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第2章 都市の安全性の向上

第9節 建築物等の安全確保対策

[現状]

○ 新築する建築物に適用される建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)の耐震基準は、我が国が経験した

「新潟地震」、「十勝沖地震」、「宮城県沖地震」などを教訓に順次強化され、現在は昭和 56 年6月 に施行されたいわゆる「新耐震基準」に依っています。

○ 新潟県中越地震では、大規模盛土造成地の盛土地盤の滑動崩落が発生したことから、平成 18 年に 宅地造成等規制法(昭和 36 年法律第 191 号)が改正され、滑動崩落のおそれのある既存の造成宅地 について、「造成宅地防災区域」の指定を行って、宅地の改善命令を行う制度が創設されました。

○ 阪神・淡路大震災以降、平成7年 10 月には、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成 7 年 法律第 123 号)」が公布され、建築物の所有者に対する指導、誘導等総合的な措置を講ずることによ り、建築物の耐震性の向上を図ることとされました。

○ 市役所(本館)及びこれまで進めてきた小中学校については、耐震化が完了しています。市立病院 については、平成 16 年の建替え時に免震化しています。

[課題]

○ 都市の安全性の向上を図るためには、建築物の耐震性の向上を促進することが大変重要な課題にな ります。阪神・淡路大震災においては、「新耐震基準」施行以前の建築物が大きな被害を受けている ことから、現行の建築基準法に規定される耐震性能を確認するため、既存建築物の耐震診断を早期に 実施し、耐震化を図っていく必要があります。

○ 東日本大震災では、震源から遠く離れた大阪府においても長周期地震動が発生したとみられ、エレ ベーターへの長時間の閉じ込めや高層ビルの破損等の被害が生じました。高層建築物の防災対策につ いても取組を推進する必要があります。

[取組の方向]

○ 大部分の建築物は、その社会的、物理的寿命から耐震性に配慮した建替えが順次進んでいますが、

本市における地震の切迫性に鑑み、計画的、重点的に既存建築物の耐震性の向上に取り組むとともに、

落下物等の防止対策について取り組みます。

○ 住宅の耐震化を進めるため、耐震診断の実施、効果的な耐震補強策の普及等、耐震化に関する意識 啓発を図るとともに、耐震改修工事や建て替え等の促進に努めます。

○ 東日本大震災の状況等を踏まえ、耐震化の一層の普及、啓発を図るため、耐震セミナーの充実に向 けた取組を進めます。

○ 高層マンションをはじめとした高層建築物の防災対策について、住民等への意識啓発に取り組みま す。

【主な事業]

1 法や計画に基づく耐震化の促進

⑴ 市は、既存建設物の耐震性の向上を図るため、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づいて、

多数の者が利用する建築物の所有者等に対する耐震診断の指導・助言や普及・啓発を実施するととも に、「神奈川県耐震改修促進計画」を勘案した「三浦市耐震改修促進計画」に基づき、県と協働して耐 震化を推進します。

⑵ 市は、昭和 56 年の新耐震基準以前に建築された民間木造住宅等の耐震診断、耐震改修工事について、

県の支援を得て取り組みます。

2 建築技術者の講習

市は、耐震診断、耐震改修を行う建築技術者の技術力を一層向上させるため、県が(一社)神奈川県建 築士会や(一社)神奈川県建築士事務所協会等の建築関係団体と連携して実施する、実務に重点を置いた 講習への積極的な参加を啓発します。

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3 耐震相談等

市は、市民の耐震相談に的確に対応できるよう、県や建築関係団体と連携を図りながら、耐震診断、

耐震改修の相談、普及・啓発を図ります。

4 普及・啓発

⑴ 市は、建築物の安全性を向上させるため、新築あるいは改修工事等における工事監理の重要性を認 識させることにより、建築物そのものの耐震・耐火性能の確保を図るほか、敷地の規模や隣接建築物 との間隔などに留意することにより、延焼などに対してもより一層の安全性が確保できるよう、県と 連携して、普及・啓発に努めます。

⑵ 市は、高層マンションをはじめとした高層建築物の居住者に対し、長周期地震動やエレベーター停 止に備え、家具の転倒防止、ガラスの飛散防止や、非常食・飲料水の備蓄などの防災対策について、

普及啓発を行います。

5 技術的支援

市は、市民が実施する耐震診断について、県との役割分担を踏まえ、技術的支援等を進めます。また、

効果的な耐震補強策の普及等、住宅の補強や建替等を促進する対策を進めます。

6 防災上重要な建築物等の耐震性向上のための取組

市は、市有施設の耐震性の向上を図るため、市が設置した昭和 56 年の新耐震設計基準以前の各種施設 については、施設設置責任者としてその耐震性の向上に取り組みます。特に、防災対策上の拠点となる 防災上重要な建築物について「三浦市耐震改修促進計画」に基づき、耐震補強工事を進めます。

7 市有施設の耐震性向上のための取組

市有施設については、県が行っている耐震化事業に準じ、耐震診断及び耐震補強工事を進めます。

8 その他安全対策

⑴ 市は、県と共同して、ブロック塀の転倒防止、エレベーターにおける閉じ込め防止等を進めるため の安全基準の普及・啓発や、建築物における天井の脱落防止等の落下物対策、屋上給水塔、屋外広告、

看板、窓ガラス等の落下物の安全対策を進めます。特に市有施設については、早期に安全対策を進め ます。

⑵ 市及び県は、避難地、避難路等の周辺建物の耐震化促進策について検討します。

⑶ 市、県及び施設管理者は、不特定多数の者が利用する施設について、耐震性の向上等、安全性の確 保に配慮します。

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第 10 節 観光客対策

[現状]

○ 本市の沿岸部には、三浦海岸海水浴場等の海水浴場があり、海水浴客やマリンレジャー等の観光 客をピーク時には1日数万人と数多く迎え入れています。しかし、これらの観光客は、突発地震や 東海地震の各種情報及び警報が発表された際に、避難経路などの地理的情報及びその場の被害想定 などの災害情報が市民よりも不足していると考えられるため、観光客の安全対策を重視した体制を 構築し、推進しています。

[課題]

○ 本市では、観光客に対する情報提供体制は整っているものの、観光事業者との連携や帰宅困難に なった観光客への対応や避難誘導体制の構築が必要となっています。

[取組の方向]

○ 観光は本市の主要産業の1つであるため、安全性の向上と避難対策の向上を図ります。

[主な事業]

1 観光客への情報の提供

防災行政無線や市の広報車及び観光協会や観光事業者の協力を得て、警報等の情報を提供します。

2 避難情報の発令基準等

⑴ 津波予報発表に伴う避難指示(緊急)の発令基準は次のとおりです。

ア 津波注意報、津波警報又は大津波警報が発表された場合

イ 遠地地震に起因する津波注意報、津波警報又は大津波警報が発表された場合(※)で、津波到達 予測時刻まで2時間未満となったとき

⑵ 沿岸部以外の観光客には、東海地震の注意情報の発令及び各種警報の発令時に帰宅を促します。

※ 気象庁は、遠地地震に起因する津波注意報、津波警報又は大津波警報が発表する可能性があるとき は、津波到達予測時刻の4時間前に、その情報を発表します。

3 沿岸部観光客の避難対策

沿岸部にいる観光客の避難を迅速に行うために、「避難地案内板」や沿岸地域の標高 30m以下のカー ブミラー等に設置した標高シールの活用について啓発を図ります。

4 観光事業者への啓発

⑴ 市は、観光協会等の団体と連携し、パンフレット等を活用して、災害予防や災害時の応急対策等の 啓発に取り組みます。

⑵ 観光客の帰宅困難者に対しては、市内の民間施設の借用等、一時的な帰宅困難者の避難施設を協定 等により確保します。

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第 11 節 孤立化対策

[現状]

○ 近年の地震及び台風等の災害を考慮すると、孤立化することを前提にした対策が必要になります。

[課題]

○ 平成 16 年に発災した中越地震では、旧山古志村等の山間部町村で、道路寸断による孤立状態が発 生しました。本市においても主要幹線の寸断により、市域内の沿岸部等急峻な山地を背負った地区 などが孤立化する可能性があります。

[取組の方向]

○ 市内で道路が寸断された場合、孤立化する箇所を検討し、この箇所に対して急傾斜対策や道路等 の保全事業を促進していきます。

[主な事業]

1 孤立化予防対策

⑴ 孤立化が想定される地区への道路の整備

道路の寸断により孤立化する地区に対して、県と連携して整備を図ります。また、市道についても 計画的な整備に努めます。

⑵ 急傾斜地崩壊危険区域等の整備

主要幹線沿いの急傾斜地崩壊危険区域及び急傾斜地崩壊危険箇所について、県と連携して整備を図り ます。

2 孤立化対策

⑴ 市及び県は、連携して、孤立化する可能性のある地域の状況を検証し、対策を検討します。

⑵ 市は、孤立化対策の検討結果等を踏まえ、対策の推進に努めます。

⑶ 防災倉庫等の整備

孤立化が予想される地区には、資機材を整備した防災倉庫の整備を図ります。

⑷ 住民の備蓄の促進

市民には最低3日間分、推奨1週間分の食料等の備蓄を目標とするよう指導していますが、孤立化 予想地区では自主防災組織が主体となって備蓄を促進します。

⑸ 臨時ヘリポート等の計画

中学校以外に離着陸が可能な空き地等をあらかじめ検討します。

⑹ 漁業協同組合との連携

市内漁業協同組合等と災害時における支援協定等の締結を促進します。