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加温脱水実験結果及び考察

ドキュメント内 浄水スラッジの脱水効率に関する研究 (ページ 89-101)

第4章  浄水スラッジの脱水効率に関する予測モデル

第3節  加温脱水実験結果及び考察

(1)加温脱水による脱水効率改善効果

 加温脱水による脱水効率改善効果については,加温によるμの低減に伴ってろ 過速度Fμの逆数に比例して増加すると予測されている1)。そこで,本実験の加 温脱水におけるろ過速度の常温脱水に対する向上率(F’heat/F’norm)について,μ 逆数の比(μnormheat)を比較して図4-3に示した。沈降濃縮と膜濃縮の結果の分布 には差が見られなかったことから,沈降濃縮と膜濃縮では加温脱水によるろ過速度 向上効果に違いがないことが分かった。また,F’heat/F’normμnormheatを下回るこ とがほとんどであり,μnormheatが大きいほど差が大きくなっていた。このことから,

加温脱水におけるろ過速度の向上効果はμの逆数では過大評価されることが確認 された。

1.0 1.5 2.0 2.5

1.0 1.5 2.0

2.5 沈降濃縮 膜濃縮

ろ過速度向上率予測値(μnorm

/

μheat

(-)

ろ過速度向上率実測値(F’ heat

/

F’ norm

(- )

図4-3 加温脱水のろ過速度向上率のμ-1による予測値と実測値の比較

 筆者らは,MF膜による強制濃縮スラッジと沈降濃縮スラッジの間に次式の関係 があることを明らかにした7)(第3章参照)。

  F’

( )

ρs’ 0.29

(

μαf

)

−0.71 ... (3.14)

 この式(3.14)は常温脱水実験結果から得られた関係式である。式(3.14)におけ

るろ液粘度の乗数は–0.71であることから,加温脱水でのろ過速度はμ–0.71 に比例している可能性が考えられた。そこで,加温脱水における式(3.14)の適合 性について検討するため,右辺の(s’)0.29(μαf)−0.71と実際のろ過速度F’obsを比較して 図4-4に示した。(s’)0.29(μαf)−0.71F’obsとの決定係数R20.990と高く,加温脱 水においても式(3.14)の関係が成立することが分かった。

0 2 4 6 8 10 12

0 1 2 3 4 5 6 7

8 沈降濃縮+加温 膜濃縮+加温

膜濃縮 沈降濃縮

式(3.14)の値:

(

s’

)

0.29

(

μαf

)

0.71

(

×

3.6

×

10

7

)

ろ過速度実測値F’ obs

(k g- ds /(m

2

hr ))

y = 6.79×104x (R2 = 0.990)

図4-4 加温脱水における式(3.14)の適合性

 しかし,F’heat/F’normについて,ろ液粘度−0.71乗の比heatnorm)−0.71とを比較し たところ(図4-5), μnormheat(=(μheatnorm)−1)と比較した図4-3と比較して良い一 致を示しているものの,結果の分布はF’heat/F’normが低い側に偏っており,加温脱 水におけるろ過速度の向上率は,ろ液粘度−0.71乗の逆数から予測される値よりも 低い傾向があることが分かった。

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8

2.0 沈降濃縮 膜濃縮

ろ過速度向上率予測値

(

μnorm

/

μheat

)

0.71

(-)

ろ過速度向上率実測値F’ heat

/

F’ norm

(- )

図4-5 加温脱水のろ過速度向上率のμ-0.71による予測値と実測値の比較

(2)加温脱水におけるろ過速度関係式の検証

 この原因について,加温脱水における比抵抗とろ材抵抗の変化について検討した。

 まず,ろ過工程の比抵抗αfについて検討した。常温脱水と加温脱水のαf,norm

αf,heatを比較して図4-6に示した。比抵抗が3×1014m/kgより高い領域では加温

脱水における比抵抗の増加が見られたが,他の領域では加温による比抵抗の変化は 見られず,全体的に見ると,加温脱水によって比抵抗の変化が見られなかった実験 結果が多かった。図4-5では多くの実験結果で加温脱水におけるろ過速度向上率が

−0.71乗の逆数から予測される値よりも低い傾向があったが,加温脱水によって比

抵抗が増加した結果は少なかったことから,加温脱水による比抵抗の増加はこの原 因ではないと考えられた。

0 1 2 3 4 5 6

0 1 2 3 4 5

6 沈降濃縮 膜濃縮

常温脱水での比抵抗 αf,norm (×1014m/kg) 加温脱水での比抵抗α f,heat (×1014 m/kg)

図4-6 常温及び加温脱水における比抵抗の比較

 次に,ろ材抵抗の影響について検討した。ろ液粘度から予測されるろ過速度が得 られない原因については,ろ材の閉塞であると推測した報告3)がある一方,実施設 では加温脱水によってろ布の目詰まりの軽減が生ずることが報告4)されている。そ こで,ろ過工程終了時点での全ろ過抵抗(=ケーキ抵抗Rc+ろ材抵抗Rm)に占め るろ材抵抗Rmの割合(Rm/(Rc+Rm))を常温脱水と加温脱水とで比較して図4-7に 示した。加温処理によって全ろ過抵抗に対するろ材抵抗の寄与が増大する傾向が見 られた。

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

0.0 0.2 0.4 0.6

0.8 沈降濃縮 膜濃縮

全ろ過抵抗に占めるろ材抵抗の割合Rm/(Rm+Rc)

(常温)

全ろ過抵抗に占めるろ材抵抗の割合Rm/(Rm+Rc) (加温)

図4-7 ろ過工程終了時点の全ろ過工程に占めるろ材抵抗の割合の比較

 ろ材抵抗はろ付の目詰まりの進行に伴って増加することから,脱水を繰り返すご とに増加するものと考えられた。実験では,加温脱水を常温脱水の後に実施してお り,このため加温脱水においてろ材抵抗が上昇したことが考えられた。

 そこで,連続脱水実験におけるRm/(Rc+Rm)F’の変化について比較して図4-8 に示した。脱水回数が10回未満の場合にはRm/(Rc+Rm)が上昇してF’が減少し,

それ以降はRm/(Rc+Rm)及びF’があまり変化しないことが分かった。また,常温脱水,

加温脱水のF’の変動係数は約5%であり,Rm/(Rc+Rm)が約0.1から約0.3に増加 しても,F’はあまり変動しないことが分かった。通常の実験の脱水では常温脱水 を2回目,加温脱水を3回目に実施している。このことから,本実験の加温脱水 でのRm/(Rc+Rm)の増加は,脱水回数の経過によるろ材抵抗の増加によるものであり,

F’には大きな影響を与えないことが分かった。

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0.0 0.5 1.0

1.5 F’(左軸)

脱水回数 (回) ろ過速度F’

(k g- ds /(m

2

hr ))

0 2 4 6 8 10 12 14 160.0 0.1 0.2 0.3 0.4 Rmの割合(右軸) 0.5

加温 加温加温 加温 加温 全ろ過抵抗に占めるろ材抵抗の割合 R m

/(

R m

+

R c

)

図4-8 連続脱水実験におけるろ過速度と

 しかし,図4-7ではろ過工程終了時点でのRm/(Rc+Rm)0.10.6となっており,

ろ過速度に対するろ材抵抗の影響は無視できないことが分かった。

 式(3.14)の導出過程では,定圧ろ過式(式(3.1))において,ろ材抵抗に関する

項であるVmを無視することによって。式(3.8)を得ている。

V +Vm

( )

2 =K

(

θ+θm

)

... (3.1)

V = Kfθ ... (3.8)  そして,実験結果から得られた次式(式(3.10))の関係から,式(3.14)を導出し ている。

θdw Kf

−0.41

... (3.10)  そのため,式(3.14)にはろ材抵抗の影響が反映されていない。そこで,ろ材抵 抗を含めたろ過速度の予測モデルを再検討することとした。

(3)ろ材抵抗を含んだ脱水効率(ろ過速度)予測モデルの検討

 式(3.1)においてVmを無視しない場合,Vθdwの関係は次式で表される。

V = K

(

θ + θm

)

Vm ... (4.2)  そこで,実験結果をもとに式(4.2)の右辺を算出し,左辺と比較して図4-9に示 した。図から,式(4.2)の右辺と左辺Vとの間には明確な比例関係があることが確 認された。右辺と左辺は正確には一致していないが,これは,ろ過工程のKfでろ過・

圧搾工程全体のθdwを表したことによるものと考えられた。以上から,ろ材抵抗を 無視した式(3.8)ではなく,ろ材抵抗を含んだ式(4.2)を使用すべきことが分かった。

0 1 2 3 4

0 1 2 3

4 沈降濃縮+加温 膜濃縮+加温

膜濃縮 沈降濃縮

y= 0.683x+ 0.074 (R2=0.961) V dw (×10–2 m3 )

Kfdw

+

θm) – Vm (×10–2m3) 式(4.2)の右辺:

式(4.2)の左辺:

図4-9 式(4.2)の右辺と左辺の比較

 しかし,式(4.2)では実験を実施しないと把握できないVm, θmの項が残ることと なり,ろ過速度の予測が困難となる。そこで,VdwKfθdwとの関係について実験 結果を再検討した。VdwKfθdwとを比較して図4-10に示す。その結果,多少の逸 脱は見られるものの,VdwKfθdwの0.37乗に比例していることが分かった。

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

3.5 沈降濃縮+加温 膜濃縮+加温

膜濃縮 沈降濃縮

Kfθdw (×10–3m6) V dw (×10–2 m3 )

Vdw = 3.52×(Kfθdw)0.374 (R2=0.941)

図4-10VdwKfθdwの比較

 以上の結果から,次式が得られる。

Vdw

KfQdw 0.37 ... (4.3)  このKfθdwの乗数は式(4.2)の乗数である0.5よりやや低い値であった。

 さらに,実験結果から式(3.10)におけるKfθdwとの関係について,加温脱水 も含めて比較して図4-11に示した。その結果,Kfθdwの–0.40乗に比例しており,

式(3.10)とほぼ同様であった。

0 5 10 15 20 0

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

4000 沈降濃縮+加温 膜濃縮+加温

膜濃縮 沈降濃縮

θ dw

(s )

θdw= 4.56×Kf–0.395 (R2 = 0.948)

Kf

(

×

10

–7

m

6

/s)

図4-11Kfθdwの比較

 以上の結果をもとに,式(3.14)を再計算すると,以下の式を得る。

F’

s’ 0.38

μαf 0.62 ... (4.4)  この式は,浄水スラッジの脱水処理において,強制濃縮,沈降濃縮,加温脱水 について共通に成立する,ろ材抵抗の影響を含んだろ過速度の予測モデルである。

このモデルでのμαfの乗数は−0.62であることから,実験結果についてF’heat/F’norm

と(μheatnorm)−0.62とを比較して図4-12に示した。図から(μheatnorm)−0.62を用いてほ

ぼ正確にF’heat/F’normを予測することができる。

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 1.0

1.2 1.4 1.6 1.8

2.0 沈降濃縮 膜濃縮

(

μheat

/

μnorm

)

0.62

(-)

F’ heat

/

F’ norm

(- )

図4-12 加温脱水のろ過速度向上率のμ­0.62による予測値と実測値の比較

 さらに,式(4.4)右辺と実験結果F’obsとを比較して図4-13に示した。図4-4と 比較するとあまり大きな違いは見られないが,F’obsの低い部分での一致が若干改

善され,R20.990から0.992に向上した。

0 2 4 6 8 10 0

2 4 6 8

10 沈降濃縮+加温 膜濃縮+加温

膜濃縮 沈降濃縮

y= 1.03×105x (R2=0.992)

式(4.4)による予測値:

(

s’

)

0.38

(

μαf

)

0.62(×3.6×107) ろ過速度実測値F’ obs(kg-ds/(m2 ・hr))

図4-13 式(4.4)による予測値と実測値の比較

 この予測モデル(式(4.4))は,強制濃縮及び沈降濃縮したスラッジをそれぞれ 常温脱水及び加温脱水した際のろ過速度について,低水温期のろ過速度が非常に低 い条件から高濁度時のろ過速度が非常に高い条件まで,決定係数0.992という極め て高いレベルで予測することが可能である。この予測モデルを用いることにより,

強制濃縮における濃縮スラッジ濃度とろ過速度の関係や,加温脱水における昇温幅 とろ過速度向上率の関係をより正確に予測できるものと考えられる。

 そこで,次節では,この予測モデルについて,原水,浄水処理,排水処理条件が 異なる場合の妥当性を検証した。

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