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第3節 r地理スタンダード」におけるr方法知』の構造
地理スタンダードにおける「方法知」は,本章第1節で示したように地理的知識の目標 である「18スタンダード」(内容知と方法知の両方からなる)とそれらの知識を習得する ための基礎的な地理的リテラシーのセットが示される「五つの地理的技能」(方法知のみ)
の二つの領域において示されている。
この両者の関係についてもう少し詳しく述べると,「18スタンダード」は,例えば,「地 理的表現に空間的情報を示す(S1)」,「どのように地理的状況が変化したかを明らかにす る(S18)」というように,空間にかかわる要素と日常生活への地理の適用にかかわる学習 内容(方法知)の基準を示している。それに対して「地理的技能」は,例えば,「地図を解 釈することによって場所の特色(気候,標高,人口密度)についての情報を入手する(収 集)」,「量に関する地理的情報を,棒グラフ,円グラフ,折れ線グラフに組織する(組織)」,
r空間的な様式と関係を記述するために多様な場所の大縮尺図を比較する(分析)」という ように,地理の学習内容全般を行うための具体的な手立てを基準にして示している。した がって,上記の例で言えば「空間的情報を示す」と「地理的状況の変化を明らかにする」
の両者に,「場所の特色についての情報の入手」,「その情報のグラフヘの組織」,「その場所 の大縮尺図による比較」といった地理的技能が適用される。
以上のように性格の違うr18スタンダード」と「地理的技能」における「方法知」を分 析するためには,異なるレベルからの考察が必要である。そこで,まず,様々な学習過程
における基準が混在しているスタンダードの方法知を,地理的技能において示された五つ の学習過程に基づいて分類し,考察することによって,r空間的事象の配置」とr日常生活
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への地理の適用」についての方法知を効果的に身につけさせるための過程を明らかにする.
その上で,その学習過程における具体的な方法知として地理的技能を示すことによって,
その相互の関連性を明らかにする。
また,地理的技能の方法知には「地理固有の技能」と「社会科や他教科と共有する技能」
の両者が混在している.そこで,本論では,前者を「基本的技能」,後者を「基礎的技能」
として峻別して示すことによってその構造性をより明らかにする。なお,以降の論立ては 地理的技能の五つのセットに基づいて行う。
1 「地理的問いの提示」にかかわるr方法知」
地理スタンダードにおける「地理的問いの提示」にかかわる目標は,グレード5〜8の
「1・(1,地球における空間的な分布や様式についての問いを提示するために,地理的道具や 地理的技術を活用する」のみである。これは,問いを提示する技能のみで目標を明記する のではなく,地理的事象について「どこに位置しているか」,「なぜそこにあるのか」とい った情報の収集にかかわる問いや「何と関連があるのか」,「その結果,どんなことが生じ るのか」といった情報の組織や分析にかかわる問いのように,それら他の過程の目標に潜 在的に含まれるからである。言い換えれば,問いを提示する技能は収集,組織,分析,答 えるのすべての過程の指針となるものである。
このような「地理的問いの提示」にかかわる方法知を習得するための「地理的技能」は,
【表2−3・1】のように分類できる。
【表2−3・1】「地理的問いを提示する技能」の分類 頒
基礎的技能
「K−4」の目標
1・a,本の中の場所について地理的問いを 提示する.
1・b,時事ニュースの所説における地理的 様相を明らかにする。
1・c,児童自身の地域社会の特徴に基づい て,以下のような地理的問いを提示す
る。
r5−8」の目標
1・a.新聞や雑誌の記事を分析し,記事に
おいて明確な地理的論争点や間題を
明らかにする。
1・b,地理以外の教科(文学,歴史,自然 科学,数学)における問題について地 理的問いに進展させる。
・77・
基本的技能
・クラスの友だちはどこに住んでいるか。
・家や学校の周りの区域の土地利用はどのよ うか。
・友だちは学校に来るのにどれぐらい遠い か。それは,どれぐらいの距離か。
・友だちはどんな交通手段を使うか。
・友だちはどの道を来るか。
2・a.問いのリストから地理的なものと非 地理的なものとを分類する。
2−b,地域社会の様々なメンバーの視点か らの論争点についての問いを提示し,
その問いが地理的であるか,地理的で はないかを明らかにする。
1℃,交通,環境,土地利用,住宅などの
地元の論争点の地理的間題について
問いを提示し,文書や口頭によるステ ートメント,グラフを用いてこれらの 問題を要約する。2・a,場所についての情報を得るために問 いをつくり,適当な情報提供者に提出 し,提供者の答えを簡潔な記述にする ように準備する。
2・b,地理的問題に取り組むときによく考 えるべき論争点を明らかにし,組織す る。(校庭の位置やデザインに必要と される要素を明らかにする)
1・c.交通,環境,土地利用,住宅などの
地元の論争点の地理的問題について
問いを提示し,地図を用いてこれらの 問題を要約する。* 数字は技能セット内のナンバー,アルファベットは筆者が項目を示すために記入した。また,内容 によっては二つの技能にあてはまるものがあり,筆者がそれぞれに分けて記述した。(以下【表 2・3−9】までの地理的技能の分類の表に適用)
(61θo騨即毎めr血乃,GESR1994,p,46およびp,49より訳出して筆者作成)
このように,「地理的問いの提示」のためのアプローチは「基礎的技能」がほとんどであ り,「基本的技能」の目標は一項目だけである。その内容をみると,児童にとっての「自分 の周囲から問いを提示する」が中心的なコンセプトとなっていることが考察できる。例え ば,r空問的な分布や様式」については,身近な地元レベルにおける「交通,環境,土地利 用,住宅などの地理的問題」と示されている。また,「地理的道具」として例示されている
ものは「本,雑誌,新聞,時事ニュース」といった身近なメディアである。このように,
児童自身の地域社会の空問的事象やその特徴についてのウェアネスを見出すこと,地域社 会に実在する地理的論争を明らかにすることが,地理的問いを提示する技能の目標の中心
となっている。
また,「2−a.間いのリストから地理的なものと非地理的なものとを分類する(K〜4)」や
「1・b.地理以外の教科における問題を地理的問いに進展させる(5〜8)」のように問いを 提示するためのリテラシーを養うことも大切な手立てとして示されている。
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2 r地理的情報の収集」にかかわるr方法知』
地理スタンダードにおける「地理的情報の収集」にかかわる目標を抽出したものが【表 2−3−2】であり,その習得のための手立てとなる「地理的技能」を示したものが【表2・3−3】
である。
【表2・3・2】18スタンダードにおける「地理的情報の収集」にかかわるr方法知j
要素
rK〜4」の目標 r5〜8」の目標
1・b.多様な種類の地図,地球儀,グラフ,
空 表,データベース,モデルを調べて,
活用する。
間 2−a.地図,地球儀,その他の地理的情報 的 を示す資料を使って,様々なスケール 世 (地元から世界まで)の主要な自然
・人文的特徴を明らかにする。
2・a,地図や地球儀を使って,特定の自然
・人文的特徴や事象を明らかにする。
界 2−b,様々な場所の位置を明らかにするた めに,メンタルマップを活用する。
地
理の効 18−a,地理的状況の変化について明らか
にする。
用
* 数字はスタンダードのナンバー,アルファベットは項目を示す。(以下【表2・3・8】までの18スタ ンダードにおける方法知の表に適用〉
(σθo卿ゐ17乃rム艶,GESR1994,pp.106・182より訳出して筆者作成)
【表2−3・3】「地理的情報を収集する技能」の分類
頒
rK−4」の目標 r5−8」の目標
基礎的技能
1・a,量に関する技能を適用する。(地形,
都市,湖,人口の特色を計算する;距
を測る〉
1・a,データベース,スプレッドシート(表 計算ソフトウェア),その他の資料を って,コンピュータの一定地域の人 口情報を入力し,検索する。(人口問
題の調査に使うことができる一次的
資料の主なリストから選択し,手書き で作成する)・b,適切な情報源を見つけたり,選択し
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基 本 的 技 能
2・a情報を収集するためにフィールドワ ークに従事する。
2・b,時間と場所の点から系統的に観察記 録を行う。
2℃.自然的・人文的環境の要素を明らか にするために航空写真,衛星画像を使 用する。
1・b.地図を解釈することによって場所の 特色(気候,標高,人口密度)につい ての情報を入手する.
1℃,地図上である場所から他の場所まで の距離を測定し,方位を理解する.
2・c,自然環境および人文環境の要素を明 らかにするために地形図を使用する。
たりする方法を知る。(定期刊行物,
国勢調査局の資料,データベース,研 究の参照,インタビュー,マルチメデ ィアなど)
1−c。地理情報を収集するために,児童の
地元の地域社会のインタビューやフ
ィールド調査を行う。2・b,空から見て明白なパターンを認識す るために航空写真を読む。
3−b.景観の人文的特徴(建築物,都市環 境)や自然的特徴(地形,自然の植生〉
の概要を写真に撮ったり,ビデオに撮 影したりして準備する。
3・c,地理的情報を収集するために,場所 の写真やビデオの映像を見る。
2−a.主要生産国のリストを準備するため に,石油生産とある取引などのカルト グラムを活用する。
2・b.航空写真と同じ区域の地形図でパタ ーンを明らかにする。
2・c。地図に描かれた事象を記述する。(あ
る地域の1910年,1950年,1990年 の人口密度についてのステートメン トを作成するためにドットマップを
使用する)
3・a,土地利用についての情報を地図にで きるようにフィールド調査を行う。
(σθo脚ρゐ17か窃乃,GESR lgg4,p,46およびpp,49−50より訳出して筆者作成)
このように「地理的情報の収集」にかかわる目標には,その情報源として地図,地球儀,
グラフ,表,データベース,モデル,メンタルマップが例示され,様々な場所の位置,自
・80一