に応じて、木材資源の望ましい調達形態と固体燃料化方法を選定する 燃料化形態ごとに特徴が異なる 木材資源の燃料化形態には、薪やチップ(切削あるいは破砕)、ペレットなどがある。 ここでは、一般家庭等での利用が主である薪を除いて、チップ(切削あるいは破砕)やペ レットを利用する場合のメリットおよびデメリットを述べる。個々の事業における輸送経 路や運搬距離、原料加工設備、エネルギー変換設備などを考慮することが重要である。 チップとペレットの差異を十分に理解したうえで、燃料化方法を検討する ☞Ⅲ章 2.3 燃料製造設備 (チッパー) 表 Ⅱ.1-15 チップ・ペレットの特性 項目 チップ ペレット 体積当り発熱量 低い 高い 燃焼制御 含水率によって異なる 品質が均質の為、制御が比較的容易 生産コスト 小さい 大きい 環境負荷 加工工程が少なく、環境負荷小 加工工程が多く、環境負荷大 保管上の留意点 保管スペースが大きくなる 水分・湿気に弱い 注)体積当り発熱量は樹皮を含むかどうかによって変化。 形状、水分(率)、エネルギー密度はペレットが優れる 木材資源を燃料利用する際、ボイラー投入時にはサイズや形状、ボイラーでの直接燃焼 時には水分(率)、輸送時にはエネルギー密度がそれぞれ重要な要素となる。チップ、ペ レット、灯油についてこれらの特性を整理した(表 Ⅱ.1-16)。一般に木材資源は、化石 燃料等に比べてエネルギー密度が低い。そこで、できるだけエネルギー密度を高めるため の工夫として、ペレットに加工することが考えられる。特に輸送距離が長い場合、これが 輸送コスト削減につながる。このとき、ペレットに加工すると水分(率)も 10%程度にま で下がるため、エネルギー変換の安定という点でもペレット化によって得られるメリット は大きい。 表 Ⅱ.1-16 固体燃料と灯油の特性⽐較 項目 単位 ペレット チップ (未乾燥) 灯油 水分(率) % 10 50 0 低位発熱量*1 MJ/kg 16.7 8.2 43.5 かさ密度*2 kg/m3 600~750 250~350 780~800 エネルギー密度 MJ/m3 10.017~12,522 2,041~2,858 30,450~34,800 *1:木質系バイオマスの無水ベースでの高位発熱量を 18.8MJ/kg-dry として水分率 (湿量基準の含水率)に応じた低位発熱量を算出 *2:日本木質ペレット協会ウェブサイト(http://www.w-pellet.org/susume/2_02.html)より (出所)日本木質ペレット協会ウェブサイトなど1.4 固体燃料化 31
1.4.2. 固体燃料化設備規模
流通システムと燃料化方法に応じて燃料化設備の種類を検討し、変換設備の規模や調達 可能量等に応じて燃料化設備の規模を検討する チップとペレットそれぞれに移動式設備と固定式設備あり 前項で述べたとおり、燃料化の方法にはチップ化(切削あるいは破砕)とペレット化が あり、それぞれチッパー(切削チップ製造機、木材破砕機)とペレタイザーを用いて燃料 化を行う。また、流通システム、すなわち山土場で燃料化するかどうかにより、移動式設 備か固定式設備かを選ぶことができる。山土場で直接燃料化する場合は移動式設備しか選 択できないが、それ以外の場合は移動式設備を場所固定で利用することも可能である。 移動式と固定式それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで選定する ☞Ⅲ章 2.3 燃料製造設備 (チッパー) 変換設備への固体燃料投入量(t/h)≦燃料生産量(t/h) 特に発電を伴う事業の場合、変換設備は 24 時間稼働する。サイロやホッパーから(性 状が一定であれば)1 時間あたり同量ずつコンベヤを通じてボイラーに投入される。した がって、燃料化設備の規模は少なくともボイラーへの 1 時間あたり投入量と等しくなくて はならない。しかし、燃料化設備のトラブルを想定して、あるいは燃料化設備の稼働時間 を短くするために、燃料化設備の規模を大きめに設定する事例が少なくない。ただし、大 きな規模の燃料化設備を設置すると、その分初期費用は増大する。 初期費用増大とのバランスを考慮したうえで、変換設備の固体燃料投入量よりも 生産量が多くなるような燃料化設備の規模を設定する メーカーカタログ値の処理量(m3/h)≠実際の処理量(m3/h) 設備規模を選定する際には、メーカーが提示する 1 時間あたりの木材資源処理量や 1 時 間あたりのチップやペレット生産量を参考に検討する。しかし、メーカーカタログ値はメ ーカーが仕様で定める大きさや形状の木材資源を投入した場合の数値であるため、丸太以 外の木材資源を投入する場合や、丸太の大きさにばらつきがある場合、実際の処理量はカ タログ値からずれる。 投入予定の木材資源の大きさや形状を踏まえ、メーカーや専門的知見を持つ人材 と相談した上で設備規模(処理量)を設定する ペレットに加工する経済的メリットが生じるのは長時間稼動の大規模設備の場合 1.4.1 で述べたようにペレットを利用するメリットは複数あるものの、経済性を考慮する と年産数千トンクラスのペレット少量生産は不利である。一般的に、チップ製造に比べペ レット製造の方が設備費もユーティリティ費等の運用費も高いため、小規模設備の場合は チップ製造に優位性がある。 地域内での固体燃料需要を慎重に見積もり、年間数万トンクラスの需要が見込め なければペレット製造を避ける32 1.5 その他
1.5.
その他
1.5.1. 関連法規制・制度
FIT 制度を活用する場合は、買取価格の区分と設定、および「発電利用に供する木質バイオマ スの証明のためのガイドライン(林野庁)」の記載内容を十分に理解する 特に未利用材の調達を計画する場合は、事業実施地域で森林経営計画を立てている森林や 保安林の面積や分布を把握する 製材端材や建築発生木材、剪定枝および木屑の調達を計画する場合は、必要に応じて「廃棄 物の処理及び清掃に関する法律」において必要とされる資格を取得する 活用する価格区分によっては証明書の入手が必要 FIT 制度における価格区分は、基本的に木材資源の履歴によって分かれている(一部、 設備規模や技術による分類を含む、表 Ⅱ.1-17)。特に「間伐材等由来木質バイオマス」 と「一般木質バイオマス」については適切に識別や証明を行う必要があり、伐採や加工・ 流通を行う事業者は、その木材資源が属する区分とほかの区分が混在することなく分別 管理されていることを証明する書類を交付する必要がある。FIT 制度を活用する場合は、 価格区分によってはこの証明書の入手が必要になる。 「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」には、用語の定義や 証明書類への記載事項、制度運用の考え方、そのほか留意事項などが取りまとめられてい る。 ☞Ⅲ章 1.2.3 FIT 事業計画認 定申請と系統連 系申請 表 Ⅱ.1-17 固定価格買取制度におけるバイオマス発電の買取価格および買取期間(2016 年度) 未利用材 一般材 廃棄物 リサイクル材 バイオマス メタン発酵ガス 間伐材等由来の 木質バイオマス※1 一般木質 バイオマス・ 農作物の収穫 に伴って生じる バイオマス※2 一般廃棄物 そのほかの バイオマス※3 建設資材 廃棄物※4 2,000kW 未満 2,000kW 以上 買取価格 39 円+税 40 円+税 32 円+税 24 円+税 17 円+税 13 円+税 買取期間 20 年間 20 年間 20 年間 20 年間 20 年間 20 年間 ※1 間伐材や主伐材であって、後述する事業計画認定において未利用であることが確認できたものに由来するバイオマスを燃焼させる発電 ※2 未利用木材及びリサイクル木材以外の木材(製材端材や輸入木材)並びにパーム椰子殻、稲わら・もみ殻に由来するバイオマスを燃焼さ せる発電 ※3 一般廃棄物、下水汚泥、食品廃棄物、RDF、RPF、黒液等の廃棄物由来のバイオマスを燃焼させる発電 ※4 建設廃材に由来するバイオマスを燃焼させる発電 (出典)資源エネルギー庁ウェブサイト(http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html) 森林経営計画を立てるための条件が定められている FIT 制度で未利用材としての認定を受けるためには、森林経営計画が策定されている森 林、あるいは保安林から搬出された材であることを証明する必要がある。森林経営計画と は、森林計画制度の下で森林所有者や所有者から経営委託を受けた者が策定する、具体的 な伐採・造林、森林保護、路網整備等に関する計画である。計画を立てるにあたっては、 必要な面積や必要なまとまり具合などが定められており、誰でも好きな面積で計画を立て られるわけではない。また、1 回に立てる計画は 5 年間分と定められている。1.5 その他 33 森林経営計画の立て方等について理解し、調達先の森林経営計画策定状況を必要 に応じて把握する 産業廃棄物処理業の許可の取得には都道府県への手続きが必須 事業者が製材端材や建築発生木材などの廃棄物を外部から調達する場合、産業廃棄物処 理業等の許可の取得が必要となる。許可の取得には事業実施地域の都道府県に対して各種 手続きを行わなくてはならず、手続期間には少なくとも 1 年程度を要する。また、手続書 類の差し戻しなどが発生して 2 年以上も要する事例もあるため、事業スケジュールに大き く影響する。
34 1.5 その他
1.5.2. ⻑期変動リスク
原料調達先の産業動向を把握し、調達可能量と調達価格の中長期的な推移を検討する 調達量の減少が見込まれる場合の代替調達先を検討する 原料の調達は関連産業動向に左右 原料となるバイオマスは農林水産業や木材関連産業、食品関連産業、あるいは廃棄物処 理業などの各種産業から得られる。したがって、調達量は関連産業の動向に大きく左右さ れる。さらに、調達可能量の変動は需給の変化をもたらし、価格の変動をも引き起こしう る。 長期的な調達可能量の変化に備え、調達先を複数確保する 調達は中長期的なリスクが伴う可能性有 調達先であるチップ工場や素材生産業者等は、小規模な事業体であることが少なくな い。この場合、その事業者の状況(たとえば事業承継の状況)によっては調達が困難にな る可能性がある。株式会社等の比較的大規模な組織から調達する場合も同様のリスクを抱 えていることには変わりがないが、リスクは小規模事業者との契約の方が大きい。 また、調達先が小規模であるほど、木材資源の取引において契約締結ではなく協定や覚 書を交わすことを提案される場合が多い。これも、事業者から見ればリスクの高い取引形 態であり、仮に長期の協定であっても長期的な調達量変動のリスクを完全に軽減できるも のではない。 調達先の経営状況の変化に備え、調達先を複数確保する 協定や覚書ではなく契約の締結が可能か打診する 調達先と密にコミュニケーションをはかり、十分な信頼関係を築く2 エネルギー供給 35
2.
エネルギー供給
持続可能なバイオマスエネルギー事業の実現に向けて、エネルギー供給について調査段 階で検討すべき項目は表 Ⅱ.2-1 のとおりである。 表 Ⅱ.2-1 エネルギー供給について検討すべき項⽬ 検討項目 該当項目 □ 供給形態(電気、熱(蒸気/温水)、固体燃料、気体燃料など) 2.1.1 □ 供給先 2.1.2 □ 需要量 2.1.3 □ 性状(圧力や温度、熱流量、不純物など) 2.1.4 □ 販売単価/利用価値(定量的) 2.1.5 □ 副生物の処理/利用形態 2.2.1 □ 副生物発生量 2.2.2 □ 副生物需要量 2.2.3 □ 副生物の性状 2.2.4 □ 副生物の処理単価/販売単価 2.2.5 □ 長期変動リスク 2.3.12.1 エネルギー 37
2.1.
エネルギー
2.1.1. 供給形態
地域のエネルギー需要やインフラ状況に応じてエネルギー供給形態を検討する エネルギー変換設備の設置場所とエネルギー供給先の目処が立った段階で、双方を接続する 最適な方法を選定する 熱か電力の供給を基本としつつ固体燃料の供給も検討対象 現在、国内で商業的に行われているバイオマスエネルギー事業は、主に熱利用と電力利 用を目的としたものである。このほか、チップやペレット等の固体燃料を供給する事業も 広義のバイオマスエネルギー事業ということができるが、いずれも最終的には熱あるいは 電力としての利用が前提となる(図 Ⅱ.2-1)。 図 Ⅱ.2-1 ⽊質系バイオマスをエネルギー利⽤するまでのフロー 熱の場合は6 種の供給形態、電力の場合は送配電線での供給 熱供給の場合、変換設備の設置場所から利用先への供給形態は 6 種類に大別され、それ ぞれにメリットとデメリットがある(表 Ⅱ.2-2)。電力供給の場合、基本は送配電線を用 いて接続するが、接続先が事業者自身か、近隣の供給先候補か、系統連系かにより注意す べき点が異なる。詳細は 2.1.2 で解説する。 表 Ⅱ.2-2 各熱供給形態のメリットとデメリット 供給形態 メリット デメリット 温水 配管メンテナンス以外のオペレーシ ョン不要(変換設備のオペレーショ ンと一体) 距離や配管材質に応じた熱損失有 配管の敷設工事に制約有 蒸気 熱風 熱媒油 チップ 熱損失無 法規制上の制約少 輸送時のエネルギー密度低 継続した配送オペレーションが必要 ペレット 熱損失無 法規制上の制約少 水に弱い 継続した配送オペレーションが必要 最終的な利⽤形態は 熱か電気 状況によっては、チップ やペレットでの供給も38 2.1 エネルギー 熱利用の場合、供給先が近ければ配管敷設、遠ければ固体燃料供給 基本的には、変換設備から利用先までが近距離であれば配管を敷設し温水や蒸気を供給 する方が適しており、遠距離になるほどチップやペレットでの供給が有利になる傾向にあ る。これは、遠距離の場合、配管敷設費用の増大や輸送中の熱損失の増大により、事業性 が悪化するためである。ただし、チップやペレットでの供給は CO2排出の観点では不利に 働く。 外部に熱を供給する場合、配管敷設とトラックでのチップやペレットの供給につ いて初期費用や運用費を比較して最適な方法を選定する 同時に、チップやペレットでの供給の場合には、CO2 排出量が化石燃料利用時を 超えないことを確認 ☞Ⅱ章 1.2.1 輸送方法 《こんなときどうする!?》