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第2節 「レッスン・プラン」の特徴
1 「地理スタンダード』との関連
地理スタンダードに準拠して作成されているレッスン・プランには,それぞれのプラン と18スタンダードおよび地理的技能との関連が明示されている。このことによって,そ のプランの中心的な目標となる地理的知識およびその探究方法が明確になるとともに,そ れらの知識がプランの実践によって構造的・系統的に習得できる。
このようなレッスン・プランと18スタンダードおよび五つの地理的技能との関連につ いて,具体的なプランの内容から考察する。
(1) 「18スタンダード』との関連
【表3・2・1】は,レッスン・プランと18スタンダードとの関連を,領域ごとにまとめた ものである。
一95・
【表3・2・1】「レッスン・プラン」と「18スタンダード」との関連
S
合 計 空間的世界 場所と地域 自然システム 入文システム 環境と社会 地理の効用1
12(4)8 0 2 1 1 0
2
4(2)2 1 0 1 O 0
3
8(1)7 0 0 0 1 O
4
14(3)2 11 O 1 0 0
5
2(0)0 2 0 0 0 O
6
5(1)1 4 0 0 0 0
7
9(4)0 0 5 0 3 1
8
16(3)0 1 13 0 1 0
9
3(0)0 0 0 3 0 0
10 8(1)
0 1 0 7 0 0
11 4(1)
0 0 0 3 1 0
12 4(1)
0 O 0 3 1 0
13 5(0)
0 0 0 5 0 0
14 9(2)
0 0 1 0 7 1
15 11(4)
1 1 2 0 7 0
116 5(0)
0 0 0 0 5 0
17 13(3)
0 1 0 2 0 10
18 18(9)
2 1 1 1 4 9
* ゴシック数宇で示したものは,プランと同一領域内のスタンダードとの関連を示す。
* 合計の枠の(〉内の数字は,他領域との関連数を示す。 (筆者作成)
このように多くのプランは同一領域内のスタンダードと関連し,他領域のスタンダード と関連するプランは全体の約3割にあたる29プランである。その中で他のスタンダード に比べてスタンダード18の「現在の解釈と未来の計画に地理を活用する」は,他領域の プランと関連する割合が非常に高い。
とくにスタンダード18との関連が多い他の領域は,環境と社会である。その関連する プランの例を挙げるとrS14・1.サメは,私たちが考えるほど危険か?」では,単元名と 同様の「サメは,私たちが考えるほど危険か」と題した口頭の発表によって結論を下すた めに,答えの根拠となる地理的な条件や状況について学習した内容から最低五つを提示(例 えば,人間の活動の広がりとサメの分布との関係など)する。したがって,このプランで は,人間社会と自然環境との現在の地理的状況を分析する過程においてスタンダード18 と関連する。また,rS15・2,もし,森林の木が減ったら…」では,児童の身の周りにある
・96・
製品などから貴重な資源としての木に視点をあて,その役割や生活への影響について学習 した後で,地元の森林問題について明らかにして,調べて,そのような問題から森林を保 護する適切な計画を提示する。このプランでは,資源の利用において実行可能な計画を示 す過程においてスタンダード18と関連する。
これらの例のように「現在の解釈と未来の計画」は,他の領域における価値分析過程に 関連するという特徴を見出すことができる。
(2) r地理的技能」との関連
次に,五つの地理的技能のセットとの関連について考察する。
【表3−2−2】rレッスン・プラン」とr地理的技能」との関連
領域 S 地 理的情報
地 理 的 間 い収集する 組織する 分析する 提示する 答える
空間的世界
(13)
1 5 6 5 1 3
2 2 2 2 0 0
3 5 4 5 4 2
場所と地域
(12)
4 8 7 5 4 7
5 1 1 1 0 0
6 2 2 2 3 2
自然システム
(17)
7 4 4 5 2 4
8 11 11 11 7 9
人文システム
(20)
9 2 2 2 0 2
10
7 5 5 3 4
11
2 2 2 2 2
12
2 2 3 0 2
13
5 5 5 0 0
環境と社会
(15)
14
5 4 5 2 2
15
5 3 5 4 4
16
5 3 4 4 4
地理の効用
(18)
17
8 9 8 3 3
18
6 8 9 6 7
合計(95) 85 80 84 45 57
* 領域の枠の()内は,プラン数を示す。 (筆者作成)
・97・
【表3・2−2】に示したレッスン・プランと地理的技能との関連を見ると,r地理的情報を 収集する,組織する,分析する」の技能はそれぞれ9割近くのプランに関連しているのに 対し,「地理的問いを提示する」技能は5割以下のプラン,「地理的問いに答える」技能は ちょうど6割のプランにしか関連しない.したがって,多くのプランの学習活動において
・「地理的情報を収集する,組織する,分析する」の過程がしっかりと行われて,地理的な 問題の解決につながっていることが分かる。
もう少し具体的に分析するために,「地理的問いを提示する,答える」の両方に関連しな いプランの内容についてみる。このようなプランは,全部で31プランに達する。例えば,
空間的世界の「S2・2.どの方位に行くべきか」では,方位の知識を復習し,地図を使って 実際の地域の事象を表現するのに方位を使う(例,「チェスターは,スプリングフィールド の南西です」,「家は学校から5ブロック南で3ブロック西へ行く」などと表現する)こと を練習する。また,人文システムの「S13・1,世界の国々の表を作る」では,多様な国々 の規模,人口,政治的な特徴についての情報を集めて表に入力し,その特徴について比較 する。そして,「人口は全国にわたって平等に分布しているか」,「居住パターンは,どんな 問題に影響するか」などの地理的問いが教師より提示され,それに答えるという学習展開 になっている。このように,これらのプランは,学習のねらいに合わせて地理的問いを特 定することによって,地図のリテラシーや地理的情報にかかわる技能を重点的に養うプラ
ンであることが分かる。反対に「地理的問い」の技能の面からみれば,このようなプラン においては「地理的問い」の技能の中心的なコンセプトである地理的な事象について自分 自身の問いを提示する,そして,それについて理論的な根拠を基にして答えるという過程 がとられていないことが分かる。
一方,「地理的問い」にかかわる二つの技能の両方と関連しているプランは,全部で39 プランある。このようなプランの内容をみると,例えば「S18・1.毎日地球の日」では,
一般的な環境問題について児童がすでに知っている事実をあげることから授業を始めて,
それらの一般的な因果関係(例えば,多くの人が自家用車に乗っているので必要以上のエ ネルギーを消費している,私たちがとても多くの廃棄物を捨てるのでごみの埋立地は急速 にいっぱいになっているなど)について考える。その上で,それらをもっと身近な問いに するために,地元スケールで起こっている環境問題についての問い(その状況,原因,影 響などについての問い)へと発展させる。それらについて調べる中で,原因が他地域から
・98・
きていることに視点をあてることによって,地元で起こっていることが他の場所へと影響 することに気づかせる.そして,「その問題の源は何か」,「その位置を正確に示すことがで きるか」,r地理的な広がりを示すことができるか」,「その問題は現在人々やその他の環境 の様相にどのように影響しているか,また,どこで影響しているか」といった多くの地理 的問いを提示していくことにつなげていく.また,終末では,実用性と有効性のある最良 の解決策を示す,それらの提案について評価するといった「地理的問いに答える」の活動 が行われる。このように「地理的問い」に関連するプランでは,問いから答えの過程がス ケールを変えたり,事象を変えたりしながら繰り返し行われるようになっているものが多
い。
2 「カリキュラム」との関連
レッスン・プランには,地理をはじめとする社会諸科学,人文科学,自然科学といった 様々な領域のカリキュラムとの関連も示されている。
合衆国のスタンダードは主要9教科に採用されているが,各教科の関係団体に一任され て作成されたためにそれらの横のつながりは薄い。したがって,プランと他教科との関連 を示していることは,地理の学習において,どのような学習に,どのような教科の知識が,
どのように適用することができるかといったことを明確にできるため,実践にとって大変 意義がある.そこで,本論では,地理以外のカリキュラムと関連するプランの特徴につい て考察することによって,地理の学習における他教科の有効な適用の方法を検証する。
【表3・2−3】は,プランとカリキュラムとの関連について,諸科学の領域ごとに示した ものである。
この表で示したように,プランに最も多く関連する地理以外の教科は,歴史である。そ れは,「人文システム」のスタンダード全般と「地理の効用」のスタンダード17(過去の 解釈)にかかわるプランに多く関連している。「人文システム」における歴史と関連するプ
ランの内容をみると,過去の地理的事象を取り上げるプランが多くみられる.例えば,
「S10・5.インカの文化遺産」では,南アメリカの古代の様々な文化遺産に視点をあて,
一99一
【表3−2・3】「レッスン・プラン」と「カリキュラム」との関連
鰍
社会科学
カリキュラム合計
空間的世界 場所と地域 自然システム 入文システム 環境と社会 地理の効用地 理
81 10 10 16 16 13 16
歴 史刈 28 2 5 0 9 1 10
社 会 科 14 3 0 1 6 1 3
経 済 4 1 0 0 0 2 1
人文科学
文 学*2
19 2 4 0 5 5 3
芸 術紹 6 1 2 0 2 1 O
自然科学 地球科学 14 2 3 3 0 3 3
生活科学 13 1 0 8 0 2 2
理 科
11 2 0 3 1 4 1
数 学 6 1 0 1 4 0 O
環境学習 5 O 0 1 0 4 0
生 物 学*4
5 0 2 2 0 1 0
地 質 学 3 1 2 0 0 0 0
*1 歴史の内訳は,歴史15,世界史7,合衆国史4,系譜学1である。
*2 文学には,劇文学1を含む。
*3 芸術には,ファインアート1を含む。
*4 生物学には,動物学1,生態学1を含む。
* この他には,政治,宇宙科学など10分野のカリキュラムが,それぞれ1プランずつ関連している。
(筆者作成〉
山腹に面する高台を切り開いてとうもろこしやポテトを育てたこと,巨大な石の神殿と要 塞を作ったが,人々の家は石と泥と草の屋根だったこと,とても信仰が厚く自然のすべて の原因が神や女神であると信じていたことなど,その時代の文化の様式やその分布につい て学習する。また,「S13・3.真珠湾の遺産」では,日本が1940年代初頭に領土を拡大し ようとした理由について考え,領土や天然資源の区分や統制によって起こった人間の対立 について学習する内容となっている。さらに,このプランでは,「なぜ日本が真珠湾を攻撃 したのか」,「国々が領土の支配において対立するとき戦争をする代わりになることはない か」といった過去の事象を解釈する活動も行われる。
反対に,現在の地理的事象に歴史的見方を適用するプランの例としては「S17−5.ミイ ラと砂漠」が挙げられる。この学習では,乾燥したエジプトの気候がミイラを自然に作り 保存することを知り,カイロと児童自身の都市の気候を比較した上で「現在の世界のどこ でミイラを発見することができるか」,「自分の都市でミイラを作ることができるかjとい
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