3. 学校現場での教育 ICT システムのあり方
3.8 大規模かつ多様な環境での運用時のボトルネックと改善策
3.8.1 実証
81
あたりのトラフィック量として、0.78Mbps と 1.4Mbpsの間に、一つの境界値が存在して いるものと考えられる。このことから、この平均値である1.1Mbpsを境界値とみなす。
これらの考察から、学習・教育クラウド・プラットフォームを利用するために、最低限必 要となるインターネットアクセス帯域は、同時アクセスを行う情報端末一台あたり
1.1Mbps以上と考えられる。もし、一つの学校において、40台の情報端末から同時アクセ
スを行う場合には、44Mbps以上のインターネットアクセス帯域が必要ということである。
82 3.8.1.1 実証試験の構成
各校に合計 190 台となるよう情報端末を用意し、準備作業、コンテンツアクセスを行う 操作担当者に割り当てる。本試験では、操作担当者あたり10台の情報端末を割り当てるこ ととし、進行管理を受け持つ総括責任者と合わせ、各拠点あたり5名の人員を手配した。
学校側のネットワーク機器、システム機器にてトラフィック量を測定することができなか ったため、コンテンツアクセス中の端末上、学習・教育クラウド・プラットフォーム側のリ バースプロキシにてトラフィック量を測定することとした(図 3-5)。
図 3-5 高負荷試験の構成
本試験で検証するボトルネックは、ネットワーク経路上で処理可能帯域の上限に達してい る機器、処理能力の上限に達している機器となる。
3.8.1.2 ボトルネックの仮説
学習・教育クラウド・プラットフォームの利用モデルを図 3-6 のように考え、ネットワ ーク経路上および処理能力上にボトルネックが発生する個所を想定する。
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図 3-6 ボトルネック発生個所の想定
ネットワーク経路上においては、各校に設置される無線 LAN接続および校内 LAN、各 校のインターネットアクセス回線、学習・教育クラウド・プラットフォームのインターネッ トアクセス回線、学習・教育クラウド・プラットフォーム内のネットワークにおいてボトル ネックが発生する可能性がある。
処理能力上においては、学習・教育クラウド・プラットフォーム側のリバースプロキシお よびコンテンツサービスにおいてボトルネックが発生する可能性がある。
本試験では、音声コンテンツと動画コンテンツを視聴することで負荷をかけることとした。
ともに品質によってコンテンツサイズが異なるが、一般的には動画の方が、データ量として は大きい。動画の画面サイズを640x480程度とすると、コンテンツサービスから情報端末 へのストリーミング再生で1Mbps程度の帯域が必要となる。
この想定で、ネットワーク経路上の想定ボトルネック発生個所の理論上の負荷(トラフィ ック量)を考える。
表 3-17 想定ボトルネック発生個所の理論上の負荷 想定ボトルネック
発生個所
算出式 理論
トラフィック量
実際の容量
学校側無線 および校内LAN
1Mbps x 40台 40Mbps 75Mbps~130Mbps
学校側インターネット アクセス回線
1Mbps x 40台 40Mbps 75Mbps~130Mbps
プラットフォーム側 インターネットアクセ ス回線
1Mbps x 190台 190Mbps 1Gbps
プラットフォーム内 ネットワーク
1Mbps x 190台 190Mbps 1Gbps
実際のネットワークおよび機器の処理能力(容量)からすると、ネットワーク上のボトル
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ネックは発生しないことになるが、学校側の無線接続については、多数の同時接続により処 理能力が落ちる特性から、処理能力ぎりぎりとなる可能性が高い。
処理能力については、コンテンツデータの読み出し、転送処理がほとんどのため、I/O処 理とメモリ操作に影響が及ぶと考えられる。各校へのデータ転送が集中するリバースプロキ シ、コンテンツデータの読み出し処理が集中するコンテンツサーバがボトルネックとなる可 能性がある。
3.8.1.3 実証試験参加者の役割
実証試験は五地域同時に行うため、全体の進行管理を行うコーディネータを置き、各地域 には、コーディネータの指示にもとづき、端末操作担当者を管理する総括責任者を配置した。
また、プラットフォームには、トラフィックデータ等を記録する担当者を配置した。
図 3-7 実証試験参加者の役割
当日の相互連絡には電話会議システムを利用した。音声だけでは各地域の状況がわかりづ らいので、コーディネータから、進行状況を随時、アナウンスすることが重要である。
3.8.1.4 実証試験参加校と情報端末、インターネットアクセス回線の情報
高負荷試験に参加した各校と情報端末およびインターネットアクセス回線の情報をまと める。
85 試験実施校 東京都荒川区尾久小学校
情報端末 Windows OSタブレットPCx40台 インターネットアクセス
回線
インターネット回線(100Mbps)
試験実施校 福島県新地町立駒ケ嶺小学校 情報端末 iPad x40台
Windows OSタブレットPCx1台 インターネットアクセス
回線
インターネット回線(100Mbps)
試験実施校 佐賀県立有田工業高校
情報端末 Windows OSタブレットPCx40台 インターネットアクセス
回線
地域イントラ経由(最大100Mbps)
試験実施校 茨城県古河市立第五小学校 情報端末 iPadx20台
iPad mini x20台 インターネットアクセス
回線
インターネットアクセス回線(下り最大 200Mbps、上り最大 100Mbps)
試験実施校 仮想地域環境
情報端末 Windows OSタブレットPCx7台 Android OSタブレットPCx10台 iPad x10台
インターネットアクセス 回線
インターネット回線(100Mbps)
全校、教室内はWifi接続である。
3.8.1.5 実施試験の実施手順
平成27年3月3日(火)、試験は以下の手順で同時に実施した。
表 3-18高負荷試験の実施手順
時間 作業項目 概要
15:00 準備作業 現地集合
試験場所に移動し情報端末を準備 時間があればコンテンツアクセスの練習 実効帯域測定
16:00 リハーサル実施 音声コンテンツの再生・評価x1回
16:30 音声再生試験 音声コンテンツの再生・評価x3回
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17:15 動画再生試験 動画コンテンツの再生・評価x3回
18:00 撤収 機材を片付けて撤収
1)準備作業
準備作業は以下の手順で実施した。
試験会場に移動後、端末操作担当者は総括責任者の指示に従い、試験に使用する機材 を準備
端末操作担当者は担当する情報端末について以下の設定を実施
電源を入れて、操作可能状態にする
情報端末を並べて、操作する順番を決める
音声品質評価対象端末を除き、音声出力をゼロまたはミュート状態にする
音声品質評価対象端末は「最後」に操作する情報端末とする
音声品質評価対象端末にヘッドホン・イヤホンを接続
音声品質評価対象端末の音声出力を最大音量の半分程度に上げておく
全端末の準備が終わったら総括責任者に通知する
2)実効帯域測定
各校のインターネットアクセス回線の実効帯域を測定するため、インターネット上で画像 ファイルのダウンロード時間から転送速度を算出するサービスを使用した。このサービスで は、5つのレンタルサーバ等に設置したウェブサーバからファイルをダウンロードし、もっ とも短時間でダウンロードが完了した結果を「最高データ転送速度」、結果の平均値を「平 均データ転送速度」として報告する。
この測定は各校にて、準備作業中に三回ずつ実施した(表 3-19)。
表 3-19 高負荷試験における実効帯域測定結果
最高データ転送速度(Mbps) 平均データ転送速度(Mbps)
東京都荒川区 30.23 20.04
41.7 21.74
40.49 24.51
福島県新地町 18.3 11.3
20.96 10.94
19.05 11.35
佐賀県 7.96 4.42
7.46 6.26
11.96 7.02
検証協力校 11.34 5.19
15.03 7.57
11.23 5.57
仮想地域環境 48.1 18.26
87
38.72 21.59
32.71 13.91
三回分の平均値を算出すると、平均データ転送速度として、5.9Mbps(佐賀県)~
22.10Mbps(東京都荒川区)となり、地域によって大きな差があることがわかった。
図 3-8 高負荷試験実施の実効帯域測定結果
最高データ転送速度を合計すると「118.4Mbps」、平均データ転送速度を合計すると
「63.22Mbps」となる。各校とインターネット間の帯域は、この値に近いものになると考 えられる。
3)音声再生実施
音声再生実施と品質評価は以下の手順で実施した。
準備作業
情報端末上でブラウザを起動する。
ブラウザのキャッシュをクリアする。
学習・教育クラウド・プラットフォームのマイポータルにアクセスする。
学校選択後、事前に配布した試験用のID・パスワードでログイン。
試験に用いるコンテンツを表示(図 3-9)
音声試験は、「ニューワイド学習百科事典」から、音楽>日本の民謡>北海道を選択し、「道 南盆唄」と「江差追分」を利用することとした。
37.47
19.44
9.13 12.53
39.84
22.10
11.20
5.90 6.11
17.92
0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00
荒川区 新地町 佐賀県 検証協力校 仮想地域
高負荷試験実施 実効帯域測定
最高データ転送速度(Mbps) 平均データ転送速度(Mbps)
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図 3-9 高負荷試験音声再生時のコンテンツ
音声コンテンツ再生と品質評価
コーディネータから再生開始のカウントダウンを行う。
「開始」の掛け声を総括責任者が端末操作担当者に伝える。
端末操作担当者は担当する情報端末を順番に操作し、一曲目の「道南盆唄」を再 生する。
一通りの再生が開始されたら一台目の情報端末に戻り、「道南盆唄」の再生終了 を待つ。
「道南盆唄」の再生が終わったら、再度、情報端末を順番に操作し、「江差追分」
を再生する。
最後の情報端末において「江差追分」の品質評価を行う。
他の情報端末の再生状況は、画面上に表示されるプレイヤを見ていると判別でき るので、可能な範囲で確認しておく。
「江差追分」の再生が完了したら試験完了
音声再生は二回実施し、二回とも評価を行う。情報端末上にコンテンツキャッシュが残っ ていると学習・教育クラウド・プラットフォームに負荷がかからないので、再生前にキャッ シュのクリアを確実に実施する必要がある。
4)動画再生実施
音声再生と評価が終了したら、続けて動画再生実施と品質評価を行う。コンテンツは違う が手順はほぼ同じである。
準備作業
情報端末上でブラウザを起動する。