一般的に地域経済のフローは生産額,(分配)所得,支出の三つの局面から把握さ れるが,残念ながら,箕面市についてはそれらに係る基礎資料を欠く。そこで,市民 の所得レベル,市財政,および社会資本整備という三つの地域経済構成要素から,箕 面市における地域経済について若干の考察を加えておきたい。
4 . 1 市民の所得レベル
市民の所得レベルを把握することはなかなか困難であるが,個人所得レベルにおけ る一つの目安として市民税(または府民税)をとりあげることができる。市民税は所 得割と均等割とに分けられるが,均等割の比率は1.15%(箕面市,昭和60年)にすぎ ないから,ほぼ市民税≒所得割と考えてよい。そこで, 1 人当たりの市民税を他市と 比較すると(表16-22),昭和40年段階で大阪府下第 1 位で,府平均との格差はやや縮 まったものの,昭和58年現在の市民 1 人当たりの市民税額は60,906円で府平均38,413 円の約1.6倍に達しており,依然として府下第 1 位である。人口規模の類似した他市 と比較しても圧倒的に高く,わずかに池田をはじめとする北摂諸都市が箕面市の 8 割 前後を確保しているにすぎない。かかる箕面市の市民 1 人当たり市民税の高さは,市 民の所得水準の高さを反映した結果であることはいうまでもない。各市の「所得格差」
および「 1 人当たり所得」(表16-22)をみると,昭和57年の全国平均を100とする箕 面市の所得格差は145.6と大阪府下で最高であるのみならず,西日本では芦屋・西宮・
宝塚に次いで高く,全国有数の富裕層の多い都市と位置づけられている(納税義務者 1 人当たりの所得では,その順位はより上位に立つ)。
次に市民税の課徴基準となる所得区分別では,表16-23に示したように給与所得が おおむね 8 割強で,サラリーマンが相対的に多いという人口構成が反映されている。
分離譲渡所得は,主として土地売却による所得であるから,都市化の進行状況に対応 して大きく揺れており,土地売買が盛んであった昭和40年代で高く(昭和43年の10.7
表16-22 所得レベル・財政関係指標の比較
項 目 年 度 大阪府 箕面市 池田市 摂津市 河内長野市 羽曳野市
人 口
(千人)
昭和40 3,501 44 82 43 40 50
45 4,640 57 94 60 52 77
50 5,500 80 100 77 67 94
58 5,970 111 101 84 87 109
財 政 力 指 数
昭和40 1.49 1.44 1.23 ① 0.57 ① 0.50
45 0.95 1.01 0.91 ― ―
50 1.04 0.87 0.77 ② 0.61 ② 0.49
58 1.01 0.89 0.83 0.72 0.56
一 人 当 り 市 民 税
(千円)
昭和45 5.9 12.4 9.2 5.3 4.7 5.3
50 15.5 27.3 22.4 12.3 16.1 15.2 58 38.4 60.9 51.7 32.5 42.8 37.1 一 人 当 り 歳 入 額
(千円)
昭和40 17.0 26.0 21.4 14.0 13.2 12.4 45 28.8 79.2 57.0 59.7 40.2 45.0 50 111.8 174.9 117.2 131.2 122.0 79.6 58 247.5 290.8 232.4 217.8 199.4 144.8 一 人 当 り 歳 出 額
(千円)
昭和40 15.2 27.4 20.0 14.0 14.5 13.1 45 28.2 73.2 55.2 58.0 39.2 44.9 50 115.1 167.2 116.7 127.8 119.6 83.9 58 245.7 283.4 230.1 213.2 196.0 143.2 所得格差(昭和55) 151.7 137.8 108.4 117.6 109.1 一世帯当り所得(千円,昭和55年) 2,735 2,331 1,905 2,471 2,217 所 得 階 級 別
世 帯 比 率
(%)(昭和58年)
~100万円 7.7 3.4 10.1 5.7 5.1 5.9
~200 15.3 8.0 12.2 13.8 9.3 12.3
~300 20.7 13.2 16.7 19.7 15.7 17.3 300~500 34.9 36.4 34.3 41.3 33.4 38.2 500万円~ 21.4 39.0 26.7 19.4 36.5 26.3
(注) 1 .歳入,歳出額は普通会計決算報告による。
2 .所得格差は全国平均を100とする数値。
3 .大阪府は大阪市を除く全市町村,①は昭和42年,②は昭和56年。
(出典)箕面市『市勢年鑑』,東洋経済新報社『地域経済総覧』昭和58年。
総理府統計局『住宅統計調査報告』昭和58年。
表16-23 所得区分別割合
所得 年度 昭和37 昭和48 昭和60
給 与 85.9 % 67.0 % 83.8 %
営 業 4.2 3.4 3.7
農 業 ― 0.1 ―
そ の 他 の 事 業 9.6 2.2 3.8
分 離 譲 渡 ― 23.6 5.4
そ の 他 0.3 3.7 3.3
総 所 得( 百 万 円 ) 5,077 27,314 150,038 市民 1 人当り所得
(千円) 137 424 1,307
(注)個人所得にかかわる配分である。
(出典)箕面市『箕面市税務概要』。
%から昭和47年の38.4%までの幅で),昭和50年代に入ってからは逓減傾向にある。
なお,この分離譲渡所得の動きは 3 . 2 項(農業の変化)で述べた農家所得の財産的 収入における土地売却収入の動きと連動していることを指摘しておきたい。営業所得 はほぼ横這いで,大きな変わりはない。その他の事業所得は逓減傾向にある。
4 . 2 財政
地方自治体や国の財政は,地域経済の動きと密接に関連するとともに,地域経済に 様々な影響を与えている。その意味で,財政は地域経済にとって,また社会資本装備 の基盤としても無視しえないところである。ここでは,地方自治体レベルでの財政の 主体をなす箕面市の財政をとりあげて,上記の点について若干の比較検討を加えてお きたい。まず歳入(普通会計決算)を表16-24によって他市と比較すると,市町村税 をはじめ,地方交付税,国庫支出金などの割合は他市に比べてかなり低く,逆に昭和 37年では繰入金が,そして昭和58年では諸収入の割合が他市に比べ圧倒的に高い。こ れは,地方自治体競艇事業による収入がこれらの項目に算入されているからである。
ちなみに,昭和58年の競艇事業収入は31.63億円で諸収入の55%,全歳入の10%近く を占めた。すなわち,箕面市の財政は競艇事業収入によってかなり潤っているといわ
表16-24 普通会計歳入決算額の比較(除く大阪市)
地域 項目 年度
府下全市町村 箕 面 市 池 田 市 摂 津 市 河内長野市
昭和37 昭和58 昭和37 昭和58 昭和37 昭和58 昭和37 昭和58 昭和37 昭和58 総 額(億円) 348.4 11,253 7.6 324 12.5 235 4.4 184 3.5 168
% % % % % % % % % %
市 町 村 税 49.7 50.7 37.8 39.2 50.1 47.8 60.9 50.7 38.5 47.0 自 動 車 取 得 税
交 付 金 ― 0.8 ― 0.6 ― 0.9 ― 0.7 ― 1.1
地 方 交 付 税 5.5 6.7 0.7 0.3 0.4 3.1 0.1 4.8 21.0 7.7 分 担 金 及 び
負 担 金 0.4 1.9 ― 0.3 ― 1.3 ― 0.8 ― 1.7
国 庫 支 出 金 9.5 12.4 2.6 10.5 6.3 9.9 2.2 15.4 9.5 11.2 府 支 出 金 7.1 4.9 8.5 2.5 12.0 3.4 7.2 3.8 6.5 5.3 財 産 収 入 4.5 1.8 0.1 4.3 6.7 3.1 22.6 3.8 ― 3.5 寄 付 金 1.4 1.3 0.3 0.6 2.2 3.1 1.7 1.6 0.2 0.5 繰 入 金 4.5 1.7 30.0 7.4 4.8 1.3 ― 0.4 1.0 0 繰 越 金 3.3 1.6 8.5 1.5 2.2 ― 1.4 3.3 2.9 2.4 諸 収 入 3.4 5.3 1.8 17.9 2.7 6.4 0.3 2.2 2.3 6.5 地 方 債 7.7 7.9 7.2 13.6 7.1 16.3 2.5 9.8 14.6 10.7
*そ の 他 3.0 3.0 2.5 1.3 5.5 3.4 1.1 2.7 3.5 2.4
(注) *その他には,交通安全対策特別交付金・使用料・手数料を含み,昭和58年には地方譲与税を含む。昭和37年の 摂津市は旧三島町。
(出典)大阪府企画部統計課『大阪府統計年鑑』。
ねばなるまい。
目的別歳出の構成(表16-25)では,際立った他市との差異はみられないが,民生費,
公債費の割合は相対的に低い(ただし,近年は公債費が徐々に増加する傾向にある)。
一方,著しい人口増加に対応した土木事業や小・中学校の新設などに伴う土木費と教 育費が市予算総額の 5 ~ 6 割前後を占め,他市を大きく上回っているのが注目され る。市民 1 人当たりの歳出額を表16-22にみると,大阪府の中では水準の高い北摂地 域の中でも飛び抜けて高く,よりレベルの高い行政サービスが財政面でも裏付けられ ているといえよう。しかも,箕面市の財政力指数はほぼ1.0を超す水準にあって,自 立性の高い財政内容を誇っており,その他の公債費比率(昭和57年12.1%),経営収 支比率(同78.8%)のいずれもが健全な水準にあり,現在のところ財政上の大きな問 題はないという恵まれた条件のもとにある。
以上の財政面の検討から,箕面市の財政は競艇事業収入と所得水準の高い市民の担 税力などにより,高い水準の歳入を確保して,健全な財政運営のもとで人口増に対応 する都市基盤整備に向けての事業展開がなされているといえよう。
4 . 3 社会資本整備の状況
ある地域に生活する者にとって,日常の生活に必要な基礎的要件がその域内におい てどれほど充たされ,安全かつ快適な生活が保障されているかが重要な関心事であ る。一般に,社会資本装備がそれらの要件の基本的な部分をなし,地域経済の重要な
表16-25 普通会計歳出決算額の比較(除く大阪市)
地域 項 目 年度
府下全市町村 箕 面 市 池 田 市 摂 津 市 河内長野市
昭和45 昭和58 昭和45 昭和58 昭和45 昭和58 昭和45 昭和58 昭和45 昭和58 総 額(億円) 2,148 11,105 42 315 52 232 35 180 20 165
% % % % % % % % % %
議 会 費 1.1 0.9 1.8 0.8 1.6 1.4 1.4 1.3 1.6 1.3 総 務 費 13.1 11.1 10.0 16.7 19.6 12.0 10.9 14.2 14.6 13.4 民 生 費 10.5 20.6 6.6 9.9 7.7 14.2 6.6 16.4 13.2 14.1 衛 生 費 8.6 12.4 7.0 12.2 11.6 13.0 5.1 10.4 9.3 7.6 農 林 水 産 林 業 2.1 1.0 1.2 0.6 0.6 0.4 2.8 1.8 3.5 2.0 商 工 費 0.8 0.7 1.2 0.3 1.3 4.3 0.1 0.2 0.7 3.3 土 木 費 27.4 18.3 35.4 20.3 28.7 18.4 21.4 19.1 27.1 16.5 消 防 費 2.5 3.2 1.8 2.0 2.4 2.5 2.1 2.6 3.3 3.2 教 育 費 26.6 19.8 32.1 31.4 19.5 23.3 44.2 21.0 18.0 21.7 公 債 費 5.7 10.8 2.3 5.7 6.2 10.5 5.4 13.0 5.0 11.3
*諸 支 出 金 1.4 0.7 0.6 0.1 0.8 ― ― ― 2.7 5.6
前年度繰上充用金 0.2 0.5 ― ― ― ― ― ― 1.0 ―
(注) *諸支度金には,労働費と災害復旧費を含む。
(出典)大阪府企画部統計課『大阪府統計年鑑』。
一側面を構成すると考えられる。表16-26に公共施設の整備状況の一端を表す諸指標 を掲げた。道路舗装,し尿衛生処理,ごみ収集,上水道,保育所,学校々舎の非木造 化等についてはほぼ10割近い達成率をみており,その他の項目においても全国平均を 上回っている。ただし,他の類似の住宅都市と比較した場合,公共下水道・道路改良・
公園8)・病院ベッド数・医師数などにおいて改善すべき余地がある。その点からすれば,
箕面市はまだまだ住宅都市として充実・発展途上にあるといえよう。
次に,社会資本装備の域内整備状況を検討しておきたい(図16-14)。都市計画道路 の建設はかなり進んでいるが,西部地域では住宅が立て込んで用地取得が困難なた め,細街路の多くが未整備のまま残されている(東部地域の旧集落も同様)。一方,中・
東部地域の道路率はまだまだ低い水準にある。交通面では,市域内の 4 地域がそれぞ れ異なる系統に組み込まれているため,地域間の連絡が不便で,分断される傾向にあ り,地域的一体性に欠ける面が目立つ。都市公園や医療施設,文化・福祉施設および コミュニティ・地域集会施設の分布は開発が早く進んだ西部地域に偏し,他の 3 地域 には少ないという地域差もみられる。教育・体育施設については,地域人口の配分に 応じた設置がなされているが,幼稚園については,公立施設が少なく,私立への依存 状況がみられる。下水の処理は,西部地域ではほぼ全域(残存農地を除く)で実施さ
表16-26 公共施設等の普及状況 年 度
項 目
昭 和 49 昭 和 58
箕面市 全国 箕面市 全国
道 路 改 良 率 (%) 50.7 21.0 66.0 34.3 道 路 舗 装 率 (%) 84.2 21.2 94.4 53.2 1 人 当 り 都 市 公 園 面 積 (㎡) 12.4 3.3 9.3 5.0 し 尿 収 集 率 (%) 46.0 56.3 17.2 53.3 し 尿 衛 生 処 理 率 (%) 99.4 74.5 99.9 92.7 ご み 収 集 率 (%) 100.0 76.7 100.0 93.6 上 水 道 普 及 率 (%) 97.8 88.4 99.2 94.6 下水道普及率(DID人口)(%) 77.0 47.2 86.1 39.7 保育所収容率(公私立)(%) 118.3 65.2 98.3 95.2 養 護 老 人 ホ ー ム 収 容 率 (%) 125.0 14.0 70.4 2.7 幼 稚 園 収 容 率 (%) 47.6 36.6 56.2 55.9 小 学 校 非 木 造 面 積 比 率 (%) 98.3 63.8 100.0 90.1 小 学 校 校 舎 不 足 比 率 (%) 20.0 57.9 23.1 60.4 中 学 校 非 木 造 面 積 比 率 (%) 99.9 64.7 100.0 88.6 中 学 校 校 舎 不 足 比 率 (%) 20.0 49.3 33.3 57.8 千 人 当 り 病 床 数 10.6 11.3 15.2 11.3
(注)千人当り病床数の「昭和49」欄は昭和47年,「昭和58」欄は昭和55年の数字。
(出典)箕面市『市勢年鑑』昭和59年版,東洋経済新報社『全国都市統計要覧』昭和57年。