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激動の 5 年間と新政権への期待

2. 建設市場の動向

当地における日系建設企業の多くは日系企業の工 事を中心に手掛けているため、日本からの投資動向 が注目されるところであるが、

2015

年は大きな転 換期にあると言える。

タイ投資委員会

BOI

が発表した

1

9

月の投資 動向では、海外からの直接投資の申請額は前年同期 比で

76%

減の

748

億バーツに落ち込み、長年投資 申請額の首位の位置にあった日本は、

2015

年には 首位の座をシンガポールなどのアジア勢に明け渡す 見込みとなった。シンガポールからの投資が増加し た理由は、中国企業がシンガポールを窓口として投 資を拡大しているためで、実質的には中国が最大の 投資国になっていると見られる。

業種別の投資動向では、前年同期比

62.7%

減と減 少幅が大きいものの「サービス・インフラ」がトッ プで、

31%

減の「農業・農産物加工」がそれに続くが、

3

位の「金属・機械・輸送機器」が

92.2%

減と落ち 込み幅が最大となっている。

2013 2014 2015

1〜9 前年 同期比 1 サービスインフラ 437.65 788.93 92.47 ▲62.7%

2 農業・農産物加工 111.66 268.39 21.40 ▲30.5%

3 金属・輸送機器機械・ 251.98 325.54 15.36 ▲92.2%

4 電機・電子 97.14 145.34 12.43 ▲24.3%

5 化学 プラスチック 45.44 417.61 5.69 ▲88.6%

6 鉱物・基本金属セラミック 42.97 15.14 4.74 ▲78.0%

7 軽工業 14.81 41.90 3.67 ▲75.8%

合計 1,001.65 2,002.85 155.76 ▲73.1%

出典:BOI

4 業種別投資の動向BOI投資促進権申請金額)(単位10億バーツ)

日系建設業のマーケットとしては、製造業の「金 属・機械・輸送機器」の投資の低迷が大きく影響し ていると思われる。

その中で裾野の広い自動車産業に注目すると、輸 出台数が前年同期比に比べ増加傾向に転じたもの の、国内販売台数はピークであった

2012

年の

143

万台に対して

10

月時点で

62

万台と低調であり、生 産台数は

2013

年に比べて大きく落ち込んだ

2014

年と同じ水準という状態で、設備の稼働率の低下に 歯止めがかかる程度にとどまっている。

これまで日系を中心としたタイの自動車メーカー は、部品メーカーと共に集中してサプライチェーン を構築することで

ASEAN

の中での競争優位を保っ てきたが、タイ国内の需要の減少に加え、人件費の 上昇や

FTA

による部品調達先の多様化に伴い、タイ の拠点としての位置付けが変化してきていることも

出典:UTCC

出典:BOI

2 消費者信頼感指数の推移

3 海外からの投資の推移BOI投資促進権申請金額)

投資動向に影響しているものと思われる。

2011 2012 2013 2014 2015

110

生産台数

乗用車 537,987 957,623 1,071,076 742,678 650,101 商用車 919,808 1,496,094 1,385,981 1,137,329 947,039 合計 1,457,795 2,453,717 2,457,057 1,880,007 1,597,140

国内販売

乗用車 360,444 672,460 631,221 369,836 238,732 商用車 433,637 763,875 699,447 511,996 383,010 合計 794,081 1,436,335 1,330,668 881,832 621,742 国外輸出 734,710 1,018,283 1,126,156 1,128,102 1,016,595 出典:TAI

5 自動車生産台数の推移

海外からの投資、特に自動車産業を中心とした製 造業の投資の落ち込みが顕著であることに対して、

タイ国内の建設業の業況を俯瞰すると、

2014

年か

2015

年前半にかけて、大型プロジェクトの予算 執行手続きの遅れが影響し、大手建設会社の決算に 影響が見られる。最大手のイタリアン・タイ・デベ ロップメント社では、第

2

四半期の決算は最終損益 が

5,100

万バーツの赤字に転落する結果となった。

このため、タイの建設大手は、建設事業だけにと どまらず、他分野への進出により、リスク分散を図 る動きが見られる。

イタリアン・タイ・デベロップメント社は、グルー プ企業が建設機械販売やエンジニアリング事業、ホ テル、サービスアパートなどのライフスタイル産業 まで幅広い事業展開を行っている。また、大手のシ ノタイ・エンジニアリング

&

コンストラクション 社は、建設事業をコア事業として継続するも、鉄道 の延伸に伴う沿線不動産開発や

ASEAN

域内の発電 事業の参入機会も探っている。

一方、タイ国家統計局による統計では、建築許可 面積は

2014

年前半と同程度の水準を維持してお

り、建設需要は大きくは落ち込んではいない。

しかしながら、タイの経済成長が鈍化しているた め、

2015

年度の後半にはタイ政府は建設需要を後 押しするいくつかの政策を発表した。

まず、タイの建設市場で

4

割近くを占める住宅建 設について、タイ政府は

10

月に低所得者向け住宅 ローンの条件緩和や税、手数料の減免策を発表した。

これによりやや動きが鈍っていた住宅の取引が底上 げされるものと期待される。

加えて、タイの建設市場で

2

割以上を占めるイン フラ建設分野では、

11

月に中国と東南アジアを結ぶ

「汎アジア鉄道」構想の一部となる「中タイ高速鉄道」

開発計画にタイ、中国両国が合意し、

12

月に起工式 が行われるなど、大型インフラ案件の進捗が期待さ れている。

6 建築許可面積の推移

出典:NST

単位:1,000m2

これらの政策の効果が判明するのは来年以降にな るであろうが、首都のバンコク都内の動きとしては、

コンドミニアムの売れ行きはスローダウンの傾向に あるが、価格下落の兆候は見られない。

また、オフィスについては、空き室率が

8.8%

と 需要は堅調で、今後も新規供給が限られているため、

賃料は毎年

4

10%

のレンジで上昇していること から、バンコク都内については比較的建設需要は存 在しているものと思われる。

3.

タイの産業の高付加価値化と今後の建設業のトレンド タイは経済的な発展を遂げ、ひとり当たりの

GDP

6,000

ドルを超えるものになった。一方で は、少子化による労働人口の減少が見込まれており、

経済的な成長を続けるには、低付加価値の労働集約 産業から高付加価値の産業へと転換していく必要が あろう。

日本政府もタイの産業の高付加価値化や研究開 発・人材育成への協力を行うと共に、産業のさらな る発展を助けるべく質の高いインフラ整備を後押し

している。

建設業の動向もこのようなトレンドとは無縁では なく、メコン地域の中心という利点を生かした企業 の地域統括事務所や研究開発拠点、労働力に頼らな い高効率の製造拠点や、産業の高付加価値化を目的 としたインフラ整備など今までになかった需要が現 れよう。

既に産業の高付加価値化への転換を果たした日本 としては、技術的なノウハウの蓄積を生かす場面が 増えてくることが期待される。日本の建設業もこの 流れに乗り、技術的な貢献を行うことで新しい需要 を取り込み、引き続きタイの産業の発展に寄与でき るのではないかと思われる。

特集

マレーシア

水谷

[大成建設(株)  クアラルンプール営業所参与]/クアラルンプール支部