第 5 章 :磁気構造変更による結合インダクタの性能向上
5.3 従来結合インダクタ構造の結合係数飽和の原因
ここでは, 電磁界シミュレータと理論的なアプローチの2つの視点から従来構造 の結合インダクタの結合係数飽和の原因を究明する。
<電磁界シミュレータにより調査> 結合係数が飽和してしまう原因として, 多く
の漏れ磁束が発生していることに起因する。そのため, 電磁界シミュレータを用い て, 結合インダクタ近傍の磁束分布の調査を行った。その解析結果を図5.4に示す。
この図から, 巻線の外側に漏れてしまう漏れ磁束(External leakage flux), 中央脚の エアギャップ部分でのフリンジング効果による膨らんでしまう漏れ磁束(Fringing
flux)が発生していることが確認できる。従って, これらの漏れ磁束が発生している
ため, 漏れインダクタンスを抑制することできないと考えられる。
図5.3 中央脚をすべて掘削した場合の磁性体コアの外観(PC40EE50Z)
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<フリンジング磁束と結合度飽和の理論的調査> 次に, 理論的な面からこれらの 漏れ磁束と結合係数に与える影響について検討する。まず, 前述した結果から結合 係数が飽和する原因は巻線外部への漏れ磁束と中央脚部分でのフリンジング磁束 の2つであることが考えられる。この巻線外部への漏れ磁束に関しては, 巻線構造 を分散化させたような構造やトロイダルコアに巻線を巻くように外側脚へ均一に 巻けば抑制できることがすでに知られている(68),(89)。ここでは, 磁束密度分布が巻 線外側への漏れる磁束よりもエアギャップ部分でのフリンジング磁束が多く分布 していることが確認されたこと, 巻線外部への漏れ磁束は巻線構造に大きく依存 して変化すること, 以上 2 つの理由からここではフリンジング効果による漏れ磁 束と結合係数飽和の原因について述べる。
まず, 従来の三脚コア構造の結合インダクタにおいて, 図5.5に示す磁気回路モ デルを適用した場合では, 自己インダクタンスL, 漏れインダクタンスLlk, 相互イ ンダクタンスM は各相の巻線巻数 N, 外側脚磁気抵抗 Rmo, 中央脚磁気抵抗Rmcと すると次式で与えられる。
mc mo
2 2 2 lk
mc mo 2
mo 2 mc
mc mo 2
mo
mc 2 mo
2 1 2
2
R N R
M L L
R R R
N R M
R R R
R N R
L
... (5.1)
Fluxdensity
High
Low
Ag lg
Fringing flux (leakage flux)
winding winding
External leakage flux
図5.4 電磁界シミュレート結果とフリンジング効果(三脚コア形)
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従って, 結合係数kは自己インダクタンスLと相互インダクタンスMの比であるこ とから, 次式でその関係は示される。
mc mo
mc
R R
R L
k M
... (5.2) この(5.2)式より, 結合インダクタの結合係数kは, コアの各脚部の磁気抵抗の比で 従属的に決定されてしまうことがわかる。ここで, コアの断面積磁路長や断面積を 図5.5に示すように定義し, エアギャップ部分の磁束の経路もコアの中央脚と同じ 断面積 Acと近似的に考えると各磁気抵抗 Rmo, Rmcは幾何学的の視点から次式で導 出される。
o 0 r
o
mo A
R l
... (5.3)
c 0
g c 0 r
g c
mc A
l A l R l
... (5.4)
(5.3)-(5.4)式中の loとAoはそれぞれ外側脚の磁路長および断面積, lcと Acは中央
脚の磁路長と断面積である。また, μ0は真空の透磁率, μrはコア材の比透磁率, lgは エアギャップ長さである。ここで表5.1に示しているエアギャップの設計値に関し ては, 第 3 章でも述べたように設計仕様を満足させる Rmcを算出後に, エアギャッ プ部分の断面積Acとして(5.4)式に基づいてlgについて算出しているものである。
しかしながら, 実際には図5.4で示すようエアギャップ部分の断面積は膨らみを lg
Ao Ac Ao
lo lo lc
N1iL1
Rmo
N2iL2
fo1 fo2
fc Rmc
Rmo
図5.5 三脚コアの寸法と三脚コアの磁気回路モデル
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もつため, フリンジング効果を考慮した等価的な断面積を Ag とすると中央脚の磁 気抵抗は以下で示される。
g 0
g c 0 r
g c g mc_fringin
A l A l R l
... (5.5) ここで, 電磁界シミュレータの解析結果からエアギャップ部分で磁束が大きく膨 らむことがわかっているが, (5.5)式から分かるようにエアギャップ長lgを長くして も, フリンジング効果により磁束が膨らんでしまうためエアギャップ部分の断面 積Agも増大することとなる。従って, 挿入したエアギャップ長に対して中央脚磁気 抵抗は増加しにくい傾向になる。また, こういった理由から, 表 5.1 に示すよう設 計値と実測値で大きく差が開いているものと考えられる。
また, (5.2)式の結合係数の関係からも, 外側脚の磁気抵抗 Rmo はエアギャップを 設けないため微小な値ではあるが, フリンジング効果の影響で中央脚の磁気抵抗 は増大しないことと相まって, この外側脚の磁気抵抗値も依存して結合係数の飽 和を招くと考えられる。以上が, 結合係数が高くなりにくく, また結合係数が飽和 してしまうメカニズムの1つであると考えられる。