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第 4 章 高機能半導体表面洗浄技術の開発と理論的考察

4.1 高機能表面洗浄技術

4.1.5 ウェハ裏面および端面に汚染した Pt の新しい洗浄法

4.1.5.4 実験結果

まずはじめに、薬液供給の順序によるエッチングレートの違いについて調査を行った。

図 4.1.5-4 に硝酸を先に供給した場合と塩酸を先に供給した場合のエッチングレートの変

化を示す。

その結果、塩酸を最初に供給した場合の方が、硝酸を先に供給した場合よりもエッチン グレートが速い。この結果は、最初に供給される薬液の量より2番目に供給される薬液量 の割合がウェハ上で高いことを示唆している。塩酸を最初に供給した場合、塩酸と硝酸の 比率が式 1に示されるような化学定量的な割合の3:1に近い値になったため塩化ニトロシル と塩素の生成が活発化し、結果として、エッチングレートが速くなったと推測できる。

したがってこの結果から、以後の実験は塩酸が最初の化学物質として供給される方法に よって行われた。

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図 4.1.5-4. 硝酸を先に供給した場合と塩酸を先に供給した場合のPtのエッチングレートの 変化。薬液温度: 60℃。

4.1.5.4.1 ウェハ裏面のPt汚染洗浄

はじめに、王水によるウェハ裏面の酸化膜上に汚染した Pt の洗浄効果について調べた。

図 4.1.5-5にウェハ裏面の Pt汚染の塩酸->硝酸、塩酸->硝酸/弗酸の混合液、弗酸/過酸化水

素水/純水の混合液(FPM: Hydrofluoric Peroxide Mixture)による除去効果と裏面酸化膜のエ ッチング量の変化を示す。この結果から、Pt汚染は、王水だけの処理では除去できないこ とが明らかである。しかし、第2薬液の硝酸に少量の弗酸を加えることにより、Pt汚染は 洗浄される。更に FPM による洗浄でも効果がある。この結果は、Pt はウェハ表面だけに 汚染されているのではなく、酸化膜中に拡散して汚染していることを示唆している。した がって、FPMでは酸化膜のエッチング効果により酸化膜中に拡散した Pt も除去される。

また、第2薬液の硝酸に弗酸を添加した処理でも、弗酸により酸化膜がエッチングされる ためPtを除去できた。

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図 4.1.5-5.ウェハ裏面のPt汚染の塩酸->硝酸、塩酸->硝酸/弗酸の混合液、弗酸/過酸化水素 水/純水の混合液(FPM: Hydrofluoric Peroxide Mixture)による除去効果と裏面酸化膜のエッ チング量の変化。塩酸->硝酸/弗酸の混合液: HNO3:HF=250:1、温度 65℃、弗酸/過酸化水 素水/純水の混合液:HF:H2O2:H2O=1:1:10、温度:30℃、白丸:処理前、黒四角:処理後、

黒丸:酸化膜のエッチング量。

図4.1.5-6に示すようにFPMによる洗浄の場合、酸化膜エッチング量が20 nmではPtは

洗浄されておらず、30 nm

のエッチング量で検出限界以下の値となる。しかし、HCl->HNO3/HFによる洗浄では、酸化膜のエッチング量はFPMの30 nmと比較し、極端に少な

い僅か 1.5 nmのエッチング量で Ptは完全に洗浄されている。この結果から、王水による

酸化膜表面に汚染する Ptの溶解と酸化膜のエッチングによる膜中に拡散した Ptの除去を 同時に行うことで、ウェハ裏面のPt汚染を完全に洗浄できることが明らかである。

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図 4.1.5-6.酸化膜のエッチング量の変化によるPtの汚染量の変化。塩酸->硝酸/弗酸の混合 液: HNO3:HF=250:1、温度65℃、弗酸/過酸化水素水/純水の混合液:HF:H2O2:H2O=1:1:10、

温度:30℃、黒丸:HCl->HNO3/HFによる処理、白丸:FPMよる処理。

4.1.5.4.2 ウェハ端面のPt膜の除去

前記したように、ウェハ裏面に汚染した金属と同様に端面部に堆積した金属も汚染源に なるため取り除く必要がある。

図 4.1.5-7に毛細管現象を利用した特殊なチャックにより Pt膜の廻り込みエッチングを

した後のウェハ端面の写真を示す。端面の Pt 膜は完全に除去され、更に酸化膜との境界 面は非常にきれいな形状で処理できている。

1E+09 1E+10 1E+11 1E+12 1E+13 1E+14

0 5 10 15 20 25 30 35

Pt contaminatio (atoms/cm2 )

Etched thickness of SiO2(nm) 1014

1013

1012

1011

1010 1014

1013

1012

ND

FPM

HCl->HNO3/HF

144

図 4.1.5-7. 端面Ptエッチング後の廻り込み部の写真。

ウェハ全周における廻り込み形状を調べるために定量的測定を行った結果を図 4.1.5-8 に示す。その結果、ウェハ全周にわたる廻り込み量の均一性は2 mm ± 0.094 mmであり、

非常に高い均一性で端面のPt膜が除去されている。

図 4.1.5-8. 廻り込み部の均一性。

4.1.5.4.3 Ptサリサイド形成工程への応用

Ptサリサイド形成工程における湿式処理による Pt 膜の除去では、下地シリコンがエッ チングされないことが求められる。その点において、王水は、シリコンと Pt とのエッチ ング選択比が非常に高いため、この工程への応用に最も適している薬液の一つである。し かし、この処理をこれまで使用されてきた既存の浸漬湿式処理により行うことは難しい。

図 4.1.5-9 に王水を用いた浸漬式処理による Ptとサリサイド形成工程で使用される酸化

膜、窒化膜、ポリシリコンのエッチングレートを調査した結果を示す。

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4.1.5-9.王水による酸化膜、窒化膜、ポリシリコン膜とPtのエッチング量、処理:浸漬

湿式処理装置、王水:HNO3:HCl:H2O=1:3:4、1:3:6。

酸化膜と窒化膜は、王水によるエッチングはほとんど見られないがポリシリコンがエッ チングされる。これは、塩化ニトロシルとシリコンが反応してシリコン塩化物が生成され、

それがリンス時の純水に溶解されることによる。さらに、図 4.1.5-10 に示すように、ポリ シリコンのエッチング量は王水の濃度と温度の上昇とは関係なく一定の量がエッチングさ れる。この結果は、浸漬湿式処理では、ポリシリコンのエッチングを抑制することが非常 に難しいことを示している。

一方、枚葉回転湿式処理による王水直接混合技術を用い、同様な実験を行った結果を図

4.1.5-11 に示す。枚葉回転湿式処理では、高濃度および高温の王水では、浸漬湿式処理と

同様ポリシリコンのエッチング量は高い値を示す。しかし、塩酸の濃度を低くすることに よる Pt のエッチング量の減少とともにポリシリコンのエッチング量も減少する。さらに、

硝酸と塩酸の混合比率を変化、温度を減少させることにより、Ptとポリシリコンのエッチ ング選択比は高くなる。最終的に硝酸と塩酸の濃度を減少させ、さらにそれぞれの薬液温 度を 30℃まで下げることにより、Pt 膜の高いエッチングレートを維持したまま、ポリシ リコンのエッチングを抑制できる。この結果は、枚葉回転湿式処理により、Pt膜と他の膜 とのエッチング選択比を制御できることを示している。

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

40ºC 60ºC 40ºC 60ºC

HNO3:HCl:H2O = 1:3:4 HNO3:HCl:H2O = 1:3:6

Etching rate[nm/min]

SiO2 SiN Poly Si Pt

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4.1.5-10. 浸漬湿式処理装置における王水処理時間と温度によるPtのエッチング量の変化。

白丸:HNO3:HCl:H2O=1:3:6、温度:65℃、黒三角:HNO3:HCl:H2O=1:3:6、温度:40℃、黒 四角:HNO3:HCl:H2O=1:3:4、温度:65℃、白菱形:HNO3:HCl:H2O=1:3:4、温度:40℃。

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図 4.1.5-11.枚葉回転湿式処理における王水による酸化膜、窒化膜、ポリシリコン膜及び、

Ptのエッチング量。