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)2015
年の回顧
2015
年は、日本とブラジルが外交関係を樹立し てから120
周年を迎える記念すべき年であり、さま ざまな記念行事が行われた。2
月にはリオデジャネ イロにつぐ規模で行われているサンパウロのカー ニバルに青森県五所川原市から運搬した“立佞武多(たちねぷた)”が参加、
9
月には同じくサンパウロ市 で4,500
発の花火を打ち上げる花火大会が開催され るなど、日本とブラジルの友好関係をさらに深化さ せる記念行事が毎月、全国各地で実施された。11
月 には秋篠宮ご夫妻も御来伯、国内各地を御訪問され 大歓迎を受けられて、記念の年に花を添えた。この記念行事の締め括りとして位置付けられてい たものが、
12
月に予定されていたジウマ・ルセフ大 統領の日本への公式訪問であり、安倍首相との首脳 会談、天皇陛下との会見などが計画されていた。し かしながら、議会の予算審議が停滞しているなど政 局が混迷を極めているために急遽中止となり、逆に 水を差すかたちとなった。このルセフ大統領の訪日中止に象徴されるよう に、
2015
年のブラジル経済、政治情勢はネガティブ な数字、情報で埋め尽くされている。まず、主要な経済指標を確認すると、
IBGE
(ブラジル地理統計院)が
12
月1
日に発表した2015
年第3
四半期のGDP
成長率は前期比−1.7%
となり、第3
四半期としては1996
年の統計開始以来過去最低の 数字となった。一昨年(2014
)同期比では−4.5%
で、前年から兆候が見られた景気の悪化は、今年に入っ て加速度的に進んだことが分かる。これは鉄鉱石や 大豆などの輸出先の大半を占める中国の経済成長 が減速していること、世界的なコモディティ価格の 大幅な下落などが主な要因として挙げられる。こう
いった外的な要因だけではなく後述する政治の混迷 や大幅な財政赤字も影響して、ブラジル中央銀行の
12
月4
日の発表によると、2015
年通期のGDP
成長 率予測値は−3.5%
となっている。消費者心理に影響をおよぼす消費者物価指数、失 業率についても芳しくない。
IBGE
が12
月9
日に発 表した数字によると、消費者物価指数は2015
年11
月までの12
カ月間累積で10.48%
の上昇となって おり、家計を逼迫している。失業率は前年末時点で4.3%
であったが、10
月には7.9%
まで上昇してお り、2009
年以来の水準となっている。国内の基幹産業のひとつである自動車業界の状況 に注目すると、景況感をより具体的に理解すること ができる。
ANFAVEA
(全国自動車工業会)の発表によ ると2015
年11
月末時点での自動車生産累積台数は220
万台(前年同期比−22.3%
)、新車登録累積台数は234
万台(前年同期比−25.2%
)となり、一昨年と比較 して大幅な減少となっている。近年の経済成長によ り中間層が拡大、さらに割賦による購入が普及した ことも寄与し、販売台数を伸ばしてきたが、金利の 高騰(12
月時点の政策金利は年利14.25%
)も相まって大 ブレーキがかかっている。このような状況下で、自 動車メーカー各社は一時解雇や集団休暇により解雇 を避ける努力を続けてきたが、生産調整を避けるこ とはできず、1
万人超の労働者が職を失い、10
月末 時点の自動車メーカーの従業員数は前年より1
割も 減少していると報じられている。政局の混迷もブラジル経済に暗く影を落としてい る。
2014
年に発覚した、南半球最大の事業会社であ る石油会社ペトロブラス社の汚職スキャンダルによ る逮捕者は、2015
年に入っても止まることを知ら ない。8
月には収賄容疑で前政権の官房長官が逮捕、11
月には現職の与党上院議員が捜査妨害の容疑で逮捕されるなどその影響はますます拡大している。
12
月現在においてもルセフ大統領の側近に対する 捜査が行われており、大統領支持率は10%
以下に 低迷している。このような経済・政治の悪化により大手格付会社 では、
9
月のスタンダード・アンド・プアーズに続き、ムーディーズもブラジルの信用格付けを投機的水準 への格下げ方向で見直すとの声明を
12
月9
日に発 表している。(
2
)2016
年の動向経済・政治の混迷が注目された
2015
年であった が、2016
年は何と言っても南米大陸初の夏季オリ ンピック、パラリンピックの開催がリオデジャネイ ロで予定されている。開催期間はオリンピックが8
月5
日から21
日まで、パラリンピックが9
月7
日か ら18
日までとなっており、2014
年のサッカーワー ルドカップに続き、世界中から再びブラジルに注目 が集まることになる。遅れが心配されている競技会場の建設は、
2015
年12
月現在、比較的順調に進んでいるようである。1904
年のセントルイスオリンピック以来の復活と なるゴルフ競技の会場も12
月にはクラブハウスを 除き、完成引渡しを終えている。その他選手村や国 際メディアセンターも大会組織委員会によれば進捗 率は90%
を超えており、開催までの間にいくつか のリハーサル大会が行われる予定である。一方、大幅に遅れているのはインフラ整備の方で ある。中心街であるセントロ地区から選手村などの 施設が集中するバーラ地区までの地下鉄延長工事、
選手・関係者のための専用道路の建設、市内各地を 結ぶバス高速輸送システムの建設などは大会開催ま での完成が疑問視されている。また、国内外から集
まる来訪者の宿泊施設の不足についても問題視され ているが、こちらは
2012
年のロンドン五輪などで 採用されたクルーズ船のホテル利用などにより対応 していく模様だ。オリンピックという世界規模のイベントである が、経済に対する効果は限定的であり、
2015
年より 続く景気悪化の波は2016
年に入っても収まらない と予想されている。ブラジル中央銀行の12
月4
日 の見通しでは2016
年のGDP
成長率は−2.31%
と なっている。景気低迷の影響によりブラジルレアルも売られ、
2014
年末で1
ドル=約2.6
レアルの為替相場が、2015
年9
月には一時1
ドル=4.2
レアルと過去最安 値を付ける水準にまで落ち込んだ。12
月現在3.8
レ アル前後まで回復しているが、2016
年も引き続き レアル安のトレンドは続くと見込まれており、再び4.2
レアルまでレアル安が進むという予測もある。日系企業も含め企業業績に与える影響は少なくない ものと予想される。
2.
ブラジルの建設市場の動向と見通し建設部門についても
2015
年は厳しい1
年になっ た。前述したペトロブラス社の汚職事件では、ブラ ジルの大手建設会社の幹部が軒並み逮捕されてい る。ここに折からの不景気も重なり公共事業のプロ ジェクト停止や新規インフラ事業の取り消し、民間 分野での新規投資の延期または中止により、建設労 働者を中心に業界全体で50
万人以上が解雇されて いると地元紙は報じている。昨年も建設業のGDP
成長率は−2.6%
と減少傾向にあったが、2015
年は さらにマイナス幅が拡大し−11.0%
になるとの調 査結果が出ている。
Abramat
(ブラジル建設材料工業会)の予想によると2015
年の建材販売は前年比約12%
の減少が見込ま れている。また、Secovi
(サンパウロ商用・住宅不動産売 買・賃貸・管理業者組合)によると2015
年年初から9
月までの新築住宅販売件数は約1
万4,000
軒(前年同期比−
4.7%
)と統計開始以来最低の数字となり、こ こにも経済停滞の影響が現れていると言えよう。参考までに当社が調査した主要資材などの積算 単価について、
2014
年末と2015
年10
月の変動率 を紹介すると、セメント(50kg
)が4.8%
、砂(m
3)が2.9%
、手間が8.2%
上昇しているもののインフレ率 よりも低い上昇率となっており、コンクリートや鋼 材に至っては昨年末よりも減少している。これは、建設需要が減少していることに関連していると考え ることができる。
本格的な経済回復は
2017
年以降になると予測さ れており、2016
年についても、リオ五輪があるとは 言え、経済が低迷する可能性は非常に高い。しかしながら、ブラジルが持っている豊富な資源、
2
億を 超える人口などそのポテンシャルは長い眼で見れば 魅力的なものであることには疑いようがなく、また 現在の為替相場を考えると、今がブラジルに投資す る絶好のタイミングと考える企業も少なくない。建 設市場の縮小傾向はしばらく続き、建設業界にとっ て2016
年はさらに厳しい年になると予想される が、こういった先見を持った企業による設備投資計 画、まだまだ脆弱なインフラ整備に活路があると考 える。また、ペトロブラス社に関連する汚職事件を契機 に、これまで国内の大手企業により独占的に受注さ れてきた公共事業について、公平な競争原理が働く 環境に変わっていくことを期待したい。
いずれにせよ、まずはリオ五輪の成功と一刻も早 い経済回復、政局の正常化を待ち望みたい。
2016年オリンピックが開催されるリオデジャネイロの写真
(観光地ポン・ジ・アスーカルより)
本文にあるサンパウロのカーニバルで、記念行事として行わ れた立佞武多(たちねぷた)の写真