3. 学校現場での教育 ICT システムのあり方
3.3 家庭でのタブレット PC を使った持ち帰り学習
3.3.1 実証
学習・教育クラウド・プラットフォームを用いた家庭学習に関し想定した利用シーンは下 記のとおりである。
教員が学習者に対して、いわゆる宿題を学習者に課し、家庭で学習を行なわせる。学習者 が家庭にて学習を行ない、教員および保護者がその学習状況、使用履歴を把握する。
上記の利用シーンにもとづき、下表のユースケースを設定し、それに即した形で、各地域 において実証を行った。
表 3-2 家庭での持ち帰り学習におけるユースケース(アクター:教員)
ユースケース(アクター:教員)
<学習前準備>
1-1 マイポータルよりシングルサインオンによりログインする。
1-2 コンテンツの一覧を表示する。
1-3 一覧画面から使用したいコンテンツを検索する。
1-4 コンテンツを選択して起動。コンテンツ内容を確認する。
1-5 共通インタフェースよりマイポータルに戻る。
1-6 担当する学習者に、学習時に利用するコンテンツを割り当てる。
<学習後>
1-1 マイポータルよりシングルサインオンによりログインする。
1-7 「りれき」画面にて、学習者の一覧を表示する。
1-8 特定の学習者を選択し、その学習者の学習記録データ(コンテンツ利用履歴)
を参照する。
1-9 共通インタフェースよりログアウトする。
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表 3-3 家庭での持ち帰り学習におけるユースケース(アクター:学習者)
ユースケース(アクター:学習者)
<家庭での持ち帰り学習時>
2-1 マイポータルよりシングルサインオンによりログインする。
2-2 コンテンツの一覧を表示する。
2-3 コンテンツを選択して起動。学習を行う。
2-4 共通インタフェースよりマイポータルに戻る。
2-5 共通インタフェースよりログアウトする。
表 3-4 家庭での持ち帰り学習におけるユースケース(アクター:保護者)
ユースケース(アクター:保護者)
<授業学習時>
3-1 マイポータルよりシングルサインオンによりログインする。
3-2 「りれき」画面にて、自分の子どもの学習記録データ(コンテンツ利用履歴)
を参照する。
3-3 共通インタフェースよりログアウトする。
3.3.2 結論・得られた知見
教員に対するヒアリング結果のうち特徴的な活用例として、1年間のうちに学習した内容 のまとめとして、持ち帰りにてドリルでの学習をおこない、わからない部分を解説して補う という学習を挙げることができる。
このような際には、児童生徒によって異なる学習理解に応じた教材コンテンツが求められ るが、教科を問わず、年間の復習をするということを踏まえると、単一の教材コンテンツで 充足することは困難であると考えられる。そこで、学習・教育クラウド・プラットフォーム 上の教材コンテンツ間で、学習記録データが受け渡され、児童生徒に応じたコンテンツが提 示される仕組みが実現すると、なお一層有効であると考えられる。
また、教員が学習者の学習状況を管理する、学習者が自分の学習状況を自己管理する、と いう観点からは、システムを改善させるための機能として、様々な要望が寄せられた。一部 の教材コンテンツでは実現できているものも含まれているが、全コンテンツ横断的に実現で きるようになると、より高い利便性、学習効果が期待できる。
スケジュール・進捗管理機能
教材コンテンツの実施目標時期(期限)や、完了・未完了のフラグなど、学習の 進捗度合を学習者や教員が簡単に把握できるような、いわゆるダッシュボード的 な機能があると便利
教員と学習者・保護者のコミュニケーション機能
教員が学習者にアドバイスを送る、学習者が教員に質問する、教員が保護者に連 絡をする、などのコミュニケーションが学習・教育クラウド・プラットフォーム にて実現できれば、学習者による学習をより一層促進させることができる
学習者が間違えた問題を自動的にリピートしてくれる機能
学習者による反復練習を促すため、間違えた問題や正答率の低い分野・単元の問 題をまとめて出題するような機能があれば、学習効果・効率が向上する
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理解度進捗状況確認機能
持ち帰り学習では、校内の授業に比べ、学習者の理解度を把握することが困難で あるため、学習者個人やクラス単位で、実際の理解度を成績等の統計情報で表示 する機能が望ましい
学習者の利用状況を印刷する、エクスポートするなど、教員による二次利用を想 定した機能
3.3.3 今後の課題
1)持ち出し時における技術・運用・制度面の課題
タブレットPCを利用した持ち帰り学習について、主に教員や ICT 支援員、また教育委 員会から様々な意見が寄せられた。
もっとも大きな要素として、端末紛失時における技術面、運用面での対応を挙げることが できる。端末の中に保存された写真やメモなど学習者の情報の保護や、サインインされた状 態のままの端末の不正利用防止といった観点から、端末の強制的なロック(リモートロック)
や消去(リモートワイプ)のような技術的な仕組みが必要ではないかという意見があった。
このような機能を実現する技術として、Mobile Device Management (MDM) と呼ばれるソ リューションが存在するが、現在の学習・教育クラウド・プラットフォームの機能ではない ため、各学校や教育委員会による個別の対応が必要となる。さらに、MDMを活用する場合 は、端末紛失の緊急連絡をリアルタイムで受け取り、システムを遅滞なく確実に操作するた めのオペレーション体制や、そのルール整備、トレーニングなども必要となる。
また、教育委員会に対するヒアリングにて、各自治体や教育委員会、学校にて規定してい る情報セキュリティポリシーの改訂が必要になる場合があることも確認できた。情報セキュ リティポリシーの内容は運用者によって異なるが、学校外における端末の利用を想定せずに 作成されているケースがある。さらに、端末持ち出しに関する手続、申請も運用者によって 異なるため、校外学習や家庭学習を本格的に実施する場合は、制度面の見直しが必要となる 運用者が出てくることが想定される。
2)家庭におけるネットワーク環境
校内であれば整備されたネットワーク環境にてタブレット PC を使用することが可能で あるが、家庭ではネットワーク環境の整備度合に大きなばらつきがあることが想定される。
タブレットPCは一般的に無線LAN(Wifi)によるネットワーク接続を前提としているも のが多く、その環境が整っていない家庭では、学習・教育クラウド・プラットフォームを使 用した学習を十分におこなえない恐れがある。
そこで学校側ではそのような場合を想定し、SIMカード付のWifi ルータとともにタブレ ットPCを持ち帰らせるなどの対策をとっているが、家庭や地域の状況によっては、公衆イ ンターネット網の電波が届かないケースもあり、ネットワーク環境の改善などが、次年度以 降の課題としてあげられる。
68 3)障害・トラブル発生時の対応
校内における利用であれば、教員や ICT 支援員が直接対応することは可能であるが、家 庭での持ち帰り学習の場合、障害・トラブルが発生した際の対応ができない。教員に対する ヒアリングでも、何らかの理由によりタブレットPCや学習・教育クラウド・プラットフォ ームが利用できない場合、学習が停止してしまうことを懸念する意見があった。障害・トラ ブルが発生した際の対応方法まで学習者に習熟させることはハードルが高く、システム的に 自動復旧する仕組みが必要との意見もあり、次年度以降の課題となる。
本年度の実証では、障害発生時の対応のためにヘルプデスクを設置し、家庭からの問い合 わせについても対応できる状態としていた(原則として保護者からの問い合わせを想定)。
しかし、児童生徒に対するアンケートからはこのヘルプデスク機能が十分に活用されなかっ た実態が把握できる。
「自宅では端末を問題なく使うことができましたか?」という設問に対し、「先生や友達 に聞いて解決した」もしくは「解決しなかった」と回答した児童生徒は全体の18%に上る。
しかしながらこの回答をした児童生徒のうち、「ヘルプデスクに問い合わせを行った」と回 答した児童生徒は 1 名も存在しなかった。問い合わせをしなかった理由までは確認できて いないが、ヘルプデスクの周知状況、開設時間帯、利用方法等に改善の余地があった可能性 が考えられる。