3. 学校現場での教育 ICT システムのあり方
3.9 同一地域内での同時利用による影響
ースプロキシおよびコンテンツサーバへの負荷集中を回避することで、学習・教育クラウ ド・プラットフォーム全体のコンテンツ配信能力を向上させることができる。
本負荷試験においても、リバースプロキシに負荷が集中し、能力を超える現象が発生した こと、および、学習・教育クラウド・プラットフォームの利用者が全国に存在することから、
ボトルネック発生の予防策として、コンテンツの分散化を図ることが必要と考えられる。
3)容量計画の策定と負荷状況監視からの改善活動
大規模システムの構築には、事前の容量計画策定が必要である。学習・教育クラウド・プ ラットフォームの利用校・利用者数、地域性、利用時間、教材コンテンツの種類、大きさと いった要因を想定し、定められた性能を発揮するために必要なネットワーク帯域、CPU性 能、メモリ量などを算出する。
利用校・利用者が増加する、教材コンテンツが増加する、教材コンテンツの種類が変わる といった、必要容量に変化を及ぼす事象についての予見は難しいため、主要拠点・ルータ・
リバースプロキシ・代表的なコンテンツサーバ等については、常時、負荷状況を監視し、過 負荷に陥らないよう、適切に対策をとる必要がある。
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通常の環境では、サーバの台数を増やすためには、物理的な設置場所の確保・機器の調達・
設置・設定と、多くの作業が必要になるが、クラウド環境では、早ければ数分程度で、サー バの台数を増やすことができる。また、増やしたサーバを減らすことも容易であることから、
負荷の状況に合わせて、リソースを調整することで、高負荷に耐えうるシステムを構築する ことができる。
2)全国的なプラットフォーム展開
スケールアウトの考えをさらに進めて、全国を複数の地域に分け、負荷が高くなった地域 にプラットフォーム全体を増設することも考えられる。この場合、サーバについては、クラ ウド上の仮想マシンイメージを使うことで、データ量としては小さな設定ファイルを転送す るだけで生成が完了するが、コンテンツデータについては転送する必要があるため、一定の 時間が必要となる。このため、「3.8.2.4 ボトルネックの解消方法」に示した、コンテンツ・
デリバリー・ネットワークを併用することで、コンテンツデータのつどの転送を省略するこ とができる。
3.9 同一地域内での同時利用による影響
学習・教育クラウド・プラットフォームの利用に際して、同一地域内の複数の学校が同時 に利用することがあった場合、地域のネットワーク、クラウドに発生する影響を検討、分析 し、発生しうる問題への対応策を検討する。
3.9.1現状調査
まず、地域内のトラフィックが一か所に集中するモデルを想定する(図 3-15)。
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図 3-15 地域内のトラフィックが集中するモデル
このモデルにもとづき、同一地域内で同時に学習・教育クラウド・プラットフォームを利 用する場合に発生するトラフィックの幅を想定する。アクセスを行う学校数をL、学校内で 利用される情報端末数をMとし、情報端末あたりNbpsのトラフィックが発生するとして、
算出式は以下となる。
トラフィックの幅=L×M×N(bps)
「3.7 ネットワークへの接続速度」の結果として、一台あたり 1.1Mbps のトラフィック が発生するとして、5校から40人が情報端末を扱うとすれば、5×40×1.1=220Mbpsのト ラフィックが発生する。
教育コンテンツの性質から、主にダウンロード方向のトラフィックとすれば、地域プロバ イダ等のインターネット側アクセス回線が220Mbps以上の容量を持っていなければならな い。
もし、容量が不足した場合には、プラットフォーム側のコンテンツサーバと情報端末(ま たは学校側のプロキシ)の間でTCP/IPのフロー制御および輻輳制御がおこなわれ、処理可 能な帯域にまでトラフィック量が調整される。しかし、学校側の情報端末には必要なデータ 量が届かなくなり、動画等の再生が停止、遅延、インタラクティブコンテンツであれば反応 が停止するといった現象、「3.7ネットワークへの接続速度」における仮想地域環境でのLTE モバイルルータ利用時に、動画再生が開始されないといった現象が発生する。
3.9.1.1 ネットワーク帯域の不足による問題への対応
ネットワーク帯域に影響を与えるアプリケーション、コンテンツはサイズの大きなデータ を一定時間内に転送しなければならないものである。典型的には、負荷試験で利用した動画
100 コンテンツの再生である。
1)キャッシュサーバの利用
動画コンテンツがあらかじめ収録された静的なコンテンツであれば、トラフィックの集中 による過負荷状態が想定される地域について、大容量のキャッシュサーバを配置することが 対策となる。
図 3-16 大容量キャッシュサーバの利用
一度、地域からアクセスされた動画コンテンツ等をキャッシュサーバに保存することで、
以降のアクセスはインターネットアクセス回線を経由せずに行うことができる(図 3-16)。
ただし、地域内のトラフィック量は変わらないため、学校側にもある程度の容量を持つキャ ッシュサーバを配置し、階層的なキャッシュ構造を持たせることで、より大きな負荷に耐え うる構成とすることができる。
2)コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)の利用
キャッシュサーバは、プラットフォームとは関わりなく配置することができるため、地域 側で独自に負荷対策を実施する場合に適している。プラットフォーム側で特定のコンテンツ を全国で利用してもらいたいといった要件があるのであれば、プラットフォーム側でキャッ シュデータを管理するコンテンツ・デリバリー・ネットワークを構築、利用することも考え られる。
コンテンツ・デリバリー・ネットワークとは、インターネット上に分散配置された多くの キャッシュサーバから構成され、コンテンツにアクセスする端末からネットワーク的にもっ とも近いキャッシュサーバを利用することで、負荷を軽減する仕組みである(図 3-17)。
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図 3-17 コンテンツ・デリバリー・ネットワークの利用
構築には大きな費用がかかるため、商用サービスとして構築されたコンテンツ・デリバリ ー・ネットワークを利用することが合理的である。
3.9.2結論・得られた知見
学習・教育クラウド・プラットフォームを利用する地域、学校により、インターネットへ のアクセス経路は異なるが、経路上にトラフィックが集中する個所があれば、コンテンツア クセスにより過負荷状態が発生し、プラットフォームの利用に支障が発生する可能性がある。
その対策として、地域側でのキャッシュサーバ設置、プラットフォーム側でのコンテン ツ・デリバリー・ネットワークの利用について示した。
「3.8大規模かつ多様な環境での運用時のボトルネックと改善策」において、動画コンテ ンツの190 台同時再生時に、リバースプロキシのCPU利用率が60%を超え、性能不足に 陥っていたことから、同じように地域内で 200 台といった同時アクセスが発生した場合、
ネットワーク機器等に問題が発生することが予見される。各校での学習に悪影響を及ぼすこ とがないよう、あらかじめの対策として、キャッシュサーバ・プラットフォーム側でのコン テンツ・デリバリー・ネットワークの利用を検討すべきである。
3.9.3 今後の課題
キャッシュサーバやコンテンツ・デリバリー・ネットワークを利用することで、地域側だ けでなく、学習・教育クラウド・プラットフォーム側の負担も軽減することができる。全国 的に学習・教育クラウド・プラットフォームを展開することを想定すると、地域によってプ ラットフォームへのネットワーク距離が異なることから、少なくとも地域側でのキャッシュ サーバの設置は必要といえる。
キャッシュサーバは配置しておけばコンテンツの保存自体は自動的におこなわれる。コン
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テンツ・デリバリー・ネットワークについては、ネットワーク上に配置する教材コンテンツ の選別、アクセス状況の管理といった運用コストがかかるため、学習・教育クラウド・プラ ットフォームおよび利用校における問題発生の状況を観測し、コスト効率の良い対策を展開 する活動が必要である。