第 4 章 :結合インダクタの 3 相化への拡張
4.2 回路構成と磁気構造
4.2.1. 回路構成
図4.1に3相結合インダクタを用いたマルチフェーズ方式昇圧チョッパ回路を示 す。ここで, Viは入力電圧, Voは出力電圧, iL1, iL2, iL3は各相のインダクタ電流, S1, S2, S3は各相のメインスイッチ, D1, D2, D3は出力ダイオード, Coは出力側電圧平滑コン デンサ, L1, L2, L3は各相の自己インダクタンス, M12, M13, M23は各相間の相互インダ クタンスある。本回路の駆動方法としては 2 相化させたマルチフェーズ方式では, 各相のメインスイッチを 180°位相シフト駆動させていたのに対して, 3 相では各 相の半導体スイッチS1, S2, S3を120°位相シフトさせて駆動させる。このように駆 動させることで, 各相交互に出力側へ電荷を伝送することが可能であり, 特にデュ
+
Vi
S1
Co Vo S2
D2 D1 L1
L2
S3 D3 L3
-M12 -M23 -M13
Three-phase coupled inductor
iL3 iL2
iL1
図4.1 結合インダクタを用いたマルチフェーズ方式昇圧チョッパ回路(3相)
vL1 vL3
vL2
Llk1
Llk2
Llk3 M12
M23 M13
T12 T12
T13 N1
N2
N1 N3 N3 N2 T23
図4.2 3相結合インダクタの等価回路モデル
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ーティ比d=1/3, d=2/3の場合では同じ電荷量を連続して出力側へ伝送することがで きるので, 充放電電荷量を抑制できるため出力側平滑コンデンサを小型軽量化す ることができる。
また, 図4.2に3相結合インダクタの等価回路モデルを示す。結合インダクタを 3相化させると, 形成される等価回路は 3つのトランスが磁気的に結合した構成に なる。各相のトランスの極性はすべてのトランス間で逆結合となるように配備し, このような構成とすることでインダクタ平均電流から発生する直流磁束を互いに 打消し合わせることでコア内磁束を低減させることができる。ここで, Llk1, Llk2, Llk3
は各相の漏れインダクタンスを示す。M12は1相目巻線N1と2相目巻線 N2間の相 互インダクタンスであり, 同様に M13, M23はそれぞれ 1相目巻線 N1と3 相目巻線 N3間, 2相目巻線N2と3相目巻線N3間の相互インダクタンスである。また, 各相の 巻線数は各相の対称性を維持するため等しいものとする。
N N N
N1 2 3 ··· (4.1) このように, 磁気的に結合させて位相シフト駆動させることで, 各相のインダク タ電流iL1, iL2, iL3は相互干渉し, 交互に励磁された磁束が互いの巻線を鎖交する形 態となるため, 従来の非結合インダクタと比べて等価的にインダクタ電流波形が スイッチング周波数の3倍で駆動しているような状態となる。この特徴を3相結合 インダクタでも引き出すためにはコア構造の議論が重要になる。
4.2.2. 磁気構造
結合インダクタの3相化に向けたコア構造は大きく分けて2つ存在する。1つ目 は図4.3に示すような漏れ磁束の経路を有する4脚型平面構造のコアである。まず, 4脚とする理由に関しては, 3脚のEEコアや EIコアのすべての脚に巻線を巻いた 場合であると, 各相間をすべて結合したような形となり, 所望の漏れインダクタン ス Llkを得ることができない。そのため, 漏れ磁束の経路を確保するため 4 脚型の コアとしている。
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しかしながら, このコア構造とすると, 図 4.3 で示すよう各巻線間の距離や各相 の漏れ磁束が流れる径路での磁路長が大きく異なり, 各相均一にすべき漏れイン ダクタンスや相互インダクタンスに大きな差が生じる。この各相間の各インダクタ ンス値が異なる場合, 以下に示す2つの面から結合インダクタの性能劣化が考えら れる。
(a) 漏れインダクタンスのアンバランスによる直流偏磁の可能性
まず, 第3 章でも明らかな通り結合インダクタにおいて漏れインダクタン ス Llk は発生する直流磁束に比例する因子であり, 各相のインダクタ電流の 平均値をバランスさせる制御(80)を用いたとしても, 直流磁束に関わりを持つ インダクタンスが異なれば, 必然的にコアの磁化飽和が発生しやすくなる。
(b) 相互インダクタンスの差による循環電流アンバランスの可能性
次に, 各相間の相互インダクタンスが異なれば, 各相のトランス間を循環
N1 N2 N3
Magnetic path lengths between windings and an air gap in each phase are different
Magnetic path lengths between windings in each phase are different
Air gap
図4.3 平面構造の三相結合インダクタ
F3P
F1P
FcP
v2
v1
v3
i2
i1
i3
F2P
vL3
vL2
vL1 Φop3
Φop2 Φop1 120 degrees
120 degrees
N2
N1 N3
iL1 iL2
iL3 Φcp
図4.4 立体構造の三相結合インダクタ
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する電流成分が異なり, 各相の半導体デバイスや巻線に損失の偏りが生じる 可能性がある。
以上の(a)-(b)における理由のため, 3 相結合インダクタのコア構造は各相のインダ
クタンスを均一化可能な構造とすべきである。
これに対して提案する立体的構造を有する3相結合インダクタを図4.4に示す。
提案構造の結合インダクタは120° 位置をずらした3つの外側脚と漏れ磁束の経路 である中央脚から構成される。本構造の利点は各相巻線の磁路を均一化させること が可能なため, 各相で等しいインダクタンスを得やすいことが挙げられる。そのた め, 以下の特性を得ることが可能である。
M M M M
L L L L
L L L L
23 13 12
lk lk3 lk2 lk1
3 2 1
··· (4.2)
ここで, L, Llk, Mはそれぞれ提案コア構造の場合に得られる統一された各相の自己 インダクタンス, 漏れインダクタンス, 相互インダクタンスであり, 今後は解析便 宜上これらの統一されたインダクタンスで議論を進める。また, L, Llk, Mの関係は 次式の通りである。
M L
L lk2 ··· (4.3)