参考文献 2. 3
2.4. 復旧
2.4.1. 概要
2011年1月26日から始まった新燃岳の噴火は,大 量の火山灰や噴石等を噴出し,その後も,断続的な 噴火を繰り返し,道路の通行等に影響を与えたほか,
農作物等にも大きな被害を生じさせた.
2.4.2. 復旧
(1)道路交通
大量の降灰による影響や噴石の可能性があるため,
噴火に伴い,2011年1月26日から宮崎県,鹿児島 県内の国道,県道等において通行規制が実施された
(3 月下旬にはほとんどの通行止めの解除).また,
JR九州吉都線でも降灰による運転見合わせ(2月2 日に運転再開),宮崎空港では,1月28日火山灰除 去のため一時滑走路等を全面閉鎖した.2月5日の 宮崎県高原町における路面の降灰状況を図 2.4.2.1 に示す.道路等の降灰除去に関して,宮崎県では,
県建設業協会との防災協定に基づく路面清掃業務の 委託等により,通行規制(図 2.4.2.2)を行っている 路線や幹線道路,市街地部の道路から優先的に降灰 除去清掃作業を行っている1).
また,国土交通省九州地方整備局は,宮崎県,鹿 児島県から要請を受け,国土交通省の北海道開発局 及び全国の各整備局が保有する車両(散水車,路面 清掃車,歩道清掃車等)を集結させ,宮崎県(都城 市,日南市,高原町,串間市,小林市,三股町),鹿 児島県(霧島市)に噴火の翌日から応援派遣を行っ
ている2)(図2.4.2.3).宮崎県では,県が窓口となっ
て調整し,関係市町へ派遣する体制がとられている
1).ただし,市町村道の路線数が多いため,幹線道 路の降灰除去を優先的に実施しており,交通量が少 ない生活道路までは,対応が困難な状況であった.
そのほか,鹿児島市は派遣支援を申し出,道路清 掃車や散水車などとともに,市内の建設業でつくる
「道路降灰除去協会」作業員ら約40人を宮崎県都城 市と日南市に派遣している3).
また,都城市では,西岳や山田地区の降灰厚が2cm 以上の路線については,タイヤショベル等により集 積し,ダンプトラックにて運般している4).
(2)農業施設
降灰により,農地をはじめ,農道・水路等の農業 用施設が埋没し,営農に支障を来した.ビニールハ ウスは,灰の重みや空振によりビニール等資材が破 損,光線透過率も低下し,ハウス内作物の生育への 影響が懸念されている.また,牛舎や倉庫が噴石や 灰の重みにより破損・倒壊する被害も発生している
(図2.4.2.4).
図2.4.2.2 道路通行止め規制
(都城市夏尾町.2011.2.5)
図2.4.2.3 国土交通省の災害復旧車両
(高原町.2011.2.5)
図2.4.2.1 路面降灰状況
路面に堆積した灰が舞い上がり,
視界が悪くなっている.(高原町内.2011.2.5)
図2.4.2.4 ビニールハウスに積もった火山灰
(高原町内.2011.1.31)
農地・農業用施設の降灰被害(図 2.4.2.5)からの 復旧に関して,宮崎県では,県単独事業を拡充して 降灰除去対策を新設し,集落の農業者をはじめとす る地域住民が,農村地域内の農道や用排水路等に堆 積した降灰の除去等を共同して行う活動に対する必 要な資材,機械のリース料等の補助を行っている1).
(3)商工業への影響
都城市では,2011年2月に市内の事業者を対象に 商工業影響調査 5)が実施された.来客数,売上が減 少と回答したのは約50%であった.噴火の前に,地 元百貨店の閉鎖や鳥インフルエンザの問題が生じて いたが,新燃岳噴火をその要因に挙げている割合は 約6割で最も多かった.
聞取り調査の結果からは,
y 地元百貨店の閉鎖とのダブルパンチでの影響が 大きい.
y 各事業所は除灰作業を最優先で行っている状況.
客足も3〜5割減少しており,売上高も減少傾向 にある.
y 食料品を取り扱う商店の中には,野菜の入荷減少 に伴う高値のため,店頭に野菜が並べられない店 も出てきている.こうした状況が続くことで,客 足減と仕入れコスト高騰の二重苦に苦しむ商店 が増えている.
また,別に実施された観光関係者への聞取り 6)で は,降灰などの具体的被害は少ないものの,風評被 害等による来客減少,キャンセル増加などの影響を 受けている事業所が多い,とされている.
(4)教育施設
宮崎県高原町では,噴火や自主避難の対応などに より,1月28日に,町内の町立小中学校6校(小学 校4校・中学校2校),県立高等学校1校が臨時休校 となった.その後31日には,ほとんどの学校で通常 授業が再開しているが,避難区域周辺の学校では,2 月14日にようやく自校での授業再開となった(その 間は他の学校での授業)7).
宮崎県は,新燃岳火口から概ね15km以内にあ る県立学校における空振・噴石対策として,新燃岳 に向いている教室等の窓ガラス(強化ガラスを除 く.)に応急措置として,飛散防止のためのテープを 貼る,必要に応じて屋外活動や登下校等でヘルメッ トの着用などの指導し,降灰対策では,屋上,雨樋,
プールの降灰除去を通知している1).
(5)市民による降灰除去
宮崎県高原町や都城市などでは,1月26日の噴火 から連日,大量の降灰があり,住民は灰の除去作業 に追われた.家屋の屋根や庭などに多量の降灰が堆 積し,パウダー状の灰の清掃は難しく,住民にとっ て大きな負担となっていた.また,除去作業中の屋 根,はしご等からの落下による負傷事故も起こって いた.
宅地における降灰は,市町において家庭ゴミと同 様の方法で,支援された市町の指定ごみ袋や半透明 のレジ袋など(図2.4.2.6)で指定場所において収集 し,処分地に持ち込んでいる.直接,個人が処分地 に持ち込む場合もあった.
2 月に入って,社会福祉協議会が中心となりボラ ンティアの受付体制を整え(図 2.4.2.7),降灰除去 作業等に派遣を行ったが,住民にとって優先度の高 い屋根の上での作業(図2.4.2.8)は禁止されており,
道路や庭先などでの作業が中心であった8).
図2.4.2.5 農地に積もった火山灰
(高原町内.2011.1.31)
図2.4.2.6 長崎県島原市より支援された降灰袋
(高原町内.2011.2.13)
図2.4.2.7 町民やボランティアによる清掃活動
(高原町内.2011.2.13)
2.4.3. まとめ
火山災害は,被害や影響が広域化と活動・被害の 長期化という2つの要素を持つ.すなわち,面的な 被害と時間的な被害である.新燃岳の噴火では,特 に,降灰がそのような状況を地域に与えた.
これに対する具体的な降灰対策も道路や農地,宅 地における除去作業から,学校等の施設に対する対
策まで多岐に及ぶ.したがって,対応の緊急性や復 旧の優先度等を考慮し,そのための対策のあり方を 検討しておく必要がある.
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参考文献
1) 霧島山(新燃岳)噴火による被災及び対応状況 平成 23年3月18日現在,宮崎県
2) 国土交通省九州地方整備局 新燃岳噴火による降灰除 去作業に係る車両の応援派遣
3) 市政広報写真フラッシュ 平成23年1月31日 鹿児島 市広報課発行
4) 降灰除去作業の現状と課題 都城市 5) 商工業影響調査 都城市,2012.2
6) 新 燃 岳 の 影 響 に 関 す る 電 話 聞 き 取 り 調 査 都 城 市 2012.2
7) 高原町災害対策本部資料
8) 西岳地区自治公民館連絡協議会グループインタビュー 調査結果,2012.1.10
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図2.4.2.8 屋根の上での降灰除去作業
(都城市山田町.2011.2.5)
火山の写真 開聞岳 池田湖 / 日本最南端の駅
2009 年 8 月 今井撮影 2001 年 5 月 稲垣撮影
図3.1.1.3 ローブ復元累積図 注)1.国土地理院1/5,000火山基本図使用.
2.数字はローブ番号で,それぞれの最大成長時の 輪郭を示す.現在は,あるものは埋没し,あるもの は局部〜全部崩落によって,ほとんど原形を留めて いない.(太田一也,1996)