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実験結果及び考察

ドキュメント内 浄水スラッジの脱水効率に関する研究 (ページ 59-83)

第3章  膜を用いた浄水スラッジの強制濃縮による脱水効率改善効果

第4節  実験結果及び考察

 表3-2 同一スラッジを用いた膜濃縮と沈降濃縮の比較

膜濃縮 沈降濃縮 装置1 装置2

第1回 濃縮スラッジ濃度(% 3.7 3.2 1.0 ろ過速度(kg-ds/(m2hr) 0.93 0.51

1.16* 0.72*

ケーキ含水率(% 63.5 65.4 70.3 比抵抗(×1014m/kg 1.2 1.2 1.4 第2回 濃縮スラッジ濃度(% 3.2 3.8 1.3 ろ過速度(kg-ds/(m2hr) 0.60 0.65 0.48

0.71* 0.75* 0.64*

ケーキ含水率(% 68.4 66.0 69.6 比抵抗(×1014m/kg 2.6 2.8 1.8   * 雑時間なしろ過速度

 同一スラッジ実験での沈降濃縮との比較(表3-2)では,膜濃縮によるろ過速度 の向上が見られた。しかし,膜濃縮における濃縮スラッジ濃度が沈降濃縮の3倍程 度であるのに対し,ろ過速度は2倍程度もしくはそれ以下であった。この比較から も,膜濃縮においては,濃縮スラッジ濃度の向上率からろ過速度の向上率を推定で きないことが明らかとなった。

 ろ過速度は先に示した式(2.5)で表され,雑時間θdは一定であるから,1回の脱 水での乾燥固形分量Wと脱水時間θdw(=ろ過時間θf+圧搾時間θe)によって決 まる。そこで,乾燥固形分量及び脱水時間について,濃縮スラッジ濃度との関係を 図3-2,図3-3にそれぞれ示した。乾燥固形分量はろ過工程の圧入量で決まるため,

スラッジの脱水性の影響を受けると考えられたが,実験結果では概ね濃縮スラッジ 濃度に比例していた(図3-2)。しかし,濃縮スラッジ濃度と脱水時間との関係(図 3-3)では,膜濃縮スラッジの脱水時間が顕著に増加していた。膜濃縮スラッジで の脱水時間の増加については同様の報告4), 7)もあり,脱水時間が増加しため,濃縮 スラッジ濃度ほどろ過速度が向上しなかったものと考えられた。しかし,脱水時間

脱水ケーキ乾燥固形分量(kg-ds)

濃縮スラッジ濃度(%)

0 1 2 3 4 5 6

0.0 0.5 1.0 1.5

2.0 膜濃縮 沈降濃縮

図3-2 濃縮スラッジ濃度と脱水ケーキ乾燥固形物量の比較

脱水時間θ dw(min)

濃縮スラッジ濃度 (%)

0 1 2 3 4 5 6

0 10 20 30 40 50

60 膜濃縮 沈降濃縮

図3-3 濃縮スラッジ濃度と脱水時間の比較

(2)ろ過速度の推定

 そこで,膜濃縮において濃縮スラッジ濃度の向上ほどろ過速度が向上しない原因 について,実験結果をろ過理論に基づいて解析することによって検討した。

 まず,ろ過理論における脱水性の指標である比抵抗について,低水温期の膜濃縮 スラッジと沈降濃縮スラッジとを比較して表3-3に示した。膜濃縮スラッジの比抵 抗は沈降濃縮スラッジとほぼ同様の値であった。膜濃縮では比抵抗の大きな増加が 生じていないため,濃縮スラッジ濃度の向上ほどろ過速度が向上しないことは,比 抵抗からは説明できなかった。

 表3-3 低水温期の比抵抗の比較

比抵抗(×1014m/kg) データ数

膜濃縮 2.7 14

沈降濃縮 2.2 15

 原因を詳細に検討するために,ろ過理論と実験結果を比較して,ろ過速度に対す る濃縮スラッジ濃度及び比抵抗の関係について考察した。もし,膜濃縮と沈降濃縮 で共通に成立する関係があれば,その関係をもとに原因を明らかにできる。そこで,

まず,ろ過速度と定圧ろ過係数Kの関係について検討した。

 ろ過速度とKとの間に何らかの関係があれば,式(3.3)からろ過速度と濃縮スラッ ジ濃度及び比抵抗との関係が導かれる。そこで,実験で得られた雑時間なしのろ過

速度F’ kg-ds/(m2·hr))とろ過工程の定圧ろ過係数Kとを比較して図3-4に示した。

その結果,膜濃縮と沈降濃縮で共通に成り立つ関係は見られなかった。

ろ過速度 F'(kg-ds/(m2 hr))

定圧ろ過係数Kf(×10-7m6/sec)

0 5 10 15

0 1 2 3 4 5

6 膜濃縮 沈降濃縮

図3-4 定圧ろ過係数Kfとろ過速度F ’の比較

 そこで,ろ過速度を構成するケーキ乾燥固形分量及び脱水時間とKとの関係に ついて検討した。

 ケーキ乾燥固形分量Wは,脱水終了時のろ液量を用いて,次式で表される12)。   W = Vρs

1−mes ... (3.7)  ここで,meは脱水終了時のケーキ湿乾質量比である。脱水終了時のろ液量を式

(3.1)から求めれば,式(3.7)から,WKfθで表すことができる。しかし,ろ

過工程と圧搾工程では定圧ろ過係数Kが異なるため,脱水終了時のろ液量Vは,

単純に式(3.1)からは求められず,ろ過理論では複雑な式で表されることとなる。

ここでは,ろ過速度と濃縮スラッジ濃度及び比抵抗の関係について,単純かつ明瞭 な定量的関係を得ることを目的として,ろ過工程のKfと式(3.1)及び式(3.7)を用 いて,乾燥固形分量Wを表すことが妥当であるか検証した。

 式(3.1)のろ材抵抗の項(Vmθm)は,Vmが概ね一定の範囲の値であり,脱水終

了時のろ液量Vに比較して1/10程度であることから,これを省略して式(3.1) ら脱水終了時のVをろ過工程のK で表した。

V2 =Kfθ  ゆえに

V = Kfθ ... (3.8)

 式(2.7)と式(2.8)から,Wの計算値Wcalcが求められる。

  Wcalc =

1−ρsmes Kfθ

... (3.9)  脱水実験での脱水時間θdw(=θfθe)を式(3.9)に代入してWcalcを求め,実際のケー キの乾燥固形分量Wobsと比較した。その結果として得られた図3-5 ではWcalcWobsの間に良好な比例関係が得られており,ろ過工程で得られた係数Kfでろ過・

圧搾後のケーキ中の乾燥固形分量を表すことができることが分かった。

実際のケーキ乾燥固形分量

W

obs(kg)

式(3.9)によるケーキ乾燥固形分量

W

calc(kg)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

2.5 膜濃縮 沈降濃縮

図3-5 ケーキ乾燥固形分量の計算値と実測値の比較

 次に,脱水時間θdwKfについて検討した。ろ過理論上は,脱水時間θdwは圧搾 工程でのろ液量と圧搾工程での定圧ろ過係数Keによって決まる。しかし,圧搾工 程でのろ液量は,ろ過工程でのスラッジ圧入量と脱水の進行の度合いに左右される ため,ろ過理論から脱水時間θdwを求めると複雑な式となる。そこで,乾燥固形分 量と同様に,実験結果から脱水時間θdwとろ過工程のKfとの間に単純かつ明瞭な 定量的関係が得られるか検討した。実験結果から脱水時間θdwKfを比較して図 3-6に示した。Kfと脱水時間には膜濃縮スラッジ及び沈降濃縮スラッジに共通の明 確な指数関数的低減関係が見出され,指数関数を外挿したところ,脱水時間は概ね,

Kf0.41に比例していると考えられた。

脱水時間θdw(min)

定圧ろ過係数 Kf(×10–7m6/sec)

0 5 10 15 20

0 20 40 60

80 膜濃縮 沈降濃縮

θdw = 0.0662Kf–0.406

(R2=0.975)

図3-6 定圧ろ過係数と脱水時間の比較

 このことから,脱水時間θdwを,ろ過工程のKfによって次式で表すことができる。

θdw Kf

−0.41

... (3.10)  以上から,ろ過速度Fについて,

 

mes mes

F’ = W dw

1−ρs

Kf

Kf−0.41 = ρs

1− Kf−0.41

Kf0.71

... (3.11)  であり,式(3.3)を代入すると次式が得られる。

0.71

mes F’

( )

ρs 0.29

(

1mf s

)

1−

2A2Pf μαf

0.71

... (3.12)  ここで,Pf:ろ過工程におけるろ過圧力(Pa)である。この式(3.12)は,本実験 条件下での定圧ろ過・圧搾におけるろ過速度F’の推定式である。ここで,sと通 常スラッジの濃度表現として用いられているs’はほぼ同様の値であることから,s’

についても同様の関係が成り立つと考えられる。そこで,sの代わりにs’を用いて,

推定式で求められるFcalcと実際のろ過速度Fobsとを比較して図3-7に示した。

ろ過速度実測値F’obs(kg-ds/(m2 hr))

ろ過速度推定値F’ (-)

0 3 6 9 12 15

0 1 2 3 4 5 6

7 膜濃縮 沈降濃縮

F’obs=0.426F’calc

(R2 = 0.990)

 図3-7から,Fcalcと F’obsとは良い比例関係にあった。そこで,式(3.12)s’

を用いて書き改めると,次式となる。

0.29 0.71

me s’

F’

( )

ρs’

(

1mf s’

)

1−

2A2Pf μαf

0.71

... (3.13)

 式(3.13)は,濃縮スラッジ濃度s’によって決まる第一因子((ρs’)0.29),ろ過・圧

搾終了時のそれぞれのケーキ湿乾質量比mfmeと濃縮スラッジ濃度s’から決まる 第二因子((1−mfs’)0.71/(1−mes’)),ろ液の粘性μとスラッジの比抵抗αfによって決 まる第三因子((2A2Pf /μαf)0.71)から成り立っている。

 このうち,第二因子のmfmeは脱水終了時のケーキ含水率によって決まるため,

s’αfμの影響を受けると考えられる。そのため,式(3.13)ではs’αfが完全 には分離できていない。ここで第二因子の値をμαfと比較したところ,ある程度の 相関が見られ,第二因子は第三因子と同じ変数μαfによって決まるものと考えられ た。そこで,第二因子 × 第三因子の値について再度s’μαfと比較した(図3-8)。

その結果,第二因子 × 第三因子はs’に対しては明確な関係は見られなかったが,

μαに対しては明確な指数関数的低減関係が見られ,μαfの−0.71乗に比例していた。

濃縮スラッジ濃度

s’

(%)

0 1 2 3 4 5 6

0 2 4 6 8 10

12 膜濃縮 沈降濃縮

ろ液粘度×比抵抗μαf(×1011/sec)

0 2 4 6 8

0 5 10 15

20 膜濃縮 沈降濃縮

式(3.13)の第二因子×第三因子(×10-4 )

y

= 2.516×104

x

0.714

(R2 = 1.000) 式(3.13)の第二因子×第三因子(×10-4 )

図3-8 式(3.13)における第二因子と第三因子の積と推定式中の変数の比較

 この結果を用いると,式(3.13)からろ過速度F’s’μαfの関係を示す以下の 式を導くことができる。

  F’

( )

ρs’ 0.29

(

μαf

)

−0.71 ... (3.14)  ろ液密度ρはほぼ一定であることから,これを省略して式(3.14)の値と実際の ろ過速度Fobsを比較した結果を図3-9に示す。式(3.14)の時間の単位は,右辺が 秒であり,左辺は時であることから,比較では右辺を3600倍して時間の単位を左 辺に揃えた。図より両者によい比例関係が見られ,比例定数は6.99×104であった。

ろ過速度実測値F’obs(kg-ds/(m2 ・時))

式(3.14)の右辺の値((s’)0.29(μαf)–0.71

(×10–5、時間に換算した値)

0 2 4 6 8

0 2 4

6 膜濃縮 沈降濃縮

y

=6.99×104

x

(R2 = 0.990)

図3-9 ろ過速度実測値と式(3.14)の右辺の値の比較

 この式(3.14)s’μαfとろ過速度の関係を示す実験式であると言える。式(3.14)

の関係から濃縮スラッジ濃度s’0.29乗で,αfは−0.71乗でろ過速度に影響して いることが分かった。

 式(3.14)は,沈降濃縮スラッジ及び膜濃縮スラッジに共通して成立することから,

他の濃縮方法においてもある程度の妥当性があるものと推測される。そのため,脱 水効率改善策の効果を予測するために活用できるものと考えられる。

(3)膜濃縮における濃縮スラッジ濃度のろ過速度への影響

 膜濃縮では濃縮スラッジ濃度s’が向上する。このため,式(3.14)から明らかな ようにろ過速度は向上する。また,式(3.14)から濃縮スラッジ濃度向上のろ過速 度に対する寄与度を推定することが可能である。

 同一スラッジの沈降濃縮と膜濃縮の比較(表3-2)において,式(3.14)の算出結 果と実際のろ過速度Fobsについて,膜濃縮と沈降濃縮との比を比較して表3-5に 示した。式(3.14)の値はFobsとよく一致しており,式(3.14)が精度よくろ過速度 を推定できることが確認できた。さらに,濃縮スラッジ濃度s’,及び,比抵抗αf

のろ過速度向上への寄与について検討するため,s’ 0.29,及び,αf0.71についても比 較して表3-4に示した。

表3-4 同一スラッジにおける式(2.14)の検証

式(3.14) F ’obs s’ 0.29 αf0.71

第1 装置1 1.7 1.8 1.5 1.2 装置2 1.6 1.6 1.4 1.2 第2 装置1 0.9 1.1 1.3 0.8 装置2 0.9 1.2 1.4 0.7

注)表中の値は膜濃縮スラッジの値を沈降濃縮スラッジの値で除したものである。

 式(3.14)から計算されたろ過速度の向上に対する寄与はs’ 0.29が大きく,膜濃縮

によるろ過速度の向上は主に濃縮スラッジ濃度の向上に起因していることが分かっ た。

 実験では,図3-1に示したように濃縮スラッジ濃度の向上によるろ過速度の向上 幅があまり大きくない結果であった。この原因は,濃縮スラッジ濃度がろ過速度に 0.29乗で影響するためである。膜濃縮での濃度の向上がろ過速度に対して0.29 でしか作用しない理由は,ろ過速度に対して正の寄与をもたらす打込量の増加と,

負の寄与をもたらす固形分質量の増加によるケーキ抵抗の増加が同時に生ずるため であると考えられる。

ドキュメント内 浄水スラッジの脱水効率に関する研究 (ページ 59-83)

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