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参考文献  2. 3

4. 既往火山噴火の工学的防災

4.5. セントへレンズ

4.5.3. 二次災害に対する対応

噴火後直ちに陸軍工兵隊(USACE),ワシントン 州政府,ワシントン州カウリッツ郡政府などによっ て,二次災害としての火山泥流,洪水災害を防止・

軽減するための緊急対策が迅速に行われ,その後は 将来の噴火に伴う火山泥流などによる災害を防止す るための全米でも類のない恒久対策が実施された.

(1)湖水決壊への対応1)

  山体崩壊土砂はスピリッツ湖(図 4.5.3.12))に流 入し,水位をせき上げた.その結果,湖水が越流し

て決壊し,下流へ段波が流出するおそれがあった.

米陸軍工兵隊は流路掘削を実施して,水位を下げた.

(2) 二次泥流,洪水への対応3)〜10)

  1980年5月18日の噴火により土砂流出により,

下流域には以下の問題が発生した.

・ 山体崩壊による岩屑流堆積物(30億m3,堆積深10

〜60m程度)がスピリット湖の出口を塞いだため,

水位が約60m上昇し,その決壊が大規模な洪水災 害を引き起こす危険性が危惧された.また,この 岩屑流堆積物によってコールドウォータ湖, キャ ッスル湖もせき止められ,これらの決壊の危険性 も指摘された.

・ 大規模な火山泥流が,トゥートル川,カウリッツ 川を流下し,大量の土砂・流木が河道を閉塞した.

そのため,雨期における カウリッツ川沿いでの 洪水災害,ハイウェイ,鉄道への多大な影響が危 惧された.

・ 大量の土砂がコロンビア川に流入し,その水深が 12mから5mに減少したため,船舶の航行への多 大な影響が危惧された.

  このような問題を解決するために,恒久対策がな されるまでの間,岩屑なだれ堆積物によって閉塞さ れたスピリット湖,コールドウォータ湖及び キャッ スル湖の決壊を防止すること,火山泥流ならびに洪 水が下流集落に与える影響を最小限に低減すること を目的に実施された応急対策の時系列を表 4.5.3.1 にまとめた.

  以下に各対策施設の概要を述べる.

4.5.3.1セントヘレンズ山の位置図

4.5.3.1  二次泥流に対する応急対策 1980/5/18〜

23

・カウリッツ川での洪水災害を軽減するため,既設 の堤防を土盛りによる嵩上げ

・道路に堆積した土砂の除去

・キャッスル・ロックとロングビュー間に堆積した 土砂の除去(図4.5.3.22))

噴火直後〜

1980/11

・3 基の土砂採掘船でカウリッツ川とコロンビア川 の合流点付近に堆積した土砂を浚渫した

・11月には土砂掘削作業(除石総量は2,000m3)が 終了,船舶の周航上の問題がほぼ解決された.

1980冬〜 ・ノースフォーク・トゥートル川に,冬の雨期に上 流から流送されてくる土砂を一時的に貯留してカ ウリッツ川に流入する土砂を軽減させるための応 急的な高さの低い土盛りの応急土砂捕捉ダム工を 2 基施工した.合わせてダム堆砂域での除石を行っ た.

・トゥートル川流域に堆積した土砂を掘削し,下流 のカウリッツ川の堤防を嵩上げした.

・ノースフォーク・トゥートル川での岩屑流堆積物 によって堰き止められたコールドウォータ湖,キャ ッスル湖での決壊を防止するため,堰き止め箇所の 恒久的な排水のための流路を施工した.

1981/5 ・トゥートル川上流域に堆積した土砂の掘削が終了

した.

1982/5 ・スピリット湖の水位が60m上昇して決壊の危険が 認められたため,当時のレーガン大統領は USACE に長期的な視点に基づいたスピリット湖決壊防止 計画,カウリッツ川での洪水対策及びコロンビア川 での周航路維持計画を立案するように指示した.

1982/8/19 スピリット湖決壊の危険に対して大統領の非常事

態宣言がなされ,連邦危機管理局(FEMA)が対応を 開始した.

1982/11/5 ・FEMAUSACEに,冬の雨期の間に対応できる 救急的な防災対策を依頼した.USACE は,緊急対 策として台船に設置されたポンプをスピリット湖 に設置して直径1.5m,全長約1kmのパイプと連結 して排水を開始した(図4.5.3.3).

1982/11 ・USACE により,洪水対策及び周航路維持計画が 作成された.

1983/3 ・トゥートル川下流での土砂掘削が始まる.

1984/2 ・USACE は,スピリット湖決壊防止のための恒久

対策として,水位を安全レベルに保持するため,ハ リーズリッジからサウス・コールドウォータ川に通 じる全長2.5kmの排水トンネル工を提案した.

1984/7 ・排水トンネル工の工事が始まる(平均掘削長は約

20m/日)

1984/12 ・USACE によって土砂掘削,カウリッツ川沿いの ケルソ町での堤防改良,SRS建設についてのフィジ ビィリスタディと環境影響評価に関する報告書が 作成された.

1985/3 ・スピリット湖の排水トンネル工事が終了した.

1985/4 ・スピリット湖でのポンプによる排水作業を終了し

た.

1985/4 ・排水トンネル工によるスピリット湖からの排水が

開始され,数ヶ月間に,湖の水位は約6m低下した.

1985/8/15 ・SRS建設に対する補正予算の執行がレーガン大統 領によって認められた.

1985/9 ・スピリット湖の水位が計画水位まで低下した.

1985/11 ・ノースフォーク・トゥートル川上流の約30m3 におよぶ岩屑なだれ堆積物からの土砂流出対策と して,USACEの提案した対策案

①ノースフォーク・トゥートル川とグリーン川の合 流点直上流におけるSRSの建設

②Kelso市内カウリッツ川沿いでの堤防改良工事

③下流域での土砂掘削の追加工事が認められた.

なお,②と③は噴火直後からの継続工事である.

1986/4/26 ・SRS建設に対する地元合意がなされた.

1986/12 SRSの建設が始まる.

1987/11 ・SRSが土砂を貯留し始める.

1989/12 ・SRSが竣工.

①緊急ダム工

緊急ダム工は,セントヘレンズ火山の山体崩壊に よりトゥートル川上流に堆積した岩屑流堆積物の侵 食土砂が下流流のカウリッツ川に流入して河積を減 少させることをできるだけ避けるために,USACE により1980年11月にノースフォーク・トゥートル 川,サウスフォーク・トゥートル川に施工された土 盛り応急ダムである.ダム建設では,周辺に堆積し た土砂を掘削して,それを盛土して堤体としている.

ノースフォーク・トゥートル川に建設されたダム (図4.5.3.42))は,有効高11.4m,堤長1830m,貯砂量 は460万m3である.天端には,蛇篭で保護された

4.5.3.2  カウリッツ川での堆積土砂の除去作業の状況

4.5.3.3 スピリット湖でのポンプ排水状況

放水路が2基設置された.貯砂量は460万m3,実績 では約90万m3で,1981年までの除石量は約720万

m3である.

1980年12月25日の出水によって1基の放水路が 破壊されたため,USACE はコンクリートで放水路 を補強するとともに堤体を 1.5m 嵩上げした.しか し,1981年3月には,比較的規模の大きな火山泥流 により,越流が生じ破壊された.さらに,1982年3 月19日には,噴火にともなう融雪によって大規模な

火山泥流(1,000万m3,流下距離35km)が発生して越

流によって破壊された.

サウスフォーク・トゥートル川に建設された緊急 ダム工は,ノースフォーク・トゥートル川のものと 比較して規模は小さく有効高6m,堤長120m,貯砂 量は38万m3である.1981年までに約150万m3の 除石が行われた.1981年9月までは機能していたが,

1982年には魚類の産卵遡上のために撤去された.

②排水トンネル

スピリット湖決壊防止のための恒久対策として,水 位を安全レベルに保持するため,USACE によりハ リーズリッジからサウス・コールドウォータ川に通

じる全長2.5kmの排水トンネル工が建設された.排

水トンネルの勾配は1.063%で,排水能力は13.5m3/s である.1984年7月に建設が開始され1985年3月 に完成した.掘削にはTBM(112-ton)が用いられ1日 当たりの掘削長は約20mであった.

排水トンネルの取水口と排水トンネルは高さ約 12m の垂直シャフトにより連結されており,将来,

現在の湖水よりも水位を下げる必要が生じた場合に,

取水口のみを改良すればよいように工夫されている (図4.5.3.54)).

③沈砂地(SRS)

ノースフォーク・トゥートル川上流に堆積してい る約30億m3の岩屑流堆積物の侵食により下流に運 搬される土砂を貯留するための USACE により計 画・建設された堤高 56m,有効高 38m,堤長 550m のロックフィルダムである(図4.5.3.62)).建設地点は セントヘレンズ山から約 36km下流地点のノースフ ォーク・トゥートル川で,ダム地点上流の流域面積

は370km2である.

貯砂地の面積13km2で貯砂容量は1億9700万m3 となっている.堤体には直径 91.4cm の暗渠が横 5 列,縦6列,合計30本千鳥状に配置されており,通 水能力の合計は 180.5m3/s で,通常の流水はここか ら排出される.これとは別に,将来の噴火によって 発生するするこが想定される火山泥流の流下に備え,

別途,通水能力6460m3/sの放水路が設置されている.

ダムの満砂想定年は50年である.

(3) 河床上昇への対応1)

  コロンビア川に堆積した 34×106m3の土砂は,6 月1日までに陸軍工兵隊が3機のホッパー浚渫船を

投入して11.5 ×106m3を浚渫し,さらに民間のパイ

プ浚渫機会6機を契約して,船舶が航行できるよう に幅180m,深さ12mの水路を確保した.浚渫土砂 はコロンビア川沿いの浅い区間や低河岸に処理され た.

4.5.3.4ノースフォーク・トゥートル川に施工

された緊急ダム工

4.5.3.5  スピリット湖の排水トンネルの概要

4.5.3.6 沈砂地(SRS)の全景