互依存関係」,「移動」,「地域」の概念によって地理的知識を分類する。また,二つの地理 的見方である「空間的見方」と「生態的見方」および地理的見方を補完する「歴史的見方」
と「経済的見方」のいずれを主要な見方とする知識であるのかについても分析し,その知 識の質を考察する。このことによって,地理的教養人の要件の「空間的事象の配置の意味 が分かる」,「人々,場所,環境の相互関係が分かる」が検証できる。
③は,まず,地理固有の技能であるのか,その他の教科と共有する技能であるのかを分 析し,さらに,地理的技能の五つのセットに合わせて「地理的問いを提示する」,「地理的 情報を収集する,組織する,分析する」,「地理的問いに答える」のいずれの過程にあたる 技能であるのかについて分析することによって,上記の地理的知識の具体的な探究方法を 考察する。このことによって,同様に「地理的技能を活用する」が検証できる。
④は,少し視点を変え,②と③の学習過程によって得た知識を実生活における地理的問 題に適用し,価値判断する場面があるかどうかをみる。このことによって,地理的教養人 の要件の「日常生活に空間的・生態的見方を適用する」を授業で実践していく具体例を示 すことができる。
以上のような分析視点によって【資料4−1・1】のような分析フレームワークを設定した。
【資料4・1・1】rレッスン・プラン」の分析フレームワーク プラン名:
中心的知識:
*【内容知】,【方法知】の別を示す 地理的見方
内容知
頒 空間的 生態的 歴史的 経済的
位置 場所 相関 移動 地域
一117・
そ の
他 *地理的知識に該当しない内容を示す
基 本
的 地 図 技
方
法知
能基礎
統 計 *【提示】,【収集】,【組織】,【分析】,【答え】を示す
的 地理的資料 技
能 そ の 他 価値分析過程
(筆者作成〉
第2節 「レッスン・プラン」における「内容知』・「方法知」の分析
第1節で設定した分析フレームワークに基づいて分析を行った結果,レッスン・プラン の教授・学習過程に内在する「内容知」・「方法知」を【資料4・2−1】から【資料4・2・14】(本 章末にまとめて掲載)に示すように分類できた。
その「内容知」の全体構成を分析視点ごとに項目数を示したものが【表4・2・1】である。
この表で示すようにプラン全体の「内容知」は,位置,場所,地域の概念にかかわる知識 が多く,相互関係や移動といった概念にかかわる知識が少ないことが分かる。この傾向に ついて考察すると,人間と環境との相互関係にかかわるプランでは,人間の活動に影響を 及ぼす自然システムと,反対に自然システムによる人間の活動の制限についての学習が行 われる。また,移動の概念にかかわるプランでは,人間の居住の様式やその過程,移住に 影響を及ぼす自然的・政治的な障害,情報伝達や輸送システムの様式やその過程といった 学習が行われる。このように両者は,場所や地域についての内容の理解を前提にするため,
位置,場所,地域の3概念にかかわる内容知の頻度が高くなる傾向にある。
118・
1表4・2−1】「レッスン・プラン」における「内容知」の分類
領 域
S 位置 場所
相互関係移動
地 域その他
空間的世界
(13)
1 12 19 0 3 6 0
2 4 1 0 0 1 1
3 2 8 3 1 1 1
場所と地域
(12)
4 13 18 1 1 6 3
5 1 1 0 0 0 0
6 1 4 0 1 2 0
自然システム
(17)
7 8 9 1 0 0 10
8 7 22 5 0 5 26
人文システム
(20)
9 1 1
0.0 5 0
10
2 1 0 0 15 4
11
0 0 0 4 1 0
12
3 0 0 3 4 1
13
4 1 0 1 9 10
環境と社会
(15)
14
2 1 10 0 0 5
15 !
0 10 1 4 4
16
3 3 7 1 6 8
地理の効用
(18)
17 1!
0 1 5 6 5
18
5 3 13 3 5 5
合 計(95) 80 92 41 24 76 83
* 領域の枠の()内は,プラン数を示す。 (筆者作成〉
また,地理的概念には含まれない知識も多い。これについては,プランには,火星や太 陽といった宇宙にかかわる題材やサメ,プレーリー・チキン,皇帝ペンギンといった動物 にかかわる題材,潮流や湿地といった自然環境とそこの植物にかかわる題材,インカ帝国 や古代ギリシアなどの歴史にかかわる題材,そして,ハリケーンやツイスターといった自 然災害など地理以外の教科と関連する題材が多く取り上げられている。したがって,それ
らの題材についての予備知識が必要になることが多いことを示す。
同様に,プラン全体の「方法知」の構成を示したものが【表4・2・2】である。その傾向 についてみると,統計にかかわる基礎的技能が極端に少ないことをのぞけば,他の技能は 同じ程度に学習する。とくに,地理固有の地図にかかわる基本的技能は全体の約33%に達 し,すべての領域とスタンダードにおいて,地図から地理的情報を読み取る技能,調べた ことを地図に作成する技能,複数の主題図や地図と他の資料と比較・対照する技能などが
・119・
【表4−2・2】「レッスン・プラン」における「方法知」の分類
領 域
S 基本的技能 基礎 的技能
地 図 統 計
地理的資料
そ の 他空間的世界
(13)
1 27 1 9 9
2 7 0 4 1
3 23 0 2 5
場所と地域
(12)
4 11 0 14 14
5 1 0 3 0
6 4 0 7 0
自然システム
(17)
7 11 0 1 14
8 11 0 13 40
人文システム
(20)
9 6 3 2 0
10
9 1 9 13
11
5 1 3 0
12
7 1 5 2
13
9 2 8 12
環境と社会
(15)
14
3 0 14 13
15
10 0 12 10
16
6 0 6 13
地理の効用
(18)
17
16 1 7 28
18
7 0 28 23
合計(95) 173 10 147 197
* 領域の枠の()内は,プラン数を示す。 (筆者作成)
繰り返し学習される。また,地理的資料やその他の資料には,ウェブサイトから得た衛星 写真,映像,景観の写真,文書などが含まれ,これらの基礎的資料を使って地理的情報を 収集する技能が多い。
このような全体構成をもつレッスン・プランの「内容知」・「方法知」の構造について,
さらに領域ごとにその具体的な内容を分析する.
1 「空間的世界」にかかわるプランの「内容知』・r方法知』
空間的世界にかかわるプランの教授・学習過程の記述から,「内容知」・「方法知」を抽出
・120・
し,分析視点に基づいて分類したものが【表4・2・3】である.
【表4・2・3】「空間的世界」にかかわるプランの「内容知」・「方法知」の分析
S
Nα プ ラ ン 名 内 容 知 方 法 知位置 場所 相関 移動 地域 地図 統計 嬉理的資料 その他
1
1
同異沖東と合衆国 ○ ◎ ○ ◎ ○ ○2 大陸の比較
○ ◎O
◎ ○3
干ぱっから生き延びる ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○4
火星の不動産:よ畷資か? ○ ○ ○ ◎5
道の旅を計画しよう ◎ ◎ ○6
合衆国の大贈まどこで生まれたか ◎ ○ ○ ◎ ○2 1
地理学探偵になろう ○ ○ ◎O
2
どの方位に行くべきか ◎ ◎ ○3
1
ノ ミ 1O
◎2 ピザの地理学
◎O
3
川の水源と川の話 ◎ ◎ ○4 夜の合衆国
◎ ◎5
地図から何を学べるか ○O
○ ◎* ◎は各プランにおいてとくに重視される項目,○は各プランにおいて扱われる項目を示す(以下,
【表4・2・9】まで適用)
(ムθ550盟月副昌National Geographic S㏄ietyl2003,
http:/掬ww,natiQnalgeographic、cQm!xpeditions色ssons/より筆者作成)
以上の分析結果から,空間的世界にかかわるプランの「内容知」・「方法知」の特徴を次 のようにまとめることができる。
①自分の地域や世界の都市,河川,山脈などの位置にかかわる知識,および,気候や動 植物の生態,人口密度,景観などの場所の自然的・人文的特徴にかかわる知識が多い。
② 様々なスケールの地図や地球儀から都市,河川,山脈などの位置を調べる,収集した 情報を地図に位置づける,主題図が示す気温や気候の様式,降水量,人口密度などの 情報を比較・対照して考察するといった地図にかかわる基本的技能が非常に多い。
①の位置については,自分の地域の位置といった地元レベルのものから合衆国の州や都
121・
市,中東の都市,そして,大陸と様々なスケールにおいて,それぞれに適した地図や地球 儀を用いて表すプランが多く設定されている。例えば,「S1・5.道の旅を計画しよう」では,
緯度と経度の知識に基づいて合衆国の特定の都市の位置を白地図に緯度と経度を用いて表 すことが中心的課題とされている。また,「S2・2,どの方位に行くべきか」では,自分の地 域や世界の都市の位置の関係を八方位に基づいて,例えば,「学校は私の家の北西です」や
「チェスターはスプリングフィールドの南西です」というように方位を用いて示すことが ねらいとなっている。
場所については,同様に様々なスケールの場所の特徴について学習する。例えば,「S1・3.
干ばつから生き延びる」では,アフガニスタンの降水量を示した地図やウェブサイトを利 用して,乾燥気候特有の自然的特徴についてとらえる。また,「S3・3.川の水源と川の話」
では,降水量,等高線,人口分布などを示す主題図や本や雑誌,ウェブサイトからの写真 や記事から,ナイル川沿いの自然的・人文的特徴について学習する。
②については,地図を活用した基本的技能の割合が空間的世界にかかわるプランで習得 される方法知全体の約65%にもなる。そして,例えば,「S1・6,合衆国の大統領は,どこ で生まれたか」(大統領の生まれた州の情報から,そのデータを地図に適用し,適切な表示 を用いて地図を作成する)や「S3・2,ピザの地理学」(ピザハウスの位置,店まで行くルー
ト,配達区域を「点,線,面」を用いて表す)などのように,地図リテラシー自体を教材 としているものがあるのが特徴である。上記のS1・6では,地図の適切な表示である「日 付,方位,グリッド,スケール,タイトル,作者,インデックス,凡例,出所(DOGSTAILS)」
について学習する。また,S3・2では,空間的要素は地図上で,点,線,面で示されること を認識する。これらの地図リテラシーは,多くのプランにかかわる基本的技能となる。
この基本的技能を活用する顕著な例として,「S3・5.地図から何を学べるか」が挙げられ る。このプランでは,「米国海洋大気庁の多様な海洋の様子を示す地図から分かること(地 震活動,海表面の温度など)を説明する【収集】」,「全米地図帳を使って,自分の州のトウ モロコシと小麦の生産量を示す地図を作成する【組織】」,「トウモロコシと小麦の生産量の パターンについて,川や都市の位置,州の景観,鉄道や主要幹線道路の位置,害虫の分布 と比較する【分析】」,「自分の作成した海洋地図を参照して,それぞれの相互作用にかかわ る問いに答える【答え】」という学習が行われる。これらの学習活動には,地図から地理的 情報を収集する,収集した地理データを基にして主題図を作成する,その主題図と他の地
・122・